ダイバーシティ

1. トップメッセージ

DIC株式会社 代表取締役 社長執行役員 池田 尚志

DIC株式会社
代表取締役 社長執行役員
池田 尚志

変化に対応できる多様性を

世界情勢は、地球環境・経済・政治のさまざまな分野において、変化の速度が加速しています。1年前には当たり前であった事がそうではなくなっている状況です。私たちは、その変化を素早く受け止め、そこに対応する策を打ち出していかねばなりません。
そのためには、従来のやり方や、1つの発想のみでは対応する事はできません。発想の多様性が必須であり、それを受容できる風土があることが必要となってきます。

DICの行動指針であるThe DIC Wayでは、その1つに「協業」を挙げています。これは「社員一人ひとりの個性や多様性を尊重し、グループ総力を結集し、社外関係者とも協力し、知恵を出し合いながらより良いものを生み出していく」ことと定義しています。自分には無い良い考えや、異なる発想に出会うで事もあるでしょう。その多様な発想、考えが大きな力になります。

表層的多様性に関わりなく、深層的多様性が発揮できる企業風土へ

DIC株式会社 代表取締役 社長執行役員 池田 尚志

DIC株式会社
代表取締役 社長執行役員
池田 尚志

属性などの「人権保護」の対象となる「表層的多様性」と、企業価値を生み出すベースとなる考え方や価値観などの「深層的多様性」は、切り離して捉える事はできません。
多様な考えや価値観を出せる人材が、女性社員であったり、外国人社員であったり、育休取得社員という属性にある時、その属性のみで排除される事がないようにする事が、D&I推進活動の基本であると考えています。
ダイバーシティ活動が目指す多様性は、表層的な多様性が差別となることなく、深層的な多様性を発揮でき、それが活かされ、新しい価値を生み出していく事ができる企業となっていくことです。

しかし、日本では、なかなかダイバーシティ&インクルージョンが根付きません。
理由として考えられるのは、旧来の習慣がバイアスとなっていたり、また、日本の文化的・社会的背景としての「一体感」や「均一性」を重視する傾向にある事が影響をして、異なる価値観や背景を持つ人々の受け入れが難しくなっているのかもしれません。

男性の育休取得についても、共働きが一般化している現代では、子育ても共に行なわなければ、たちゆかなくなってきており、男性育休を取得することが特別な事ではなくなってきています。
環境や状況が変われば、やり方を変える必要があるのです。従来のやり方を固持したまま、新たな環境を乗り越える事はできません。業務の平準化、チーム体制での営業、等、考えられる事はあるはずです。

D&Iは目的ではなく手段

ダイバーシティ&インクルージョン活動は、それ自体が目的なのではなく、手段です。現在のような、先行きが不透明な時代には、多様な属性の社員の皆様がもつ知と経験からの課題発見や課題を解決する発想力が、突破口をひらいていくこととなります。
目まぐるしい変化の真っ只中にいる私たちには、多様性が必要です。そして、その変化に対応できる、突破口をひらいていく事が必要なのです。

私たちは、多様性の力を伸ばすダイバーシティ&インクルージョン活動を推進していきます。それは、性別、国籍、子育て中などの働く環境、等の属性や立ち位置の違いを、1人1人の考えや発想の多様性の力に変えていくために必要であると考えるからです。
変化を素早く捉えて先手を打つ、そして能動的・主体的な行動で社会の未来を実現する事に多様な発想で臨んでいけるDICであり続けたいと思います。

以上

2. ダイバーシティ活動の基本的な考え方

DICの経営理念・行動指針に基づき、DICグループ世界60以上の国と地域においてDEI活動を推進してまいります。

DICグループは、DEI&Bが実現できている姿を目指してまいります。

3. 推進体制

ダイバーシティ担当執行役員のもと、クロスファンクショナルチーム(サステナビリティ推進部、総務人事部、人事戦略部、コーポレートコミュニケーション部)にて、DEI&Bを実現する企業文化の醸成を目指し、多様な人材の活躍支援、子育てと業務の両立支援など、DICで生き生きと活躍できる為の各種施策に取り組んでいます。ダイバーシティ推進活動は、社長直轄のプロジェクトであるWSR(Work Style Revolution)委員会にて、定期的な報告を行い、社長をはじめ役員からの意見を反映した推進活動に改良しながら推進しています。

