社員とDIC ~人材マネジメント
人的資本経営の強化
~人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオ構築~
主な取り組みの目標と実績
人材育成
2023年度 目標 |
グループの経営者候補・グローバルリーダー人材の計画的育成 |
---|---|
2023年度 実績 |
|
評価 | ★ |
2024年度 目標 |
|
人材流動性(採用・維持・サクセッション)
2023年度 目標 | ジョブチャレンジの拡充 |
---|---|
2023年度 実績 | ジョブチャレンジ+(社内副業制度)を新設し、2023年7月より12名が副業を開始(DIC) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
ジョブチャレンジ、ジョブチャレンジ+の拡充(DIC) |
2023年度 目標 |
部門別人材ポートフォリオプランニングの推進 |
---|---|
2023年度 実績 |
グループマネジャー以上のキーポジションについてポートフォリオ策定を推進したが、中長期的に求められる人材の質・量の可視化には至らず(DIC) |
評価 | ★ |
2024年度 目標 |
|
エンゲージメント向上・組織力向上
2023年度 目標 | 1on1ミーティングの推進による組織内コミュニケーション活性化 |
---|---|
2023年度 実績 | 1on1ミーティングの定着に向け、実施状況モニタリング、ベストプラクティスの展開、1on1専用ポータルサイト開設を実施(DIC・DICグラフィックス社) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 | 1on1ミーティングの推進による組織内コミュニケーション活性化、チーム力向上、ピープルマネジメント力向上推進(DIC・DICグラフィックス社) |
2023年度 目標 |
クリフトンストレングス®※によるチーム力向上推進 |
---|---|
2023年度 実績 |
一人ひとりが持つ強みの資質を部署やチームで共有するチームビルディング活動を展開(DIC・DICグラフィックス社) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
1on1ミーティングの推進による組織内コミュニケーション活性化、チーム力向上、ピープルマネジメント力向上推進(DIC・DICグラフィックス社) |
2023年度 目標 |
社員一人ひとりが自主的にキャリアデザインを行うキャリア支援施策 |
---|---|
2023年度 実績 |
社内キャリアコンサルタントによるキャリア面談制度を開設、102名の面談実施。年代別キャリア研修受講者とのフォロー面談実施(335名)(国内DICグループ) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
社員一人ひとりが自主的にキャリアデザインを行うキャリア支援施策(国内DICグループ) |
人事制度・ガバナンス
2023年度 目標 |
グローバル人事情報システムの日本・アジアへの導入検討 |
---|---|
2023年度 実績 |
グローバル組織運営の観点で中長期的には必須との認識も、コスト面等に鑑み2023年度のグローバル人事情報システム導入は見送りとした(国内DICグループ) |
評価 | ★ |
2024年度 目標 |
グローバル人事情報システムの将来的な導入に向けた検討の継続(国内DICグループ) |
2023年度 目標 |
ISO30414をベースとした人事KPIの管理体制の構築 |
---|---|
2023年度 実績 |
人的資本経営における重要KPIを定義、一覧を作成し、取得可能なデータと将来的に取得予定のデータの識別を完了。一部外部開示に活用(DICグループ) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
人事KPIの管理体制の構築(DICグループ) |
ダイバーシティ
2023年度 目標 |
ダイバーシティ推進施策の継続(女性リーダーシップ研修、外国人支援施策) |
---|---|
2023年度 実績 |
女性社員の管理職昇格へのロールモデルとして、女性管理職をメンターとした女性一般社員向けメンタリング制度を開始。外国人社員とダイバーシティ事務局との2on2面談により課題発掘を実施(DIC) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
ダイバーシティ推進施策の継続(女性リーダーシップ研修、外国人支援施策、障がい者活用)(国内DICグループ) |
2023年度 目標 |
DICと特例子会社の連携。DIC本社、各事業所、関係会社の障がい者雇用率の底上げ |
---|---|
2023年度 実績 |
障がい者雇用率は2.36%で目標値(2.4%以上)に届かず(国内DICグループ) |
評価 | ★ |
2024年度 目標 |
ダイバーシティ推進施策の継続(女性リーダーシップ研修、外国人支援施策、障がい者活用)(国内DICグループ) |
人権
2023年度 目標 |
人権に関するリスクの再特定および全社的啓発研修の実施 |
---|---|
2023年度 実績 |
国内DICグループ、13社65事業所にて人権に関する啓発を実施。労務監査と並行して、日本国内において人権侵害リスクの高い外国人労働者に関する項目を追加した上で人権デューデリジェンスを実施し、問題のないことを確認した(国内DICグループ) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
人権ポリシーの更新に伴う人権デューデリジェンス実施(国内DICグループ) |
ワークライフバランス
2023年度 目標 |
新しいワークスタイルに対応したオフィス環境整備 |
---|---|
2023年度 実績 |
DIC本社オフィス改革:アクティブフロア構築工事を1月末に完工し、2月より新しい働き方であるABW(業務内容に適した場所・機能・環境を各⼈が⾃ら選択する働き⽅)を前提とした運用を開始。3ヶ月経過時点でレビューを実施し、不具合等の意見をもとに設備や運用の改善を実施した(DIC) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
2023年度 目標 |
健康経営に資する施策の継続 |
---|---|
2023年度 実績 |
健康診断事後措置として要精査、要治療判定者に対する看護職や人事からのフォロー体制を強化し重症化の未然予防に取り組んだ。ストレスチェック結果の分析・活用により職場改善に取り組んだ。また健康経営に関する施策の取り組み状況を積極的に対外発信した(DIC) |
評価 | ★★ |
2024年度 目標 |
健康経営に資する施策の継続(DIC) |
- 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
[ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力 - クリフトンストレングスは、Gallup, Inc. の商標です。
人材マネジメントの基本的な考え方
DICグループは、経営ビジョン〈彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに – Color & Comfort –〉を社員一人ひとりの業務を貫く大義として位置づけ、「社会的利益追求という共通課題解決に向けて、多様な社員が一体感を持ちながら協働していくエンゲージメントの高い組織」を目指します。そのために、人材を経営戦略実行における重要な「資本」としてとらえ、社員一人ひとりの人権・安全を保障し、多彩な人材が働きがいを感じられる職場環境や、自律的成長を促す制度、インフラ作りを行います。
また、会社の持続的成長のためにグループワイドに活躍できる人材の育成および、グループの組織力向上に取り組んでいます。
1. 人的資本経営の強化
① 人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオ構築
DICグループでは、「The DIC Way」のもと、DICと欧米、中国、アジアパシフィックに各々所在する地域統括会社とが連携し、人材マネジメント各施策を推進しています。
2022年2月に発表した長期経営計画「DIC Vision2030」において、人的資本・多様性における基本戦略として「人的資本経営の強化」を掲げています。人材を経営戦略実行における重要な「資本」としてとらえ、「人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオ構築」実現のために、3つの重点施策と、それを支える人事機能プラットフォームの整備を重点的に推進しています。
「DIC Vision 2030」の実現に求められる人的資本のあるべき姿を設定し、人的資本の構築に向け、「人材育成」、「人材流動性(採用・維持・サクセッション)」、「エンゲージメント向上・組織力強化」の観点で施策を効果的に実施するとともに、「働く枠組み」、「リスクマネジメント」、「カルチャー/働き方改革」の観点から人事機能プラットフォームの整備を行い、人的資本経営の強化に取り組んでいます。
「DIC Vision 2030」の3つの重点人事施策と人事機能プラットフォーム

