2020年度の主な活動
01DICグループのエネルギー使用量とCO₂排出量の実績(グローバル)
DICグループ(グローバル)における2020年度の実績は、エネルギー使用量は前年比3.1%減少(2013年度比16.9%減少)しました。CO₂排出量は同4.3%減少(同23.6%減少)して552,123トンでした。生産数量1トン当たりのCO₂排出量を指標化したCO₂排出原単位は同0.6%増加(同16.9%減少)して271.7kg-CO₂/tでした。
DICグループの生産品は、インキ・ポリマ・顔料・液晶・エンジニアリングプラスチック・コンパウンドなど多種多様です。最近の傾向として、生産工程でエネルギーを多く必要とするファインケミカル製品が増加傾向にあり、比較的エネルギーを必要としない汎用製品のウエイトが減少傾向にあります。
このような状況の中でCO₂排出量を年度目標以上に削減できたのは、コロナ禍での生産数量低下以外に、新たなCO₂削減目標(2013年度比2030年度までに30%削減するために、現中期経営計画(2019〜2021年度)では2018年度比で年平均2.1%削減)を国内外の事業所で活動方針にブレークダウンし、今まで(過去は年平均1%削減目標)以上に積極的な省エネ・低炭素化施策に取り組んだ成果の現れといえます。取り組みの概要については次項以降で後述します。
今後も引き続き高効率設備の導入や工程改善、設備稼働率の向上といった省エネ施策を実施するとともに、バイオマスなどのクリーンな燃料への転換や太陽光発電の導入といった再生可能エネルギーの採用を増やしていく計画です。
02国内におけるエネルギー使用量とCO₂排出量
国内DICグループ(DIC+グループ会社の54事業所)における2020年度の実績は、エネルギー使用量は前年比8.5%減少(2013年度比13.0%減少)しました。生産数量1トン当たりのエネルギー使用量を指標化したエネルギー消費原単位は同0.8%増加(同10.5%減少)して3.733GJ/tでした。
一方、CO₂排出量は前年比12.0%減少(同20.5%減少)して194,364トンでした。生産数量1トン当たりのCO₂排出量を指標化したCO₂排出原単位も同3.1%減少(同18.2%減少)して189.6kg-CO₂/tでした。
CO₂排出量を大幅に削減できた要因は、コロナ禍による生産数量の減少の他に、事業所における省エネ施策を468件実施したことに加えて、堺工場など6事業所に新たに設置した太陽光発電設備(1,277kW)が稼働したことが大きな要因といえます。なお、2020年度時点の太陽光発電能力は計4,341kW(全量自家消費)に増加しました。
その他の増減要因として、千葉工場、DICデコール株式会社において、ロータリーキルンによる産廃焼却量(廃油・ 廃プラ)が前年より減少したため、産廃焼却に伴うCO₂排出量が減少しました。そのインパクトは前年度国内DICグループCO₂総排出量の2.7%に相当します。
【国内消費エネルギーの15.2%を再生可能エネルギーで】
国内DICグループにおける再生可能エネルギーの大半は、鹿島工場の再生可能エネルギー設備(バイオマスボイラ、風力発電、太陽光発電)によるものです。国内DICグループで消費するエネルギー(熱・電気)のうち、15.2%は再生可能エネルギーで賄っています。
2020年度は687千GJ(原油換算量17,725㎘)と前年度比で32.4%増加しました。
前年度比で増加した要因は、①2019年度に鹿島工場における風力発電設備(2,300kW×2基)の修理に2~3ヶ月要したこと、②2020年度は2019年度と比較してバイオマスボイラの蒸気生産量が増えたことが考えられます。
2020年度は新たに国内6事業所(堺、小牧、総研に加えて関係会社のDIC九州ポリマ株式会社、DIC北日本ポリマ株式会社北海道工場および東北工場)に計1,277kWの太陽光発電設備を導入(全量自家消費)しました。 国内事業所に設置した太陽光発電の発電能力は2020年度時点で4,341kWとなり、発電量も前年比で42%増加(3,064⇒4,341千kWh/年)しました。