4. ダイバーシティKPI

多様な人材が働きがいをもって活動できるDICである事の指標として、多様性を示す各事項について、KPIを設定しています。

ダイバーシティKPI

当社は、2030年に向けての長期経営計画DIC Vision2030を策定しています。その中で、「人的資本経営の強化」を基本戦略の1つに掲げ、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)について、『競争優位の源泉としてのダイバーシティ(D)、多様性を強みに転換するインクルージョン(I)』を方針として、D&Iを推進する活動に取り組んでいます。

2030年に向けてのKPIを設定においては、取締役、監査役でのマイノイティ比率は、25年目標の20%から30%に引き上げて設定しました。政府はの女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)による東証プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にする目標を設けることを受けて設定しています。また、執行役員に占めるマイノリティ比率も、25年目標の20%から30%に引き上げ、このうち女性の比率は5%を目指します。

女性管理職比率は、順調に目標を達成しており、24年時点で25年(26年1月)目標の8%を達成しました。30年には、12%を目標に掲げ、女性社員比率と女性管理職比率を近づけていく事に努めてまいります。
外国人の採用比率、女性社員の採用比率、中途採用の女性比率においては、現状の比率を下回らない事を目標に進めてまいります。
男性の育休取得率は100%を目指し、共に育て共に働く事ができる企業としての環境を整えてまいります。

ダイバーシティKPI

5. 多様な人材の活躍

【1】女性社員の活躍推進の取組

DIC単体での管理職の女性比率は、2025年1月には8.6%となり、2026年1月の目標KPI8.0%を上回る結果となりました。しかし、社員の女性比率21%からみると、管理職比率のジェンダーギャップがある状況です。
意思決定層にて多様な意見が反映されることによる、新たな価値創造の促進に向けて、女性社員のキャリアの形成支援に取り組んでいます。登用される中核人材の多様性を促進するために、女性社員の外部研修派遣、メンター制度をじはじめとする様々な施策展開しています。

女性管理職比率の推移(2006年~2025年)

実施施策
  • 社外交流による視野拡大、新たな知見の習得の為、社外メンタープログラム、経産省研修、J-win等への参加
  • 管理職手前の女性社員に対して、これからの自身の働き方、人生を考えるマインドセット研修を内製研修で実施
  • 役員による、女性管理職へのメンター制度の実施
  • 役員メンター制度を終了した女性管理職による、管理職手前の女性社員へのメンター制度の実施

TOPICS

管理職一歩手前の女性社員を対象とした社内研修にて、1人1人が自分自身をプレゼンテーションしました

管理職一歩手前の女性社員を対象としたプログラムWLDP(Women's Leadership Development Program)を実施しています。リーダーシップの捉え方や、自身の生き方を含めたキャリアについて、改めて見直し考える機会となる4か月間のプログラムです。
研修プログラムの最終回では、参加者1人1人が自分自身についてのプレゼンテーションを行います。今後の働き方、生き方を含めたキャリアや、課題についてのプレゼンテーションでを行う事で、自身のキャリアについて改めて考えるきっかけとなっています。
研修に参加するメンバーの所属部署は様々であり、普段の業務では接する事のない、部署を超えた横の繋がりを作る一助ともなっています。

