地球温暖化防止への取り組み(2023年度の主な活動)
2023年度の主な活動と実績
01DICグループのエネルギー使用量と温室効果ガス排出量(Scope1,2)の実績
2023年度のエネルギー使用量は、12,799,823GJ、CO₂排出量は534,889トンでした。生産数量1トン当たりのCO₂排出量を指標化したCO₂排出原単位は233.0kg-CO₂/tでした。
2023年度のCO₂排出量削減目標を達成できた理由としては、日本でグリーン電力の導入が拡大したことや、インドネシアのカラワン工場で石炭ボイラーからLNGボイラーへ低炭素化したことがあげられます。
これは、ICP(社内カーボンプライシング)制度を設備投資案件へ取り入れるなど、今まで以上に積極的な省エネ・低炭素化施策に取り組んだ成果の現れといえます。
今後も引き続き高効率設備の導入や工程改善、設備稼働率の向上といった省エネ施策を実施するとともに、バイオマスなどのクリーンな燃料への転換や太陽光発電の導入といった再生可能エネルギーの採用を増やしていく計画です。取り組みの概要については次項以降で後述します。
また、サステナビリティ委員会にて国内DICグループの全事業所にグリーン電力の導入を決定いたしました。これに伴い、2022年11月より、DIC本社ビル(ディーアイシービル)および第2ディーアイシービルの購入電力をグリーン電力に切り替えました。さらに、2023年4月から国内DICグループの他事業所でも順次グリーン電力への切り替えを進め、合計34事業所へと拡大しました。今後は、海外でもグリーン電力の導入の検討を進めていきます。
なおCO₂排出量(Scope1&2)は、第三者機関による検証を受けています。
CO₂排出量の増減要因について
CO₂ 増減要因 | CO₂増減量(トン) | 削減率(%) | ||
---|---|---|---|---|
国内 | 日本:グリーン電力化 | -62,533 | -71,820 | 10.0 |
日本:事業所における省エネ | -6,373 | |||
日本:生産数量減少 | -2,914 | |||
海外 | AP:インドネシアでの石炭ボイラーからLNGボイラーへ更新 | -22,695 | -44,269 | 15.8 |
AP:インドでのPPA導入 | -1,407 | |||
AP:グリーン電力化 | -2,021 | |||
AP:事業所における省エネ | -1,872 | |||
AP:生産数量減少 | -13,549 | |||
AP:その他要因(事業所の再構築) | -2,725 | |||
中国:事業所における省エネ | -2,708 | 9,541 | ||
中国:事業買収 | 7,770 | |||
中国:生産数量増加 | 2,693 | |||
中国:その他要因(新規設備投資等) | 1,786 | |||
Sun:生産数量減少 | -78,764 | -78,764 | ||
その他海外:生産数量減少 | -244 | -244 | 25.8 | |
CO₂増減量 合計 | -185,555 | |||
2022年度 CO₂排出量(グローバル) | 720,444 | |||
2023年度 CO₂排出量(グローバル) | 534,889 |
地域ごとの活動報告
日本国内の活動
国内DICグループにおける再生可能エネルギーの大半は、バイオマスボイラー、風力発電、太陽光発電(PPA含む)によるものです。2023年度は、これらの再生可能エネルギー設備由来のエネルギーは549千GJ(原油換算量14,171㎘)となり、国内DICグループで消費するエネルギー(熱・電気)のうち、12.4%を賄っています。また、CO₂排出量削減効果は、38,069t-CO₂となり、これは国内DICグループのCO₂総排出量の21.8%を再生可能エネルギーで削減した計算になります。
国内DICグループのオフィス・研究所は20事業所(総合研究所除く)ありますが、2023年度のエネルギー使用量は前年比で1.6%減少しました。減少した要因としてオフィス・研究所でも省エネに取り組んだことがあげられます。全般的に取り組んだ省エネ施策は、①古くなった照明器具や空調機器をトップランナー基準に準拠した高効率タイプにリプレイス、②照明の不要時消灯やエアコンの温度設定を徹底、③ビル管理会社と協働で、「こまめな」省エネ活動に取り組んだことです。さらに、④2021年11月よりWSR2020プロジェクトの一環で開始した、通年でノーネクタイ・ノージャケットの服装を可とした活動も継続して行いました。
また、2023年度は国内33事業所で新たに再生可能エネルギー由来電力を導入し、大幅なCO₂排出量を削減しました。本取り組みを加えたCO₂排出量削減効果は100,601t-CO₂となり、国内DICグループのCO₂排出量は、前年比34.5%減少となりました。今後も、DIC NET ZERO 2050で公約いたしましたCO₂排出量削減の新しい中長期目標の達成に向けて、積極的に活動していきます。