これら国内DICグループで導入している再生可能エネルギーのCO₂削減効果は、2020年度で43,526t-CO₂となり、国内DICグループのCO₂総排出量の18.3%を再生可能エネルギーで削減した計算になります。今後も「2030年度のCO₂排出量を2013年度比30%削減」という中長期目標の達成に向けて、再生可能エネルギーを積極的に導入していきます。
2020年稼働の太陽光発電施設
03国内DICグループの自家発電力量について
国内DICグループで2020年度に消費した年間電力量は255,860千kWh(前年比5.6%減少)でした。その内の約25.0%(再エネ9.4%、コージェネ15.6%)は自家発電で賄っています。自家発電量は太陽光発電が増加しましたが、群馬工場のCGSを停止したため、前年度比で0.2%減少しました。
平成30年度新エネ大賞「新エネルギー財団会長賞・導入活動部門」受賞
2018年12月、DICは「平成30年度新エネ大賞」(主催:一般財団法人新エネルギー財団)において、鹿島工場の再生可能エネルギー利用率の高さが評価され、「新エネルギー財団会長賞・導入活動部門」を受賞しました。この表彰制度は、新エネルギーの導入促進・普及啓発を図るため、優れた事例を表彰するものです。
鹿島工場は、バイオマス発電・メタンガスボイラ・風力発電・太陽光発電など様々な再生可能エネルギー設備を導入し、消費電力(電気)の50%と消費熱量(熱)の80%を再生可能エネルギーで賄い、年間3万6,000トン以上のCO₂排出量を削減しています。
工場のエネルギー供給部署では、バイオマスおよびメタンガスボイラなどの燃焼効率の向上を目指し、保守管理技術のレベルアップとノウハウの蓄積に継続的に取り組んでいます。
今回の受賞は、こうした地道な努力が成果に結びついたもので、今後も鹿島工場で培ったノウハウを国内外の事業所へ展開し、再生可能エネルギー導入と利用率向上により温室効果ガスの排出量を削減していきます。
04オゾン層対策
代替フロンの「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」は、機器・設備の冷媒として広く普及しています。しかし、HFCはオゾン層破壊物質ではないとはいえ、CO₂の100倍〜10,000倍以上の温室効果があり、HFCによる影響で今世紀末までの平均気温上昇は、摂氏約0.5℃分と推計されています。
このような中で、2016年10月、ルワンダのキガリで開催された「モントリオール議定書」の第28回締約国会議においてHFCの生産および消費量の段階的削減義務を定める改正(キガリ改正)が行われました。これに伴い、日本でもオゾン層保護法が改正されました。キガリ改正は日本を含む105ヶ国が締結(2020年10月3日現在)。20ヶ国以上の締結という発効条件を満たしているため、2019年1月1日に発効されました。
日本国内においては、2015年4月にフロン回収・破壊法が改正され、フロン排出抑制法が施行され、漏えい量把握と報告が義
務化されています。
国内DICグループの2020年度の漏えいフロン量はCO₂排出量換算値で418トン(1事業所または1企業の漏えい量が1,000トン以
上で国に報告義務あり)でした。漏えいフロン量はフロン排出抑制法が施行された2015年度から管理を行っていますが、これまでは国への報告義務が必要な水準以内を維持しています。
なお、2020年度は古いチラー(冷凍水製造装置)の更新台数が少なかったため、例年より漏えいフロン量が減少しました(新品時フロン充填量 - 撤去時のフロン回収量= 漏えいフロン量として計上)。
DICグループは、空調機器選定時においてノンフロンなど環境負荷の低い冷媒を選定することに努め、漏えいフロン量の削減に取り組んでまいります。
05海外におけるエネルギー使用量とCO₂排出量
海外DICグループにおける2020年度の実績は、生産数量が前年比0.2%減少する中でCO₂排出量は前年比0.4%増加(2013年度比25.2%減少)し、CO₂排出原単位も同0.6%増加(2013年度比14.2%減少)しました。一方、エネルギー使用量は同0.3%増加(2013年度比19.0%減少)でした。
