労働安全衛生・保安防災

主な取り組みの目標と実績

労働安全衛生の確保

目標の範囲 グローバル
2023年度 目標 国内DICグループ:2.10
中国地域:1.00
AP地域:1.00
サンケミカルグループ:8.00
(グローバル:4.65)
2023年度 実績 国内DICグループ:2.09
中国地域:2.06
AP地域:1.11
サンケミカルグループ:4.53
(グローバル:3.00)
評価 ★★
2024年度 目標 国内DICグループ:1.90
中国地域:1.00
AP地域:1.00
サンケミカルグループ:8.00
(グローバル:4.47)

保安防災の確保

目標の範囲 グローバル
2023年度 目標 重大事故ゼロ
プロセス事故発生率:0.110
(直近の平均実績を維持)
2023年度 実績 プロセス事故発生率:0.124
評価
2024年度 目標 重大事故ゼロ
プロセス事故発生率:0.110
(直近の平均実績を維持)
  • 上表での数値は、総労働災害度数率を示す。100万労働時間当たりの労働災害死傷者数(死亡災害+休業災害+不休業災害)。TRIRともいう。
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

方針

基本的な考え方

DICグループは、安全操業最優先を経営の基本とし、無事故無災害の達成および労働安全衛生水準の向上を追求します。

安全操業は、DICグループの持続可能な成長を支える事業の根幹であり、レスポンシブル・ケア活動における重要な基盤の一つです。その実現に向けて、DICグループ全体・従業員一人ひとりが「安全第一」を共通認識として、労働安全衛生・保安防災に取り組んでいます。DICグループの生産領域は多岐にわたり、化学反応を伴う工程以外にも危険物・有害物を扱う工程や回転体機器を扱う工程があります。ひとたび重大事故を起こせば、近隣住民の方々をはじめ社会に多大な影響を及ぼし、協力会社を含む従業員に健康被害をもたらす危険性があります。こうした事態を起こさないようDICグループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの認証取得を推奨し、リスクアセスメントに基づき「職場のリスク低減、安全基本動作の徹底、安全感度の高い人材育成」を重点課題に位置づけ、安全基盤の強化や安全文化の醸成に向けたグループ全体の保安力向上に努めています。

日本、中国、AP、欧米版の安全操業の啓発ポスター
日本、中国、AP、欧米版の安全操業の啓発ポスター

推進体制

サステナビリティ委員長(社長執行役員)を最高責任者とし、RC部が、基本的に各地域の統括会社を経由して各事業所とともに安全衛生活動を推進しています。
国内DICグループの場合、RC部が各事業所の安全環境担当者と定期的に会議を開催し、重点課題および目標の達成状況を確認し進捗を管理しています。
また、海外DICグループにおいては、RC部と地域統括会社が連携して地域ごとに目標を設定しています。地域統括会社の指導のもと、各事業所の安全環境担当者がリスクアセスメント、事故災害の分析と改善策の推進に取り組み、労働安全衛生の持続的なレベルアップを図っています。(詳細は、方針・目標・体制を参照

2023年度の主な活動と実績

1. DICグループの実績

DICグループでは、労働災害について各地域で目標を設定し、ゼロ災害に向けた取り組みを推進しています。一般的に災害の指標としては「度数率(休業災害度数率)」があげられます。これは100万労働時間当たりの死亡災害者数と休業災害者数の和です。
さらに厳しい指標として、DICグループでは「総労働災害度数率 (TRIR: Total Recordable Injury Rate)」を用いています。これは100万労働時間当たりの労働災害死傷者数(死亡災害+休業災害+不休業災害)であり、日本、中国、AP、Sun Chemical社(米国、以下「サンケミカル社」)の各地域で目標を設定しています。
統計の対象となる従業員の範囲は、工場および研究所における直接雇用の社員(正社員、嘱託社員、パート社員)および派遣社員です。場内の請負業者や外部の請負業者や工事業者は除いています。
DICグループの実績は、TRIRの目標値が4.65に対し、実績は3.00と、目標を達成しました。死亡災害者数はゼロ、休業災害者数は76人、不休業災害者数は56人でした。今後も引き続き、事故災害情報の共有化や安全基本動作の徹底、リスクアセスメント、事故災害の分析と対策、安全衛生に関する教育により、災害者数の低減を図っていきます(詳細は後述)。

