2021年度の主な活動
01DICグループのエネルギー使用量と温室効果ガス排出量(Scope1&2)の実績(グローバル)
DICグループ(グローバル)における2021年度の実績は、エネルギー使用量は前年比0.9%増加(2013年度比16.1%減少)しました。温室効果ガス排出量は同1.1%減少(同→24.4%減少)して546,304トンでした。生産数量1トン当たりの温室効果ガス排出量を指標化した温室効果ガス排出原単位は同9.2%減少(同24.5%減少)して246.8kg-CO2/tでした。エネルギー使用量と温室効果ガス排出量(Scope1&2)は、第三者認証あり。
DICグループの生産品は、インキ・ポリマ・顔料・液晶・エンジニアリングプラスチック・コンパウンドなど多種多様です。最近の傾向として、生産工程でエネルギーを多く必要とするファインケミカル製品が増加傾向にあり、比較的エネルギーを必要としない汎用製品のウエイトが減少傾向にあります。
このような状況の中で、温室効果ガス排出量は目標には達しなかったが、温室効果ガス排出原単位を削減できたのは、新たな温室効果ガス削減目標(2030年度までに2013年度比50%削減するために、前中期経営計画(2019~2021年度)では2018年度比で年平均3.5%削減)を国内外の事業所で活動方針にブレークダウンことに加え、ICP(社内カーボンプライシング)制度を設備投資案件へ取り入れるなど、今まで以上(過去は年平均1%削減目標)に積極的な省エネ・低炭素化施策に取り組んだ成果の現れといえます。取り組みの概要については次項以降で後述します。
今後も引き続き高効率設備の導入や工程改善、設備稼働率の向上といった省エネ施策を実施するとともに、バイオマスなどのクリーンな燃料への転換や太陽光発電の導入といった再生可能エネルギーの採用を増やしていく計画です。
02サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(Scope3)
DICグループではサプライチェーンを通じた温室効果ガス削減の重要性を認識し、関連するすべてのカテゴリーについて、その把握と削減に取り組んでいます。また、カテゴリー1(購入した原材料・サービス)については、算出方法の見直しによる精緻化を進めています。
03取り組み事例
国内消費エネルギーの14.4%を再生可能エネルギーで
国内DICグループにおける再生可能エネルギーの大半は、鹿島工場の再生可能エネルギー設備(バイオマスボイラ、風力発電、太陽光発電)によるものです。国内DICグループで消費するエネルギー(熱・電気)のうち、14.4%は再生可能エネルギーで賄っています。
2021年度は703千GJ(原油換算量18,143㎘)と前年度比で2.4%増加しました。前年度比で増加した要因は、2021年から鹿島工場のバイオマスボイラ(発電・蒸気)をエネルギー効率改善のために蒸気生産を優先し稼働させたことがあります。
国内DICグループで導入している再生可能エネルギーのCO₂削減効果は、2021年度で44,881t-CO₂となり、国内DICグループのCO₂総排出量の18.2%を再生可能エネルギーで削減した計算になります。
今後も、DIC NET ZERO 2050で公約いたしましたCO₂削減の新しい中長期目標の達成に向けて、再生可能エネルギーを積極的に導入していきます。
海外DICグループでも導入が進む再生可能エネルギー
世界的な脱炭素社会への潮流を背景に各国とも再生可能エネルギーの普及に力を注ぎ、欧米・アジアパシフィック・中国に展開するDICグループ各社は、各国の助成・支援制度も活用してバイオマスボイラや太陽光発電などの導入に取り組んでいます。
2021年度のグローバルでの再生可能エネルギーは、796,291GJ(前年度781,542GJ)となり、前年度比1.9%増加しました(再生可能エネルギーによるCO₂削減量はグローバルで50,579トンです)。
生産活動以外(オフィス・研究所)の取り組み
国内DICグループのオフィス・研究所は21事業所(総合研究所除く)ありますが、2021年度のエネルギー使用量は前年比で1.0%。全般的に取り組んだ省エネ施策は、①古くなった照明器具や空調機器をトップランナー基準に準拠した高効率タイプにリプレイス、②照明の不要時消灯やエアコンの温度設定を夏28℃・冬22℃に徹底、③ビル管理会社と協働で「こまめな」省エネ活動に取り組みました。
また、④2021年11月より、WSR2020プロジェクトの一環で、ノーネクタイ・ノージャケットの服装を通年で可としました。また、2021年度の新しい取り組みとして、グループ会社であるDIC九州ポリマ(株)でエネルギー消費量の実質ゼロを目指すZEB※1(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)工法を取り入れた事務棟の建設を決定いたしました。新事務棟は、太陽光発電や断熱材、LED照明器具などを装備することで、一次エネルギー削減率104%(省エネ+創エネ)の実現を予定し、4段階のZEBシリーズ※2のうち最高ランクとなる『ZEB 』認証の取得いたしました。また、当社は経済産業省資源エネルギー庁が公募した2021年度のZEB実証事業に申請し、「ZEBリーディング・オーナー※3」に認定されました。DICグループでは初めての取り組み事例となり、今後もZEB対応の事務所建設に積極的に取り組む予定です。
- 「ZEB」とは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと
- 「ZEBシリーズ」とは、ゼロエネルギーの達成状況を省エネ・創エネの割合に応じて以下の4段階に定義したもの1)『ZEB 』(省エネ+創エネで100%以上削減)、2)Nearly ZEB(同75%以上削減)、3)ZEB Ready(省エネで50%以上削減)、4)ZEB Oriented(延床面積10,000 ㎡以上の建物で事務所等は省エネで40%以上削減)
- 「ZEBリーディング・オーナー」とは、自社事業拠点におけるZEB普及目標やZEB導入計画、ZEB導入実績を一般に公表する先導的建築物のオーナーのこと
購買における取り組み
