取引先とDIC ~持続可能な調達
主な取り組みの目標と実績
持続可能な調達の推進
2021年度 目標 | 中国・インドの化学工業園区に対する規制強化や統廃合および環境規制対策等、重要原料取引先への影響とサステナビリティ状況を詳しく点検する |
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2021年度 実績 | 中国・インドの重要原料メーカー約50社に対するサステナビリティ紙面調査を実施、中国メーカーの環境規制強化に対しては行政機関の許認可更新状況を確認した |
評価 | ★★ |
2022年度 目標 | 中長期的な視点で持続可能な原料への取り組み( 原料の力ーボンフットプリントの試算やバイオ原料・リサイクル原料の探索)を推進する |
2021年度 目標 | DICは改定版ガイドブック、サンケミカル社はEcoVadisを活用した取引先調査を実施し、取引先のサステナビリティ全般(ESG)の活動状況を把握する |
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2021年度 実績 | DICは改訂版ガイドブックで取引先約150社の調査を実施した(累計で購買金額の約7割に相当) サンケミカル社はEcoVadis※を活用し累計で購買金額の約9割を占める取引先調査を完了した |
評価 | ★★ |
2022年度 目標 | DICおよびサンケミカル社ともに取引先のサステナビリティ調査を継続し、取引先のESG活動状況の把握を強化する |
- EcoVadis:企業のESG評価とそのスコアカードをサプライチェーンの情報プラットフォームに提供する団体。
- 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
[ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力
持続可能な調達の基本的な考え方
DIC グループは、グローバルな人権の課題、気候変動や水リスクなどの環境課題に関して、昨今サプライチェーンを通じた取り組みが社会の要請として高まっていることを踏まえ責任ある調達活動を行っています。
DIC グループでは、サプライチェーンにおける社会的責任を果たすために、「DICグループ購買に関する方針」(2008年制定)および、これに基づき定めた「購買管理規程」と各取引先への要請事項を明記、2020年2月に改訂した「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック」を用いて、持続可能な調達に向けた改善・取り組みを推進しています。この活動は、日本、米欧州、中国、アジアパシフィック地区でグローバルに進めています。