2019~2021年度のTRIRと労働災害死傷者数

2. 国内DICグループの実績

2023年の実績は、国内DICグループのTRIR目標値2.10に対し、実績は2.09であり、目標を達成しました。前年のTRIRは2.23であり、前年比で改善しました。死亡災害者数はゼロ、休業災害者数は9人、不休業災害者数は10人でした。災害者数における「傷害」と「疾病・体調不良」の内訳を右記の表に示しました。

国内DICグループ

傷害 疾病・体調不良 合計
死亡災害者数 0 0 0
休業災害者数 9 0 9
不休業災害者数 9 1 10
合計 18 1 19

3. 海外DICグループの実績

2023年度の実績は、TRIRでは、サンケミカルグループが目標8.00に対して4.53となり目標を達成。一方、中国地域、AP地域ではともに目標1.00に対して前者で2.06、後者で1.11と未達でした。海外DICグループ合計で、死亡災害者数はゼロ、休業災害者数は66人、不休業災害者数は46人でした(具体的な数値は、データ集を参照)。

TOPICS

DICプラスチック埼玉工場が日化協安全表彰にかかる「安全優秀賞」を受賞

2023年5月31日、パレスホテル東京で開催された一般社団法人日本化学工業協会(日化協)の理事会においてDICプラスチック埼玉工場が2023年度日化協安全表彰にかかる「安全優秀賞」を受賞しました。
本賞は、化学業界における自主的な保安・安全衛生の推進の一環として安全の模範となる事業所を表彰する制度です。2023年度は第47回を迎え、2022年12月までの実績に基づく募集を行い、全国の優れた成績を収める事業所の中から4事業所が表彰されました。
DICプラスチック埼玉工場が安全活動に真摯に取り組み、安全文化を醸成することで無災害16年9ヶ月を成し遂げたことが高く評価され、今回の受賞に至りました。
今後もDICグループでは、安全操業を最優先に取り組んでいきます。

労働災害防止に向けた安全基盤の整備

1. 労働安全衛生データ「安全月報」

DICグループは様々な国で事業を展開しており、国や地域ごとに異なる労働安全法規制を遵守しています。一方で、DICグループ全体の活動をレベルアップするには、DICグループ共通の「基準や指標(モノサシ)」を設定し、グローバルにおける安全活動のベクトルを合わせることが必要です。そこで、DICグループでは、グローバルで共通の指標を定め、各地域のデータを毎月集計することにより、DICグループ内で情報共有を図っています。具体的には、中国地域はDICチャイナ社、AP地域はDICアジアパシフィック社、欧米地域はサンケミカル社によりデータを集計し、RC部が集計・分析しています。これにより、DICグループ各社では、安全操業の度合いを客観的に比較・評価でき、国・地域ごとに精度の高い目標設定や改善プログラムの策定に役立てています。日本、中国地域、AP地域に関しては、2019年度より各事業所のデータを統合するITシステム「DIC ESHデータ収集システム(DECS)」で運用し、データ集計の効率化を図っています(詳細は、データ集を参照)。

労働安全に関する統計データ

・従業員数
・労働災害死傷者数
・休業日数
・総労働災害度数率
(TRIR)

・労働時間数
・火災爆発件数
・度数率

2. 事故災害分析とタイムリーな情報提供

DICグループでは、社内で発生した様々な事故や災害に対して、発生事業所と本社安全担当部署が速やかに連携を取り、原因を分析し、対策を実施しています。また、定期的に、本社安全担当部署と工場安全環境グループが原因の深掘りや有効な対策について議論し、そこで出た対策等を各事業所や各会社に水平展開することで、DICグループ全体の再発防止に努めています。同時に、これらの情報は、国内外のDICグループ各社に配信し、情報共有を図っています。国内DICグループでは、災害事例を「事故事例集」や「労働災害事例集」としてデータベース化し、安全教育の場で広く活用しています。

