デジタルトランスフォーメーション(DX)
ビジネスモデルと業務プロセスの変革ドライバー
主な取り組みの目標と実績
業務プロセス革新・ビジネスモデル変革
2023年度 目標 | 増加する複数の事業/機能部門をまたぐDX施策の確実な実現 |
---|---|
2023年度 実績 | 以下の事業部門をまたいだDX施策の実行と定着を進めた
|
評価 | ★★ |
2024年度 目標 | 効果の確認・検証を行うプロセスやガイドラインの構築と、事業部門と連携した取り組みの優先順位づけと遂行 |
2023年度 目標 | ビジネスモデル変革に合わせたデジタル施策の検討 |
---|---|
2023年度 実績 | デジタルマーケティング、スマートファクトリー、製品開発でのMI※・AIの活用、プラスチックのリサイクルプロセスの実現など、幅広く取り組みを進めた |
評価 | ★★★ |
2024年度 目標 | 「DIC Vision 2030」の実現に向けたビジネスモデルの変革に必要なデジタル施策の継続検討と実施 |
人材の育成
2023年度 目標 | 人的リソース・スキル・知見の面でのDX推進体制のさらなる強化 |
---|---|
2023年度 実績 | 各部門でのデータ利活用人材育成の他、2022年度に引き続きミドル~若手層がデジタル活用施策をリードしていくことを目指す実践的な研修を実施した。全社員向けのデジタルリテラシー向上施策との相乗効果発揮を見込む |
評価 | ★★★ |
2024年度 目標 | データドリブン経営・データドリブンオペレーションの必要性・重要性のさらなる浸透(企業文化の醸成と定着)とデジタル人材育成の継続・強化 |
- 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
[ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力
- MI:“Materials Informatics(マテリアルズ・インフォマティクス)”の略で、統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により大量のデータから新素材を探索する取り組み。
基本方針
DICグループは、デジタル技術とデータの活用による、顧客や取引先などのステークホルダーへの新たな付加価値の提供と、企業体質・競争力の強化を目指してDXを推進していきます。マーケット※、生産、技術、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の4領域をはじめ全社の業務領域において、長期経営計画「DIC Vision 2030」で描く成長戦略を加速するための施策を遂行していきます。
また、DX推進のために必要なインフラとして、次世代デジタル統合プラットフォームの実現や人材の確保・育成にも取り組みます。
- マーケット:営業およびマーケティング機能を指す。
推進体制
DICのIT戦略部門の情報システム部とDX推進部が、IT・DXの垣根なく、短期・中長期におけるデジタル技術とデータを活用したプロセス最適化・働き方改革・ビジネスモデル革新の実現を推進・支援しています。
各事業部門・機能組織が主導して進めるDX施策の増加が見込まれていることから、IT戦略部門では、全社最適視点で推進できるよう、各施策の実行支援および実行後の運用モニタリングを実施しています。また、推進にあたってのガイドライン策定やマネジメント体制構築など、全社ITガバナンスの枠組み整備に取り組んでいます。
マーケット
DICはDXにより、高度な顧客体験の創出を通じたDICブランド力の向上と、ビジネスモデル変革の実現を目指しています。
これまで各製品部門が独自に抱えていた顧客ニーズなどの情報を、デジタル化により部門の垣根を超えて共有し、顧客視点での多彩な製品やソリューションの提案を実現することで、顧客体験の向上を図っています。
また、デジタルマーケティングを用いたチャネル拡大により、これまでDICグループの製品に馴染みのなかった顧客に対しても、様々な提案を届け、新たな商談を生み出しています。
2024年度はデジタルマーケティングのより効果的な活用を推進し、新たな顧客体験を提供していきます。
生産
生産部門では、これまでに培った知見を基に、DICグループ独自のバッチ反応※1を中心とした方式に適応したAI技術の開発を進めています。その一端として、2023年度、化学反応特有の複雑な動きに対しても高精度なモデルが作れるAIエンジンの特許を国内で2件取得しており、今後もこれらの中核技術を応用しPI※2分野への適用を進めることで、安全・品質・環境のすべてにおいて高い信頼性と生産性を実現します。併せて、これら独自のAI技術と各製品の要求レベルに適合した各種デジタルツールを適切に導入することで、DICグループ独自のスマートファクトリーを低コストで実現すべく取り組みを進めます。
- バッチ反応:すべての原料などを反応釜に投入し、物質の反応がすべて終了した後に生成物を取り出す手法。
- PI(プロセス・インフォマティクス):「従来からの実験科学、理論科学、計算科学と、近年進展の著しいデータ科学を統合的・融合的に活用することにより、目的材料の合成プロセスを効率的かつ統合的に探索する方法」と定義。
技術
技術部門では、AI・MIを駆使した計算科学・データ科学へのウエイトシフトを進めることで新しい価値・新製品の創出を加速していきます。2021年に設立したAI専門組織データサイエンスセンター(DSC)を通じて、新製品の開発期間の半減と重要開発テーマ数の倍増を目指しています。2023年度は技術テーマの約6割がDSCとの連携テーマとなりました。AI・MIによる性能予測のみならず、実験条件設定にAIを活用することで実験工数の削減に成功しました。2024年度はAI・MI活用をより推進するためにデータの創出・蓄積の仕組み作りとAIの適用領域拡大を推進していきます。
SCM
サプライチェーン上のモノと情報の流れを可視化し、地域・事業・組織をまたいだサプライチェーン全体を最適化するサプライチェーン改革を進めています。
