社員とDIC ~人材マネジメント

人的資本経営の強化
~人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオ構築~

3 すべての人に健康と福祉を 4 質の高い教育をみんなに 5 ジェンダー平等を実現しよう 8 働きがいも経済成長も 10 人や国の不平等をなくそう

主な取り組みの目標と実績

人材育成

年度 目標 実績 評価
2024 グループ経営リーダー人材の計画的育成(DICグループ) グループ初のグローバルリーダーシップ人材育成プログラムを立ち上げ。グローバルから3名が参加。2025年にかけて複数セッションを継続実施予定(DICグループ) ★★
リスキリング・マネジメント力向上の推進(DX教育、業務基礎スキル刷新、ピープルマネジメント力向上)(DIC・DICグラフィックス(株))  部門と共同してデータサイエンティストの育成等、DXに対応した研修を実施。また、役付資格社員に対しピープルマネジメントのスキル向上を目的としたワークショップを実施。少人数グループ単位で実施し、計500名以上が参加(DIC・DICグラフィックス(株))  ★★ 
2025 グループ経営リーダー人材の計画的育成(DICグループ)
リスキリング・マネジメント力向上の推進(DX教育、業務基礎スキル刷新、ピープルマネジメント力向上)(DIC・DICグラフィックス(株))

人材流動性(採用・維持・サクセッション)

年度 目標 実績 評価
2024 ジョブチャレンジ、ジョブチャレンジ+の拡充 ジョブチャレンジ(社内公募)は実施せず。ジョブチャレンジ+(社内副業)は2024年度を通し、10名が制度を利用した(DIC)
部門別人材ポートフォリオプランニングの推進(DICグループ) 各部門における主要ポジションのうち約100ポジションについて、2030年に向けたTo Be(あるべき姿)像、人材要件を定義した(DIC) ★★
戦略的な経験者採用実施(DIC) キャリア採用比率51.2%。今後の経営体制を見据えたグローバル人材に加え、弁護士や国際税務など高度な知識技能を有する人材の採用計画を達成(DIC) ★★
2025 ジョブチャレンジ、ジョブチャレンジ+の推進(DIC)
部門別人材ポートフォリオプランニングの推進(DICグループ)
戦略的な経験者採用実施(DIC)

エンゲージメント向上・組織力向上

年度 目標 実績 評価
2024 1on1ミーティングの推進による組織内コミュニケーション活性化、チーム力向上、ピープルマネジメント力向上推進(DIC・DICグラフィックス(株)) キャリアデザイン月間との連動、各部門への実施状況フィードバックなど、1on1活用活性化に向けた取り組みを実施(DIC・DICグラフィックス(株)) ★★
クリフトンストレングス®を活用したチームビルディングは2025年実施見込みの1部門を残し、実施完了した(DIC・DICグラフィックス(株)) ★★
社員一人ひとりが自主的にキャリアデザインを行うキャリア支援施策(国内DICグループ) 年代別キャリア研修のフォロー面談を受講者全員を対象に実施。キャリアデザイン月間を設け、社長のメッセージや有識者のセミナー等を通じ、個々がキャリアを考えることを推進(国内DICグループ) ★★
2025 1on1ミーティングの推進による組織内コミュニケーション活性化(DIC)
組織のチーム力向上推進(DIC)
社員一人ひとりが自主的にキャリアデザインを行うキャリア支援施策(国内DICグループ)

人事制度・ガバナンス

年度 目標 実績 評価
2024 グローバル人事情報システムの将来的な導入に向けた検討の継続(国内DICグループ) 将来的な導入に向け、議論を重ね、スコープ、ステップ等について検討(国内DICグループ) ★★
人事KPIの管理体制の構築(DICグループ) 有価証券報告書等の情報開示拡大に対応するとともに、人材関連KPI数値向上に向け四半期ごとの社内HRレポートの発行を開始(国内DICグループ)
2025 グローバル人事情報システムの将来的な導入に向けた具体的検討の継続(国内DICグループ)
グローバル人事KPIの確定と進捗状況の見える化(DICグループ)

ダイバーシティ

年度 目標 実績 評価
2024 ダイバーシティ推進施策の継続(女性リーダーシップ研修、外国人支援施策、障がい者活用)(国内DICグループ) 女性リーダーシップ研修としてメンター制度、外部研修派遣、一般社員向け社内研修等を実施した外国人支援施策として外国人を対象としたネットワーキング会議を年間2回、開催(国内DICグループ) ★★
DICの障がい者雇用推進担当と特例子会社であるDICエステートが連携し、障がいのある社員の活用推進、管理指導体制の強化に取り組み、雇用率を2.36%から2.55%に伸長(DIC) ★★ 
2025 ダイバーシティ推進施策の継続(DIC)

人権

年度 目標 実績 評価
2024 人権ポリシーの更新に伴う人権デューデリジェンス実施 日本地域にて労務自主点検と併せて実施(国内DICグループ)中国、アジアパシフィック地域は2025年度の実施に向けて、アンケートによる状況把握を実施(DICグループ) ★★
2025 人権デューデリジェンスの実施(DICグループ)

健康経営・ワークライフバ ランス

年度 目標 実績 評価
2024 健康経営に資する施策の継続 2023年度同様の健康関連諸施策を継続実行しながら、喫煙対策に注力。本社・支店をはじめ全事業所での段階的な喫煙所廃止などを実施、卒煙プログラムの推奨など喫煙者本人の健康被害の未然防止、および受動喫煙の防止を図った(DIC) ★★
2025 健康経営に資する施策の継続(DIC)
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

人材マネジメントの基本的な考え方

DICグループは、経営ビジョン〈彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに ‒ Color & Comfort ‒〉を社員一人ひとりの業務を貫く大義として位置づけ、「社会的利益追求という共通課題解決に向けて、多様な社員が一体感を持ちながら協働していくエンゲージメントの高い組織」を目指します。そのために、人材を経営戦略実行における重要な「資本」としてとらえ、社員一人ひとりの人権・安全を保障し、多彩な人材が働きがいを感じられる職場環境や、自律的成長を促す制度、インフラ作りを行います。
また、会社の持続的成長のためにグループワイドに活躍できる人材の育成および、グループの組織力向上に取り組んでいます。

1. 人的資本経営の強化

① 人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオの構築

DICグループでは人材における基本戦略として「人的資本経営」を掲げています。人材は経営戦略実行における重要な「資本」であり、多様な人材が結集し、その能力が最大限に発揮されることが当社グループの競争力の源泉になると考えています。このような考えのもと、「DIC Vision 2030」の実現に求められる人的資本のあるべき姿を設定し、「人材育成」、「人材流動性(採用・維持・サクセッション)」、「エンゲージメント向上・組織力強化」を効果的に実施するとともに、「働く枠組み」、「リスクマネジメント」、「カルチャー/働き方改革」の観点から人事機能プラットフォームの整備を行い、人的資本経営の強化に取り組んでいます。