DICグループ購買に関する方針
DICグループの基本理念を実現するための行動方針に則って、購買部門は、取引先との購買活動において以下の購買に関する方針を実践いたします。
- 公正・透明な取引
DICグループは、従来の商習慣にとらわれることなく、グローバルな見地から国内外の取引先に対して、公正で開かれた購買を行います。 - 適正な購買と信頼関係の構築
DICグループは、国内外の関連法規・社会規範を遵守し、適正な品質・価格を追求して取引先と良きパートナーとしての安定的な相互信頼関係を構築し、共存共栄を図ります。 - 環境・安全への適合
DICグループは、模範的な企業市民として、環境・安全・健康・品質に責任を持ち、社会の変化を常に意識し、地球環境に配慮した購買を実践します。 - 新たな価値創造への挑戦
DICグループは、社会が求める新たな価値に高いレベルで応えるために、価値の創造を共有できる取引先と積極的に挑戦し、共に持続的な発展を目指します。
DICグループ
サステナビリティ調達ガイドライン
- 法令・社会規範の遵守と健全な事業経営の推進
- 人権の尊重及び労働環境の整備
- 安全衛生の確保
- 環境への配慮
- 情報セキュリティ対策
- 適正な品質・安全性及び技術の向上
- 安定供給と変化に対する柔軟な対応
- サステナビリティの推進と持続可能な調達の取り組み
持続可能な調達の推進
DICグループでは、「 DICグループ購買に関する方針」に基づきJEITA※等のガイドブックを参考に2010年に「DICグループCSR調達ガイドライン」を定めましたが、持続可能な調達に対する社会の要請や変化に対応するため、名称の変更を含めた改訂を行いました。具体的には人権方針の策定、化学物質の管理や環境負荷の低減、水資源やエネルギーの効率的な利用、中長期的な温室効果ガスの排出量削減目標設定、安定供給を目的とした事業継続計画の策定などが主な改訂項目となります。このガイドラインへの適合や、RBA、TCFD等の新たな社会要請を取引先に求めた、「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック(2020年2月改訂Ver.3)」(以下本ガイドブック)を作成しました。
本ガイドブックを用いて国内外の取引先へのアンケートおよびヒアリング調査などを行い、取引先に対する啓発とともに改善活動を行っています。なお、新規取引先に関しては、選定に際しサステナビリティ調査の結果を考慮する仕組みがあります。また「DICグループグリーン調達ガイドライン」により、取引先に対し化学物質の厳正な管理を要請するとともに、①環境負荷のより少ない製品の開発と紹介、②メーカーにおけるグリーン調達の推進、③調達品およびその梱包材・物流・生産・工事等における、省資源化・省エネルギー化・減量化・長寿命化・CO₂排出量削減等環境負荷の低減、などを求めています。
こうした取り組みは取引先との関係強化につながる有効な機会となっています。
- JEITA:一般社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association)の略。
DICグループグリーン調達ガイドライン
DICでは「DICグループ購買に関する方針」のもと、「DICグループグリーン調達ガイドライン」(下記7つの有害性の高いカテゴリー※1の有害物質を含有した原料は調達しない)を制定し、①「DIC原材料調査票」(成分の詳細情報把握) ②「Safety Data Sheet」および③「chemSHERPA」※2さらに ④「DICグループグリーン調達ガイドライン調査票」の提出を新規原料購買時に義務づけ、懸念物質の体系立てた排除を実行しています。また、別途「責任ある鉱物調達に関する調査票」の提出も要請しています。
- 7 つの有害性の高いカテゴリー:①労働安全衛生法55 条「製造等が禁止される有害物質」、②化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)「第一種特定化学物質」、③化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)「監視化学物質」、④特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律「既に製造が禁止された特定化学物質」(モントリオール議定書における「オゾン層破壊物質」と同じ)、⑤大気汚染防止法「特定粉じん」、⑥毒物及び劇物取締法「特定毒物」、⑦ストックホルム条約「附属書A」で定める物質。
- chemSHERPA:サプライチェーン全体で利用可能な製品含有化学物質の情報伝達のためのスキームで、サプライチェーンにおける製品含有化学物質情報の確実かつ効率的な伝達のためにデザインされ、DICでは2017年下期よりchemSHERPAの運用を開始。
新規取引先に関する事前評価
DICでは、新規取引先に対し、上記①~④および「紛争鉱物調査票」の提出をお願いするとともに、サステナビリティの観点も含め総合的に評価しています。
取引先へのサステナビリティ調達アンケートの実施
DICグループは取引先に対し、本ガイドブックに包含されているセルフチェックシートを用いたアンケート調査を行い、これを通じてサステナビリティの推進状況を確認しています。このアンケート内容は、「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」の8項目をさらに細分化し、人権尊重や労働環境への配慮、ISO14001の取得、グリーン調達の実施、二次取引先への推進など45の項目から構成されています。
アンケート結果の分析とフィードバック
DICグループサステナビリティ調達ガイドブック(2020年2月改訂Ver.3)を用い、2020年6月~2022年2月に調達原材料購買金額の70%以上を占める取引先348社からアンケート回答を受領しました。アンケートの分析・評価結果を各社にフィードバックするとともに、取り組みが不十分な項目については、コロナ禍に配慮し書面やヒアリングにて適宜改善要請をしています。
- 2013年11月~2019年12月においては、Ver.1、2を用い、調達原材料購買金額の90% 以上を占める取引先764 社からアンケートを受領し、評価を行いました。

