ESG部門長メッセージ

執行役員ESG部門長 虎山 邦子

地道な活動を「誠実」に行い、
長期的な視点からグループの成長に貢献します

執行役員
ESG部門長

虎山 邦子とらやま くにこ

2025年、サステナビリティ活動は難しい局面を迎えていると感じています。世界ではCO₂の排出削減が叫ばれているにもかかわらず、その排出量は増え続けているのが現状です。日本の気象観測衛星「いぶき」によると、CO₂の全大気平均濃度は右肩上がりに上昇を続けており、欧州連合の気象機関「コペルニクス気候変動サービス」は、2024年が産業革命前からの気温上昇幅で1.5℃を超えた初めての年になったと伝えています。
各国の取り組みの足並みが揃わない中、多国間で事業を行うDICグループは企業としての軸のあるサステナビリティ活動が問われています。このような状況下で、私は昨年のDICレポートで発信した「受け継がれてきた経営ビジョンのもと、地道な活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献する」というメッセージをベースに活動を進めています。本項では最新の活動について簡潔に進捗を報告します。

CO₂排出量の削減

2024年の生産数量は微減(-3.6%)でしたが、CO₂排出量は微増(+2.3%)しました。直接排出(Scope1)について、2024年度は地道な努力を積み重ねることに終始しましたが、2025年度は堺工場において新設のバイオマスボイラの稼働を予定しております。間接排出(Scope2)については、2024年度の日本国内の全購入電力をグリーン電力で継続調達しました。海外においても、中国、東南アジア、南米などでグリーン電力の新規および継続調達に取り組みました。これらの施策を組み合わせ、2030年50%削減の目標へ向かう歩みを気候変動部会にて議論しています。

製品カーボンフットプリント(PCF)

DICグループでは、「ゆりかごからゲートまで」と呼ばれる、原材料の採取から製造・出荷までの製品ライフサイクルにおける炭素排出量である製品カーボンフットプリント(PCF)の提供を行っています。2024年は、中国ならびにアジアパシフィック地域の製品についても提供を開始し、既に取り組んでいた欧米・日本と合わせたグローバルでの提供体制を確立しました。PCFは、欧州企業または欧州企業を顧客に持つ企業、それから自動車業界の企業を中心に要請が高まっており、この流れは当面続くものとみています。

非財務情報開示プロジェクトの発足

非財務情報の開示に関する各国の立法を見据え、非財務情報開示プロジェクトを発足しました。このプロジェクトではグローバルの非財務情報を収集できる体制を整えていきます。2024年度は、欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に備えました。コンプライアンスはもちろんですが、財務情報だけでなく非財務情報も企業評価に活用いただき、DICグループの活動を身近に感じてもらうことを目指しています。

ダイバーシティ

社員一人ひとりの多様な属性・個性から生まれる価値が、企業の力となっていくことを目指し、2024年は男性社員が育休を取得しやすい組織風土の醸成、また女性社員が自信を持ってキャリアを形成できるための研修やメンター制度に注力しました。
ESGの推進は会社の短期的な利益には直結しにくいのですが、ダイバーシティが社員の成長を促し、未来の事業を支えることや、PCFがバリューチェーンのCO₂削減を実現し、価値を創造することを目指して取り組んでいます。このような地道な活動をDICグループらしく行動指針にあるとおり「誠実」に進め、長期的な視点からグループの成長に貢献したいと考えています。