「DIC Vision 2030」の3つの重点人事施策と人事機能プラットフォーム

② WSR2020(Work Style Revolution 2020)について

2020年にスタートした全役員がリードする全社員参加型のWSR2020は社員の働きがいと生産性向上の実現、すなわち会社および社員のWin-Winの関係強化を目指しています。2024年からは、特に従業員エンゲージメントの改善・向上に注力し、活動しています。

③ 基本的な人事データ(DIC)

2. 3つの重点施策

人的資本・多様性における基本戦略「人的資本経営の強化」では、人的資本価値の最大化を通じて人材面から長期経営計画に掲げる「事業ポートフォリオ変革」や「グローバル経営体制強化」を支援します。その実現に向け、①人材育成、②人材流動性(採用・維持・サクセッション)、③エンゲージメント向上・組織力強化の3つの重点施策に取り組んでいます。

1. 人材育成

① グローバルベースのタレントマネジメント

DICグループのグローバルビジネスを牽引する次期トップリーダーの育成計画の一環として、グローバル経営幹部候補者選抜研修「グローバルマネジメントアクセラレーター(GMA)」を新設しました。初年度の2024年は、全世界のDICグループから受講者を選抜し、日本本社での集合研修を実施しました。2025年には海外拠点での集合研修や海外有名大学の短期間教育プログラムへの派遣を実施する予定です。受講者は研修終了後、次期トップリーダーとしての能力を発揮し、重要ポジションを担う人材へと成長することが期待されています。

② リーダーシップ養成

将来の経営を担い得るリーダー人材の計画的な育成を目的に、DICでは社員を選抜し、随時、外部研修機関への派遣や集合研修等を行っています。また、DICグループ全体に範囲を広げリーダー育成を図るべく、地域統括会社と協働し、タレントプーリングと連携した形でリーダー育成プログラムの開発を検討しています。
アジアパシフィック地域でのリーダーシップ・トレーニング・プログラムでは、厳選されたキー・マネジャーが包括的なカリキュラムを通じて必須のスキルを習得しています。これにはデザイン思考、メンタルウェルネス、コーチング、メンタリング、革新的な思考、レジリエンス、効果的なリーダーシップの育成に関するモジュールが含まれています。
中国では、2013年度から中・上級管理職を対象としたリーダーシップ研修「LDP」を実施しています。1年に1回開催されるこの研修では、参加者が最新の経済・金融トピックに触れ、有名な企業を訪問、社内経験を共有する機会を提供しており、ゼネラルマネジャーの育成、後継者の可視化に貢献しています。
サンケミカル社では、会社の成長と高いパフォーマンスを生み出す文化を形成する上で、管理職がきわめて重要であると考えており、リーダーシップトレーニングに投資しています。2022年度に最前線で働く社員を対象に試験導入されたプログラムは、その後、より多くの管理職レベル、国々に拡大されています。これまでに150名以上のマネジャーがこのトレーニングを受けています。

③ キャリア開発の機会・スキル教育

DICではキャリア開発の機会・スキル教育の機会として、入社後の早い時期から社員一人ひとりの自律的なスキルアップやリスキリングを促進することを目的に、2024年度にはDIC社員に求められるポータブルスキルを定めるとともに、階層別研修に自由選択型のオンライン研修プログラムを追加しました。また、DICおよびDICグラフィックス(株)では役付資格社員に対しピープルマネジメントのスキル向上を目的としたワークショップを少人数グループ単位で実施し、計500名以上が参加しました。
アジアパシフィックでは、社員の成長に継続的に投資し、様々なキャリア開発や教育の取り組みを展開しています。管理職向けリーダーシップトレーニング、実践を通じた学習、および技術スキルの向上プログラムなどが主要なハイライトです。また、継続的な学習を支援し、変化するビジネスの課題に備えるため、e-ラーニングプラットフォームを拡充し、語学コースも強化しました。
中国では、全スタッフに明確なキャリアパスガイダンスを提供しスキルやリーダーシップ能力の獲得を動機づけています。会社は通常、OJTを通じたスキルトレーニングを提供しますが、一部の社員に対しては外部のトレーニングコースへの派遣も行っています。また、グループ全体でスキル競技会を組織し、社員の日常的な学習や自己研鑽を促しています。さらに、e-ラーニングプラットフォームを活用して、社員ごとに学習コースを割り当て、テストを通じて重要なポイントが吸収されていることを確認しています。
サンケミカル社はリーダーシップの開発に加え、バーチャルと対面の学習機会を通じて、効率的で付加価値の高い能力開発プログラムを提供しています。主な重点分野はコンプライアンス、セールス、安全トレーニング、サイバーセキュリティなどです。一方で、多くの学びは仕事を通じた経験で培われるものです。そのため、マネジャーと従業員が定期的なトレーニングとベストプラクティスの共有セッションをもち、開発領域の特定や、フィードバックを行うことで、従業員の能力開発をサポートしています。

一人当たりの教育研修時間

地域 教育研修時間(h/人)
日本(DIC) 9.1
中国 >13
アジアパシフィック 19.5

2. 人材流動性(採用・維持・サクセッション)

「事業ポートフォリオ変革」に資する施策として、人材育成と合わせ、人材流動性の確保・向上に努めています。

① キャリア人材の積極活用

DICでは今後の経営体制を見据えたグローバル人材に加え、弁護士や国際税務など高度な知識技能を有する人材の採用を推進しています。また、採用チャネルの多様化による採用競争力の維持確保、および多様なスキルやキャリアを持つ人材確保の観点から、2024年よりキャリア採用におけるリファラル採用、アルムナイ採用を強化し、採用チャネルの拡充を図りました。その結果、2024年度のキャリア採用比率は51.2%となりました。

② 自律的なキャリア形成の支援

DICでは社員の自律的なキャリア形成の支援を行っています。社内のキャリアコンサルタントが随時、社員のキャリアに対するカウンセリングを行う体制を整えています。また、年代別のキャリア研修の実施後に受講者全員とのフォロー面談を行い、キャリアビジョンの作成とキャリア自律支援を行っています。2024年より「キャリアデザイン月間」イベントを開催し、社長によるメッセージ配信や有識者によるセミナー等、社員がキャリアについてより身近に考える機会を提供しています。
DICでは個人が希望するキャリアへの転換を後押しする制度として、社内公募制度「ジョブチャレンジ」を設けています。また、本務を継続したまま副業として他部署の業務に挑戦できる社内副業制度「ジョブチャレンジ+(プラス)」を導入しており、2024年度は10名がこの制度を活用しました。
中国では、従業員のためのデュアルキャリアパスを確立しています。一つは管理職(監督者から部長レベル)向け、もう一つは経験とスキルに基づく専門職向けです。従業員はこれらのキャリアチャネル間を移動することができ、キャリア開発方針は十分に周知され、全従業員がキャリアを向上させる方法を理解できるよう、トレーニングが提供されています。
サンケミカル社は従業員の成長支援として、2024年に「サンキャリア(Sun Careers)」を導入しました。これはビジネス部門と機能部門のグローバルでのキャリアパス、透明性を明確にし、内部の人材流動性を促進するために設計されたフレームワークです。公平性と公正性を重視し、従業員の報酬はスキル、責任、パフォーマンスに基づいて決定されます。また、すべての採用活動は人事システムを通じて社内に掲示され、従業員は部署外の役職を閲覧し、応募することができます。マネジャーは、開発機会を特定し、キャリアの進展をサポートするために、従業員と定期的にキャリアについて話し合いを行っています。

