お客様とDIC ~新しい価値の創造 8 働きがいも経済成長も 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 11 住み続けられるまちづくりを

主な取り組みの目標と実績

新たな事業の柱の創出

2023年度 目標 社会課題、社会変革と当社のコンピタンスとの交点を重点領域と定め、社会的利益と経済的利益を両立可能な次世代事業の構築に取り組む
2023年度 実績 重点領域であるサステナブルエネルギー領域では、上市した次世代二次電池用電極バインダー樹脂の販売チャネルを強化、ヘルスケア領域では種々のベンチャーとの協業でバイオ技術を深化、パッケージング領域では脱インク再生プラスチックスを上市し実績化を達成した
評価 ★★
2024年度 目標 社会課題、社会変革と当社のコンピタンスとの交点を重点領域と定めた上で、収益性と実現性が見込まれる分野を選択し注力することで、次世代事業の早期立ち上げに取り組む
2023年度 目標 グリーン、デジタル、QOLの領域にて、オープンイノベーションの活用や戦略投資を実施することで、新製品・サービスの早期開発へつなげる
2023年度 実績 グリーンの領域において、カーボンリサイクル関連でNEDOグリーンイノベーション基⾦事業に採択されるなど、オープンイノベーションを推進することで、サステナブルなバイオ化学品の検討が進展した
評価 ★★★
2024年度 目標 グリーン・デジタル・QOLの領域にて、CVCやアカデミアの先端研究などの外部リソースを積極活用し、企業間連携を推進することで、新事業・新製品の創出につなげる
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

新しい価値の創造

DICグループは、「経営ビジョン」において人々の暮らしや地球環境を含めた私たちの未来をより良いものにすることを宣言しています。カーボンニュートラル社会の実現に向けて、株主利益を包摂する社会的利益の追求を基本方針とし、社会とDICグループ双方の持続的発展を追い求めることが使命であると考えています。
この使命を果たすべく、「DIC Vision 2030」では貢献する社会を“グリーン”、“デジタル”、“Quality of Life(QOL)”の3つに設定し、成長市場における事業拡大と新事業創出により、事業ポートフォリオの構築を推進しています。
直近の事業環境を踏まえ、当初掲げた目標達成が困難なテーマについては見直しを行い、短中期テーマは事業部門との連携を強化、中長期テーマはターゲットとマイルストーンを明確にしたタイムマネジメントを心がけています。これからも次なる成長の原動力となる新しい価値の創造に取り組んでいきます。

事業ポートフォリオの変革

コロナ禍を経たデジタル化の加速や消費者行動の変化、2050年のカーボンネットゼロに向けた世界的な企業行動の変容など、大きなパラダイムシフトが起こっています。DICグループは、これまで培ってきた強みと社会課題・社会要請とが重なり合う、サステナブルエネルギー領域、ヘルスケア領域、スマートリビング領域、カラーサイエンス領域、サステナブルパッケージ領域を5つの重点事業領域と設定しています。
5つの重点事業領域の中でも短期的にはケミトロニクスを中核としたスマートリビング領域にリソースを集中し、早期の新事業の立ち上げを目指します。R&D統括本部では高分子、有機材料に加えて無機、バイオ材料などの材料設計技術を活用し、これまで以上にスマートリビング領域への取り組みを強化します。また新事業統括本部はこれまでに創出した事業のタネの中から、シナジーが期待されるものは事業部門への移管、連携を強化し、収益性と実現性が見込まれる分野での早期実績化を推進していきます。
次世代・成長事業の領域は競争領域で変化の早い分野です。このような領域での事業化に際しては、社内連携も強化し自社の強みを徹底的に活用するとともに、CVCや各種業界でのネットワークをハブにして、スタートアップ、アカデミアの活用、企業連携など外部リソースを有効に活用し、イノベーションの連続を実現していきます。

01「⽔素細菌によるCO₂とH₂を原料とする⾰新的なものづくり技術の開発」を開始

当社はカーボンニュートラルに向けた取り組みの一つとして、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術によるCO₂を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に、5つのパートナー事業者と共同で「水素細菌によるCO₂とH₂を原料とする革新的なものづくり技術の開発」のテーマを提案し、採択されました。開発対象とする水素細菌は、CO₂の固定化速度がもっとも速い微生物の一種とされています。この高いCO₂固定化能を活かしつつ、目的とする化成品を最大効率で産生するよう遺伝子改変された菌体に対して、当社は、最適な生産プロセスの開発と実証試験を実施していきます。
生産されるバイオ化学品は、プラスチック、インクや塗料、繊維、化粧品など、身の回りの様々な用途に使われる原料となります。さらに、本生産プロセスで副生する菌体の残渣を、近年需要が高まりつつある、飼料の代替たんぱく源等へ利用することで、事業の脱炭素価値を一層高めるとともに、食料問題の解決にも貢献していくことを目指しています。このように、水素細菌から得られたサステナブルなバイオ化学品の事業化を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献したいと考えています。