【2】外国人社員への支援

DICでは、グローバルな視点や高い専門性、語学力を有する人材の採用を積極的に進めています。日本の大学・大学院を卒業した外国人留学生や、海外の大学を卒業した日本人留学生、外国人学生、外国人キャリア人材など、多様なバックグラウンドを持つ人材を幅広く採用しています。
現在、DICでは68名の外国人社員がさまざまな職種で活躍しています。一人ひとりが自らの力を発揮できる職場環境を実現するため、2019年度より外国人社員の活躍推進に取り組んでいます。具体的には、外国人社員向けの相談窓口や専用ウェブサイトの新設、社内文書の英語化など、制度面・インフラ面の整備を進めています。さらに、2020年12月からは外国人社員を対象とした「外国人ネットワーク会議」を年2回開催し、2022年度からは新入外国人社員と配属部署を対象に異文化研修を実施するなど、人種や国籍を問わず、すべての社員が安心して活躍できる環境づくりを推進しています。

実施施策
  • 外国人社員を対象としたネットワーク会議の実施
  • 外国人社員同士でのランチ会の実施
  • 新入外国人社員の配属部署向けの異文化研修の実施
  • 外国人社員向けの相談窓口設置
  • 外国人社員向けウェブサイトの新設
  • 社内文書の英語化

TOPICS

DIC本社で外国人ネットワーク会議を年に2回開催しています

当社では、外国人社員同士の横のつながりを深め、安心して働ける環境づくりを進めることを目的に、年に2回「外国人ネットワーク会議」を開催しています。

この会議には、DICに所属する外国人社員が参加し、毎回、参加者の関心や課題に基づいてテーマを設定。キャリア形成、年金制度、人事制度のQ&A、職場での不安や課題共有、2on2ミーティングなど、幅広いテーマでディスカッションや情報交換を行っています。
来年度は、海外で活躍する駐在員を招き、現地での経験を交えた意見交換も予定しています。 こうしたネットワーク会議を通じて、外国人社員が感じる不安を解消し、互いに支え合いながら成長できる環境づくりを推進しています。

【3】業務と育児の両立支援

子供を育てながら働き、キャリアを積める企業である事を目指し、DICでは、育児に関する各種制度を整備しています。育児休業制度を利用する社員の復職率はほぼ100%となっており、男性育休の取得率も90%を超えています。また、復職時の研修や、子育てと業務の両立に悩む社員に対して、子供をもつ管理職社員との相談会開催などを実施し、1人で悩まないサポート体制をとっています。さらに、シッターの割引制度の導入により、シッターを利用しやすい環境を整えています。

実施施策
  • 産休/育休からの復職者を対象とした復職者研修
  • 子どものいる女性/男性社員を相談役とした、子育てと業務に関する相談会の開催
  • 男性育休取得者向け懇談会
  • 育休取得をした男性社員とその上司による経験談共有会

TOPICS

育休取得をした男性社員とその上司による経験談共有会にて社長とのディスカッションを実施しました

当社では、男性社員の育児休業取得を促進し、企業風土として定着させるための施策に力を入れています。その1つとして「男性育休経験談共有会」を実施しました。実際に育休を取得した男性社員とその上司が登壇し、育休の申し出から取得開始、育休取得中の業務体制の整え方に至るまで、当時のやり取りや工夫を振り返りました。実際の経験談を通じて、「自分の職場ならどう対応できるか」を具体的に考えるヒントを得られる場となりました。経験談共有会には、社長も参加し、登壇者とのディスカッションを通じて、男性の育休取得を支える職場づくりや、取得しやすい企業風土の重要性について意見を交わしました。本共有会の内容は、男性育休取得を後押しする取り組みとして、社内広報を通じて全社員に共有し、「育休を取りやすい」雰囲気づくりを進めています。

【4】LGBTQ+への取組

働き方が多様化している昨今、多様な人材がその能力を発揮して働き、新たな価値を生み出していく事のできる企業である事が必要です。多様な人材の活躍を目指すDICのダイバーシティ活動で、私たちは、外国人社員、女性社員の活躍、そして働き方の多様性を取り上げてきてきました。
LGBTQ+の社員が働きづらさを感じない環境への整備に向けて、2023年11月に、人権方針の改定をしました。【人権尊重の責任】の項目において、「人種、宗教、性別、肌の色、年齢、婚姻状況、性的指向」の文言を入れ、目で見える表層的多様性、外見では分からない深層的多様性、これらの全てを網羅した人権尊重に改定しています。
2024年6月に、LGBTQ+の相談窓口を設置し、ジェンダーに関わりなく働き易いDICである事への第一歩としています。