③ 計画的サクセッションの推進

DICでは継続的な事業発展および人材可視化の観点から、後継者計画の策定を推進しています。2024年度は人材ポートフォリオ構築における「質」の観点で、DICの重要ポジション約100ポジションにおける「To Be ポートフォリオ」の可視化を行いました。2030年においてもそれら重要ポジションは残り続けるという前提のもと、求められる役割の変化を予測し、それに伴うキャリア要件、スキル要件等、あるべき姿<To Be>像を設定するものです。また、各部門との協議のもと、当社および国内・アジアパシフィック地域関係会社の約200の主要ポジションを対象に計画を策定しました。これら計画が確実に実行されるよう支援をするとともに、今回明確にした To be 要件とのギャップを埋めるべく異動・教育等の手段により、候補人材の人材開発に努めます。
アジアパシフィックでは、キャリアの成功の促進策として、スキル・ギャップ分析を徹底的に行い、必要とされる部分の能力開発が確実に行われるよう取り組んでいます。

3. エンゲージメント向上・組織力強化

国内DICグループでは、WSR2020が活動の軸となり、エンゲージメント向上・組織力強化など、会社および社員のWin-Winの関係の強化に取り組んでいます。

① エンゲージメント調査

エンゲージメント向上の取り組みの一環として、国内DICグループでは、2021年度より毎年エンゲージメントサーベイを実施しています。調査結果の中でも主要設問の平均スコアを主たる指標に設定し、状況把握や重点項目の抽出に活用しています。2024年度のDICの平均スコアは3.20でした。
中国では2019年度より従業員エンゲージメント調査を継続しています。DICグループ各社はこれまで調査結果から課題を見出し、従業員とのコミュニケーション強化、従業員の提案の尊重、プロセスの確立や会社規則の変更などを含むアクションプランを用いて、従業員エンゲージメントの改善・向上に努めました。エンゲージメント指数は2019年度の53.5%から徐々に上昇し、2024年度には68.9%に達しています。
サンケミカル社はeNPS(Employer Net Promotor Score)およびその他のフィードバックメカニズムを統合し、従業員の経験と労働条件に関するフィードバックを収集しています。eNPSは、従業員が会社を働きやすい場所として推薦する可能性を数値化するものです。

② コミュニケーション促進、共感と信頼による一体感醸成

DICおよびDICグラフィックス(株)ではエンゲージメント向上に資する上司-部下間コミュニケーションの促進策として、1on1ミーティングを制度化しています。部門ごとの実施状況や社員の抱く課題を随時部門にフィードバックし、また、前述のキャリアデザイン月間との連動企画の実施等により、1on1ミーティングの活性化を図っています。
DICのユニークな取り組みとして、社員一人ひとりの強みを診断し、多様性を推進するアセスメントツール「クリフトンストレングス®」を活用した活動にも力を入れています。これまでに多くの社員が自身の強みの理解を深めてきましたが、2023年度からは職場において互いの資質・やり方の違いを認め合う、チームビルディングの活動を行っています。2024年度もこの活動を継続し、2025年度中に完了する予定です。今後も社員の多様性を理解し、各々が持つ強みを活かせる環境作りを推進します。

3. タレントマネジメントの基盤:人事制度・グローバル人事フレームワーク・ガバナンス 

DICでは「DIC Vision 2030」の実現に向け、事業の質的転換・新事業の創出を支える組織能力(ケイパビリティ)向上を目指しています。そのために、社員一人ひとりの付加価値・生産性向上、成果志向・チャレンジ志向の一層の醸成、キャリア形成支援など、組織能力向上に向けて注力すべき重点方針を定め、資格賃金、評価の仕組み等の人事制度を定めています。同時に、事業のグローバル展開が加速する中で必要とされるグループ全体での統合的な人材マネジメント、および中長期的な経営基盤の一層の強化、経営の透明性向上を目的として、グローバル人事フレームワークの構築や人事ガバナンスの強化を推進しています。

1. 自律的なキャリア形成と成果の最大化を実現する資格賃金制度

● ジョブ/成果志向の資格賃金制度

DICでは社員一人ひとりが自身のミッションを明確に認識し、持てる能力の発揮を最大化するための基盤として、各社員に求められる役割・発揮能力と期待される成果を定義した資格賃金制度を設けています。同時に、上位等級に求められる役割、能力を開示することで一人ひとりが具体的なキャリア展望を描くジョブ志向の資格制度です。

● 複線的キャリア形成の促進

DICでは広い業務を担当するジェネラリスト体系、専門性・希少性の高い社員を適正に処遇するスペシャリスト体系の2つの資格賃金体系を設置し、複線的なキャリア形成の基盤を整備しています。また、役付社員においては役割の種別に応じ、「ピープルマネジャー」、「プロフェッショナル」の区分を設け、マネジメント役割、プロフェッショナル役割のそれぞれに即した登用が可能な仕組みとしています。

DICの資格体系

2. 一人ひとりの成果創出とチャレンジを促進する評価制度

● 成果志向型評価制度

DICでは成果志向をさらに進め、社員のチャレンジを一層促進することをねらいとして、業務目標設定・評価シートでは成果を定量的に測定する評価制度を設計しています。行動評価・プロセス評価では、社員の自律的な行動に重点を置き、評価する仕組みとなっています。成果と自律的な行動を複合的かつ中長期的に積み重ねることで、長期経営計画の実現を目指します。
また、短期的な成果のみならず、中長期的な成果につながる「チャレンジングな行動」を加点評価する仕組みになっており、通常の業務に加え、意欲を持って社員がチャレンジすることを促進し、イノベーション創出につなげています。
サンケミカル社は高いパフォーマンスを生み出す文化を推進するために標準化された評価プロセスを導入しています。この評価プロセスは、明確で測定可能な目標設定、マネジャーと従業員間の継続的なコーチングとフィードバック、異なる部門・機能間での一貫性のある評価を保証するための調整プロセスを有しています。一貫性と説明責任を高めるために、人事パフォーマンスと開発プロセスに最新の人事ITのシステムを実装しています。これにより、従業員は明確な目標、期末のレビュー、および開発に関するディスカッションを確実に受けることができます。2023年には従業員の50%がこのプロセスに参加し、2025年までに75%の参加を目標にしています。

● キャリア形成促進ツールとしての人事評価制度

DICでは社員自らが現在のキャリアの棚卸しを行い、将来のありたい姿を考え、自身の能力開発に活用する「キャリア目標シート」を一般社員向けに導入しています。目標設定時に本人の希望するキャリアを記入し、上司がコメントを行う他、1on1ミーティングでも活用し、社員一人ひとりのキャリア自律を促進しています。