② WSR2020(Work Style Revolution 2020)について
DICの働き方改革「WSR2020」は2020年にスタートし、2022年からは全役員がリードする全社員参加型の委員会として活動しています。絶え間なく変化し続ける外部環境に対応するため、既存のワークスタイルの抜本的見直しに全役員がコミットし、社員の「働きがい向上」と「生産性向上」を実現することを目指しています。2023年からは「DIC Vision2030」でも掲げている「人的資本経営の強化」に関わる施策や企業カルチャーの変革等のテーマ・課題についても取り上げ、会社および社員のWin-Winの関係強化に取り組んでいます。
委員会で取り組む改革と目指すゴール
-
働きがい改革
The DIC Wayを体現すべく意欲的に様々なことに挑戦し、それが公正に評価され、互いの存在価値が認められる職場を実現する
ワークプレイス改革
チーム・同僚・関係者と協働しながら、会社・組織・個人の目標を実現するという高いモチベーションを持ち、いつでも、どこでも、快適に、かつ生産性高く仕事ができる環境を実現する
プロセス改革
これまでの仕事のやり方、業務プロセスをデジタルトランスフォーメーション(DX)により刷新し、さらには新しいビジネスモデルの構築を通じて、個人と組織、会社全体の生産性を飛躍的に向上させ、競争基盤を強化する
③ 基本的な人事データ(DIC)

2. 3つの重点施策
人的資本・多様性における基本戦略「人的資本経営の強化」では、人的資本価値の最大化を通じて人材面から長期経営計画に掲げる「事業ポートフォリオ変革」や「グローバル経営体制強化」を支援します。その実現に向け、①人材育成、②人材流動性(採用・維持・サクセッション)、③エンゲージメント向上・組織力強化の3つの重点施策に取り組んでいます。
1. 人材育成
① グローバルベースのタレントマネジメント
長期経営計画に掲げるグローバル経営体制強化を人材面で支えるべく、DICと欧米、中国、アジアパシフィックに各々所在する地域統括会社が連携しながら、グローバルベースの人材マネジメントに取り組んでいます。その一環として2023年は「経営人材のコンピテンシーモデルの策定」、「グローバルベースでのタレントプーリング」などに着手しました。
② リーダーシップ養成
将来の経営を担い得るリーダー人材の計画的な育成を目的に、DICでは社員を選抜し、随時、リベラルアーツ教育などの外部研修機関への派遣や集合研修等を行っています。また、DICグループ全体に範囲を広げリーダー育成を図るべく、地域統括会社と協働し、タレントプーリングと連携した形でリーダー育成プログラムの開発を検討しています。
③ リスキリングを通じた人材活用
DICでは社員一人ひとりが自らのキャリア像を描き、自律的にスキルを研鑽する土壌を醸成するべく、社員教育に力を入れています。
この一環として、スキル習得を目的とした従来の自己啓発プログラムに加え、リスキリングに重点を置き、豊富な講座群から必要な講座を必要なだけ自由に選択できるサブスクリプション型のオンライン研修プログラムを提供しています。2023年度の一人当たり教育研修費は89,436円でした。
一人当たり教育研修費(DIC)
年度 | 2021 | 2022 | 2023 |
金額(円) | 69,346 | 96,578 | 89,436 |
2. 人材流動性(採用・維持・サクセッション)
「事業ポートフォリオ変革」に資する施策として、人材育成と合わせ、人材流動性の確保・向上に努めています。
① 異業種出身者、デジタル人材の積極獲得
DICにおいては人材ポートフォリオの多様化促進策として、異業種出身者を中心とした経験者採用に力を入れています。2023年の経験者採用の新規採用者全体に占める割合(経験者採用/(新卒採用+経験者採用))は7割を超える水準でした。また、デジタル人材の獲得にも取り組んでおり、即戦力が期待される経験者採用に加え、新卒学生の職種別採用を実施し、能力・スキルの底上げを進めていきます。
② 自律的なキャリア形成の支援
キャリア形成支援活動においてDICでは従来、キャリア自律を目的とした年代別研修(セルフ・キャリアドック研修)を実施してきました。2023年には新たに人事部門内にキャリア支援担当を設置し、国家資格を有した社内キャリアコンサルタントによる、希望社員を対象としたキャリア面談を行っています。また、年代別キャリア研修の受講者全員と、研修後のフォローとしてセルフ・キャリアドック面談を実施しています。2023年の面談実績としては、希望者とのキャリア面談:102名、セルフ・キャリアドック面談:335名でした。
また、2019年より個人が希望するキャリアへの転換を後押しする制度として、社内公募制度「ジョブチャレンジ」を導入しています。さらに2023年には新たに、本務を継続したまま副業として他部署の業務に挑戦できる社内副業制度「ジョブチャレンジ+(プラス)」を導入しました。全社で12名が社内での副業を開始し、キャリアを広げています。
③ 計画的サクセッションの推進
事業の継続性、人材育成の観点から、計画的サクセッションの推進に取り組んでいます。DICでは人事部門と社内各部門間の人事情報、人事課題の共有の場として人材マネジメント会議を開催し、主要ポジションのサクセッションについて協議しています。また、中国、アジアパシフィックにおいては各地域における重要ポジションを定義し、サクセッションプランの作成と確実な遂行が行われる仕組みを構築しています。
3. エンゲージメント向上・組織力強化
国内DICグループでは社員の「働きがい向上」と「生産性向上」の実現を目指し全役員が参加する委員会「WSR2020」 を軸に、エンゲージメント向上・組織力強化など、会社および社員のWin-Winの関係の強化に取り組んでいます。
① エンゲージメント調査
WSR2020でのエンゲージメント向上の取り組みの一環として、2021年より定期的に13社の国内DICグループ会社を対象とした「エンゲージメント調査」を実施しています。社員のエンゲージメントの実態把握にとどまらず、分析結果を課題把握やその改善のための施策展開に活用しています。
② コミュニケーション促進、共感と信頼による一体感醸成
これまでに実施した調査結果から、上司-部下間のコミュニケーション促進がエンゲージメント向上の課題の一つに浮かび上がりました。そこで、DICでは、2022年に1on1ミーティングを制度導入し、2023年からは、役付資格社員を参加対象に、マネジメント力向上に目を向けたワークショップ「ピープルマネジメントを皆で考える会」の全社展開を開始しました。また、2022年より展開し、約8割の社員が受診している「クリフトンストレングス」アセスメントを職場内の人間関係構築に活用すべく、2023年よりチームビルディング活動を全社展開しています。
3. タレントマネジメントの基盤:人事制度・グローバル人事フレームワーク・ガバナンス
1. 自律的・複線的なキャリア形成を促す人事制度
「DIC Vision 2030」策定とともに、2022年1月に改定したDICの人事制度では、事業の質的転換・新事業の創出を支える組織能力(ケイパビリティ)向上を目指しています。社員一人ひとりの付加価値・生産性向上、成果志向・チャレンジ志向の一層の醸成、キャリア形成支援など、組織能力向上に向けて注力すべき重点方針を定め、資格賃金制度、評価制度を設定しています。2022年からは社員一人ひとりのタレントマネジメントの基盤として人事制度が有効に機能するよう、人事部門と社内各部門が人材マネジメントについて協議する定例会議を開催し、人事と各部門の人事課題に関するコミュニケーションを強化しています。
2. 自律的なキャリア形成と成果の最大化を実現する資格賃金制度
ジョブ/成果志向の資格賃金制度
DICでは社員一人ひとりが自身のミッションを明確に認識し、持てる能力の発揮を最大化するための基盤として、役付社員、一般社員に求められる役割/発揮能力と期待される成果を<等級/職種>ごとに定義した資格賃金制度を設けています。同時に、上位等級に求められる役割、能力を開示することで一人ひとりが具体的なキャリア展望を描くジョブ志向の資格制度です。また、職種・学歴を問わず成果を創出した人材は早期に昇格することが可能であり、賃金制度でもより成果志向に重きを置いた制度になっています。
複線的キャリア形成の促進
DICでは広い業務を担当するジェネラリスト体系、専門性・希少性の高い社員を適正に処遇するスペシャリスト体系の2つの資格賃金体系を設置し、複線的なキャリア形成の基盤を整備しています。また、役付社員においては役割の種別に応じ、「ピープルマネジャー」、「プロフェッショナル」の区分を設け、マネジメント役割、プロフェッショナル役割のそれぞれに即した登用が可能な仕組みとしています。

