取引先とDIC ~持続可能な調達
サプライチェーンにおける社会的責任を果たす調達の推進
主な取り組みの目標と実績
持続可能な調達の推進
年度 | 目標 | 実績 | 評価 |
---|---|---|---|
2024 | 中長期的な視点での持続可能な調達への取り組みとして、取引先のCO₂排出量削減目標の調査および削減の啓発、原料のCO₂排出量の調査、バイオ原料・リサイクル原料の探索等を推進する |
|
★★ |
EcoVadis等を活用した日本および欧米における取引先のサステナビリティ調査を継続するとともに、中国・アジアパシフィック地域へ本格的に展開し、DICグループ全体での活動を推進する |
|
★★★ | |
― | ― | ― | |
2025 | 中長期的な視点での持続可能な調達への取り組みとして、取引先のCO₂排出量削減に向けた啓発活動、主要原料のCO₂排出量データの調査を実施する | ― | ― |
中長期的な視点での持続可能な調達への取り組みとして、マスバランス方式バイオ原料、ケミカルリサイクル原料も含めたバイオ原料・リサイクル原料の探索等を推進する | |||
EcoVadis等を活用した取引先のサステナビリティ調査をグローバルで継続するとともに、中国・アジアパシフィック地域においても改善活動を実施する | ― | ― | |
サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスをEcoVadis等の活用を通じて推進するまた、社内および取引先に人権尊重の啓発を行うとともに、人権懸念原料の採用歯止めの仕組みを実行・定着させる | ― | ― |
- 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
[ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力
持続可能な調達の基本的な考え方
DICグループは、法令・社会規範の遵守、環境配慮、人権の尊重をはじめとした、「持続可能な調達」を実現するための多様な課題についての取り組みが社会の要請として高まっていることを踏まえ、「DICグループ購買基本方針」を制定し、グローバルに取り組みを推進しています。また、この方針に基づき「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」を定め、取引先に対しても持続可能な調達のための各活動を要請するとともに活動状況の調査や啓発活動を行い、サプライチェーン全体でのサステナビリティ活動を推進しています。
DICグループ購買基本方針
- 公正・透明な取引
DICグループは、従来の商習慣にとらわれることなく、グローバルな見地から国内外の取引先に対して、公正で開かれた購買を行います。 - 適正な購買と信頼関係の構築
DICグループは、国内外の関連法規・社会規範を遵守し、適正な品質・価格を追求して取引先と良きパートナーとしての安定的な相互信頼関係を構築し、共存共栄を図ります。 - 環境・安全への適合
DICグループは、模範的な企業市民として、環境・安全・健康・品質に責任を持ち、社会の変化を常に意識し、地球環境に配慮した購買を実践します。 - 新たな価値創造への挑戦
DICグループは、社会が求める新たな価値に高いレベルで応えるために、価値の創造を共有できる取引先と積極的に挑戦し、共に持続的な発展を目指します。
DICグループサステナビリティ調達ガイドライン
- 法令・社会規範の遵守と健全な事業経営の推進
- 人権の尊重及び労働環境の整備
- 安全衛生の確保
- 環境への配慮
- 情報セキュリティ対策
- 適正な品質・安全性及び技術の向上
- 安定供給と変化に対する柔軟な対応
- サステナビリティの推進と持続可能な調達の取り組み

取引先のサステナビリティ評価および改善活動
DICグループは「EcoVadis」および「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック」(以下「ガイドブック」)を併用して取引先のサステナビリティ活動を評価しています。これらいずれかの調査手法を用いて2024年度までにグループ全体で原料購買金額の78%超を占める取引先に対して調査を完了しており、評価結果に応じて改善の働きかけを実施しています。また評価⇒改善のPDCAサイクルを定期的に回すことで、当社サプライチェーンにおけるサステナビリティの底上げを推進しています。
取引先評価活動におけるPDCAサイクル

EcoVadis
EcoVadisは、サステナビリティ活動推進のための世界的な評価プラットフォームです。専門のアナリストがエビデンスに基づいて評価を行うため、取引先のサステナビリティ活動について客観性・信頼性の高い評価結果を得ることができます。2023年度からはDICグループ全体でグローバルに活用を進めており、評価結果を取引先と共有することでサステナビリティの向上に取り組んでいます。なお当グループ各拠点地域におけるEcoVadis平均点はEcoVadis社による全受審企業の平均点と比較して高い値となっています。またサプライヤーのリスク評価ツールである EcoVadisIQ Plus も導入し、高リスクサプライヤーのスクリーニングに活用しています。
当グループ各拠点地域における取引先のEcoVadis 平均スコア