3. グローバルな人事フレームワーク標準化

事業のグローバル展開が加速する中、グループ全体の人的資本価値を高め、経営戦略を遂行していくためには、国や地域を超えた人材の育成・登用を行い、グループ全体で適材適所を実現する統合的な人材マネジメントが必要と考えています。
DICグループではグローバル共通の人事制度・施策の導入を進めており、国内では2018年1月、DICおよびDICグラフィックス(株)の役付社員を対象に、等級基準をグローバルスタンダードである役割ベースに改めました。現在では、日本・欧米・中国・アジアパシフィック地域の大半の管理職以上の等級が職務・役割ベースの基準に統一されています。
グループ人材を管理するHRシステムについては欧米地域を統括するサンケミカル社では標準化されており、人事プロセスの一貫性および説明責任の強化を目的に、人事パフォーマンスと育成のプロセスにSAP SuccessFactorsを導入しました。これにより、従業員は明確な目標、年末のレビュー、開発に関する話し合いを確実に受けられるようになりました。2023年度にはサンケミカル社の従業員50%がこのプロセスに包含され、2024年度までに60%、2025年度までに75%までの向上を目指し、高い成果と企業成長を推進します。一方、日本を含むアジア地域では、グループワイドで人材マネジメントを進める上での今後の重要事項として、標準のHRシステムの導入を検討しています。
また、ESG投資の高まりから、非財務情報である人的資本に関する情報開示が求められる中、グループ内の人材情報を一元的に管理していく必要性も高まっており、グループKPIの策定、浸透に加え、設定した目標値の達成に向けて取り組んでいます。

4. グループ人事ガバナンスの強化

DICグループの中長期的な経営基盤の一層の強化、経営の透明性向上を目的として、地域統括会社社長、グループ会社社長、地域の機能部門長などのグループ内の主要ポジションに対する人事ガバナンス強化を推進しています。
具体的には欧米・中国・アジアパシフィック各地域の主要ポジションの評価・報酬を決定する委員会を毎年開催し、各人の目標設定とグループ戦略とのアラインメントを担保するとともに、事業、機能ごとのマネジメントメンバーが評価に関与しています。報酬については各ポジションの市場報酬水準を検証した上で、競争力があり適正な報酬へと毎年見直しを行っています。
加えて、中国・アジアパシフィック地域においてグループとしてのサクセッションガイドラインを導入し、後継者計画をDICおよび各地域統括会社、グループ会社と協働して策定し、遂行することで組織の適切な新陳代謝を促進しています。

4. DICグループが目指すダイバーシティ

1. DICグループでは、DEI&Bが実現できる組織を推進

DICグループが目指すDEI&Bは、社員一人ひとりの個性や多様性が尊重されながら(Diversity:多様性)、挑戦する一人ひとりに対し、機会や可能性が平等に提供されるような制度のもと(Equity:公平)、個人が最大限能力を発揮し、活躍できる状態です(Inclusion:受容)。
そして、これら3つが満たされることで、社員の帰属意識が高まると考えています(Belonging:帰属)。

ダイバーシティ

多様な人材が生み出す付加価値が社会的利益を生み出し、長期的な企業価値の向上につながっていきます。DICグループに集う、様々なバックグラウンドを持つ“多様な個”が、一人ひとりの個性・能力を発揮し、「違い」を活かすことでイノベーションを創出し、「彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに - Color & Comfort - 」という、DICグループ共通の大義の実現に取り組む活動を推進していきます。

虎山 邦子

ESG 部門長・
ダイバーシティ担当
執行役員
虎山 邦子

DICグループのダイバーシティ

DICは、世界62の国と地域に171のグループ会社を通じて事業を展開しています(2024年12月31日現在)。連結従業員数は21,184名で、このうち7割強の従業員が海外の拠点で活躍しています。DICグループでは、性別の違いだけでなく、国ごとの文化、人種、宗教、思想の違い等、多様なバックグラウンドを持つ社員がともに働いており、それぞれが持つ多様な視点や経験が、組織の成長やイノベーションの源泉となっています。こうした違いを尊重し、認め合うことで、すべての社員が安心して能力を発揮できる環境を築くことが重要だと考えています。
一方で、国や地域ごとに直面する課題は異なるため、各地域が抱えるもっとも重要な課題に優先的に取り組み、それぞれの状況に応じた施策を進めています。その中で、DICはグローバルに事業展開する企業として、各地域での経験や知見を共有し、ダイバーシティの促進につなげています。具体的には、DEI&B人事責任者および担当者間で定期的に意見交換を行い、成功事例や失敗事例を共有することで、グループ全体での取り組みを一層強化しています。例えば、2025年度は日本で実施しているメンタリング制度をアジアパシフィック地域にも展開し、キャリア支援の強化を図っています。One DICの構築に向け、私はDICグループが着実に前進していると感じています。私たちの取り組みがグループ全体をより多様化(Diversity)し、インクルーシブ(Inclusion)で公平(Equity)な環境へ導き、社員が帰属意識(Belonging)を持ちながら活躍できる職場環境作りに寄与していると信じています。

Clifton Tang

Clifton Tang
Regional Human Resource
Director
DIC Asia Pacific Pte. Ltd.

アジアパシフィック

アジアパシフィックは、12ヶ国に展開する21のグループ会社において、約3,000名の社員を擁しています。当地域はグローバルな視点に基づき、ダイバーシティ活動に積極的に取り組んでいます。
採用においては、性別や人種などによる差別を一切行わず、すべての候補者を能力と職務要件に基づいて公平に評価しています。こうした方針が企業文化として根付いた結果、現在、当地域の管理職の29%を女性が占めており、その多くがアジアパシフィックのDICグループで育成された社員です。これは、2020年の20%から大きく向上した成果であり、当地域にとって重要な前進を示すものです。また、企業のリーダーとしての役割を担う女性管理職や、地域統括のポジションに就く女性も着実に増えています。
さらに、当地域は健康管理プログラムの強化にも取り組み、医療制度の見直しや定期健康診断の実施を通じて、健康課題を早期に特定し、健康意識の向上を促進しています。また、後継者育成におけるダイバーシティ推進を一層強化し、次の成長ステージに向けた多様で強固な人材基盤の構築を目指して、当地域において本格的なコンピテンシー分析と評価を開始しました。また、個々の能力に応じた育成プログラムを導入し、すべての社員が成長し、成功を実現できる環境作りを支援していきます。
DICグループの長期的なビジョンに基づき、従業員エンゲージメントの強化やサーベイの実施を通じて、DEI&Bの推進をより包括的に深めていきます。これにより、多様な社員のニーズに応えると同時に、意識・無意識を問わず不要なバイアスを排除し、より多様性に富み、優れた人材が活躍できる組織への変革を加速していきます。

