技術・知的財産の基盤活動と戦略

技術・知的財産の基盤活動と戦略

技術戦略

技術部門方針

DICグループは、基盤技術の深化と技術融合を通じた価値創出を中長期の成長戦略の中核に位置づけています。 色彩・顔料、有機材料設計、高分子設計、分散・表面制御といった従来のコア技術に加え、計算科学(AI/MI)・バイオ材料分野など新たな技術領域の獲得にも取り組むことで、既存事業の競争力強化と新事業の創出を両立しています。

2022~2024年度の取水量

DICの技術基盤

研究開発体制

研究開発体制については、日本国内の研究開発組織を中核として、製品開発・改良を担う組織、基盤技術の深化や新技術創出を担う組織、さらに次世代事業の事業化を担う組織が連携する体制を構築しています。2026年度からは、技術・製造・販売が一体となった組織運営を進め、研究成果を迅速に事業・市場へ展開する体制を強化しています。

海外においても、米国、欧州、中国、アジアを中心に研究開発拠点を展開し、現地市場ニーズに即した開発とグローバルでの技術連携を推進しています。これにより、地域特性を踏まえた製品開発と、グローバルLevelでの技術シナジーの最大化を図っています。

2030 年に向けた技術部門のビジョン

技術部門における2030年に向けたビジョンは、コア技術の優位性に社内外の新技術を掛け合わせ、新たな顧客・市場に向けた価値へと転換することで事業成長力を牽引することにあります。 AI・データサイエンスなどのデジタル技術を活用した技術マーケティングを推進することで、 技術を 事業成果につなげる成功確率を高め、より確かな持続的成長の実現を目指しています。

事業部門の技術戦略

【パッケージング&グラフィック事業部門】
環境対応基盤技術による市場拡張と循環型ビジネスの確立

パッケージング&グラフィック事業部門では、配合設計、材料設計、リサイクル技術を核とする基盤技術を深化させ、環境対応と市場拡張を同時に推進しています。印刷インキ分野では、バイオマス由来原料とUVインキ原料を融合し、バイオマス度50%(当社調べ)という業界最高水準を実現したハイブリッド型UVインキを販売しました。従来のUV印刷機でそのまま使用可能とすることで、顧客の設備投資負担を抑えつつ、環境対応印刷への移行を可能にしています。食品包装分野では、バイオマス原料を使用しつつ、ラミネート強度や印刷濃度などの性能を高めた次世代グラビアインキを展開しています。さらに、溶解分離リサイクル技術を活用し、食品包装用発泡トレーのトレーからトレーへの水平リサイクルを実用化することで、資源循環と廃棄物削減を通じた循環型社会の形成に貢献しています。

【カラー&ディスプレイ事業部門】
意匠性・機能性・持続可能性を両立する高付加価値材料の創出

カラー&ディスプレイ事業部門では、顔料設計、分散制御、光学特性設計に関する基盤技術を活かし、意匠性と機能性、環境対応を両立する高付加価値材料を展開しています。化粧品分野では、肌への色残りやブリーディングを抑制するとともに、優れた紫外線安定性を備えた高彩度メタリックエフェクト顔料を開発しました。動物由来原料を使用しない処方により、ビーガン化粧品やカルミンフリー製品への対応を可能とし、多様化する消費者ニーズに対応しています。自動車・建築分野では、近赤外線(NIR)を反射する機能性黒色ペリレン顔料「Spectrasense」の生産能力を拡充しました。深みのある黒色意匠と熱マネジメント機能を両立し、表面温度上昇の抑制を通じて、高機能用途への対応と地球温暖化の緩和に貢献しています。

【ファンクショナルプロダクツ事業部門】
環境対応とプロセス革新を支える機能材料基盤技術

ファンクショナルプロダクツ事業部門では、分子設計、反応制御、界面制御を基盤とする材料技術により、環境対応と顧客の製造プロセス高度化に貢献する機能材料を提供しています。合成樹脂分野では、高周波回路基板向け低誘電特性樹脂の量産を開始し、生成AIの普及を背景に高性能化が進む半導体パッケージや高速通信インフラに対応しています。信号損失の低減を通じて、通信機器やデータセンターの高性能化と省エネルギー化に貢献しています。界面活性剤分野では、フッ素系界面活性剤に代わる高性能非フッ素系界面活性剤(PFASフリー)のラインアップを拡充しました。工業用テープ分野では、加熱を必要とせず、伸ばすだけで剥離可能なストレッチテープを開発し、省エネルギー化と高品質な部品ハンドリングの両立を通じて、工程の効率化に貢献します。