DICグループサステナビリティ調達ガイドブック
ガイドブックでは「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」を取引先への要請事項として周知するとともに、付属の調査票でサステナビリティ活動状況に関するアンケート調査を実施しています。評価結果は回答企業のすべてにフィードバックしており、必要に応じて訪問調査等のフォローアップを実施して取引先のサステナビリティ向上を推進しています。さらにガイドブックに含まれる「DICグループグリーン調達ガイドライン」では化学物質管理の徹底・関連法規制の遵守・環境負荷低減の推進を各製造業者に求めています。また調査票による確認を適宜行い、製造業者の対応状況の把握および必要なフォローを実施しています。
各地域の取り組み状況
・日本
EcoVadisおよびガイドブックを併用して2024年度時点で原料購買金額の90%超を占めるサプライヤーの評価を完了しており、さらに取引先が商社の場合には必要に応じて製造業者にも評価を実施しています。さらに評価結果をもとにした取引先への改善活動として、特に基準点に達しなかった取引先に対しては面談を通じて改善を働きかけています(2024年度以降6社に対して面談実施)。また、追加の訪問調査をこれまでに102社に対して実施しました。
・中国・アジアパシフィック地域
2024年度から主要サプライヤーに対してEcoVadisおよびガイドブックを併用した調査を開始しました。2025年度は調査を継続するとともに収集した評価結果をもとに取引先への個別の改善活動を開始する計画です。
・欧米地域
Sun Chemical社(米国、以下「サンケミカル社」)では2020年度よりEcoVadisを使用したサステナビリティ活動の評価・推進活動を実施しており、原料購買金額の80%超の取引先の評価を完了した上で現在も調査を継続しています。またEcoVadis IQ Plusによるスクリーニング機能も活用し、今後はより広範囲のサプライヤーのリスク評価を実施していく計画です。
原料購買金額ベースでの調査カバー率※(グローバル)

サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの推進
DICグループではサプライチェーンにおける人権尊重を重要な課題ととらえ、取引先と連携して取り組みを進めています。
取引先に対する活動
DICグループは「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」により、取引先に対して従業員の機会均等、強制労働等の禁止、ハラスメントの防止、適切な賃金の提供、適正な労働時間の管理、従業員の結社の自由、団体交渉の権利の尊重等を要請しています。また前述のサステナビリティ評価活動を通じて状況把握および改善啓発を実施しています。
人権懸念原料の調達防止策の実施
日本ではサプライチェーンにおける人権尊重の重要性を購買・技術部門に対して社内教育するとともに、製品開発段階から使用原料における人権侵害懸念を確認するためのチェックポイントを設けています。
またアジア地域のDICグループでは、取引先に対して「DICグループの人権に関する方針」の確認と実行推進、並びに人権確認書への署名・提出をレターにて要請しています。
責任ある鉱物調達
DICグループは「責任ある鉱物調達に対する基本的な考え方」を示し、適切な鉱物調達のための各種調査等を実施しています。
関連リンク
原料における環境負荷低減に向けた取り組み
DICグループは、中長期的な視点で原料調達における環境負荷低減への取り組みを推進しています。
原料のCO₂排出量削減の推進
DICグループは、SBT※に認定された気候変動リスク低減のためのScope3関連目標を達成するため、取引先と連携し購買原料のCO₂排出量削減を推進しています。その一環としてこれまでに日本における購買金額の約90%を占める取引先に対し、CO₂排出量削減についての中長期目標の設定状況を確認するとともに、本取り組みの周知・啓発を実施しました。
また、社会・顧客の要請に対応し製品カーボンフットプリント(製品のライフサイクルを通したCO₂の排出量)を算出するため、購買原料のCO₂排出量調査にも取り組んでいます。今後も業界動向等を踏まえながら調査を継続し、製品カーボンフットプリントの算出およびその削減に努めていきます。
- SBTの詳細は「気候変動」を参照ください。
バイオ原料およびリサイクル原料の導入推進
DICグループは環境負荷低減のため植物由来バイオ原料に加え、マスバランス方式バイオ原料、ケミカルリサイクル原料等の導入を推進しています。グローバルなサプライチェーンを活かして原料調査を行い、技術部門と情報共有することで製品設計の見直しにつなげます。
原料調達における法令遵守・安全管理
DICグループでは新規取引原料について、各種法規制への適合や安全性、その他持続可能な調達に関する事項に問題がないことを事前に確認しています。例えば日本では原料登録時に「DIC原材料調査票」※1、「SDS(Safety Data Sheet)」、「chemSHERPA」※2、およびCMRTの提出を要請し、多角的な調査を実施しています。
- 原料の各成分の基本情報や法規制適合状況を確認するための調査票。
- 化学物質の情報をサプライチェーン全体で適正に管理し伝達するための情報伝達スキーム。
社内体制および社内教育
社内体制
DIC購買部にはサプライチェーンにおけるサステナビリティ活動専門のチームが組織されておりKPIを定めて活動しています。またグローバルでの活動については各拠点との定期的なミーティング等を通じて情報共有および連携を取っており、DICグループ全体として持続可能な調達に向けた取り組みを強力に推進しています。これらの活動の結果、EcoVadisの「持続可能な資材調達」分野ではDICグループとして80点(2024年度)の高評価を受けています。
社内教育
持続可能な調達に関する社内購買担当者向けの教育(転入時・入社時・その他適時)を通じて社内の理解促進に努めており、DIC購買部では部員の100%に対して実施済みとなっています。また前述のサプライチェーンにおける人権尊重に関するe-ラーニング等、全社規模での社内教育も推進しています。
関連リンク