3. DIC安全基本動作

日本、中国、AP地域のDICグループでは、過去の様々な事故や災害をもとに、「安全確保のためのルールや行動規範」を定め、『安全基本動作』として発行しています。2019年に第5版を改訂し英語・中国語版も公開しています。

4. 安全衛生に関するリスクアセスメントの実施

DICグループでは、安全衛生に関する危険性や有害性を特定し、事故や労働災害の未然防止活動を行っています。
特に、国内DICグループでは、化学物質に起因するリスクをさらに低減させるため、リスクアセスメント手法を刷新し、従業員の化学物質による健康障害防止に取り組んでいます。
具体的には、評価手法も含めたDIC独自のリスクアセスメントガイドラインを2023年に刷新し、運用に関する教育を国内DICグループの生産工場の管理者に実施した後、労働安全衛生法で定める対象物質について危険性・有害性を評価し、リスク低減策の検討(取り扱い方法や設備の改善など)を実施しています。

5. 工場の安全と環境を守るe-ラーニング講座

労働安全衛生・保安防災のレベル向上を継続して図っていくには、社員一人ひとりが化学物質や製造プロセス、法規制などに関する幅広い知識を習得していく仕組みを構築することが重要です。その仕組みの一つとして、国内DICグループでは2016年度にインターネットを活用したe-ラーニング講座を導入しました。工場の操業に関わる重要な法令として「消防法」、「大気汚染防止法」、「高圧ガス保安法」などを受講科目に選定し、その後、法令だけでなく「静電気」も科目に追加しました。RC部員や各事業所の安全環境担当者、製造部門担当者の視点から、教材の有効性も確認しています。最大16講座あり、テストで力量を確認しています。2022年度からは、株式会社ラキールより安全衛生教育サービスを導入し、安全教育用の動画を配信しています。

ラキール社の安全教育動画キャラクター

ラキール社の安全教育動画キャラクター

6. 災害カレンダー

国内DICグループにおいては、過去に発生した事故災害を月次カレンダー形式でまとめ、社員全員が閲覧できる「災害カレンダー」を2022年から社内ポータルのトップ画面に設置しています。事故災害が発生した日に①発生工場名、②事故災害の種別(熱中症・薬傷等)、③被害程度(休業・不休業等)の情報が掲載され、利用者が気になる災害をクリックすると発生状況や対策をまとめた詳細なデータを閲覧することができます。月間の災害がまとめて表示されているため、各月の災害傾向を視覚的に把握することもできます。社員一人ひとりが、過去その日に起きた災害を確認することで、グループ全体の安全・防災の意識を高めています。

災害カレンダー

災害報告書の一例

TOPICS

従業員の「健康と安全」のための「健康安全プロジェクト」を企画

群馬工場では、2022年より継続して工場で働く仲間の「健康」を促す活動を展開しています。2023年度はキーワードを「転倒」から「健康」へとシフトして活動し、「健康安全プロジェクト」を立ち上げました。プロジェクトリーダーを筆頭に各グループが連携し、3つの活動を実施しました。
まず一つ目の活動として、「シセイカルテ」での診断です。6つのポージングをiPhoneで撮影。AIが判定し姿勢の歪みなどを点数づけ、自身の姿勢の将来像を3Dアバターにて紹介。その歪みを克服するための効果的な運動をYouTube動画にて紹介するなど、診断からケアまでの活動を展開しました。
2つ目は、食堂の業者(株式会社若菜)さんと、電子レンジで温める、簡単で体に良い料理作りのための「レンチンクッキング」を企画しました。2023年は、計6つの料理のレシピや料理風景などをデジタルサイネージ、群馬工場の専用ウェブサイト内で紹介しました。
最後は、「古武術介護」の提唱者、介護福祉士・理学療法士の岡田慎一郎先生をお招きし、「腰に負担をかけない身体の使い方」について、講演や実際の現場作業での一斗缶の持ち方などの実演をしていただきました。
今後もDICグループでは従業員の健康と安全を促す企画を考えていきます。