02耐熱性とリサイクル性を備える⾰新的なエポキシ樹脂硬化剤の基本技術を開発

昨今の廃プラスチックの社会課題に対し、ペットボトルなどの熱可塑性プラスチックは、加熱変形する再生可能な特性を活かして世界的にリサイクルが進んでいます。一方、自動車や電化製品など耐久性や耐熱性が必要な製品に使用されるエポキシ樹脂などの熱硬化性プラスチックは、加熱硬化する特性のためにリサイクルが困難とされています。
当社はエポキシ樹脂の卓越した特性である耐熱性や耐久性、接着性、機械強度、電気絶縁性を保持しつつ、再成形機能を付与した革新的なエポキシ樹脂硬化剤の基本技術を開発しました。本技術の導入により、例えば熱硬化させた成形物を5回リサイクル(粉砕→再成形)した後でも、耐熱性および機械物性の回復率が90%以上という高水準を維持することが確認されています。
今後2027年には実証実験フェーズへの移行を目指しています。社会課題に貢献する革新的な技術開発を進め、「サステナブル製品」の拡大を加速していきます。

fillwith(フィルウィズ)

本技術を用いたエポキシ樹脂成形物について再成形を5回繰り返した後の物性の変化

03シート形状を持つナノサイズ二硫化モリブデンを開発、優れた潤滑性能を発現

自動車やトラックその他多くの機械では、部品が互いに擦れる摺動部において摩擦によってエネルギーが失われ、また同時に摩耗により機械の寿命が縮まります。このエネルギーの損失とムダを減らすのが潤滑剤です。二硫化モリブデンはその結晶構造によるへき開しやすい性質を利用し固体潤滑剤として広く用いられていますが、市販品のほとんどはマイクロメートルサイズの大きな粒子であり、潤滑油の中で沈殿したり、狭い隙間の用途には使い難いなどのデメリットも指摘されています。
当社は独自の製法により、粒子径(中心値)が約250nm、粒子厚が約10nmのシート形状となるナノサイズ二硫化モリブデンを開発しました。本開発品を市販のエンジンオイルまたはグリースに添加することで、①分散状態を保持、②動摩擦係数のさらなる低減、③試験片上の摺動痕の軽減、などの顕著な効果が確認されています。またナノサイズ二硫化モリブデンの特徴的な形や性能を利用し、エネルギーやエレクトロニクスなど様々な分野への用途拡大を目指します。
2030年に向けて、当社は無機材料設計を新しい基盤技術として構築しようと取り組んでいます。ナノサイズ二硫化モリブデンもその取り組みからのアウトプットの一つです。エネルギーの節減や機械の長寿命化への寄与など、サステナブルな社会の実現を目指していきます。

ナノサイズ二硫化モリブデンのグリースへの添加の効果(摩擦摩耗試験後の試験片の摺動痕を観察)

ナノサイズ二硫化モリブデンのグリースへの添加の効果(摩擦摩耗試験後の試験片の摺動痕を観察)

04歯科用3Dプリンタ材料「TrinDy®」のラインアップ拡充

3Dプリンタ市場は造形方法における技術革新や材料の多様化・高機能化の進展により大きく伸長し、適用用途も従来の試作品・モックアップから、自動車・航空宇宙・医療・アパレル領域の実用品・最終製品へと拡大しています。またサステナビリティの観点からも、廃棄物を大幅に削減し、現地生産へのシフトで輸送時のCO2排出を削減できる方式として注目されています。
当社は、独自のポリマ設計技術と複合材料の設計配合技術を組み合わせることで、3Dプリンタ材料「TrinDy®」の開発に取り組んでいます。中でもTrinDy DTシリーズは、歯科用途で、歯科技工士の作成する技工物の精度により近くより早く提供できる光造形方式の3Dプリンタ用材料です。2019年にISO-13485(医療機器-品質マネジメントシステム)認証取得以来、歯列矯正・義歯床向けのラインアップを拡充させており、歯科医院・クリニック・技工所で高い評価をいただいています。
このたび義歯床向け各種用途への適用が期待される材料の提供を開始しました。この材料は低吸水で口腔内での経時安定性を有しており、強度と靭性のバランスに優れ、かつ歯科修復に用いられる即時重合レジンやWAXといった既知材料との相性の良い、生体安全性のある3Dプリンタ用材料です。
これからも歯科用3Dプリンタ材料の提供を通して、デジタル歯科治療の発展に貢献するとともに、長期経営計画「DIC Vision 2030」のPhase1で掲げたスマートリビング領域に注力した次世代・成長事業の育成に取り組んでいきます。