Genni Zhou

Genni Zhou
Corporate HR Director
DIC (CHINA) CO.,LTD

中国

中国では、24のグループ会社を展開しています。中国では、共働き世帯が一般的で、多くの女性が管理職として活躍していることから、性別による違いはほとんど見受けられません。こうした状況を踏まえ、当地域ではエンゲージメントサーベイを実施し、社員のキャリアステージや職務内容に応じた施策を展開しています。具体的には、社員が自身の成長機会を主体的に選択できるよう、キャリア開発ガイドラインを策定し、キャリア支援を強化しています。また、エンゲージメントが低下しやすい31~35歳の社員、入社3ヶ月以内の新入社員、入社5~10年目の社員を対象に、1on1ミーティングを実施し、個別のキャリア相談やサポートを提供しています。さらに、オペレーターや現場スタッフなどの第一線で活躍する社員向けの研修やワークショップを通じて、主体性の向上を促し、より支援的な職場環境の構築を進めています。加えて、事業部ごとの特性や課題に応じた研修プログラムや個別支援を強化し、社員のスキルアップと成長を後押ししています。これらの取り組みにより、企業ビジョンの浸透、企業への信頼、ワークライフバランス、コミュニケーションと協働の各指標において着実な改善が見られています。今後も、すべての社員が能力を最大限に発揮し、高いエンゲージメントを持って働ける環境の整備を進めていきます。

Jennifer Dewey

Jennifer Dewey
Director, Global Talent
Management
Sun Chemical Corporation

米州・EMEA

サンケミカル社は、世界45の国と地域において10,000名を超える社員を抱え、主に米国、欧州、中東、アフリカで事業を展開しています。当地域は、多くの先進的な企業と同様に、多様な人材の採用、定着、育成に取り組むことを重要な課題ととらえ、積極的に推進しています。当地域では、採用プロセスのさらなる強化を目的として、すべての面接において少なくとも1名の多様なバックグラウンドを持つ候補者を含める方針を導入しました。また、女性や従来十分な機会を得られなかった人材の採用を促進するため、専門の求人サイトとの提携を拡大しています。さらに、ダイバーシティの観点をリーダーシップ開発、後継者計画、人材レビューをはじめとするコアとなる人材マネジメントプロセスに統合し、あらゆる組織階層において多様な人材の成長機会を創出しています。また、採用や人材育成にとどまらず、職場環境の整備にも注力しています。その一環として、米国における育児休暇制度を拡充し、里親および養子縁組を行う親も対象に含めることとしました。様々な家族のあり方を尊重し、より包括的な制度を整えることで、すべての社員が安心して働ける環境作りを推進しています。加えて、当地域は、経験豊富な社員の世代交代に備え、次世代の人材が円滑に役割を引き継ぎ、持続的な成長を実現できるよう、戦略的な人材育成に取り組んでいます。こうした積極的な取り組みを通じて、グローバルな人材不足や人口動態の変化といった課題に対応しながら、優秀な人材の確保と定着を図っていきます。

  • EMEA:欧州・中東・アフリカ

地域別社員数

地域別ジェンダー

地域別管理職数

  • 性別「その他」の管理職人数は2024年12月末日時点で1です。
  • 2024年12月末日時点。本データは有価証券報告書の一部グループ会社を含まないため有価証券報告書の人数とは一致しません。

2. 国内DICグループでのダイバーシティ推進活動

国内DICグループではダイバーシティの重要項目に関する数値目標を定め、その浸透を進めています。役員数や社員数に関する数値目標に加え、ワークライフバランスに関する数値目標である男性育休取得率等を設定しており、女性の活躍に関する情報として男女の賃金差異の数値目標についても公表を検討しています。中には既に2025年目標を達成した項目もあり、ダイバーシティ活動が着々と進んでいる状況です。これらの活動を社外に発信するため、2024年にダイバーシティの社外ウェブサイトを開設し、社長トップメッセージをはじめとしたダイバーシティの取り組みを掲載しました。多様性を取り入れること(Inclusion)の重要性、必要性を意識してもらうよう発信し続けるとともに、多様性を受け入れる土台となる「心理的安全性」および「アンコンシャスバイアス」への理解促進や、社員一人ひとりが働きがいを持っていきいきと働く「Well-being」な状態を維持できる風土作りに向け、前進していきます。

ダイバーシティKPI

  DIC 2025年度目標  実績
1 取締役・監査役に占める外国人・女性比率 2026年1月 20.0% 2025年1月 21.4%
2 執行役員に占める外国人・女性比率 20.0% 19.0%
3 女性管理職比率 8.0% 8.6%
4 採用に占める外国人の比率 2025年度 5.0% 2024年度 3.9%
5 新卒採用に占める女性の比率 30%維持 26.3%
6 中途採用に占める女性の比率 30.0% 18.3%
7 男性社員育児休業取得率 30.0% 55.6%
8 子育てパートナー休暇取得率 90.0% 82.1%
9 障がい者雇用率 法定以上+α 2.55%
10 男女の賃金の差異(男性の賃金に対する女性の賃金の割合) 当面実績値のみ、今後KPI設定予定  
正社員(無期雇用・フルタイム)  77.5%
非正規社員(パート・有期雇用)  57.0%
全労働者  68.5%
  DIC 2030年度目標
1 取締役・監査役に占めるマイノリティ比率 2031 年
1 月
30%
うち女性比率 30%
2 執行役員に占めるマイノリティ比率 30%
うち女性比率 5%
3 女性管理職比率 12%
4 採用に占める外国人の比率 2030 年度 5%
5 新卒採用に占める女性の比率 30%
6 中途採用に占める女性の比率 20%
7 男性育休取得率
(男性育休+子育てパートナー休暇)
100%
8 障がい者雇用率 法定+α
9 男女の賃金の差異
(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)
当面実績値
今後KPI
設定予定
・正社員(無期雇用・フルタイム)
・非正規社員(パート・有期雇用)
・全労働者

2030年に向けて、新たにKPIを設定しました。取締役、監査役でのマイノリティ比率は、2025年目標の20%から30%に引き上げて設定しました。また、執行役員に占めるマイノリティ比率も、2025年目標の20%から30%に引き上げ、このうち女性の比率は5%を目指します。
女性管理職比率は順調に推移しており、2024年時点で2025年度(2026年1月)目標を達成しました。2030年度の女性管理職比率目標は12%を掲げ、女性社員比率と女性管理職比率を近づけていくことに努めます。
また、中途採用に占める女性社員比率の目標は20%を目指します。2025年度目標からは10ポイントの低減となりますが、これは中途採用の多くを占める製造部門において男性社員の採用が多い実態を考慮したものです。
2025年度および2026年1月の実績については来年度のDICレポート2026にて総括する予定です。

