トップメッセージ

トップメッセージ

社会課題への取り組みを進化させ、サステナブル社会の実現に貢献していきます

DICグループは、世界62の国と地域に173のグループ会社を持ち、印刷インキやその原料である有機顔料、エンジニアリングプラスチックであるPPSコンパウンドといった世界トップシェアの製品を有しています。こうした現状にとどまらずDICグループは、地球規模の変革が起きている今、社会からの要請や信頼にグローバルで応えるため、事業ポートフォリオの転換を進め、提供価値の向上を目指しています。

2020年度の振り返り

2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、社会においても、企業としても大きな変化に向き合わなければならない年となりました。DICグループでも、世界的なコロナ禍の影響を受け、2020年度業績は、売上高は前期比8.8%減の7,012億円、営業利益は前期比4%減の397億円となりました。また、BASF社の顔料事業(以下、BCE事業)の取得において、一時費用が発生したことや事業取得に伴うサンケミカル社(米国)の一部事業売却に当たって損失を計上したことが親会社株主に帰属する当期純利益に影響しています。しかしながら、第4四半期の回復基調を踏まえ、2021年度は全セグメントにおいて増収・増益を見込んでいます。

激変する事業環境において、「The DIC Way」を根幹として社会課題に向き合う

世界は今、長期化するコロナ禍への対応だけでなく、社会そのものの変革を迫られています。国連で「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、その達成に向けた取り組みが国・地域、企業、個人にまで浸透し、特に若者の間ではSNSなどを通じて共感を生む運動が起こりつつあります。資本主義、グローバリゼーションの進展で、豊かさを享受できる層と享受できない層が生まれ、格差が拡大しています。私は、国・地域、企業が地球規模の持続可能性やESGを前提に社会活動、経済活動を行い、これまでとは異なる投資判断基準(ESG 投資)が生まれたことで、企業の競争ルールが大きく変わりつつあると思っています。菅義偉首相による「2050年カーボンニュートラル(脱炭素化)達成」の表明、各国によるグリーンリカバリーの取り組みなどの「グリーン化」とAIやDX(デジタルトランスフォーメーション)を踏まえた「デジタル化」は、社会課題と直結した世界的な潮流であり、同時にこれからの経済を牽引していく2大要素だと認識しています。
こうしたパラダイムシフトが起こる中で、企業は何を成していくことができるのか、その存在意義とは何なのか、が問われています。DICグループは2008年に制定した「The DIC Way」の経営理念の中で、既に持続可能な社会への貢献を約束しています。そして、2019年にスタートした中期経営計画「DIC111」(以下、「DIC111」)では、社会的価値(すなわち社会課題の解決)の提供と経済的価値向上の両立する分野に経営資源を集中することで、「ユニークで社会から信頼されるグローバル企業」を目指すことを宣言しています。

「The DIC Way」経営理念/DICの目指す企業像

「現在、自動車、再生可能エネルギー、半導体、食品包装などの分野においては特にサプライチェーン全体で環境負荷低減のソリューションを考える必要があり、素材メーカーに対してもそのソリューションに積極的に貢献していくことが求められています。DICグループは、化学企業として製造過程で環境負荷をできるだけ低減するとともに、顧客や市場においてサステナビリティに貢献できる製品の提供を通じて、サプライチェーン全体で資源環境や、CO₂排出量などの環境負荷低減を果たしながら、絶えざるイノベーションで、より本質的な社会課題の解決を図っていきます。

私たちは、「The DIC Way」を根幹とし、DICグループの技術を複合させた製品やソリューションの展開を通じて、「DIC111」において掲げた社会的価値の提供と経済的価値の向上を実践し、生み出した企業の経済的価値をさらに経営資源に振り向け、成長に向けた好循環を実現していきます。

DICグループが実現するこれからの価値創造

DICグループは、「DIC111」の基本戦略「Value Transformation」、「New Pillar Creation」のもと、社会変革と社会課題にフォーカスした事業ポートフォリオへの転換に取り組んでいます。

「Value Transformation」では、DICグループが持つ技術リソースを棚卸しして、既存事業の質的転換を図り、社会や顧客に対して、より価値のある製品に転換し、事業体質を強化していきます。例えば、パッケージング&グラフィック事業セグメントにおいて、これまで出版インキ事業が主体でしたが、今は食品の包装材料に注力し包装用プラスチックフィルム、接着剤、印刷インキなどを展開し、衛生面での「安心・安全」という価値を提供しています。食品包装パッケージは複数のフィルムを接着剤で貼り合わせた構成になっていますが、この接着剤が酸素や水蒸気を遮断することで食品の賞味期限が長くなり、フードロスの削減にも貢献します。さらに、紙のパッケージに使われる印刷インキやコーティング剤をリサイクルしやすい仕様にすることで、パッケージ材料としての機能だけでなく、リサイクルに対するソリューションを提供しています。また、ファンクショナルプロダクツ事業セグメントでは、エレクトロニクス分野において、スマートフォンやPC、自動車などに搭載される半導体やプリント配線基板にDIC独自の技術により開発した5G対応の絶縁性や耐熱性に優れるエポキシ樹脂を提供しており、快適な大容量高速通信を実現しています。さらに6Gを見据えた研究開発も開始しています。
「Value Transformation」では、こうした社会課題を解決する価値を加えた製品を各事業で展開していきます。