3. 一人ひとりの成果創出とチャレンジを促進する評価制度
成果志向型評価制度
DICでは成果志向をさらに進め、社員のチャレンジを一層促進することをねらいとして、業務目標設定・評価シートでは成果を定量的に測定する評価制度を設計しており、行動評価・プロセス評価では、社員の自律的な行動に重点を置き、評価する仕組みとなっています。成果と自律的な行動を複合的かつ中長期的に積み重ねることで、長期経営計画の実現を目指します。
チャレンジを促進するツールとしての人事評価制度
この制度では短期的な成果のみならず、中長期的な成果につながる「チャレンジングな行動」を加点する仕組みになっており、通常の業務に加え、意欲を持って社員がチャレンジすることを促進し、イノベーション創出につなげています。
キャリア形成促進ツールとしての人事評価制度
社員自らが現在のキャリアの棚卸しや、1年後、3年後のありたい姿を考え、自身の能力開発に活用する「キャリア目標シート」を一般社員向けに導入しています。目標設定時に本人の希望するキャリアを記入し、上司がコメントを行う他、1on1ミーティングでも活用しています。社員一人ひとりに最適化したキャリア形成を会社、職場全体で支援するツールとして、今後は部署間の人材交流などに活用していく予定です。
1on1ミーティングを実施している割合(2023年9月時点):60%
1on1ミーティングに満足している割合:73%
適正な評価の実施
評価の納得性の担保、優秀人材の可視化を目的に、一般社員を対象に、評価者による評価者会議を実施しています。この会議は、各部門における評価制度の公平、公正な運用を促進し、また、社員のジョブローテーションや人材開発等のキャリア形成支援に活用していく予定です。
4. グローバルな人事フレームワーク標準化
事業のグローバル展開が加速する中、グループ全体の人的資本価値を高め、経営戦略を遂行していくためには、国や地域を超えた人材の育成・登用を行い、グループ全体で適材適所を実現する統合的な人材マネジメントが必要と考えています。
DICグループではグローバル共通の人事制度・施策の導入を進めています。国内では2018年1月、DICおよびDICグラフィックス株式会社(以下、DICグラフィックス社)の役付社員約1,300名を対象に、従来の能力ベースからグローバルスタンダードである役割ベースに等級基準を改めました。これにより日本・欧米・中国・アジアパシフィック地域の大半の管理職以上の等級が職務・役割ベースの基準に統一されました。
一方、グループ人材を管理するHRシステムについては欧米地域を除き統一されておらず、グループワイドで人材マネジメントを進める上での課題となっています。また、ESG投資の高まりから、非財務情報である人的資本に関する情報開示が求められる中、グループ内の人材情報を一元的に管理していく必要性も高まっており、グループKPIの策定、浸透に加え、設定した目標値の達成に向けて取り組んでいます。
5. グループ人事ガバナンスの強化
DICグループの中長期的な経営基盤の一層の強化、経営の透明性向上を目的として、地域統括会社社長、グループ会社社長、地域の機能部門長などの主要ポジションに対する人事ガバナンス強化を推進しています。
具体的には欧米・中国・アジアパシフィック各地域の主要ポジションの評価・報酬を決定する委員会を毎年開催し、 各人の目標設定とグループ戦略とのアラインメントを担保するとともに、事業、機能ごとのマネジメントメンバーが評価に関与しています。報酬については各ポジションの市場報酬水準を検証した上で、毎年見直しを行っています。
加えて、2022年からは中国・アジアパシフィック地域においてグループとしてのサクセッションガイドラインを導入しています。これら主要ポジションの後継者計画はDICが各地域統括会社、グループ会社と協働して策定し、遂行することで組織の適切な新陳代謝を促進しています。
4. DICグループが目指すダイバーシティ
1. DICグループでは、DEI&Bが実現できる組織を推進
DICグループが目指すDEI&Bは、社員一人ひとりの個性や多様性が尊重されながら(Diversity:多様性)、挑戦する一人ひとりに対し、機会や可能性が平等に提供されるような制度のもとで(Equity:公平)、個人が最大限能力を発揮し、活躍できる状態です(Inclusion:受容)
そして、これら3つが満たされることで、社員の帰属意識が高まると考えています(Belonging:帰属)。