① 外国人社員の採用

DICは、グローバルなマインドや高い専門能力・語学力などを有する人材の獲得を目的として、日本の大学・大学院を卒業した外国人留学生、海外の大学を卒業した日本人留学生、外国人学生および外国人キャリア人材を積極的に採用しています。DICでは現在、68名の外国人社員が様々な職種で活躍しています。また、一人ひとりが個の力を発揮できる職場環境とするため、2019年度より、外国人社員の活躍を推進しています。外国人向けの相談窓口やウェブサイトの新設、社内文書の英語化など、インフラ面や制度面の整備を進めています。さらに、2020年12月からは外国人社員を対象としたネットワーク会議を半期ごとに開催し、2022年度からは新入外国人社員と配属部署向けの異文化研修も実施しています。

外国人社員数(嘱託含む)

職種別外国人社員数

(人)

営業 技術 生産 本社管理部門 海外勤務 総計
4 37 9 15 3 68

VOICE

変化を恐れずにチャレンジし続ける姿勢を持ち続けたい

ケミトロ二クス事業本部 ケミカルソリューションビジネスユニット 営業1グループ 楊 焯

2013年に入社してから液晶営業で2年間海外営業を担当し、その後液晶技術で9年間製品開発に従事しました。現在はケミトロニクス事業本部の営業部署のエポキシ営業に所属しています。これまでのキャリアを振り返ると、異なる背景や視点を持つ人々と協力し、新しいアイデアや解決策で顧客のニーズに応えるための柔軟なアプローチが必要でした。そのため、ダイバーシティの重要性を強く実感しています。多様性に富んだ組織で成功するためには、変化に柔軟に対応することが大切だと考えます。しかし、社内で外国人社員の増加に伴う変化に順応できていないケースもあります。私は、これらの課題に対して職場の意識改善と外国人社員の働き方のサポートにも積極的に協力していきたいと考えています。今後も、変化を恐れずにチャレンジし続ける姿勢を持ち続けたいです。

ケミトロ二クス事業本部 ケミカルソリューションビジネスユニット 営業1グループ 楊 焯

② 女性の活躍推進

DICでは女性社員が能力を発揮できるよう環境・風土づくりに注力しています。女性社員が意思決定層で活躍するためのパイプラインとしての役員メンター制度をはじめ、管理職手前の女性社員を対象とした研修や女性管理職によるメンタリングを継続して実施しています。
2024年度は、育児と業務の両立に向けての施策に注力し、子どもがいる女性管理職を相談役とした両立支援相談会、男性育休の取得に関するアンケートや相談会等を実施しました。子育ての悩みを1人で抱えない、そして子どもをともに育て、ともに働ける組織風土の醸成に今後も取り組んでいきます。

●女性の職域拡大

DICでは、2008年に国内事業所で初めて千葉工場の交替勤務現場に女性社員を配属して以降、着実に製造や設備原動の現場で活躍する女性社員の数が増えており、今では、5工場で26名が勤務しています。また、係長や班長を担う女性社員も増加しています。女性用休憩室やロッカールームの新設など職場環境の改善に向けた取り組みを既に進めていますが、事業所にいる女性社員のさらなる職域拡大を推進するためにも、引き続き職場環境の整備に努めていきます。

現場勤務の女性社員数(DIC)

現場勤務の女性社員数(DIC)
工場 製造現場 設備原動現場
千葉工場 8 1
埼玉工場 9 0
堺工場 3 1
北陸工場 0 2
四日市工場 2 0
22 4

● 女性活躍推進活動の主要実績

DICは女性活躍推進活動に力を入れており、これまでに下表に示すような施策を展開しています。2020年からはWSR2020委員会のもと、企業価値向上につながるダイバーシティ推進活動に取り組んでいます。

職場の風土醸成
  • 社長メッセージ
  • 男女統一ユニフォーム
  • アンコンシャスバイアスに関する研修の実施
女性社員の意欲向上
  • 外部講師によるリーダー育成研修の実施
  • 異業種合同リーダー育成プログラムへの派遣
  • 役員をメンターとしたメンター制度
  • 女性管理職をメンターとしたメンター制度
女性社員の職域拡大
  • 製造職・営業外勤業務への女性社員配属
  • 転勤・異動・職務ローテーションの促進
子育てと仕事の両立支援
  • 子育てと仕事の両立に関する各種制度の充実
  • 育休復帰社員を対象とした復職者研修
  • 男性育休取得に関する研修(e-ラーニング)
  • 男性育休取得者と取得希望者との懇談会
働きやすい環境整備
  • 役付社員勤務地限定制度の導入
  • フレックスタイム制度運用拡大
  • テレワークと出社のハイブリッド勤務形態の導入

TOPICS

男性育休取得希望者向け懇談会を開催

DICでは、ダイバーシティKPIにも掲げられている男性育休の取得推進に取り組んでおり、その一環として、2024年度、初めて「男性育休取得者向け懇談会」を開催しました。本懇談会では、職種や役職、家庭環境、取得期間など、多様な背景を持つ男性育休取得経験者が登壇し、取得時の状況や直面した課題、工夫した点などを共有しました。さらに、参加者の疑問や不安に応えるディスカッションの時間を設け、具体的なアドバイスや解決策を提供しました。今後は、これらの経験談や男性育休取得実績を社内ウェブサイトで発信し、社員の理解を深め、取得への不安を払拭するとともに、さらなる育児休業の取得を促進していきます。

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③ 障がい者の雇用推進

国内DICグループでは、特例子会社であるDICエステート株式会社(以下「DICエステート社」)が中心となって、障がい者雇用を推進しています。
DICエステート社では障がい者の積極的な採用に加えて、DICの各事業所や国内グループ会社との協働により、国内DICグループにおける業務プロセスの見直しや切り出しを行い、障がいのある社員が活躍できる場を拡大、また、成長を促す仕組みの整備、社員が働きやすい環境の整備を継続的に行っています。その結果、障がい者雇用率は法定雇用率2.5%を超える2.55%に伸張しました。今後も採用力の強化と定着に向けた体制整備を行うことで、グループ全体で障がいのある社員の雇用の質を拡充していきます。

  • 特例子会社とは、厚生労働省の認可を受けた「障がい者雇用を推進する目的を持つ子会社」。DICエステート社は2023年1月に認可を受けました。

障がい者雇用率の推移(DIC)

VOICE

埼玉工場 総務グループ 赤岩 明日香

2024年に就労移行支援事業所のLITALICOワークスからDIC埼玉工場総務グループに入社しました。社会人として働くこと自体が初めての経験だったため、不安でいっぱいでした。
入社してすぐは給茶機の保全業務を担当し、その後マニュアルの作成を行い、今では実習生指導までできるようになりました。また、同じ総務グループの方の協力を得ながら新たに社内便業務の切り出しを行い、運用を開始することができました。
現在はサブリーダーとして、チームのスケジュール管理ツールを考案し、一部管理業務にも挑戦しています。
今後、チーム全体をまとめ、メンバーから頼られるリーダーを目指して、精進していきたいと思います。