欧州地域の活動
温室効果ガス排出量を削減するためにサンケミカル社が行った持続可能性に関連する投資の一例として、サンケミカル社ウィーン工場では、古い2台の蒸気発生ボイラーを、よりエネルギー効率の高い小型のモデルに交換しました。この新しいボイラーは、既存の熱回収インフラストラクチャーに統合され、CO₂換算で年間300トンの削減につながっています。
環境影響削減の他の例としては、エネルギー効率化プロジェクトがあり、これによりサンケミカル社は環境影響とコストの両方を削減することができています。廃熱の回収と再利用は、多くの施設で特に重視されている手法です。

AP地域の活動
インドネシアのPT. DIC Graphicsカラワン工場で石炭ボイラーをLNGボイラーに更新しました。燃料の低炭素化により排出するCO₂量の削減に大きく貢献しています。また、同工場ではヤシ殻を利用したバイオマスボイラーを保有しており、環境に配慮した生産活動を行っています。
DICグループの再生可能エネルギーへの取り組み
再生可能エネルギーによるCO₂排出量削減推移
単位 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|
再生可能エネルギー(熱利用) (バイオマス燃料(熱利用)) |
t-CO₂ | 35,578 | 37,512 | 39,742 | 36,192 |
再生可能エネルギー(自家発) | t-CO₂ | 18,332 | 17,418 | 12,568 | 6,874 |
再生可能エネルギー(グリーン電力等) | t-CO₂ | 0 | 0 | 6,009 | 64,554 |
再生可能エネルギー(合計) | t-CO₂ | 53,909 | 54,929 | 58,319 | 107,620 |
DICグループCO₂排出量 | t-CO₂ | 551,049 | 588,985 | 720,444 | 534,889 |
再エネ+DICグループCO₂排出量 | t-CO₂ | 604,959 | 643,914 | 778,763 | 642,509 |
再エネによるCO₂削減率 | % | 8.9% | 8.5% | 7.5% | 16.7% |
バイオマス燃料(電気利用) | t-CO₂ | 7,739 | 6,542 | 7,277 | 1,100 |
太陽光発電 | t-CO₂ | 8,165 | 8,054 | 2,320 | 3,072 |
風力発電 | t-CO₂ | 2,025 | 2,451 | 2,683 | 928 |
小水力発電 | t-CO₂ | 403 | 371 | 288 | 1,774 |
再生可能エネルギ-(自家発) | t-CO₂ | 18,332 | 17,418 | 12,568 | 6,874 |


02サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(Scope3)
DICグループではサプライチェーンを通じたCO₂排出量削減の重要性を認識し、関連するすべてのカテゴリーについて、その把握と削減に取り組んでいます。また、すべてのカテゴリーについて、その算出方法の見直しによる精緻化を進めています。
2023年度 サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量 (Scope3)(DICグループ)
カテゴリーNo | カテゴリー名称 | 排出量(t-CO₂) |
---|---|---|
1 | 購入した原材料・サービス | 4,658,043 |
2 | 資本財 | 164,043 |
3 | Scope1, 2に含まないエネルギー | 136,579 |
4 | 上流での輸送・配送 | 259,542 |
5 | 事業活動で排出された廃棄物 | 69,692 |
6 | 出張 | 2,893 |
7 | 雇用者の通勤 | 6,825 |
9 | 下流での輸送・配送 | 308 |
10 | 販売した製品の加工 | 144,565 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 1,268,613 |
15 | 投資 | 17,626 |
購買における取り組み
DICグループは「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」を策定・周知し、取引先へ温室効果ガスの排出量削減を働きかけています。また各種調査を通じて、その活動状況や削減目標を確認するとともに、活動の啓発を進めています。
原料単位での取り組みとしては、調達原料のカーボンフットプリントの調査やバイオ原料・リサイクル原料の探索を推進しています。