DICグラフィックス群馬工場および東京工場が「転倒予防」のイベントを開催

群馬工場は、関係会社や協力会社も巻き込み、「転倒予防プロジェクト」を立ち上げ、2022年に4つのイベントを開催しました。
第一弾では、転倒予防セミナーで理学療法士の先生が「寝てできる腰痛体操」や「座ってできる腰痛体操」などを紹介しました。第二弾は、転びの予防体力チェックとして、リスク評価セルフチェック(体力チェック)と自身の意識レベルを測定。体力チェックと意識チェックの差が大きい方は転倒リスクが高いため、注意するよう促しました。第三弾では、栄養士の先生より食事でロコモティブシンドローム(移動機能低下)予防のセミナーを開催。第四弾では、ファンクショナルトレーニングとして、株式会社日立物流(現ロジスティード株式会社)陸上部の方々をお招きし、正しい歩き方の姿勢、重心、意識、肩甲骨、ハムストリングなどの使い方や重要性について講義いただき、加えて同社で展開されている「つまづき防止体操」を伝授していただきました。
そして、東京工場も「転倒防止トレーニング」を開催しました。講師には、群馬工場と同じくニューイヤー駅伝をはじめ様々な競技会で活躍されている(株)日立物流(現ロジスティード(株))陸上部の皆さんをお招きしました。別府健至監督より、正しい歩き方について、姿勢、肩甲骨の使い方、脚の上げ方など実際に体を動かしながらご教授いただきました。また、当時現役でご活躍されていた上田健太選手のデモンストレーションでは、その美しい姿勢と軽やかな動きに参加者からは歓声が上がりました。
今後も、DICグループでは従業員の健康に効果的なプログラムを企画していきたいと考えています。

Management’s Commitment

転倒防止トレーニングでの様子

安全体感教育

日本、中国、AP地域のDICグループにおいて、安全体感教育を行っています。安全体感教育とは、危険を疑似体験することにより、危険に対する感受性を高めたり、危険敢行性(危険の受け入れやすさ)を低下させる教育プログラムです。2012年に国内DICグループで安全体感教育を開始したことを皮切りに中国、AP地域にも幅広く安全活動を展開してきました。こうした取り組みの結果、国内DICグループの度数率が以前のレベルから半減するなど、大きな効果として現れてきました。
DICグループの安全体感教育研修では、通常の生産活動において一般的に発生しやすいとされている動力機器への“はさまれ”や“巻き込まれ”、高所からの墜落・転落、カッターでの切創などの災害事例を、社員が疑似体験します。この体験を通じて、危険敢行性を低下させ、危険感受性を高めることで、潜在的な危険に対して「自ら考え、行動し、自分と仲間を守る」という意識変革を目指しています。

1. 国内DICグループ会社の取り組み

2014年に国内DICグループの教育施設として「埼玉安全体感研修センター」を開設し、新入社員教育や階層別教育プログラムで活用しています。そしてDICおよびDICグラフィックス株式会社では、新入社員教育カリキュラムに「安全体感教育」と「危険予知トレーニング(KYT)」を必須項目とし、経験の浅い従業員の被災率ゼロを目指しています。また、千葉・堺・北陸・東京・鹿島などの各工場では、独自の安全体感機器やカリキュラムを整え、安全文化の醸成を図っています。2015年には、移動巡回用として小型化した6種類の安全体感機器を、国内DICグループの各事業所に貸し出すようにしました。また、教育指導の担当講師を各事業所の複数の社員が担えるよう、RC部では「講師ライセンス制度」を設け、講師養成にも注力しています。

新入社員研修(埼玉工場)

新入社員研修(埼玉工場)

転倒災害の体感教育(埼玉安全体感研修センター)

転倒災害の体感教育(埼玉安全体感研修センター)

2. 海外DICグループ会社の取り組み

海外のDICグループでも、「安全体感機器」の導入を推進しています。中国地域では、南通迪爱生色料有限公司、迪爱生(广州)油墨有限公司、常州华日新材有限公司、迪愛禧佳龍油墨股份有限公司(台湾)に設置しています。また、AP地域ではDIC Compounds (Malaysia) Sdn. Bhd.(マレーシア)、PT. DIC Astra Chemicals(インドネシア)、Siam Chemical Industry Co., Ltd. (タイ)、DIC IndiaLimited, Noida工場(インド)に設置しています。これらの生産拠点では、周辺の関係会社の従業員向けにも安全体感講習の開催や講師の養成に取り組んでいます。