CO₂排出量が増加した要因は、各社がDICグループのCO₂排出量削減目標をブレークダウンして省エネ低炭素化活動を推進した
が、2020年度より中国と台湾の関係会社の工場の計上を開始したことがあります。
海外DICグループでは、各国・地域のインフラ事情や法規制が異なる中で、化学工業界の先進的な事例となるようエネルギーの削減・効率的な運用に取り組んでいます。
海外DICグループの事業所では着実に省エネ活動が定着してきており、①生産効率化 ②ベースロードの削減 ③設備更新時における高効率機種の選定 ④照明のLED化推進など、省エネ活動が活発化しています。
アジアパシフィック(AP)
AP地区の22事業所が排出するCO₂排出量は、DICグループ全体の19%を占め、2020年度は、生産数量が前年比5.7%減少(2013年度比5.2%減少)する中で、エネルギー使用量は同1.0%減少(2013年度比3.4%増加)し、CO₂排出量は同0.7%増加(2013年度比7.1%減少)しました。AP 地区ではエネルギー原単位が比較的高い顔料製品のマザープラントがインドネシアにあります。この事業所のエネルギー使用量とCO₂排出量はAP地区全体の50%を超えるウエイトゆえに、同事業所のAP 全体への影響度は非常に大きいといえます。そのため同事業所では、①燃料として使用する石炭の一部を2016 年からバイオマス燃料であるヤシ殻に置換してCO₂排出量を削減、② ISO50001(Energy Management System)の認証を取得して積極的に省エネマネジメントを実行しており、AP地区全体のCO₂排出量削減に貢献しています。
DIC本社はCO₂排出量削減目標達成に向けて①各事業所の省エネ計画の立案と実行 ②省エネ診断の継続実施(省エネテーマの発掘と実行支援) ③エネルギー管理の実用マニュアルと省エネ事例集の展開(管理定着と水平展開) ④条件の適した事業所を対象にした省エネ・低炭素化プロジェクトの立ち上げを促し、その支援を行っています。
中国
中国地区の18事業所が排出するCO₂排出量は、DICグループ全体の10%を占め、2020年度は、生産数量が前年比4.0%減少(2013年度比2.4%増加)の中で、エネルギー使用量は同1.9%減少(2013年度比3.9%増加)し、CO₂排出量は同2.0%減少(2013年度比5.8%減少)しました。
DIC広州油墨(印刷インキ製造)、常州華日新材(合成樹脂製造)、DIC中山樹脂(合成樹脂・金属石鹸製造)では原単位の大きな改善が見られました。
欧米
欧米(アフリカ含む)地区の122事業所が排出するCO₂排出量は、DICグループ全体の35%を占め、2020年度は、生産数量が前年比3.3%減少(2013年度比4.9%減少)する中で、エネルギー使用量は同0.2%増加(2013年度比20.9%減少)し、CO₂排出量は同0.3%減少(2013年度比27.6%減少)しました。
欧米では、これまで①バイオマス燃料(ランドフィルのバイオガス)の活用 ②太陽光発電・小水力発電の活用 ③省エネコンサルティングなどアウトソーシング手法を用いた省エネ推進、といった施策を実施してきているばかりではなく、④世界各地に点在する生産拠点の集約化や生産効率化に取り組んでおり、その成果が顕著に出た2014年度以降も引き続き取り組みを継続しています。
2019年度は、米国(サンケミカル社)のカールシュタッド研究所において約800kWの太陽光発電設備を新たに導入し、再生可能エネルギーの増進にも取り組みました。欧米の取り組み成果はDICグループの全体に大きく寄与しており、今後も引き続き省エネ低炭素化活動に取り組みます。
サンケミカルのサステナビリティへのアプローチ
サンケミカルでは環境への影響を考慮して、より持続可能な生産プロセスや製品の開発に向けた事業革新に取り組んでいます。生産プロセスについては、廃棄物の削減やエネルギーと水の使用量の削減、および安全性能の向上等が図れるように、温室効
果ガス排出量、エネルギーと水の消費量、カーボン・フットプリントの測定、安全実績の把握などに積極的に取り組んでいます。