「New Pillar Creation」では、DICグループの強みを活かして社会の課題・社会の変革に対応した新たな事業を生み出すことを目指しています。例えば、これまで有機材料(有機顔料や合成樹脂)を基盤技術とした事業展開を行ってきましたが、DICが新たに開発した無機材料の技術で、社会課題の解決に貢献する製品を開発しました。2021年1月から販売を開始した特殊な形状のアルミナフィラー(充填剤)はその一つで、自動車や電子機器で発生する熱の問題を解決する放熱材料として使用されます。DICのアルミナフィラーは放熱特性に優れているので、少量の添加でその効果が発揮でき、部品の小型化や高性能化に寄与します。また、ヘルスケア領域においては、藻類バイオ事業として世界で初めて量産化に成功した食用藍藻スピルリナを健康食品として販売するとともに、その抽出成分である「フィコシアニン」を青色天然色素「リナブルー®」として製品化し、今では世界中で食品に使用されています。さらには今般、この「フィコシアニン」に肌の水分を保持して乾燥を抑制する機能が認められたことから、肌のバリア機能(保湿力)を高める“飲む保湿剤”という機能性表示食品として商品化しました。

これらDICグループの2つの基本戦略を推進していくために、当社製品の社会的価値を測るモノサシとして「サステナビリティ指標」を設定し、サプライチェーン全体を考慮して、私たちが目指すべき方向性を明確にしました。この「サステナビリティ指標」を通して社会的課題の解決に向け取り組んでまいります。

未来に向けた強い経営基盤の構築

2020年、私たちは、コロナ禍というこれまで経験したことのない環境に否応なく立たされ、社会・経済活動が見直されたことで多くの課題も浮き彫りになりました。日本のIT化やDXの遅れが露呈し、企業ではリモートワークが進んだことで人間関係の希薄化や信頼関係構築の難しさに直面することになりました。こうした多くの課題を克服するため社会や企業は動き出しており、DICグループにおいても、特にニューノーマルな社会に対応する生産性の向上や社員の働きがいを向上させる仕組みづくりに注力していきます。

人材マネジメント

コロナ禍で進んだオンラインの活用は今後も進化し、コミュニケーションはリモートとリアルのハイブリッドが主流になると見込んでいます。そうなるとOJT(On-the-Job Training:職務現場における教育訓練)も従来どおりにはできないので、リモートでも職務能力の向上や人間関係・信頼関係の構築が難なくできるコミュニケーション能力が必要となります。DICでは、社員のこうしたリモート下での働き方改革をサポートするための各種取り組みを進めています。また、2021年1月にデータサイエンスセンターを新設して、これからの企業競争力を左右するデータサイエンティストやマテリアルズ・インフォマティクスに長けた専門能力を持つ人材の育成にも力を入れています。企業が求める人材のポジションにスペシャリスト自らが手を挙げ、向上心を持って仕事に向き合うことは組織の活性化につながり、さらには働き方の改革や事業ポートフォリオの転換にも良い影響をもたらします。DICグループでは、コロナ禍で得た気づきを人材の育成やマネジメントに反映し、多様な「個」が有機的に結びついて「強い組織」を構築していくための人事戦略を実行していきます。

  • マテリアルズ・インフォマティクス:統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により、材料開発を高効率化する取り組み。

DX(デジタルトランスフォーメーション)