TOPICS

DIC APのグループ各社で初のSafety Dayを開催

国連・国際労働機関(ILO)が主導する世界労働安全衛生デー(4月28日)は、建設的な安全衛生文化を創造するために毎年世界中で広く啓蒙キャンペーンが行われています。この全世界的な取り組みへの参画として、DIC Asia Pacific(AP)では、2022年5月26日に初のSafety Dayを開催しAP地域の各社が一同に参加しました。2022年のテーマ「CARE for Safety」

  • Communication between our colleagues and learning from each other(同僚間のコミュニケーションと相互による学習)
  • Awareness of the environment and safety issues(環境と安全の課題の認識)
  • Responsibility of our actions and or in actions(私たちの行動および行動における責任)

APでは、「DIC環境、安全、健康―ゴールゼロ」の目標を設定し、全社員が協力して取り組みます。Safety Day 2022では、APのDICグループ各社各拠点で次のような行事を開催しました。

  • Safety Day-タウンホールミーティング(対話集会)生産統括本部長、DIC AP社長によるSafety Dayメッセージビデオの上映など
  • Safety Day-イベント・アクティビティゲーム、クイズ、コンペティション、表彰式、パフォーマンスなど、各社各拠点が企画
Management’s Commitment

Salefy Day 2022を開催

安全文化の醸成に向けた取り組み

1. 安全風土醸成分科会

国内DICグループでは「安全第一」を共通認識とするために、安全文化の醸成に取り組んできました。2011年度からは、DICとDICグラフィックス株式会社の工場安全担当者が参加する分科会を発足させ、方針・施策を議論し、当社のレスポンシブル・ケア活動に反映させています。

2. DIC安全誓いの日

国内DICグループでは、過去の重大災害や事故を繰り返さず、将来に向け各人が安全を誓う日として、毎年9月6日を「DIC安全誓いの日」と設定しています。当日は、各社員が自身の安全に対する決意をカードに記し、宣言します。

「安全基本動作」を輪読している様子(小牧工場)

「安全基本動作」を輪読している様子(小牧工場)

年度 取り組み内容
2012 安全の方針に関する提言を行い、職場に潜む危険源を可視化した注意喚起ステッカーを作成
2013 社長安全ポスター製作と「安全基本動作」の習慣化に向けた各職場での輪読を開始
2014 「安全基本動作」をイラスト化した輪読用の冊子を作成
2015 日めくり式の輪読用冊子を編集し、各職場に配布して安全風土の醸成を強化。これらの資料を英語・中国語に翻訳
2016 中国地域での輪読を実施し、安全文化の醸成を強化
2017 「安全基本動作」の改訂作業に取り組む
2018 「安全基本動作」改訂版(第5版)を発行
2019 「安全基本動作」第5版の輪読用冊子の作成に取り組む
2020 「安全基本動作」第5版の輪読用冊子の発行を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2021年に延期
2021 社長執行役員や生産統括本部長が各工場を訪問し、現場作業員の声を聞くタウンミーティングを開催。「安全基本動作」第5版の輪読用冊子を発行
2022 保護具マニュアルの改訂
2023 発生した事故災害の効果的な水平展開と再発防止を目的に、事故災害調書の改訂に取り組む

TOPICS

第5回中国国際化学プロセス安全シンポジウムにおいて講演

2023年5月、中国で開催された「第5回中国国際化学プロセス安全シンポジウム」において、RC部の山口部長が「DICグループの安全への取り組み」と「化学物質情報管理」について講演しました。国際化学プロセス安全シンポジウムは化学プロセス安全管理分野での最新技術や参加企業の取り組み成果の情報を共有する業界プラットフォームとなっています。2023年はシンポジウムの主催委員である中国化学品安全協会からDICが特別招待を受け、本講演を実施しました。