各国の規制要件を満たし、持続可能性をより明確に定義と評価を行い促進するために、サンケミカルは自分たちの持つバリュー
チェーンにおいて、政府、業界、および取引先パートナーと、能動的かつ積極的に協業を進めます。
サンケミカルにとって、プロダクト・スチュワードシップとリスクマネジメントはサステナビリティ方針の重要な要素です。責任ある分析に基づくアプローチを継続的に行っていくことで、サンケミカルはこの分野のリーダーとしての責務を果たします。
またこうした努力を弛まなく継続することで、私たちはお客様の生産プロセスや製品をより持続可能なものとし、環境に対する効率を高めていくことができます。「品質」、「サービス」、「イノベーション」および「持続可能性の実現」に向けた同社の長年の努力は、私たちの日々の業務と、世界での私たちの戦略的方向性の両面において良い影響を及ぼすと考えています。
サンケミカルグループは親会社であるDICとともに、CO₂排出量レベルを2030年までに少なくとも30% 低下させるという長期の戦略目標を掲げています(京都議定書(1990-2012)以降の国際的な枠組み(パリ協定)に基づきベースラインを2013年としています)。このレベルの削減が、すべての産業にわたって実施されるとすれば、気候変動の影響を産業革命以来2.0℃の増加に制限することが可能です。目標を達成するために、サンケミカルは、製造工程における効率化に日夜努力するとともに、再生可能なエネルギーへの投資を重点的に行います。
サンケミカルにおける再生可能なエネルギーへの投資として太陽光パネルの導入
サンケミカルは、Onyx Renewable Partners 社と電力購入契約(PPA)を締結して、ニュージャージーにあるR&Dセンターの駐車場の建物の屋根と車庫の天蓋に太陽光パネルを設置しました。このクリーンエネルギーの利用は、同施設のカーボン・フットプリントの削減をもたらすと予測されます。この設備は2017年秋より計画を開始し、2018年1月に竣工、2018年3月に稼働を開始しました。
サンケミカルは、現在カールスタットの事業所で年間を通じた太陽光パネルの操業体制を完成し、晴天の日には、そこで電力需要の90%を生み出すことができます。この太陽光発電で、2018年5月14日から2019年5月13日の1年間に871MWhの電力を発電しました。これは、CO₂排出量を、1,358,092ポンド(616トン)削減したと推定することができます。
海外DICグループでも導入が進む再生可能エネルギー
世界的な脱炭素社会への潮流を背景に各国とも再生可能エネルギーの普及に力を注ぎ、欧米・アジアパシフィック・中国に展
開するDICグループ各社は、各国の助成・支援制度も活用してバイオマスボイラや太陽光発電などの導入に取り組んでいます。
2020年度は新たに1,277kWの太陽光発電設備が国内で稼働しました。DICグループが国内外で保有する太陽光発電設備の発
電能力(自家消費分)は2020年1月時点で6,445kW(日本4,341kW、海外2,104kW)となりました。2021年には国内で新たに
2.5MWの太陽光発電設備を導入する計画があり、今後も引き続きグローバルで太陽光発電設備の増設を進めていきます。
2020年度のグローバルでの再生可能エネルギーは、781,542GJ(前年度650,996GJ)となり、前年度比20.1% 増加しま
した(再生可能エネルギーによるCO₂削減量はグローバルで49,319トンです)。
生産活動以外(オフィス・研究所)の取り組み
国内DICグループのオフィス・研究所は22事業所(総合研究所除く)ありますが、2020年度のエネルギー使用量は前年比で0.3%減少しました。特に22地点の中でもっともエネルギー使用規模が大きいDIC本社で同11.4%削減しました。全般的に取り組んだ省エネ施策は、①古くなった照明器具や空調機器をトップランナー基準に準拠した高効率タイプにリプレイス、②照明の不要時消灯やエアコンの温度設定を夏28℃・冬22℃に徹底、③ビル管理会社と協働で「こまめな」省エネ活動に取り組みました。また、④ 2020年度もクールビズ・ウォームビズを実行しました。