DICグループでは、2020年にDX推進部を立ち上げ、業務の効率化にとどまらずビジネスの変革までを目指し、生産、技術、マーケティング・営業においてDXの推進に取り組んでいきます。工場においては、IoTの導入やAIを活用することで反応工程の自動化や生産プロセスのリモートコントロールにより生産効率を上げ、最終的には最小限の人数で現場を運営できるスマート工場を目指しています。自社工場内でデジタル化を進め、販売先からの要望に応えながら、サプライチェーン全体で合理化・効率化を実現し、第二のインフラとして当社の競争力を向上させていきます。
技術においては、これまでも半導体実装用レジスト材料としてフェノール樹脂の新たな分子骨格を見出すなど、DIC独自の高分子設計技術とAI技術を駆使したマテリアルズ・インフォマティクスを活用して材料開発を進めています。2020からは、産学官で進める量子コンピュータを使った化学シミュレーションによる未来の材料開発の研究や、コンソーシアム参画により化学素材の観点から脳科学とAI の融合研究に取り組むなど、外部機関とのAI 分野での研究活動も積極的に行っています。
マーケティングや営業活動においてもDXを進めています。コロナ禍で対面営業に代わるオンライン展示会を導入しデジタルによるマーケティング活動を開始しました。また、これまで属人的になりがちだった営業やマーケティングの情報は共有できるデジタルツールを取り入れ、リモート環境下での社内コミュニケーションの円滑化により業務効率の改善につなげています。コロナ禍ではリモート環境下で事業を行わざるを得ませんが、今後コロナが終息した後は、リアルな空間で生み出されるメリットと ハイブリッド化することで、より強力な武器となって事業活動を支えていくと確信しています。
DXとは、何らかのシステムを導入することではなく、システムを活用することで強い経営基盤にトランスフォーム(転換)していくことと捉え、この推進を加速していきます。

安全の確保と品質の向上

DICグループは化学企業として「安全」「品質」「環境」が事業活動の基盤であると認識しています。過去に発生させた工場火災を教訓として、安全確保を最優先事項として万全な体制で生産活動に取り組んでいます。特に社員がものづくりのプライドを持ち、安全を確保するという心構えを持って業務に当たることができるよう意識の向上を図っています。具体的には“社長メッセージ”といった一方通行での伝達に終わらせずに、社員と私が双方向で直接対話をするタウンミーティングを各事業所で開催しており、“10年後の工場の姿”を見据えて、安全確保に向けた意識改革、風土づくり、働きがいの向上について、自由闊達な意見交換を行っています。
もう一つのメーカーの本分である品質については、一部製品の認定取得に関わる不適切な事案でご迷惑をおかけした反省を踏まえて、2021年1月より組織を再編し、品質保証と品質管理の役割を明確化して品質管理体制を一元化しました。加えて、経営トップを委員長とする品質委員会を新設し、経営トップ自らが直接、全社の品質マネジメントを管理・監督する体制を構築することで、DICグループの品質管理体制を根本から改革し、社会からの信頼の回復に努めてまいります。

An Integrated Global Management Team

気候変動への対応

DICグループでは、これまで2030年にCO₂排出量を30%削減(2013年比)する目標を掲げ、バイオマス発電や太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーへの継続的な投資を行い、計画以上の削減を達成してきました。この度社内での十分な議論を経て2050年カーボンニュートラルの実現と、2030年CO₂排出量を50%削減(2013年比)という新しい目標を掲げることとしました。パリ協定の達成に向け、各国から期限を設けたカーボンニュートラル実現へのマイルストーンが表明されていることなども踏まえ、DICグループはなお一層カーボンニュートラルの実現に向けた施策の強化に努めていきます。具体的には、再生可能エネルギーの比率をさらに拡大することに加えて、インターナルカーボンプライシングで将来の国境炭素税の支払いに備えることも一つであり、さらに今後はサプライチェーンを通じて取引先とも協力しながら取り組みを進めていきます。自社の事業活動におけるCO₂排出量削減を達成に加えて、脱炭素に貢献する製品・サービスの拡大にも積極的に取り組み、市場や社会におけるCO₂排出削減にも貢献していきます。

社会からの期待に応えるグローバル企業へ

DICグループは、社会的価値を提供できる分野に経営資源を振り向け、その結果、自社の経済的価値が向上していくことを目指しています。この循環を絶やさないことが、さらなる社会の繁栄につながり、これを実現できる企業が支持され、愛され、信頼と尊敬の念を集めます。DICグループは、そのような企業になりたいと思っています。現在、社内では中堅社員たちによって将来のDICグループを具体的に描くプロジェクトが進行しています。これからの会社を担う人材が夢を語り、実践していく場を提供したいと考え発足させました。社会の動きやニーズに対して、自社のリソースを新たな形で展開・活用できないかを検討し、将来的な事業化も視野に入れ活動しています。
私は、これからは“個の強さを持った集団”の時代になると考えています。多様な強みを持つ個が結集した組織はダイナミズムを起こすことができます。DICグループは、世界62の国と地域にグループ会社を持ち、社員の6割が海外で事業に従事しています。BCE事業の統合が完了すれば、一層、多様性も広がっていきます。新型コロナウイルス感染拡大は長期化し世界に影響を与えていますが、これからもDICグループがワールドワイドに社会価値を創造し、社会というステークホルダーからの期待に応えていく姿勢に変わりはありません。今後ともDICグループに末永いご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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