多様な人材が生み出す付加価値が社会的利益を生み出し、長期的な企業価値の向上につながっていきます。DICグループに集う、様々なバックグラウンドを持つ“多様な個”が、一人ひとりの個性・能力を発揮し、「違い」を活かすことでイノベーションを創出し、「彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに - Color & Comfort - 」という、DICグループ共通の大義の実現に取り組む活動を推進していきます。
国内DICグループの数値目標としては、役員や社員のダイバーシティ数値目標に加え、ワークライフバランスに関する数値目標である男性育休取得率等を設定しています。さらに女性の活躍に関する情報として男女の賃金差異の数値目標についても今後公表することを検討しています。具体的には下記表のKPIを掲げダイバーシティ浸透を進めています。中には既に目標を達成した項目もあり、ダイバーシティ活動が着々と進んでいる状況です。さらにはこれらの活動を社外に発信するため、2024年にダイバーシティの社外ウェブサイトを開設し、社長トップメッセージをはじめとしたダイバーシティの取り組みを掲載しました。多様性を取り入れること(Inclusion)の重要性、必要性を意識して貰うよう発信し続けるとともに、多様性を受け入れる土台となる「心理的安全性」および「アンコンシャスバイアス」への理解促進や、社員一人ひとりが働きがいを持っていきいきと働く「Well-being」な状態を維持できる風土作りに向け、前進していきます。
ダイバーシティKPI
DIC | 実績 | 目 標 | ||||
1 | 取締役・監査役に占める外国人・女性比率 |
2024年 1月 |
15.4% | ⇒ | 2026年 1月 |
20.0% |
2 | 執行役員に占める外国人・女性比率 | 19.0% | ⇒ | 20.0% | ||
3 | 女性管理職比率 | 8.1% | ⇒ | 8.0% | ||
4 | 採用に占める外国人の比率 | 2023 年度 |
5.0% | ⇒ | 2025 年度 |
5.0% |
5 | 新卒採用に占める女性の比率 | 32.2% | ⇒ | 30%維持 | ||
6 | 中途採用に占める女性の比率 | 19.6% | ⇒ | 30.0% | ||
7 | 男性社員育児休業取得率 | 33.6% | ⇒ | 30.0% | ||
8 | 子育てパートナー休暇取得率 | 79.0% | ⇒ | 90.0% | ||
9 | 障がい者雇用率 | 2.4% | ⇒ | 法定以上 | ||
10 | 男女の賃金の差異(男性の賃金に対する女性の賃金の割合) | ⇒ | 2023 年度は実績値のみ、 今後KPIを設定予定 |
|||
正社員(無期雇用・フルタイム) | 76.4% | |||||
非正規社員(パート・有期雇用) | 52.4% | |||||
全労働者 | 67.1% |

ESG 部門長・
ダイバーシティ担当
執行役員
虎山 邦子
DICグループのダイバーシティ
DICは、世界62の国と地域に185のグループ会社を通じて事業を展開しています(2023年12月31日現在)。連結従業員数は22,255名で、このうち約73%の16,198名が海外の拠点で活躍しています。グローバルに事業を展開していることから、性別の違いのみならず、国ごとの文化、人種、宗教、思想の違い等の様々な多様性があります。これらの違いは、違いとして放置すれば課題となり得ます。しかし、グループ全体で始めたダイバーシティ活動を通じて、私たちはその違い、すなわち多様性を強みに変え、一緒に働くすべての社員が自分の能力を十分に発揮できる会社にしていきたいと考えています。直面する課題は国ごとや地域ごとに異なるため、各地域でもっとも課題と感じているところから優先して取り組みを進めています。また、各地域のDEI&B人事責任者および担当者が定期的に集まり、互いのアイデアや成功・失敗事例について共有し、One DICの構築に向けて、グループ全体で改良しながらダイバーシティを推進しています。私はDICグループが確実に前進していると感じており、私たちの努力がグループをより多様化(Diversity)し、インクルーシブ(Inclusion)で公正(Equity)な環境のもとで、社員が帰属意識(Belonging)を持ちながら働ける、そんなDEI&Bが浸透した職場環境作りに寄与していると信じています。

Clifton Tang
Regional Human Resource
Director
DIC Asia Pacific Pte. Ltd.
アジアパシフィック
アジアパシフィック地域では、12ヶ国にまたがり21のグループ会社を展開しています。また、25の異なる国籍を持つ社員が働いており、多様な文化的環境で活動しています。この多様性から生じる課題は複雑ですが、私たちはOne DICの構築に向けてダイバーシティ活動を拡大しており、例えば、女性社員を対象にしたキャリア開発の結果、管理職の約25%が女性で占められるなど、成果としてもしっかり現れてきています。さらに、健康面においても、地域全体で160人以上の管理職を対象としたメンタルウェルビーイングプログラムや4度にわたるデザインシンキングのワークショップを開催しており、引き続き、範囲を広げて展開していく予定です。また、人事関連システムを導入し、DIC本社と戦略的に連携することで、社内コミュニケーションの拡大を可能にし、評価システム整備により、上司-部下間のコミュニケーションを強化しました。さらには、変化する社会規範や働き方の多様性に対応するため、柔軟な勤務制度やモバイルデスクを導入するなど、様々な活動を積極的に進めています。DICグループでは、チームワークを高め結束することで、生産性の向上、イノベーションにつなげられるよう、多様な社員と一緒にDEI&Bを推進しています。アジアパシフィック地域においても、今後はこれらの活動に加え、アンコンシャスバイアス排除のための取り組みも実施し、社員一人ひとりが受容され、そして多様な社員にとって働きやすい環境となることを目指し、多角的な視点からDEI&Bを推進していきます。

Genni Zhou
Corporate HR Director
DIC (CHINA) CO.,LTD
中国
中国地域では、24のグループ会社を展開しています。中国では、夫婦共働きが一般的であり、女性の管理職も多く見られるため、性別による違いはほとんど見受けられません。現在の課題は、少子高齢化による若年層の不足であり、その解決のために、若手人材の採用と定着率の向上に注力しています。具体的には、優秀な人材を獲得するために、若手人材向けの採用ページを設けるとともに、大学と連携し、大学1年生から選抜された約20名の学生を対象にした「DICクラス」を開設しました。こちらでは、実際にDIC社員がトレーナーとして授業を行い、DICの製品や文化、色彩の知識に関する教育を提供しています。2023年には、DICGraphics (Dongguan) Ltd. に11名、DIC Synthetic Resins (Zhongshan) Co., Ltd.に8名の卒業生が入社し、現在では重要なポジションで活躍しています。今後も、様々な世代の社員が活躍できるよう、取り組みを継続していきます。

Jennifer Dewey
Director, Global Talent
Management
Sun Chemical Corporation
米州・EMEA※
アメリカとEMEAを中心に世界45ヶ国に10,000人を超える社員を抱えるサンケミカルは、顧客価値の向上と社員の満足度・エンゲージメントを最優先にするインクルーシブな企業文化を築くことに専念しています。このコミットメントをより強化するため、採用からキャリア開発、パフォーマンス評価まで、あらゆる従業員エクスペリエンスや人事業務プロセスにDEI&Bの概念を組み込んでいます。特に、リーダーの育成と社員の円滑なオンボーディングは、サンケミカルのダイバーシティ戦略の基盤となる取り組みです。リーダーの成長を促進すべく、リーダーシップ開発プログラムに力を入れており、意識、共感力、そして高いコミュニケーション能力を身に付けるために必要なツールやスキルを提供しています。これにより、多様な視点が尊重され、賞賛される環境を築き、すべての社員が尊重され、聞き入れられていると感じられる環境を目指しています。また、労働力の変化や新たな人材の採用への対応として、私たちは彼らがシームレスに企業文化に溶け込めるようになることを重視しています。新たに加わる社員の帰属意識の醸成や、円滑なオンボーディング体制の構築は必要不可欠という認識のもと、心を込めて新たな社員を歓迎し、ていねいに受け入れることを特に大切にしています。こうした取り組みにより、ビジネス価値を最大限に引き出し、持続的な成功の基盤を築いていきます。
- EMEA:欧州・中東・アフリカ