フィジカルAI時代に向けた競争力基盤の構築へ

新たな事業機会の創出に向けた技術探索

DICグループは、AIが現実空間を認識・操作するフィジカルA(I Physical AI)領域を、将来の成長市場と位置づけています。素材技術や成形技術といった当社の強みに加え、デバイス設計技術の強化を進めるとともに、これらを確実に獲得・高度化していくためのオープンイノベーションを積極的に活用しながら、新たな事業機会の探索を推進しています。

現在、ウェアラブル、ファクトリーオートメーション、エンターテインメント分野を中心に、「材料×構造×センシング」を組み合わせた技術開発に取り組んでいます。具体例として、全方位マルチコプター「HAGAMOSphere®2.0(アガモスフィア2.0)」、センサ機能を組み込んだロボットフィンガー「MoR®(エムオーアール)」、触覚拡張デバイス「 Tacthancer™(タクトハンサー)」などがあげられます。

また、今後の事業モデルの広がりや様々な用途展開を見据え、最新の技術や機能等を外部から獲得する取り組みを進めています。2025年度よりケアテックおよびAIロボティクス分野のスタートアップ企業への出資を開始し、協業による製品開発やサービス高度化の検討を進めています。2026年度には、スイスにスタートアップ投資を担うグループ会社を設立し、総額6,200万米ドルの投資枠のもと、ベンチャーキャピタルと連携した投資および協業を本格化しました。

DICグループは、これらの取り組みを通じて、既存事業の枠を超えた新たな成長機会を創出し、中長期的な企業価値および社会価値の向上を目指します。

新たな基盤技術による事業創出と社会価値の向上

バイオ材料を起点とした新基盤技術の確立

DICグループは、従来の基盤技術の高度化に加え、 新たな基盤技術の創出と事業化を通じた次世代事業の育成に注力しています。その中核を担う新たな基盤技術の一つが、日本発・藻類由来の機能性原料「SACRANEX™」に活かされています。「SACRANEX」は、日本固有の淡水藻であるスイゼンジノリ由来の高分子多糖類を、当社独自の培養・精製・品質制御技術により安定供給可能としたバイオマテリアルであり、化粧品分野を起点に、幅広い用途展開が見込まれます。

2025年度は、量産化に向けた培養・生産プロセスの高度化を進めるとともに、グローバル展開を見据えた安定供給体制および品質管理体制の構築を推進しました。また、「SACRANEX」は国際的にも評価され、2026年3月、中国・化粧品原料展(PCHi)にて、化粧品技術革新賞「PCHi 2026 FountainAward」保湿分野・銀賞を受賞しています。

知財戦略

基本方針

 DICグループでは「DIC Vision 2030」 Phase2の実現のため、“中核事業の質的転換”と“成長事業の構築”に向けた活動を推進しています。成長事業の構築に向けては、事業戦略と一体的な知財戦略を推進し、“競争優位な知財ポートフォリオ構築”を進める一方、“知財リスクマネジメント体制”をさらに充実させ、ステークホルダーから信頼される無形資産活用体制を構築していきます。

成長事業の構築に向けた取り組み

注力テーマ選定の具体的取り組みの一例として、下図に示すようにマーケティングや技術担当者と連携して得た市場の情報と、“Technology Intelligence(TI)”活動にて評価した情報をもとに外部環境と内部環境を比較・解析し、テーマ優先度の考察、競争優位な特許ポートフォリオ(以下、「特許PF」)構築等の戦略を推進しています。

AI融合社会に向けた注力領域である半導体、バッテリー、フィジカルAI等の分野においては、事業テーマ創出から知財部門が関わり、TIを活用しながら注力領域などをとらえ、技術開発や事業の意思決定をサポートするとともに、ターゲット領域での知財ポートフォリオの構築を進めています。

なお、当社のポートフォリオ戦略は、株式会社パテント・リザルトが公表する化学業界特許資産規模ランキングにおいて高く評価されています。

知財リスクマネジメント体制

DICグループは、コンプライアンス遵守の基本方針のもと、新市場・新技術領域の特許調査、契約マネジメント・機密情報の管理、模倣品・侵害品・類似商標の排除に取り組んでいます。サステナビリティ委員会に設置したリスクマネジメント部会を通じ、グローバルなリスク管理の一環として知財リスクの最小化を図っており、知的財産センターの担当者が中心となって実務を推進しています。また、「Patent Classifi cation」などAIツールを活用し、特許調査の効率化と網羅性を高めています。

さらに、知財と事業の整合性を確認する知財判定会議や、研究開発のインセンティブ向上を目的とした特許審議会を重要会議と位置づけ、経営層の実効的な監督のもと、変化の速い事業環境に対応した知財活動を推進しています。加えて、知的財産への投資に関する適切な情報開示を行い、ステークホルダーから信頼される無形資産活用体制の構築に努めています。