TOPICS

LGBTQへの理解促進を進めるためのeーラーニングを実施しました

LGBTQに関する、eーラーニングを国内の全従業員を対象に実施しました。
2024年のLGBTQ相談窓口の設置およびダイバーシティ担当のAlly宣言に続き、今年はe-ラニング実施とともに、従業員のAlly宣言を募り、多くの社員からの賛同を得られました。
また、LGBTQを象徴するレインボーフラッグカラーでラッピングされた自動販売機を日本橋本社の社員食堂フロアに設置しました。誰もが能力を発揮できる企業風土の醸成を目指し、今後も理解促進に取り組んでまいります。

6. 多様性理解の促進

表層的多様性、深層的多様性の理解を促進するためのプログラム実施、ダイバシティ担当役員からのメッセージを定期的に実施しています。アンコンシャスバイアスや、心理的安全性等のeーラーニングを実施するとともに、役員からのメッセージで多様性を受容する事について各種トピックスの情報をもとに発信をしています。また、深層的な多様性を理解するためのツールとして、強みの資質アセスメント(クリフトンストレングス®)を活用しています。同じ課題に対して、強みの資質によってアプローチの仕方が異なる事、等をお互いにしって、深層的な多様性を受容し、多様な意見をためらう事なく言える心理的安全性の高い組織、企業風土の構築を目指しています。

多様性理解を促進する実施施策
  • アンコンシャスバイアス eーラーニング
  • 心理的安全性 eーラーニング
  • LGBTQ+理解の eーラーニング
  • 男性育休に関する eーラーニング
  • 強みの資質アセスメント(クリフトンストレングス®)の受診と、強みの資質に関する研修、講義、面談

7. 外部機関からの評価

くるみん認定

DICは、1986年に化学業界で初めて育児休業制度を導入、2007年より「仕事と育児の両立支援」に取り組み、法定を上回る様々な制度を導入し、利用促進を図っています。2008年には、次世代育成支援対策を積極的に推進する企業として、厚生労働省から「2008年認定事業主」に認定されています。

くるみん認定

Equileap社による企業のジェンダー・ダイバーシティに関する取組の評価

2023年から新規に設定された「Morningstar Japan ex-REIT Gender Diversity Tilt Index」では、当社はジェンダー・ダイバーシティに関する取り組みに関し、2025年は5段階の中で「Group 2」に分類されており、高評価の企業として位置づけられています。

8. グローバルでのダイバーシティ

国内DICグループではダイバーシティの重要項目に関する数値目 標を定め、その浸透を進めています。役員数や社員数に関する数値 目標に加え、ワークライフバランスに関する数値目標である男性育 休取得率等を設定しており、女性の活躍に関する情報として男女の 賃金差異の数値目標についても公表を検討しています。中には既に 2025年目標を達成した項目もあり、ダイバーシティ活動が着々と進 んでいる状況です。これらの活動を社外に発信するため、2024年にダイバーシティの社外ウェブサイトを開設し、社長トップメッセージ をはじめとしたダイバーシティの取り組みを掲載しました。多様性を 取り入れること(Inclusion)の重要性、必要性を意識してもらうよう 発信し続けるとともに、多様性を受け入れる土台となる「心理的安 全性」および「アンコンシャスバイアス」への理解促進や、社員一 人ひとりが働きがいを持っていきいきと働く「Well-being」な状態 を維持できる風土作りに向け、前進していきます。

地域別社員数

地域別ジェンダー

地域別管理職数

  • 性別「その他」の管理職人数は2024年12月末日時点で1です。
  • 2024年12月末日時点。本データは有価証券報告書の一部グループ会社を含まないため有価証券報告書の人数とは一致しません。

9. 行動計画

多様性が受容され、企業価値が以下の施策を実施してまいります。