地域別管理職数および地域別女性管理職比率
管理職総数(グローバル) | 3,106人(男性:2,641人 女性:464人) |
女性管理職比率(グローバル) | 14.9% |

2. 外国人社員の採用
DICは、グローバルなマインドや高い専門能力・語学力などを有する人材の獲得を目的として、日本の大学・大学院を卒業した外国人留学生、海外の大学を卒業した日本人留学生、外国人学生および外国人キャリア人材を積極的に採用しています。DICでは現在、62名の外国人社員が様々な職種で活躍しています。また、一人ひとりが個の力を発揮し活躍できる職場環境とするため、2019年度より、外国人社員の活躍を推進しています。外国人向けの相談窓口やウェブサイトの新設、社内文書の英語化など、インフラ面や制度面の整備も進めつつ、2020年12月からは外国人社員を対象としたネットワーク会議を半期ごとに開催、そして、2022年度からは新入外国人社員と配属部署向けの異文化研修も開催しています。

職種別外国人社員数
(人)
営業 | 技術 | 生産 | 本社管理部門 | 海外勤務 | 総計 |
4 | 37 | 6 | 11 | 4 | 62 |
VOICE
DICのダイバーシティ&インクルージョンを通じてイノベーション創出に貢献したいと思います

私は、2023年に入社後、DICが積極的にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に取り組んでいることを知りました。それを通じて、多様なバックグラウンドを持つ人材の個性・能力を活かしてともに成長していくグローバル企業であることを実感しました。様々な考え方・意見・価値観を認め、互いに理解・協働しながら、目標に向かっていく企業文化がDICの強みだと思っています。私が所属している総合研究所にも、専門分野・職歴・年齢・国籍など多彩なバックグラウンドを持つ多くの研究員たちが多岐にわたる分野で研究開発を行っています。異なる考えや意見を否定せずに受け止めるD&Iを通じて、研究開発においても多くの新しいアイデアやイノベーションが生み出されていると思います。私もDICのD&Iを通じて、より多くの人々とオープンなコミュニケーションを取りながらイノベーション創出に貢献したいと思います。
総合研究所 R&D 統括本部 アドバンストマテリアル開発センター FEM プロジェクト 李 建燦
新たな挑戦に立ち向かい、社会にインパクトを与えるために、新しいトピックを見つけたいと思います

私は、前職で顔料や液晶に関連するDICの技術によく触れる機会があり、それがきっかけでDICを知りました。日本のグローバルな化学メーカーのR&D部門で働いていたため、製品開発に興味がありました。DICの千葉工場に入社してからは、新しいトピックや異なる市場、例えば産業用塗料向けの新しい樹脂製品などについて取り組んでいます。新製品の開発に携わる私の仕事は、常に持続可能性(CO2の削減、リサイクルやバイオマス製品の使用)が主要なキーワードとして重要視され、未来社会に関わっていることを実感しています。DICには、海外グループ会社が複数あり、業務上、海外の技術拠点やDICの新規グループ会社と関わる機会があるため、今後は、海外の技術グループとの交流や議論をより活発にしていきたいと思っています。
千葉工場 機能性材料技術本部 機能性材料技術4グループ ネケルソン ファビアン
TOPICS
DIC本社で外国人社員ネットワーク会議を開催
第6回外国人ネットワーク会議を2023年7月に本社で開催しました。本会議は、外国人社員同士のネットワーク強化のために、2020年度より、年に2回実施しています。今回からは、外国人社員の数名が事務局に加わり、会議テーマの設定等、企画段階から一緒に進めました。いろいろなアイデアが出ましたがまずは一人ひとりの悩みをより深く把握すべく、事務局2名と外国人社員2名で意見を交換する機会の開催を会議テーマにあげ、第6回会議の中で、開催の是非についての意見を外国人社員からヒアリングしました。その上で、2023年度下期には、実際に外国人社員ボランティアと事務局メンバーでペアを組み、希望者向けに「2on2ミーティング」を実施しました。2on2で多くあげられた悩みについては、次回以降の会議テーマとして取り上げ、議論を深めることで解決につなげていきたいと思います。2023年度から新たに約20名の外国人社員が加わっていますので、自身の強みや能力を最大限に活かしながら働くことができる環境となるよう、今後はより一層外国人社員とコミュニケーションを取りながら活動していきます。
DIC本社で外国人社員ネットワーク会議を開催
第5回目となる外国人社員ネットワーク会議を2023年1月に本社で開催しました。本会議は、外国人社員同士のネットワーク強化のために、2020年度より、年に2回実施しています。これまで、新型コロナウイルスの影響により、すべてオンラインで開催となりましたが、今回は、各事業所の外国人社員が本社に集まり、初めて対面で執り行いました。当日は、本会議をさらに有意義なものとするために「今後の会議の運営方法」について、グループに分かれ、意見交換を行いました。同じ空間に集まることで参加者同士もよりフランクにコミュニケーションを取ることができ、この会議にどのようなことを求めているのか、理想の開催時間、頻度、時期は何なのかについて、議論を深めることができました。職場環境やキャリアに対する不安を軽減し、外国人社員のモチベーション向上につなげられるよう、これからも外国人社員の生の意見を取り入れながら本会議を継続してまいります。
3. 女性の活躍推進
DICでは、ダイバーシティ推進の施策の一つとして「女性活躍推進」に取り組んでいます。2007年より仕事と育児の両立支援を推進する活動を開始し、2016年からは女性がより活躍できる会社とするため、社員の意識改革や企業風土の変革、職務領域の拡大などの施策を進めています。2022年には、女性社員の視野・視座向上を目的とした社外研修への派遣、および社内役員による女性管理職へのメンター制度を開始し、上位役職層へのパイプライン作りに着手しています。また、メンター制度をさらに発展させ、役員からのメンタリングを受けた女性管理職が、管理職一歩手前の女性一般社員をメンタリングする制度を開始しています。メンタリングを受けた社員自身がメンターとなることで、さらに視野・視座の向上や、課題解決へアプローチする力の向上が図れるとともに、所属部署を超えた女性社員のネットワーク作りのきっかけともなっています。
自身の働き方やキャリアを自身で考えられるよう様々な施策を提供し、女性がいきいきと働けるよう引き続き推進活動を行っていきます。
① 女性の職域拡大
DICでは、2008年に国内事業所で初めて千葉工場の交替勤務現場に女性社員4名を配属して以降、着実に製造や設備原動の現場で活躍する女性社員の数が増えており、今では、5工場で24名が勤務しています。また、係長や班長を担う女性社員も増加しています。女性用休憩室やロッカールームの新設など職場環境の改善に向けた取り組みを既に進めていますが、事業所にいる女性社員のさらなる職域拡大を推進するためにも、引き続き職場環境の整備に努めていきます。