埼玉工場 総務グループ 赤岩 明日香

TOPICS

DICの会社概要や業務内容や職場環境を紹介

2024年1月16日、DICエステート社業務サポート部の田原玲奈さんと金子風香さんが、母校である東京都立志村学園で講師を務めました。1年生向け授業では田原さんが会社概要を、3年生向けでは2人がDIC本社内にあるカフェでの業務内容や職場環境を紹介。活発な質疑応答を通じ、学生たちは先輩の実践的な働き方から社会人としての姿勢を学び、先生方からも「意義深い機会であった」と評価されました。

  • 東京都立志村学園:軽度の知的障がいのある生徒が企業就労を目指す高等部就業技術科と肢体不自由教育部門が設置された支援学校。

④ 定年再雇用者の再雇用とライフプランの支援

DICでは、定年(60歳)を迎えた社員が継続して働けるよう、再雇用を希望する社員全員に業務を提示し、最長65歳まで雇用する再雇用制度を導入しています。
2024年度には処遇面を含めた制度改定を行い、再雇用社員がそれまでの経験や培ってきた高い技術・専門性を発揮して、企業の持続的成長、後進の育成に一層やりがいを持って働けるよう環境の整備を図っています。
また、定年を1年後に控えた社員を対象として、年金制度の解説や年金生活のシミュレーションなどを行う「年金教室」の開催を通じて、定年後の社員の生活設計に対する支援を行っています。

定年再雇用者の経年推移(DICグループ出向者含む)

5. 人権の尊重

1. DICグループと人権

DICグループは、国際的な人権規範を支持し、その内容に則り、2018年に「DICグループ人権方針」を定めました。その後、グローバルにおける人権尊重の重要性がさらに増したことから2023年に本方針を改訂し、人権尊重の取り組みを推進しています。

DICグループの人権方針はこちら

2. DICグループの人権デューデリジェンスの取り組み

DICグループは、人権尊重の責任を果たすため、人権デューデリジェンスの仕組みをグループ全体で継続的に実施していきます。

① 原料調達における人権デューデリジェンスの推進

DICグループは、「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック」を策定・周知し、取引先に対して人権の尊重および労働環境の整備等への適切な対応を要請しています。また、活動状況の調査やその後のフォローを通じ、同活動を推進しています。詳細は「持続可能な調達」の「サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの推進」の項目を参照ください。

② 責任ある鉱物調達への取り組み

DICグループは、人権侵害等のおそれが強いとされる鉱物調達について「責任ある鉱物調達に対する基本的な考え方」を示し、上記①の調査に加えて購買原料についての精錬所調査を実施しています。詳細は「持続可能な調達」の「責任ある鉱物調達」の項目を参照ください。

③ 従業員に対する人権デューデリジェンスの実施

従業員の人権に関して、2024年度は国内DICグループのうちDICを含むグループ会社13社64事業所にて、人権に関する啓発活動を実施しました。特に労務監査と並行して、日本において一般的に人権侵害リスクが高い外国人労働者についてもチェック項目を追加した上で人権デューデリジェンスを実施し、問題のないことを確認しました。また、中国、アジアパシフィック地域に対しては状況把握のためのアンケート調査を実施しました。今後も人権に関する意識向上の啓発活動を行うとともに、人権リスクのある領域を再特定しながら人権デューデリジェンスを継続していきます。

④ コンプライアンスに関する通報窓口設置と是正措置

DICグループではコンプライアンスに関する通報窓口を設置しており、2024年度はパワハラ、差別等の人権関係の通報が23件寄せられました。また、社員以外の外部ステークホルダーも倫理ホットラインを通じた通報が可能です。いずれも社内調査の結果、対応が必要な事案については、規定に準じて適切に是正・救済措置を行いました。詳細は「コンプライアンス」の「コンプライアンスを推進する取り組み」の項目を参照ください。

⑤ お問い合わせ・苦情窓口設置と対応

DICグループでは、社外の取引先、顧客、地域社会などのステークホルダーに対しては、電話やウェブサイトにお問い合わせ先を設置し、問い合わせや苦情に対して、コンプライアンスを担当する部門と連携し、迅速に対応しています。なお、2024年度に人権に関する苦情はありませんでした。

3. 労働組合との信頼関係

労働組合との健全な労使関係の維持・向上に向けて、定期的に労使協議会を開催し、対話に基づく信頼関係の醸成に努めています。協議の場では会社から経営情報やビジョンの共有を図り、また労働組合から経営への提言を受けるなど率直な意見交換を行っています。DICグループの地域ごとの労働組合加入率は以下のとおりです。

地域ごとの労働組合加入率(加入可能な従業員に対する比率)

地域 組合加入率
日本(DIC) 99.0%
中国 100%
アジアパシフィック 30%
欧州・米州 (サンケミカルグループ) 54%

6. ワークライフバランス・健康

1. ワークライフバランス

DICでは良好なワークライフバランスを「個人の自己実現」と「企業の持続的成長」を同時に実現するための必須要素ととらえ、健康経営の観点からも制度の拡充に努めています。
「人的資本経営」が世界的に注目される中、DICでは人材を「会社の財産」としてとらえ、社員の多様性を尊重し、一人ひとりの強みを最大限に引き出すことで、会社と社員双方の発展を追求します。誰もが働きやすい職場は生産性を向上させるという考えのもと、すべての社員が多様なライフスタイルを選択し、いきいきと働くことができるための取り組みを進めています。

  • 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。

① 仕事と育児の両立支援

DICは育児休業制度を法制化前の1986年に導入、2007年からは「仕事と育児の両立支援」に取り組んでおり、法を上回る育児休業期間や子の看護休暇日数、出産・育児、介護などの理由で転居を伴う転勤が困難な場合に勤務地域を限定できる制度など、様々な支援を一般社員はもとより管理職も対象として実施してきました。

② 介護離職の防止に注力

2016年に育児・介護休業法が改正され、休業給付金の引き上げや休業・休暇を取得しやすくするなどの対策が講じられました。これに対し、DICは制度利用を促進するにはその周知が重要だと考え、『仕事と介護の両立支援Handbook』を全社員に配付するとともに、介護休業や介護休暇をより柔軟に利用できる制度に改めました。また2025年4月からは、当社はじめ国内グループ各社に介護手続き・相談窓口を設置し、仕事と介護の両立支援体制の強化を進めています。

③ 柔軟で効率的な勤務環境の整備

DICは柔軟で効率的な働き方の推進に向け、従来のフレックスタイム制度の大幅な拡大を図るべく、2018年4月から製造現場など一部を除く全職場への適用を開始しました。2024年4月からは、より柔軟な働き方を可能とするため、コアタイムの見直しや1日当たりの最低労働時間の短縮を行いました。テレワークとの併用による自主的・自律的な業務の遂行と社員のセルフマネジメント能力向上を図ります。

④ 配偶者同行休業制度

多様な人材の確保および社員のワークライフバランスの拡充をねらいとして、DICでは2019年1月から社員が配偶者の海外赴任に同行することができる「配偶者同行休業制度」を導入しました。本制度により、離職することなくライフプランと仕事の両立を実現することができるようになりました。