全国安全衛生大会において講演

2022年11月福岡で開催された全国産業労働安全衛生大会に当社レスポンスケア部長がパネリストとして登壇しました。2022年改正された労働安全衛生規則等について、産官学の関係者(厚生労働省、産業医科大学、中央労働災害防止協会、DIC)がパネリストとして登壇し、法改正に対応するための企業の課題等について、ディスカッションを行いました。広範囲な法改正への取り組み紹介ということもあり大勢の方が会場を訪れ、また外部サテライトでの視聴も行われました。
このうち、当社は多品種の化学物質を取り扱う化学メーカーとして、化学物質管理に対するこれまでの取り組みや、法改正への対応方針等を紹介しました。

保安防災

方針

基本的な考え方

DICグループは、重大事故を未然に防ぐために、保安管理体制を構築するとともに、万一の事態に備えた対策を実施します。

化学プラントが火災・爆発・有害物質の漏えいなどの事故を起こせば、近隣住民の方々をはじめ地域社会に多大な影響を及ぼし、協力会社を含む従業員には健康被害をもたらす可能性があります。DICグループでは、こうした事態を未然に防止するために、設備や作業に関する安全法令を遵守するとともに、さらなる保安管理のレベルアップや、万一の事態に備えた防災訓練や地震対策などを計画的に実施しています。

推進体制

サステナビリティ委員長(社長執行役員)を最高責任者とし、RC部が基本的に各地域の統括会社を経由して各事業所とともに保安防災活動を推進しています。
国内DICグループの場合、RC部が各事業所の安全環境担当者が定期的に会議を開催し、重点課題および目標の達成状況を確認し進捗を管理しています。
また、海外DICグループにおいては、DIC本社のRC部と地域統括会社が連携して地域ごとに地域統括会社の指導のもと、各事業所の安全環境担当者がリスクアセスメント、事故災害の分析と改善策の推進に取り組み、保安防災の持続的なレベルアップを図っています(詳細は、方針・目標・体制を参照)。

2023年度の主な活動と実績

1. 化学プロセス事故の件数

2017年に、ICCA(International Council of Chemical Associations:国際化学工業協会協議会)において、報告すべき化学プロセス事故の基準が策定されました。それに伴い、国内DICグループでは2018年度からプロセス事故の発生件数を報告しています。2022年度からは、直近3年間の実績を基に目標を設定しています。
2023年度は7件発生し、20万労働時間当たりの発生件数は0.124件のため未達でした(目標値0.110)。未達となった主な理由は漏えいが多く発生したためです。今後は製造プロセスのリスクアセスメント等を実施して改善を目指していきます。

  • 報告すべきプロセス事故の基準は、以下の①~④のすべてが該当した場合。主に製造プロセスが関わる火災・爆発・漏えいが該当する。①化学物質か化学プロセスが直接関係している、②製造、物流、貯蔵、ユーティリティー、パイロットプラントで起きた事故、③プロセスユニットからの物質またはエネルギー(火災、爆発、爆縮)の放出、④以下のいずれかの事象が発生した場合:労働災害、設備損傷、避難、GHS該当物質の放出。

プロセス事故発生率 = プロセス事故件数/労働時間×200,000

  2019 2020 2021 2022 2023
ICCA プロセス事故件数 6 4 7 3 7
事故発生率(20万労働時間当たり) 0.110 0.073 0.128 0.055 0.124

2. 化学プロセスのリスクアセスメント

DICグループの工場では、化学反応を行うプラントからプレス機などの加工系設備まで、用途に応じた様々な装置が稼働しています。そこで、国内DICグループでは2013年に「DICプロセスリスクマネジメントガイドライン(PRM)」を制定し、各事業所で計画的にリスクアセスメントを進めています。PRMは、生産および研究開発業務におけるリスクの包括的把握と継続的な低減を目的に、取り扱う化学物質や生産工程・生産フォーミュラ、機械設備、作業行動に関わるリスクアセスメントの実施時期や実施体制を示したものです。さらに、2020年度からは、化学プラントの事故(漏えい、火災、爆発)に特化したリスクアセスメントであるHAZOP(Hazard andOperability Studies)を開始しました。DICでは、これまでに四日市・千葉・鹿島・堺・北陸工場など、化学反応系プラントが存在する工場で評価を行っています。