詳細は「持続可能な調達」の「持続可能な原料への取り組み」の項目をご参照ください。
物流における取り組み
日本国内においては、使用トラックの大型化や積載効率向上を進めるとともに、モーダルシフトを積極的に推進し、トラック、鉄道、船の組み合わせによる効率輸送を継続して実施しました。また海外においては各国の実情に沿った効果的な取り組みを進めています。
長期的には、次世代モビリティの利用による温室効果ガス排出削減も見据え、輸送手段の多様化を積極的に検討します。
製品カーボンフットプリント算出に向けた取り組み
カーボンニュートラルを実現するためには、サプライチェーン全体でのCO₂排出量の削減が重要であり、個々の企業、個々の製品がどれだけCO₂を排出しているのかを算出し、削減していく必要があります。製品カーボンフットプリント(PCF)の算定には、ISO14067:2018やGHG Protocol等の国際ルールはあるものの、解釈の余地のある箇所や明記されていない箇所があり、算定を行う企業が自ら解釈し、独自に具体的な算定方法を設定する必要があります。DICグループでは、サンケミカル社と欧州の非営利団体Together for Sustainability(TfS)や経済産業省・環境省のガイドラインなどの情報を共有した上で、DICグループとしての統一したPCF算出のガイドラインを策定し、PCF算定を実施しています。2023年度はDICグループで1,809製品(DICは179製品、サンケミカル社は1,630製品)のPCFを算出し顧客に提供しています。
製品の削減貢献(Avoided Emission)
削減貢献(Avoided Emission)とは、製品が使用される場面などでCO₂の排出削減に貢献することです。例をあげると、車体の軽量化による燃費向上に貢献する製品や、断熱作用による冷暖房エネルギーの削減に貢献する製品などがあります。企業の活動を通じた気候変動の緩和を可視化する評価項目として、近年注目されています。まだまだ算定方法の精緻化や信頼性向上などの点で改善の余地はありますが、サプライチェーンを通じた脱炭素社会への寄与度を明らかにすることのできるこの項目について、適切に表現することを進めていきます。
イノベーション
オープンイノベーションを活用し、当社製品のマテリアルおよびケミカルリサイクルと、CO₂カーボンリサイクルによる原料化を推進して、DIC Vision 2030に掲げるカーボンネットゼロを実現し、地球環境と社会のサステナビリティに貢献していきます。
オゾン層対策
代替フロンの「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」は、機器・設備の冷媒として広く普及しています。しかし、HFCはオゾン層破壊物質ではないとはいえ、CO₂の100倍~10,000倍以上の温室効果があり、HFCの影響による今世紀末までの平均気温上昇は、約0.5℃分と推計されています。
このような中で、2016年10月、ルワンダのキガリで開催された「モントリオール議定書」の第28回締約国会議においてHFCの生産および消費量の段階的削減義務を定める改正(キガリ改正)が行われました。これに伴い、日本でもオゾン層保護法が改正されました。キガリ改正は日本を含む156ヶ国が批准(2024年1月11日現在)。20ヶ国以上の締結という発効条件を満たしているため、2019年1月1日に発効されました。
日本国内においては、フロン回収・破壊法の法改正を経てフロン排出抑制法が2015年4月に施行されており、フロン類の漏えい量把握と一定量以上フロン類を漏えいさせた者からの報告が義務化されました。さらに2020年4月より改正フロン抑制法が施行され、ユーザーがフロン回収を行わない違反に対する直接罰が導入されています。
国内DICグループの2023年度の漏えいフロン量はCO₂排出量換算値で452トン(1事業所または1企業の漏えい量が1,000トン以上で国に報告義務あり)でした。漏えいフロン量はフロン排出抑制法が施行された2015年度から管理を行っていますが、これまでは国への報告義務が必要な水準以内を下回って推移しています。
2023年度には、これらのフロン排出抑制法の遵守活動が認められ、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構により実施された「第3回JRECOフロン対策格付け」でもっとも優秀なAランク企業に3年連続で選定されています。
今後もDICグループは、継続した法遵守活動とともに、空調機器選定時においてノンフロンなど環境負荷の低い冷媒を選定することに努めるなど、漏えいフロン量の削減に取り組んでまいります。

データ集