工場 | 製造現場 | 原動現場 |
千葉工場 | 8 | 2 |
北陸工場 | 0 | 2 |
堺工場 | 4 | 0 |
埼玉工場 | 6 | 0 |
四日市工場 | 2 | 0 |
計 | 20 | 4 |
② 2016年から現在までの主な女性活躍推進活動
DICでは、女性が積極的に活躍できる会社になるために、2016年から女性活躍推進活動に力を入れています。2020年には社長執行役員をトップとした全社プロジェクト<WSR(Work Style Revolution)2020>の発足に伴い、企業価値向上につながるダイバーシティ推進活動として取り組んでいます。
職場の風土醸成 |
|
女性社員の意欲向上 |
|
女性社員の職域拡大 |
|
子育てと仕事の両立支援 |
|
働きやすい環境整備 |
|
③ 「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」への選定
共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援に関する取り組みが特に優れた企業として、経済産業省と東京証券取引所が共同で主催する「令和5年度 Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選定されました。同選定は、令和5年度に新設されたもので、全業種から16社(うち素材・化学業種は2社)が選定されました。
当社の女性社員平均勤続年数は、近年では男性社員を上回り、また産休からの復職率は、ほぼ100%となっています。働き続けることがあたり前となってきている現状において、出産・育児等のライフイベントによるキャリアの中断を課題ととらえています。キャリアを継続できる施策の整備とともに、男性がともに子育てに参加できる環境整備に取り組んでいます。ともに育て、ともに働ける企業風土の醸成を進めています。

資料ダウンロード
4. 障がい者の雇用推進
国内DICグループでは、DIC総務人事部と特例子会社※であるDICエステート株式会社が中心となって、多様な人材の個性や特性を活かした職場作りを目指しています。
DICエステート株式会社では、障がい者の積極的な採用だけでなく人材育成の観点で職域拡大や成長を促す仕組みの整備、障がいのある社員が働きやすく活躍できる環境の整備を進めています。また、採用力の強化と定着に向けた体制整備をDICの各事業所や国内グループ会社と協働して行うことで、グループ全体で障がいのある社員の雇用の質を拡充していきます。
- 特例子会社とは、厚生労働省の認可を受けた「障がい者雇用を推進する目的を持つ子会社」。DICエステートは2023年1月に認可を受けました。

VOICE

2022年に東京都立葛飾ろう学校からDICエステート株式会社業務サポート部に入社しました。最初は担当する集配と郵便については全く分からず、戸惑いも多かったです。また私は耳が聞こえないので、コミュニケーションを取るのも大変でした。しかし、先輩や同期の社員と身振りと筆談でコミュニケーションを続け、現在は集配の指導ができるようになりました。今後も同じ障がいを持った後輩がたくさん入って来られるように精いっぱい仕事を頑張りたいと思います。
DIC エステート 丸尾 真司
TOPICS
障がい者雇用についての勉強会を開催
2023年11月2日、DICエステートは、神奈川ハートフルリーダー会※の依頼を受け、障がい者雇用についての勉強会を開催しました。
当日は障がい者雇用に取り組んでいる各企業や、就労支援機関、特別支援学校の担当者を含む約30名とDICグループから11名が参加し、DICおよびDICエステートの障がい者雇用の取り組み状況や実態について説明、会社見学、グループディスカッションを行いました。今後も障がい者雇用を推進していくために、DICグループでは同じく障がい者雇用を担当している他の企業や、就労支援機関、特別支援学校などの団体と定期的に会社見学会やセミナー、勉強会を実施・参加していく予定です。
- 神奈川・東京を中心とする、障がい者雇用に興味関心のある企業や就労支援機関の有志の会。

特別支援学校の生徒との交流
DICエステート株式会社では、特別支援学校から障がいのある高校生をインターンシップにて広く受け入れ、社員として採用しています。その社員の母校と連携し、社内カフェの一周年記念の際に、在校生が授業で製造した焼き菓子をDICエステート株式会社で購入し、社員へ送りました。これにより、特別支援学校との関係強化だけではなく、在校生の方々が、先輩の姿を実際に見ることで授業へのモチベーションの向上が見られたとのことでした。今後は、東京の特別支援学校への協力だけではなく、東京近郊の特別支援学校への協力も視野に入れ活動を継続して行きます。
「障がい者就労支援フォーラム」で講演しました
DICエステートは2021年7月29日に開催された東京都ビジネスサービス株式会社とリコージャパン株式会社の共催ウェビナー「事例から考える障がい者雇用の仕組みづくり~障がい者就労支援フォーラム~」において講演しました。
DIC本社ビルにおける、DICエステートの社員が“いきいきと働くことができる仕組みづくり”が高く評価され、「個人の成長と組織の拡大~コロナ禍におけるダイバーシティ&インクルージョン~」と題した講演では、各業務の動画マニュアルによる業務紹介や、業務の拡大、人材育成など現在取り組んでいる具体的な事例を紹介し、企業担当者や学校関係者65名が聴講しました。
ウェブ上でも質疑応答が活発に行われ、講演後のアンケートでも多数の質問が寄せられ、DICエステートの取り組みへの関心の高さが伺えました。
5. 定年再雇用者の再雇用とライフプランの支援
DICでは、定年(60歳)を迎えた社員が継続して活躍できるよう、再雇用を希望する社員全員に業務を提示し、最長65歳まで雇用する、再雇用制度を導入しています。
フルタイム、短時間・短日勤務など、多彩な勤務形態のもと、再雇用者は、それまでの経験や培ってきた高い技術・専門性を発揮して、企業の持続的成長、後進の育成の一端を担っています。
また、定年を1年後に控えた社員を対象に、定年後の生活設計支援を目的とした「年金教室」を開催し、年金制度の解説や年金生活のシミュレーションなどを行っています。
定年再雇用者の経年推移(DIC グループ出向者含む)
2017 年度 | 2018 年度 | 2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | 2023 年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
定年退職者(A) | 69名 | 89名 | 96名 | 92名 | 103名 | 150名 | 122名 |
再雇用希望者 | 55名 | 74名 | 81名 | 80名 | 87名 | 132名 | 105名 |
再雇用者(B) | 55名 | 70名 | 77名 | 79名 | 84名 | 128名 | 102名 |
再雇用率(B)/(A) | 79.7% | 78.7% | 80.2% | 85.9% | 81.6% | 85.3% | 83.6% |
5. 人権の尊重
1. DICグループと人権
DICグループは、国際的な人権規範を支持し、その内容に則り、2018年に「DICグループ人権方針」を定めました。その後、グローバルにおける人権尊重の重要性がさらに増したことから2023年に本方針を改訂し、人権尊重の取り組みを推進しています。
2. DICグループの人権デューデリジェンスの取り組み
DICは、人権尊重の責任を果たすため、人権デューデリジェンスの仕組みをグループ全体で継続的に実施していきます。