DICは「DICグループCSR 調達ガイドライン」に基づき「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック(2020 年2月改訂Ver.3)」を作成し、これを用いたヒアリング活動を行うなど、サプライヤーへの温室効果ガスの排出削減を働きかけています。また、DIC 製品のカーボンフットプリントの把握と低減を目的に原料のカーボンフットプリントの試算やバイオ由来、リサイクル原料等の探索を推進しています。さらに、EcoVadisなどの共通の枠組みを通じた、サプライヤーとの対話を重ねることにより、温室効果ガスの削減を推進します。
物流における取り組み
日本国内においては、使用トラックの大型化や台数削減、積載効率向上を進めるとともに、モーダルシフトを積極的に推進し、トラック、鉄道、船の組み合わせによる効率輸送を行っています。また海外は各国の実情に沿った効果的な取り組みを進めます。長期的には、次世代自動車やLNG船等による温室効果ガス排出削減が予想される中、それら輸送手段の導入を積極的に検討します。
ICP(社内カーボンプライシング制度)を通じた取り組み
2021年度より導入したICP(社内カーボンプライシング制度)により、排出する温室効果ガス(Scope1&2)に価格づけを行い、それを加味した費用対効果を図るプロセスを進めています。各種設備投資においてCO2 排出の観点からの認識を高めて対応を進め、さらに環境投資を進める上で、削減効果を定量化することで、より正確な判断に基づく投資促進に取り組んでいきます。加えて、ICPの適用範囲拡大を目指し、エネルギー調達や合理化効果算定の中にも反映することを検討していきます。
サステナビリティ指標を通じた取り組み
製品の社会的価値を測るモノサシとして導入したサステナビリティ指標の縦軸では、各製品の環境負荷を定量化し、その削減を進めます。様々な環境負荷の中でも、特に温室効果ガス排出量(Scope1&2)にフォーカスをあて、2030 年および2050年の目標達成に向けた進捗を確実にしていきます。
製品カーボンフットプリント算出に向けた取り組み
サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の削減を進めるためには、当社の製品が、サプライチェーンの上流から提供するまでにどれだけ排出してきたのかを算出し、そこから課題を抽出し、対策を講じなければなりません。顧客・社会の要請に応えサプライチェーンを通じた対話に役立てるべく、この製品カーボンフットプリントを算出するスキーム作りを現在進めています。
製品の削減貢献(Avoided Emission)
削減貢献(Avoided Emission)とは、製品が使用される場面などで温室効果ガスの排出削減に貢献することです。例をあげると、車体の軽量化による燃費向上に貢献する製品や、断熱作用による冷暖房エネルギーの削減に貢献する製品などがあります。サプライチェーンを通じた削減に結びつくとともに、製品の提供価値の中でも重要なこの項目について、適切に表現することを進めていきます。
イノベーション
カーボンニュートラルを実現するため、二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素をリサイクルして原料に転換する開発を行っています。排出された二酸化炭素を積極的に回収し、新たに原料として再利用することで、化石燃料への依存度を減らして脱炭素社会の実現、DIC NET ZERO 2050に貢献していきます。
2021年度エネルギー管理優良事業者等石川県知事賞を受賞
2022 年2月、DIC北陸工場は「2021年度エネルギー管理優良事業者等の表彰」(主催:北陸電気使用合理化委員会(一般社団法人日本電気協会))において、エネルギー使用の合理化において顕著な成果をおさめたとして、エネルギー管理優良事業者として「石川知事賞」の表彰を受けました。この、エネルギー管理功績者・優良事業者等の推薦・表彰は、北陸電気使用合理化委員会が、関係機関・団体並びに富山、石川、福井の各県電気使用合理化委員会などと連携して電気の有効利用と産業振興に資するための活動の一環として行われています。
今回の受賞は、DIC北陸工場での地道な努力が成果に結びついたものです。今後もこれまで培ったノウハウを国内外の事業所へ展開し、エネルギーの有効利用およびDIC NET ZERO 2050の達成に向けて、DICグループで一層の努力を積み重ねてまいります。
オゾン層対策
代替フロンの「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」は、機器・設備の冷媒として広く普及しています。しかし、HFCはオゾン層破壊物質ではないとはいえ、CO₂の100倍~10,000倍以上の温室効果があり、HFCによる影響で今世紀末までの平均気温上昇は、摂氏約0.5℃分と推計されています。
このような中で、2016年10月、ルワンダのキガリで開催された「モントリオール議定書」の第28回締約国会議においてHFCの生産および消費量の段階的削減義務を定める改正(キガリ改正)が行われました。これに伴い、日本でもオゾン層保護法が改正されました。キガリ改正は日本を含む129ヶ国が締結(2021年11月10日現在)。20ヶ国以上の締結という発効条件を満たしているため、2019年1月1日に発効されました。
日本国内においては、2015年4月にフロン回収・破壊法が改正され、フロン排出抑制法が施行され、漏えい量把握と報告が義務化されています。
国内DICグループの2021年度の漏えいフロン量はCO₂排出量換算値で418トン(1 事業所または1 企業の漏えい量が1,000トン以上で国に報告義務あり)でした。漏えいフロン量はフロン排出抑制法が施行された2015年度から管理を行っていますが、これまでは国への報告義務が必要な水準以内を維持しています。
2021 年度には、これらのフロン排出抑制法への法遵守活動が認められ、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構により実施された第1回JRECOフロン格付けにおいて、調査対象1,350社中、Aランク企業16社の1社に選ばれました。
今後もDICグループは、継続した法遵守活動とともに、空調機器選定時においてノンフロンなど環境負荷の低い冷媒を選定することに努めるなど、漏えいフロン量の削減に取り組んでまいります。