項目 | 単位 | バウンダリー | 2019年度実績 | 2020年度実績 | 2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度実績 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
GJ 換算エネルギー使用量 | 1,000GJ | 日本 | 4,184 | 3,827 | 4,183 | 4,028 | 4,447 |
中国 | 1,056 | 1,036 | 1,197 | 1,066 | 1,110 | ||
AP | 1,623 | 1,606 | 1,835 | 1,650 | 1,178 | ||
サンケミカル | 3,784 | 3,791 | 3,196 | 7,767 | 6,017 | ||
その他 | 69 | 118 | 63 | 58 | 48 | ||
グローバル | 10,717 | 10,379 | 10,474 | 14,569 | 12,800 | ||
エネルギー原単位 | GJ/t | 日本 | 3.706 | 3.733 | 3.656 | 3.687 | 4.391 |
中国 | 5.574 | 5.698 | 4.749 | 4.881 | 3.914 | ||
AP | 6.810 | 7.151 | 7.389 | 7.331 | 5.825 | ||
サンケミカル | 4.371 | 4.705 | 3.739 | 7.603 | 7.557 | ||
その他 | 133.440 | 3.030 | 108.223 | 110.776 | 102.070 | ||
グローバル | 4.423 | 4.559 | 4.189 | 5.695 | 5.577 | ||
CO₂排出量 | t | 日本 | 232,028 | 209,018 | 224,916 | 208,231 | 136,412 |
中国 | 63,000 | 60,163 | 70,342 | 62,457 | 71,998 | ||
AP | 122,812 | 123,227 | 144,107 | 127,851 | 83,583 | ||
サンケミカル | 173,146 | 153,374 | 147,553 | 319,946 | 241,182 | ||
その他 | 2,107 | 5,267 | 2,068 | 1,958 | 1,715 | ||
グローバル | 593,093 | 551,049 | 588,985 | 720,444 | 534,889 | ||
Scope1 | t | 日本 | 135,428 | 118,786 | 135,612 | 128,458 | 112,591 |
中国 | 14,004 | 13,098 | 15,287 | 14,635 | 22,896 | ||
AP | 66,199 | 69,597 | 88,575 | 76,127 | 44,028 | ||
サンケミカル | 53,780 | 50,283 | 51,503 | 121,361 | 97,600 | ||
その他 | 1,236 | 1,299 | 1,085 | 1,029 | 944 | ||
グローバル | 270,647 | 253,064 | 292,063 | 341,610 | 278,059 | ||
Scope2 | t | 日本 | 96,600 | 90,231 | 89,304 | 79,773 | 23,821 |
中国 | 48,996 | 47,065 | 55,054 | 47,822 | 49,102 | ||
AP | 56,613 | 53,630 | 55,531 | 51,725 | 39,555 | ||
サンケミカル | 119,366 | 103,091 | 96,050 | 198,585 | 143,582 | ||
その他 | 871 | 3,967 | 982 | 929 | 771 | ||
グローバル | 322,446 | 297,986 | 296,922 | 378,834 | 256,830 | ||
CO₂原単位 | kg/t | 日本 | 206 | 204 | 197 | 191 | 135 |
中国 | 332 | 331 | 279 | 286 | 254 | ||
AP | 515 | 549 | 580 | 568 | 413 | ||
サンケミカル | 200 | 190 | 173 | 313 | 303 | ||
その他 | 4,053 | 135 | 3,579 | 3,731 | 3,616 | ||
グローバル | 245 | 242 | 236 | 282 | 233 |
※ 2022年度からC&E 含む
※ 2023年度からエネルギーに非化石、再エネ含む
※ 数値は四捨五入しているため、総数と内訳の合計が一致しない場合があります