⑤ 治療と仕事の両立支援制度

治療を受けながら働く意欲のある社員に対する支援を目的とした「治療と仕事の両立支援制度」を2020年1月に導入しました。本制度の適切な運用のため、「治療と仕事の両立支援ガイドライン」を策定し、治療と仕事の両立のために継続的に必要となる就業上の措置および治療への配慮を受けることができるようになりました。

⑥ 仕事と家庭の両立支援制度の一覧

育児休業制度(出生時育児休業制度含) 一定の要件のもと、最長で法定を6ヶ月上回る、子が2歳6ヶ月になるまでの期間休業することができるまた、育児休業とは別に、出生時育児休業(産後パパ育休)を、子の生後8週間のうち子育てパートナー休暇(有給)と合わせて4週間(28日)まで取得することができる
出生時育児休業中は、本人が希望すれば一定の範囲内で就業することができる
妊娠~育児にかかる有給休暇制度 通院休暇:定期検診や保健指導を受けるために通院休暇を取得することができる(産前取得分は有給)
母性保護特別休暇:妊娠中および産後1年以内の女性社員は、10日間を限度とする母性保護特別休暇を取得することができる(有給)
子育てパートナー休暇:育児への参画を目的に、子が生後8週間の期間にある男性社員は連続5日間の休暇を取得することができる(有給)
小児看護休暇:法定の日数(小学校3年生までの子が1名で5日/年、2名以上で10日/年)の他、当該子が3名以上の場合15日/年まで取得可能(法定日数含め5日/年まで有給)
育児勤務制度 子が小学校3年の年度末に至るまでの期間、勤務時間の短縮、時差出勤、時間外勤務免除の措置を受けることができる
経済的支援制度の整備 不妊治療による高額の費用負担や、育児休業中から復職期にかけての経済的不安の緩和を目的として融資を受けることができる。また、育児休業中の無給期間、賞与の一部の貸与を受けることができる
原職復帰制度 育児休業者が復帰する際、職場を原職またはその相当職とする
利用促進のための情報提供・相談体制 イントラネット上に、DICの両立支援への考え方、諸制度の概要、利用方法などを分かりやすく解説したウェブサイトおよび子の妊娠・出生または介護に直面した場合の申し出フロー・相談窓口を設置
介護休業制度 介護のための休業期間を最長で法定の93日を上回る「1年間」に設定また6回までの分割取得も可能
介護勤務制度 休業せずに介護する社員は、3年間を上限に1日最大3時間勤務時間を短縮する措置を受けることができる時間外勤務免除の措置は、介護を要する期間無制限に適用可能
配偶者同行休業制度 1年以上海外に滞在する予定のある配偶者に同行するために、休業することができる休業期間は1年以上3年間を限度とし、在職中1回限り取得可能
勤務地域限定制度 一般社員・管理職ともに、出産・育児、介護などの理由から、転居を伴う転勤に応じられない場合、勤務地域限定の取り扱いを受けることができる
治療と仕事の両立支援制度 治療と仕事の両立のために継続的に必要な、就業上の措置や治療への配慮を受けることができる
半日・時間単位の年次有給休暇制度 年次有給休暇を半日単位で取得することができる。また、1年度に5日分を限度として時間単位で取得することができる
保存有給休暇制度 時効消滅する年次有給休暇を上限30日まで保存し、本人の療養、家族の介護、子の看護、不妊治療、ボランティア、災害復旧等に使用することができる

⑦ 育児休業制度・子育てパートナー休暇制度利用実績

DICでは両立支援制度の拡充とその活用のための環境整備を推進した結果、育児休業制度を利用する社員の復職率はここ数年100%となっています。また、継続的な啓発活動により、配偶者が出産した社員が取得する「子育てパートナー休暇」に加え、出生時育児休業(産後パパ育休)についても利用者の増加が進んでいます。

育児休業制度・子育てパートナー休暇制度利用実績

  • ( )は育児休業制度を利用した男性の人数です。数字は延べ人数です。

⑧ 長時間労働の防止と年次有給休暇の取得促進

DICでは勤務管理システムを活用し、ICカードによる入退場の記録をもとに労働時間の適正な管理を行っています。長時間労働の防止策として、部下の労働時間を可視化する機能を導入し、目安とする一定の時間外労働時間(休日労働含む)に接近した場合、または時間外労働時間が月間70時間を超過した場合に、上司である管理職および担当役員にアラートを発信しています。時間外労働の内容や長時間労働の原因、具体的な改善策などの報告を受け、労働組合と情報共有する体制を構築して長時間労働の抑制・削減につなげています。また、年次有給休暇については、各事業所で取得奨励日や計画取得日を設けるなど、全社的に取得を促進しています。

⑨ 時間外労働時間と有給休暇取得状況(DIC)

時間外労働時間(月平均)

有給休暇取得状況

2. 健康経営

DICグループでは健康経営宣言のもと、社員が心身ともに健康でいきいきと働くことのできる環境の整備を積極的に推進しています。社員の健康はDICグループの持続的な成長を力強く実現していくための重要なテーマであると考えており、今後も創意工夫による施策を展開していきます。

健康経営の取り組みについて

社員とのつながり

DICグループでは、デジタルインフラ上でのコミュニケーションチャンネル(グループ内チャット、イントラネット等)を活用して、グループ社員とのコミュニケーションの活性化に努めました。

グローバルコミュニケーション

DICグループの経営の基本的な考え方「The DIC Way」の浸透を目的とした「The DIC Way 行動指針アワード」を2024年度も開催しました。本アワードは、グループ社員の行動指針に沿った優れた取り組みを評価し、称えるものです。2024年度も多数の推薦が寄せられ、その中から特に優れた行動を示した社員が選出され、金・銀・銅の各賞が授与されました。2025年度は創業記念式典で対面での表彰を実施し、受賞者の取り組みを発表する場を設けます。これにより、グループ全体の一体感をさらに高め、「The DIC Way」の浸透を進めていきます。

社内報

DICグループにおける一体感の醸成を目指して、デジタル社内報“Better Tomorrows”を、本社、3地域統括と協働で運営・発行しています。経営目標である経営ビジョン、DIC Vision 2030に向かって活動する社員の姿や、グローバルに広がるDICグループの技術・製品・ビジネス、人・企業文化を共有してグループ社員のコミュニケーションの促進に役立てました。

マスメディアとのつながり

DICグループでは、お客様、株主・投資家、地域・社会などのステークホルダーに対する情報の伝達手段として、パブリシティ活動を強化しています。自社からの積極的な情報開示を客観的視点である報道につなげることにより、ステークホルダーの理解深化に加えて、社員の一体感醸成につながることを期待しています。
2024年度は経営戦略の実行、新製品の開発・上市、他社との協業、業績発表、サステナビリティへの取り組みなどのニュースリリースを配信するとともに、DIC Vision 2030で思い描く長期ビジョンを、取材等を通じて積極的に発信することで、化学の領域を超えた価値の提供により、豊かさと持続可能性の両立を目指す当社の姿をご理解いただくことに努めました。

記者発表:63件、記者取材対応:67件