(訂正)昨年のDICレポートで、アンケート回答率は81%以上との記載をしておりましたが、正しくは「54%以上の回答」の誤りでした。
サステナビリティ推進を目的とした訪問調査
DICは持続可能な調達に対する理解の促進を目的とし、2011~2019年で計102社の国内外取引先に対し、訪問または紙面調査を実施しました。アンケートの自己評価に基づき、その内容を確認した上で、取引先と課題に対し改善のための協議をしています。同時に環境・社会・ガバナンスに関するDICグループの取り組み事例を紹介し、取引先のサステナビリティを推進しています。
2020〜2021年度はコロナ禍の影響で訪問調査の実施を見送りましたが、別途中国・インド地区の重要原料取引先においては、独自に環境規制強化に対する調査を実施しました。
グローバルな取り組み
2020年2月に改訂した「サステナビリティ調達ガイドブック Ver.3」について、一部グループ会社への周知および啓発を行い、重要取引先への調査を実施しました。
また、サンケミカル社は独自にEcoVadisを活用した調査に着手し、9割近くの調査を実施しました。DIC、サンケミカル社間で各々の取引先評価結果を共有しています。今後も、サンケミカル社とは、サステナビリティ委員会などで持続可能な調達に関する新たな社会要請に対する取り組み施策について継続的に情報交換していきます。
なお、グループ会社のサイアムケミカル社(タイ)は、EcoVadis調査において、前回に引き続きシルバーメダルを獲得しました。
持続可能な原料への取り組み
DICグループは、中長期的な視点で持続可能な原料への取り組みを推進しています。再生可能原料についても、気候変動・資源保護に配慮し社内で様々な検討がなされており、より広範囲な事業アプローチとして、Scope3を含めた原料のカーボンフットプリントの試算やバイオ原料・リサイクル原料への探索も進めています。DICグループは、今後も持続可能な原料への取り組みをグローバルなサプライチェーンを活かし、推進してまいります。
社内啓発
持続可能な調達について、社内の購買担当者(新人、異動時、取引先との面談時など)を対象とした研修を定期的に実施しています。また2020年2月に改訂した「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック」に関して、社内イントラネットへの掲載による周知を行い、海外グループ会社への説明会を実施しています。
COMMENT
協働して持続可能な発展に取り組みます
双日は、従前よりDIC様向け樹脂原料の供給をしております。弊社は2050年までの長期ビジョンとして「サステナビリティ チャレンジ」を掲げ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みと、サプライチェーンを含む人権尊重の段階的取り組み拡大にコミットしております。
サプライチェーン人権の向上に関しては、取引先各位の理解と協力が不可欠ですが、2008年より継続的に取り組まれているDIC様は大変心強い存在です。サステナビリティ調達ガイドブックを制定し、継続的なサプライチェーン調査を実施する企業は増えましたが、取引先にフィードバックを行う企業は多くはありません。
今後、社会の要請として、サプライチェーン全体に対する実効性のある調査が望まれると予想される中、価値の創造を共有できるDIC様との一層のCo-workにより、ともに持続的な発展を目指すことを期待しております。

双日株式会社 化学本部 機能化学品部 第三課 劉 迪 様
VOICE
サスティナビリティ調達で取引先とパートナーシップを構築

DICグラフィックス株式会社はインキ製品の製造販売のほか仕入商品をお客さまに提案販売するソリューションビジネスを進めており、私達の部署はこうした商品に関する調達業務を行っています。具体的な商品としてはインキ製品等に投入する溶剤、印刷現場で用いるプレート版材や洗浄用薬品、更にはお客さまの省力化に貢献する機器の販売など多岐に渡り、その取引先は300社を超えます。サスティナビリティ調達活動は、取引先とパートナーシップを構築する上で欠かせません。従来の取引先調査では私達の視点が品質、価格、安定供給を重視してしまう傾向にありました。今後もソリューションビジネスを継続していく中、ESG(環境・社会性・ガバナンス)の観点も含むサスティナビリティ調達は有望なビジネスパートナーを見つけていくためにも重要な活動であると認識しています。
DIC グラフィックス株式会社 SCM 本部 サプライチェーン管理グループ 原材料管理 マネジャー 柄沢和則
継続的な改善に取り組み「持続可能な調達」を推進します

私は迪愛生合成樹脂(中山)でタイヤ用金属石鹸の原料調達を担当しています。この製品は、主にグローバルなブランドオーナーと限られた原料サプライヤーからの原料供給に支えられたサプライチェーンのため各サプライヤーは当社にとって不可欠なビジネスパートナーとして認識し信頼関係を構築しながら持続可能な調達を目指しています。
我々はサプライチェーン全体の品質向上とサステナビリティ推進のため、サプライヤーに対し定期的な書面による調査と購買、品質保証、製造担当者が監査を行い、法令遵守や安全衛生・環境保全など各社の取り組み状況について互いに認識を深め、監査結果をサプライヤーにフィードバックし、基準に満たない事項に対し、是正策の実施を求めると同時に関連情報の提供を通じて改善も支援しています。また責任ある鉱物調達の取り組みの一環としてコバルト加工品についてはCRT書式による調査は本社と共同で実施し情報を共有しています。
2019年8月、当社は環境・社会・ガバナンスの取り組みに対しEcoVadis 社から銀メダルの評価を獲得しました。今後も現状に満足することなくサプライヤーと協働しサステナビリティの改善に積極的に取り組んでいきたいと思います。
迪爱生合成树脂(中山)有限公司 購買部担当 周玉芳
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