3. 保安力向上センターによる外部評価

国内DICグループでは、自らの保安力を客観的に評価し改善・強化へと結びつけるツールとして、2013年度から「保安力評価システム」の運用を開始しています。この評価システムは安全工学会と化学産業に携わる技術者が、業界共通のモノサシとして活用するために開発したもので、「保安力向上センター」の会員会社で運用しています。国内DICグループでは、2014年~2020年にすべての工場が審査を受けました。各工場では評価結果を受け、改善の取り組みへとつなげています。例えば、四日市工場ではHAZOPによるリスクアセスメントを開始しました。また、2019年12月には、それまで実施した6工場分の総括が「保安力向上センター」から社長へ報告され、経営陣と保安防災に関する課題を共有化しています。

  • 保安力評価システムは、「安全基盤」(技術的項目)、「安全文化」(組織文化運営管理)に関する質問で構成されているもの。

4. DIC BCPortalの運用

日本は、位置、地形、地質、気象などの自然条件から、台風、豪雨、洪水、地震、津波などによる災害が発生しやすいといわれています。また、化学プラントが火災・爆発・有害物質の漏えいなどの事故を起こせば、地域社会に多大な影響を及ぼします。このような緊急事態の際、的確に判断を行い、迅速な行動につなげるためには、正確な情報収集・把握・共有が必要となります。非常事態においても、安定的な対応を可能とするために災害等情報管理ポータルシステム「DIC BCPortal」を導入しました。
直近でその導入効果が表れた災害の例としては、2024年1月1日16時10分頃石川県能登地方で発生したマグニチュード7.6の地震があります。石川県志賀町、輪島市では震度7を記録し、北陸工場がある石川県白山市では震度5弱を記録しました。幸いにも工場は停止中であり、重大な被害はありませんでしたが、職員の安否確認、工場の被害報告がDIC BCPortalで行われました。
DIC BCPortal導入前は、緊急連絡網に基づいて電話、メール等にて事故・災害の発生や被害状況報告等を行っていましたが、迅速性や正確さ、情報共有範囲に課題がありました。DIC BCPortal導入に伴い、迅速・正確な情報共有体制を早期に整備し、DICグループとして的確な意思決定をすることが可能となりました。

5. 緊急対応の訓練

国内DICグループの生産拠点では、日常の保安パトロールや設備の定期点検、BCP(事業継続計画)の観点から、万一の事態を想定した様々な緊急対応訓練を計画的に実施しています。

環境保全

方針

基本的な考え方

DICグループは、環境関連の法令遵守を基本としつつ、環境パフォーマンスの向上により、地球環境の保全に貢献します。

環境保全は、企業のサステナビリティ活動の中でも、特に重要な活動の一つです。具体的には、「気候変動への対応」、「環境汚染の防止」、「廃棄物管理(サーキュラーエコノミーへの対応)」、「水資源の管理」、「生物多様性」があげられます。DICグループはグローバルに事業活動を行う化学企業として、環境保全に取り組んでいます。

DICグループの環境パフォーマンスの全体像

DICグループは、グローバルでの事業活動に伴う資源の投入量(インプット)およびエネルギー使用量、環境への負荷(アウトプット)を定量的に把握し、総合的・効率的な環境負荷削減の取り組みに活用しています。以下に2023年度のDICグループの環境パフォーマンスの全体像を示します。インプットは、「エネルギー使用量」、「取水量」の2項目を記載しています。アウトプットは、排出先を「大気」、「水域」、「土壌」の3つに分類し、具体的な調査項目は、「CO₂排出量」、「排出水量」、「産業廃棄物外部最終埋立処分量」(国内の場合、さらに、「PRTR対象物質を含む551物質(+1物質群)の環境排出量(大気・水域・土壌)」、「NOx排出量」、「SOx排出量」、「排水中のCOD排出量」)を記載しています。

DICグループの環境パフォーマンスの全体像
  • PRTR:Pollutant Release and Transfer Registerの略。環境汚染物質排出・移動登録。化学物質が、どのような発生源から、どれほど環境中に排出されたか、または廃棄物として事業所外に運び出されたかを把握・集計・公表する仕組み。DICグループでは、PRTR第一種指定化学物質462物質+日化協の調査対象物質89物質(第一種指定化学物質以外のもの)+1物質群(炭素数が4~8までの鎖状炭化水素類)を調査対象としている。