TOPIC

UMIが運営する「UMI3号ファンド」への出資

当社は、このたびユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(以下「UMI」)が運営するUMI3号投資事業有限責任組合(以下「UMI3号ファンド」)に出資いたしました。UMIには2016年に出資したUMI1号投資事業有限責任組合に続き2回目の出資になります。
UMIは素材・化学分野に特化したベンチャーキャピタルで、「優れた素材・化学企業の育成を通して、日本の技術力を強化し、世界に通用する産業構造を醸成する」というビジョンのもと、日本企業やアカデミアが保有する、将来の産業の礎となるような優れた素材・化学分野における新技術・事業への投資活動を行っています。今回のUMI3号ファンドでは、同時設立されたUMI3号脱炭素ファンドと協調して、素材・化学の技術がキーソリューションとなることが多い脱炭素領域への投資も行い、産業を超えたオープンイノベーションの創出も期待できるストラクチャーとなっています。
DICグループは長期経営計画「DIC Vision 2030」のもと、「グリーン」、「デジタル」、「QOL (Quality of Life)」を当社グループが貢献する社会と定め、無機・バイオ材料設計を加えた多彩な基盤技術の組み合わせにより、化学の領域を超えた事業の創出、あるいは新製品の開発に注力しています。これからもオープンイノベーションを活用することで、技術プラットフォームを拡充するとともに、早期の次世代・成長事業の創出に向けた取り組みを推進します。

UMI ウェブサイト

UMI ウェブサイト

TOPIC

肌と気持ちに寄り添う“感性スキンケア”ブランド『fillwith(フィルウィズ)』が新登場!

当社は、新しくスキンケアブランド『fillwith』を立ち上げました。『fillwith』は、「“心地よさ”の本質を追求する“感性スキンケア”ブランド」です。肌をうるおすと同時に、見て、触れて、香りを感じる。肌が包み込まれる心地よさとともに、あらゆる感覚に響くことで、感性が研ぎ澄まされる。『fillwith』が肌と気持ちに寄り添い、満たされるスキンケアのひとときを彩ります。自然の移ろいや時の流れとともに、抗わず変化を楽しむあなたに寄り添うスキンケアブランドです。
『fillwith』の主要成分には、植物や藻類の生命力と恵みを活かし、香りを含めアイテムごとにこだわりの自然由来成分を配合しました。中でも、「スイゼンジノリ細胞外多糖体」は、ヒアルロン酸の約10倍の保湿力を持つ天然由来の保湿成分で、新ブランドを象徴する成分です。2023年2月より公式オンラインショップにて発売を開始しております。
発売中の4アイテムには各々のカラーストーリーが込められ、スキンケア機能とともにそのデザイン性はお客様に親しまれています。

※:北陸先端科学技術大学院大学 改良ティーバック法による試験

fillwith(フィルウィズ)

肌と気持ちに寄り添う“感性スキンケア”ブランド『fillwith(フィルウィズ)』

公式ブランドサイト

お客様とのつながり

DICグループは、長期経営計画“DIC Vision 2030”の基本方針に沿った取り組みと活動についてご理解いただくことを第一に、お客様とのコミュニケーションを重視・強化しています。主なコミュニケーションの場として、展示会やイベント、取引先向けの講演、ウェブサイトやSNSなどの運営を行っています。

展示会

2023年度は、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた状況を踏まえ、対面形式での展示会出展を積極的に進めるとともに、引き続きオンラインでの出展も行いました。

日本

  • 化粧品産業において有用かつ最新の素材・技術・サービスに関連する展示と技術発表を通じて、化粧品産業の発展に寄与することを目的に開催される展示会「CITEJAPAN2023 第11回化粧品産業技術展」(5月)に出展
  • 海洋プラスチック問題の解決、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を目的に開催された「サステナブルマテリアル展」(10月)では本展示会の出展に合わせ、当社ウェブサイトで特設ページを設置し、オンラインでも展示内容を公開
  • イノベーションやサステナビリティに関する課題やお悩みに対する解決策を提供する目的として「スマートリビングonline展示会」(10月)を開催

海外

  • 欧州・米州地域の事業を統括する米国Sun Chemical社(米国、以下「サンケミカル社」)がスペイン・バルセロナで開催された「In-Cosmetics 2023」(3月)に新しいエフェクト顔料や天然着色料を出展し、天然素材を用いたサステナブルなソリューションを披露
  • アジアではDICとサンケミカル社が、中国・深圳で開催された「ChinaPlas 2023」(3月)において、持続可能性と高水準の色を実現するプラスチック用顔料の広範なポートフォリオを展示

ウェブサイト

お客様との大事な接点であるウェブサイトに関しては、①グローバル、②中国、③アジアパシフィック地域のサイトの拡充を実施しました。世界中のお客様に、DICが配信すべき情報を適切に伝えるために、それらのサイトを運営しました。また、サンケミカル社のウェブサイトとも、グローバルで販売する製品に関する情報リンクの強化、問い合わせ対応の連携を図り、グローバルでのお客様満足度の向上を図りました。
さらにウェブサイトへのお客様の誘導を目的に、X(旧Twitter)、LinkedIn、Instagram 等のSNSも活用しました。

関連リンク