DICグループ全体で自動連携可能なデジタル技術を活用し、最新の需要情報に基づく計画業務をオンラインでリアルタイムに行う「デジタルSCMプラットフォーム」を構築し、2023年度はカラーマテリアルおよびパフォーマンスマテリアル事業で本格運用を開始しました。
今後も、運用地域・事業の拡大並びに定着化を進め、サプライチェーン改革の実現を目指します。
基幹業務システム刷新とデジタル統合基盤整備
DICグループでは2024年度に基幹業務システムの刷新を予定しています。本取り組みでは10年後も柔軟・迅速に進化を続けられるグローバルでのデジタル基盤とその運営体制の構築を行ってきました。デジタル技術とデータを駆使した次世代デジタル統合プラットフォームを確立し、ビジネスと業務のあらゆる環境変化・テクノロジーの進化へ適応していきます。
デジタル人材確保・育成
ビジネスにおける課題解決や業務改革実現のために、デジタル技術やデータを駆使して分析・判断・実行を行うための土壌作りに注力しています。
社内全般にわたるデータ利活用人材育成の他、事業戦略と現場課題の双方を理解しデジタル活用施策をリードできるミドル~若手層の育成を目指す実践的な研修も実施し、全社のデジタルリテラシー向上を目指しています。
また、デジタルを駆使したビジネス施策を迅速に実行するための体制強化の一環として、IT・DX人材の新卒・キャリア採用を積極的に進めています。
経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定
DX(デジタルトランスフォーメーション)認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、経済産業省が定めた「デジタルガバナンス・コード※」に対応し、DX推進の準備が整っている企業を国が認定する制度です。
当社は2022年に初めて「DX認定事業者」の認定を取得し、更新審査を経て2026年9月末までの適用が認められました。
今回の認定更新では、「デジタルガバナンス・コード2.0」の基本的事項である「経営ビジョン・ビジネスモデル」、「戦略」、「成果と重要な成果指標」、「ガバナンスシステム」への対応が審査されました。
- 経済産業省は「企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応」を、デジタルガバナンス・コードと定めました。2020年11月に策定されたのち、2022年9月に「デジタルガバナンス・コード2.0」に改訂され、2024年9月には「デジタルガバナンス・コード3.0」へと改訂されています。このたびの当社の認定更新は「デジタルガバナンス・コード2.0」を基準として審査されたものです。2024年12月の認定より、新基準が適用されます。
TOPICS
デジタルマーケティング活動
デジタル技術を活用した複数の切り口でのマーケティングが、これまで直接的な接点がなかった多数の新規顧客との商談につながっています。その過程で、どの製品特性が顧客ニーズに訴求できたかを定量的に分析できるというデジタルならではの成果も得ています。また、既存顧客に対しても、デジタルマーケティングによるタイムリーな情報提供を行うことで、顧客関係の維持・向上に貢献しています。
2023年度は部署の垣根を超えて顧客との接点を強化する、「スマートリビングonline展示会」をデジタル空間のみで開催しました。この展示会は、「イノベーション」と「サステナブル」の2つのカテゴリーに分類した顧客ニーズを起点にDIC の製品を紹介するもので、5,000人以上の方が来場され、トータルで1,000件以上の資料閲覧がありました。複数部署の製品資料をダウンロードした来場者も多く、「スマートリビング」というテーマでの開催が、単独の製品を超えたDICの多彩な製品ラインアップの魅力を伝えることにつながりました。
今後もデジタルマーケティング活動をさらに進化させ、顧客との関係を深めていきます。
TOPICS
デジタルマーケティング活動
Salesforceの国内導入から4年が経ち、各部署でのデジタルマーケティング活動が定着し始めました。営業起点でのデジタルマーケティング活動にとりかかる段階から、各部署が主体的にその活動を定量的に分析し次のアクションを決定する段階に進んでいます。そして活動の定着化に伴い、各部署での組織体制づくりも進んでいます。
また、昨年と比較してオフラインでの活動が増えたことで、展示会にデジタルマーケティングを取り入れた「ハイブリッド型」の活動も新たに実施されました。例えば、リードの獲得を目的とした展示会出展では、メールマーケティングを展示会のオペレーションに組み込むことで、名刺獲得数の増加・ターゲットとしていた顧客との接点創出に成功しています。
デジタルマーケティングはパソコンの中で完結する活動ではありません。これまで営業や技術が培ってきた知識や経験がさらなる顧客価値創出につながるよう、全社視点での価値訴求の最大化を行っていきます。
TOPICS
デジタルマーケティングの推進
SalesforceやMA※を導入して3年、2021年度からコンテンツ作成支援のワークショップも始めたことで、社内浸透が加速しています。ワークショップでは、クライアントとその先の顧客に対して「DICが提供可能なソリューションは何か?」から考え、従来の製品起点プラス顧客価値視点でウェブサイトを作成しています。そのページにデジタル手段を用いて、新規の引き合い獲得活動を開始しました。参加部署は、通常の営業活動ではつながらない顧客と次々に接点ができ成果が出始めたことで手応えを実感しています。
デジタルのメリットは、活動の結果を数字でタイムリーに把握できることです。可視化によって、事業部門の担当者は数字を読み解きながら、「次は具体的に何ができるのか?」や、行った施策に対して「どうフォローアップするのか?」などを自発的に考え始めるようになりました。
マーケティングを起点とした考え方を社内に広く展開することで、様々な製品群の価値訴求の最大化を行っていきます。
- MA:“Marketing Automation(マーケティングオートメーション)”の略で、新規顧客の獲得や見込み顧客の育成なども含めたマーケティング施策をサポートするためのツールやソフトウェア。