① 原料調達における人権デューデリジェンスの推進
DICグループは、「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」を策定・周知し、取引先に対して人権の尊重および労働環境の整備等への適切な対応を要請しています。また、活動状況の調査やその後のフォローを通じ、同活動を推進しています。詳細は「持続可能な調達」の「サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの推進」の項目をご参照ください。
② 責任ある鉱物調達への取り組み
DICグループは、人権侵害等のおそれが強いとされる鉱物調達について「責任ある鉱物調達に対する基本的な考え方」を示し、上記①の調査に加えて購買原料についての精錬所調査を実施しています。詳細は「持続可能な調達」の「責任ある鉱物調達」の項目をご参照ください。
③ 従業員に対する人権デューデリジェンスの実施
従業員の人権に関して、2023年度は国内DICグループのうちDICを含むグループ会社13社65事業所にて、人権に関する啓発を実施しました。特に労務監査と並行して、日本において一般的に人権侵害リスクが高い外国人労働者についてもチェック項目を追加した上で人権デューデリジェンスを実施し、問題のないことを確認しました。今後も人権に関する意識向上の啓発活動を行うとともに、人権リスクのある領域を再特定しながら人権デューデリジェンスを継続していきます。
④ コンプライアンスに関する通報窓口設置と是正措置
DICグループではコンプライアンスに関する通報窓口を設置しており、2023年度はパワハラ、差別等の人権関係の通報が20件寄せられました。また、社員以外の外部ステークホルダーも倫理ホットラインを通じた通報が可能であり、2023年度はパワハラの通報が1件寄せられました。いずれも社内調査の結果、対応が必要な事案については、規定に準じて適切に是正・救済措置を行いました。詳細は「コンプライアンス」の「コンプライアンスを推進する取り組み」(P124)の項目をご参照ください。
⑤ お問い合わせ・苦情窓口設置と対応
社外の取引先、顧客、地域社会などのステークホルダーに対しては、電話やウェブサイトにお問い合わせ先を設置し、問い合わせや苦情に対して、コンプライアンスを担当する部門と連携し、迅速に対応しています。なお、2023年度に人権に関する苦情はありませんでした。
3. 労働組合との信頼関係
労働組合との健全な労使関係の維持・向上に向けて、定期的に労使協議会を開催し、対話に基づく信頼関係の醸成に努めています。さらに、労使経営協議会や経営懇談会では、経営情報やビジョンの共有を図り、労働組合から経営への提言を受けるなど率直な意見交換を行っています。DIC労働組合加入率は72.6%となっています(対象となる一般社員の99.1%)。
6. ワークライフバランス・健康
1. ワークライフバランス
DICでは良好なワークライフバランスを「個人の自己実現」と「企業の持続的成長」を同時に実現するための必須要素ととらえ、健康経営※の観点からも制度の拡充に努めています。
「人的資本経営」が世界的に注目される中、DICでは人材を「会社の財産」としてとらえ、社員の多様性を尊重し、一人ひとりの強みを最大限に引き出すことで、会社と社員双方の発展を追求します。誰もが働きやすい職場は生産性を向上させるという考えのもと、すべての社員が多様なライフスタイルを選択し、いきいきと働くことができるための取り組みを進めています。
- 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。
① 仕事と育児の両立支援
DICは育児休業制度を法制化前の1986年に導入、2007年からは、「仕事と育児の両立支援」に取り組んでおり、小学校3年生までの子に対し看護休暇が取得できる制度や、出産・育児、介護などの理由で転居を伴う転勤が困難な場合に勤務地域を限定できる制度など、様々な制度を一般社員はもとより、管理職も対象として、導入してきました。このような取り組みが評価され、2024年には「共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援」に関する取り組みが特に優れた企業として「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選定されました。
② 介護離職の防止に注力
2016年に育児・介護休業法が改正され、休業給付金の引き上げや休業・休暇を取得しやすくするなどの対策が講じられました。これに対し、DICは制度利用を促進するにはその周知が重要だと考え、『仕事と介護の両立支援Handbook』を全社員に配布、また運用ルールも見直し、介護休業の分割取得や介護休暇の時間単位での取得、勤務時間短縮の期間延長(1年⇒3年)など、より利用しやすい制度に改めました。
③ 柔軟で効率的な勤務環境の整備
DICは柔軟で効率的な働き方の推進に向け、従来のフレックスタイム制度の大幅な拡大を図るべく、2018年4月から製造現場など一部を除く全職場への適用を開始しました。2024年4月からは、より柔軟な働き方を可能とするため、コアタイムの見直しや1日当たりの最低労働時間の短縮を行いました。テレワークとの併用による自主的・自律的な業務の遂行と社員のセルフマネジメント能力向上を図ります。
④ 配偶者同行休業制度
多様な人材の確保および社員のワークライフバランスの拡充をねらいとして、2019年1月から社員が配偶者の海外赴任に同行することができる「配偶者同行休業制度」を導入しました。本制度により、離職することなくライフプランと仕事の両立を実現することができるようになりました。
⑤ 治療と仕事の両立支援制度
治療を受けながら働く意欲のある社員に対する支援を目的とした「治療と仕事の両立支援制度」を2020年1月に導入しました。本制度の適切な運用のため、「治療と仕事の両立支援ガイドライン」を策定し、治療と仕事の両立のために継続的に必要となる就業上の措置および治療への配慮を受けることができるようになりました。
⑥ 仕事と家庭の両立支援制度の一覧
育児休業制度(出生時育児休業制度含) | 一定の要件のもと、最長で法定を6ヶ月上回る、子が2歳6ヶ月になるまでの期間休業することができるまた、育児休業とは別に、出生時育児休業(産後パパ育休)を、子の生後8週間のうち子育てパートナー休暇(有給)と合わせて4週間(28日)まで取得することができる |
---|---|
妊娠~育児にかかる有給休暇制度 | 通院休暇:定期検診や保健指導を受けるために通院休暇を取得することができる(産前取得分は有給) |
母性保護特別休暇:妊娠中および産後1年以内の女性社員は、10日間を限度とする母性保護特別休暇を取得することができる(有給) | |
子育てパートナー休暇:育児への参画を目的に、子が生後8週間の期間にある男性社員は連続5日間の休暇を取得することができる(有休) | |
小児看護休暇:法定の日数とは別に、小学校1年生から小学校3年生までの子について、人数にかかわらず5日取得可能(法定日数含め1休暇年度5日まで有給) | |
育児勤務制度 | 子が小学校3年の年度末に至るまでの期間、勤務時間の短縮、時差出勤、時間外勤務免除の措置を受けることができる |
経済的支援制度の整備 | 不妊治療による高額の費用負担や、育児休業中から復職期にかけての経済的不安の緩和を目的として融資を受けることができる。また、育児休業中の無給期間、賞与の一部の貸与を受けることができる |
原職復帰制度 | 育児休業者が復帰する際、職場を原職またはその相当職とする |
利用促進のための情報提供 | イントラネット上に、DICの両立支援への考え方、諸制度の概要、利用方法などを分かりやすく解説したウェブサイトを開設 |
介護休業制度 | 介護のための休業期間を最長で法定の93日を上回る「1年間」に設定また6回までの分割取得も可能 |
介護勤務制度 | 休業せずに介護する社員は、3年間まで1日最大3時間勤務を短縮でき、時間外勤務免除は介護を要する期間無制限に適用可能 |
配偶者同行休業制度 | 1年以上海外に滞在する予定のある配偶者に同行するために、休業することができる休業期間は1年以上3年間を限度とし、在職中1回限り取得可能 |
勤務地域限定制度 | 一般社員・管理職ともに、出産・育児、介護などの理由から、転居を伴う転勤に対応不可である場合、勤務地域限定の取り扱いを受けることができる |
治療と仕事の両立支援制度 | 治療と仕事の両立のために継続的に必要な、就業上の措置や治療への配慮を受けることができる |
半日・時間単位の年次有給休暇制度 | 年次有給休暇を半日単位で取得することができる。また、5日分を限度として時間単位で取得することができる |
保存有給休暇制度 | 時効消滅する年次有給休暇を上限30日まで保存し、本人の傷病および家族の介護や子の看護、不妊治療等に使用することができる |
⑦ 育児休業制度・子育てパートナー休暇制度利用実績
DICでは両立支援制度の整備とその活用のための環境整備を推進した結果、育児休業制度を利用する社員の復職率はここ数年100%となっています。また、配偶者が出産した社員が取得する「子育てパートナー休暇」についても利用者の増加が進んでいます。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
育児休業制度利用者 | 2017年度: 35人 (0人) |
2018年度: 21人 (4人) |
2019年度: 28人 (4人) |
2020年度: 22人 (3人) |
2021年度: 25人 (4人) |
2022年度: 55人 (28人) |
2023年度: 62人 (40人) |
子育てパートナー休暇制度利用者 | 2017年度: 77人 | 2018年度: 81人 | 2019年度: 86人 | 2020年度: 84人 | 2021年度: 77人 | 2022年度: 87人 | 2023年度: 94人 |
- ( )は育児休暇制度を利用した男性の人数です。
⑧ 長時間労働の防止と年次有給休暇の取得促進
DICでは勤務管理システムを活用し、ICカードによる入退場の記録をもとに労働時間の適正な管理を行っています。長時間労働の防止策として、労使で目安とする一定の時間外労働時間(休日労働含む)に接近した場合、または時間外労働時間が月間70時間を超過した場合、上司である管理職および担当役員にアラートを発信しています。業務内容や長時間労働の原因、具体的な改善策などの報告を受け、労働組合と情報共有する体制を構築して長時間労働の抑制・削減につなげています。また、年次有給休暇については、各事業所で取得奨励日や計画取得日を設けるなど、全社的に取得を促進しています。
⑨ 月平均時間外労働時間と有給休暇取得状況
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
時間外労働月平均時間(一人当たり) | 2017年度: 12.2時間 | 2018年度: 12.0時間 | 2019年度: 10.8時間 | 2020年度: 10.1時間 | 2021年度: 12.3時間 | 2022年度: 12.4時間 | 2023年度: 11.9時間 |
有給休暇年間平均付与日数 | 2017年度: 18.8日 | 2018年度: 18.6日 | 2019年度: 18.7日 | 2020年度: 18.7日 | 2021年度: 18.9日 | 2022年度: 18.8日 | 2023年度: 18.4日 |
有給休暇年間平均取得日数 | 2017年度: 12.0日 | 2018年度: 12.5日 | 2019年度: 13.3日 | 2020年度: 11.8日 | 2021年度: 12.1日 | 2022年度: 13.4日 | 2022年度: 13.8日 |
有給休暇年間取得率 | 2017年度: 63.8% | 2018年度: 67.2% | 2019年度: 70.9% | 2020年度: 63.1% | 2021年度: 64.0% | 2022年度: 71.3% | 2023年度: 75.1% |
2. 健康経営
DICグループでは健康経営宣言のもと、社員が心身ともに健康でいきいきと働くことのできる環境の整備を積極的に推進しています。社員の健康はDICグループの持続的な成長を力強く実現していくための重要なテーマであると考えており、今後も創意工夫による施策を展開していきます。
事業所の社員食堂が「スマートミール」に認証
DIC堺工場・埼玉工場・館林工場・群馬工場が、「健康な食事・食環境」認証制度の「給食部門」で、最高ランクの「3つ星」を取得しました。これは日本栄養改善学会・日本給食経営管理学会など複数の学会で構成される認証委員会が、健康に資する要素を含む栄養バランスのとれた食事(通称:スマートミール)を継続的かつ健康的な空間で提供する店舗・事業所などを認証するものです。
同制度では、スマートミールの基準を満たすメニューの提供、運営体制の整備、分かりやすいプロモーションなどの必須項目と「健康な食事・食環境」の推進に関するオプション項目のうち10以上を満たした店舗・事業所等が「3つ星」として認証されます。

社員とのつながり
DICグループでは、デジタルインフラ上でのコミュニケーションチャンネル(グループ内チャット、イントラネット等)を活用して、グループ社員とのコミュニケーションの活性化に努めました。
グローバルコミュニケーション
世界中のDICグループ社員へグループのフィロソフィーである「The DIC Way」の浸透を図るため、The DIC Way行動指針アワードを立ち上げ、2023年度も開催しました。行動指針に合致した優れた行動に対しての推薦がグループ社員から数多く寄せられ、金、銀、銅の受賞者が選ばれました。2024年度には創業記念式典での対面での表彰およびその優れた行動の発表会を行うことで、グループのさらなる一体感の醸成を図ります。
社内報
DICグループにおける一体感の醸成を目指して、デジタル社内報“Better Tomorrows”を、本社、3地域統括と協働で運営・発行しています。経営目標である経営ビジョン、DIC Vision 2030に向かって活動する社員の姿や、グローバルに広がるDICグループの技術・製品・ビジネス、人・企業文化を共有してグループ社員のコミュニケーションの促進に役立てました。
マスメディアとのつながり
DICグループでは、お客様、株主・投資家、地域・社会などのステークホルダーに対する情報の伝達手段として、パブリシティ活動を強化しています。自社からの積極的な情報開示を客観的視点である報道につなげることにより、ステークホルダーの理解深化に加えて、社員の一体感醸成につながることを期待しています。
2023年度は事業買収、新製品、設備投資、業績、サステナビリティなどのニュースリリースを配信するとともに、DIC Vision 2030で思い描く長期ビジョンを、取材等を通じて積極的に発信することで、化学の領域を超えた価値の提供により、豊かさと持続可能性の両立を目指す当社の姿をご理解いただくことに努めました。
