気候変動

地球温暖化防止に向けて

07 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 13 気候変動に具体的な対策を

基本的な考え方

DICグループは、製品のライフサイクル全般を通じたCO₂排出量の削減に取り組むとともに、事業活動を通じて気候変動リスクの低減に努めます。

地球温暖化防止への取り組み

DICグループは地球環境と社会のサステナビリティを実現するために、2021年6月にDIC NET ZERO 2050を発表し、その中で2050年度カーボンネットゼロ宣言(Scope1,2)を行いました。また、2023年1月には、CO₂排出削減に関する世界的なイニシアチブであるSBTiの認証を受けました(C&E統合の影響に関しSBT事務局に連絡し対応していきます)。DICグループでは62の国と地域でグローバルに展開する185のグループ会社と一体となって、カーボンネットゼロの実現を目指してCO₂排出削減の活動に取り組みます。

  • SBTi(Science Based Target Initiative)は、企業等の設定する温室効果ガス排出削減目標が、「パリ協定」の求める水準に整合した目標であることを認定する国際イニシアチブ。CDP、国連グローバルコンパクト、世界資源研究所、世界自然保護基金の4つの機関が共同で運営している。

主な取り組みの目標と実績

事業所におけるCO₂排出量の削減(Scope1,2)

2023年度 目標 (DICグループ)
DICグループは事業所で排出するCO₂排出量(Scope1,2)を、2013年度を基準年として2030年度までに50%削減する(年平均2.9%削減)
2023年度 実績 CO₂排出量の削減
(DICグループ)
・2013年度比41.9%削減(921,386⇒534,889t-CO₂)
*2013年度の値はC&E推定値を入れて算出しています
評価 ★★
2024年度 目標 (DICグループ)
DICグループは事業所で排出するCO₂排出量(Scope1,2)を、2013年度を基準年として2030年度までに50%削減する(年平均2.9%削減)
2023年度 目標 (国内DICグループ)
エネルギー消費原単位の削減
(国内省エネ法遵守)
2013年度を基準年として2030年度時点にエネルギー消費原単位を17.0%削減する(年平均1.0%削減)
2023年度 実績 エネルギー消費原単位の削減
(国内DICグループ)
2013年度比8.6%削減
(4.170⇒3.811GJ/t)
*2013年度と同じ計算方法で比較しています。
評価
2024年度 目標 (国内DICグループ)
エネルギー消費原単位の削減
(国内省エネ法遵守)
2013年度を基準年として2030年度時点にエネルギー消費原単位を17.0%削減する(年平均1.0%削減)

【参考】
CO₂排出原単位の削減

  • 国内DICグループ:前年度比29.3%削減(190.6⇒134.7kg-CO₂/t)。2013年度比43.6%削減(238.7⇒134.7kg-CO₂/t)
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

推進体制

DICグループでは、日本、欧米地域(Sun Chemical社(米国、以下「サンケミカル社」)が担当)、アジアパシフィック地域、中国地域の4拠点で事業活動を通じたCO₂排出削減の取り組みを進めています。地域・拠点によってエネルギー事情や再生可能エネルギーへのアクセス等の条件が異なる中、当面の目標である2030年度の50%CO₂排出量削減(2013年度比、Scope1,2)への取り組みを進めています。
DICグループとして気候変動課題はもっとも重要な社会課題の一つと位置づけており、重要な施策は社長執行役員直轄で運営するサステナビリティ委員会に提案して、同委員会で審議および決定を行い、それに基づいて各拠点で取り組みを推進しています。日本においては、具体的なCO₂排出削減の実務について、国内DICグループ各社の各事業所に省エネルギー推進委員会を設置し、活動の進捗確認・討議・省エネパトロールなどを実施しています。また、各事業所の選抜メンバーで構成する省エネ脱炭素推進分科会を設けて、情報交換・新規省エネアイテムの調査と効果検証、さらには他事業所への水平展開などに取り組んでいます。この事業所単位の活動と全社横断的な活動の連携によってCO₂排出量の削減を進めています。
欧米地域においては、サンケミカル社が欧州、北米および中南米におけるCO₂排出削減の取り組みを進めています。
アジアパシフィック地域・中国地域においては、各地域でDICグループ全体の方針に基づく取り組みを行い、DIC本社生産企画部が、全体の進捗を管理する体制で進めています。

主な活動

  • DICグループ一丸となった活発でたゆまぬ省エネ活動の推進
  • DX推進による生産・ユーティリティー設備のエネルギーマネジメントの最適化
  • 省エネ性の高い設備の積極導入(高効率設備、ZEB対応建築物)
  • 条件の適した事業所への再生可能エネルギー設備の積極的導入(バイオマスボイラー、太陽光発電)
  • DICグループ各社への省エネ診断実施と省エネ施策の展開支援
  • 設備新増設時における省エネ性の高い設備の導入とルール化(環境投資、ICPの導入と活用)

サステナビリティ情報の開示

2023年1月の企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正により、有価証券報告書において、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄を新設し、サステナビリティ情報を開示することが求められることとなりました。気候変動はDICグループにとって重要な課題であるため、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の枠で開示していきます。
サステナビリティ開示は、その充実に向けて各国で取り組みが進められています。それらの状況変化に応じて、随時見直しながら、DICグループは適切な情報開示に努めていきます。

サステナビリティに関する考え方及び取組

ガバナンス サステナビリティ関連のリスク及び機会に対するガバナンス体制
戦略 サステナビリティ関連のリスク及び機会の項目とその対応策
リスク管理 サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価・管理するために用いるプロセス
指標と目標 サステナビリティ関連のリスク及び機会の実績を評価・管理するために用いる情報

金融審議会ディスクロージャーWG報告(2022年6月)を踏まえた内閣府令改正の概要より記載

01ガバナンス

DICグループでは社長執行役員直轄のサステナビリティ委員会を設置し、社会的要請に基づく重要課題への対応を担っています。また、サステナビリティ活動の強化を中心とする重要事項の審議を行っています。気候変動も重要な経営課題の一つとして認識しており、CO₂排出削減の中長期目標などは重要事項としてサステナビリティ委員会で審議しています。
サステナビリティ委員会は、社長執行役員が委員長を務め、副社長執行役員と生産統括本部長、技術統括本部長、経営戦略部門長、総務法務部門長、財務経理部門長、ESG部門長等の管理部門の長とともに、地域統括会社社長、各事業部門長・製品本部長が構成メンバーとして参加し、監査の一環として監査役1名が出席しています。年に4回開催されるサステナビリティ委員会の結果は、原則としてすべての議題について、取締役会に報告され、適切に監督されています。

2023年度サステナビリティ委員会での気候変動に関する主な議案

 年度 主な内容
2023年度
サステナビリティ
委員会
製品カーボンフットプリントの状況報告
SBT認定取得の報告
CO₂排出量削減計画
2022年度CO₂排出量に関するプログレス・レポート
GX-ETS登録データの報告

02戦略

国際社会では、急速に2050年カーボンニュートラルへの要請が高まり、今後競争ルールの変更を伴う社会システムの変化が予測されます。DICでは気候変動に伴うリスクや機会の重要性も意識して、サステナブルな事業戦略を推進しています。気候変動による影響は中長期的に顕在化する可能性が大きいため、2024年に実施したシナリオ分析に基づき、中長期的に事業に財務的な影響を及ぼすと考えられる主な気候関連リスクと気候関連機会の項目への認識も深めています。それら中長期的な視点で予測されるリスクと機会への認識を高めながら、時間軸を踏まえた戦略の立案と実行に結びつけていきます。
DICグループはカーボンニュートラル社会の実現をマテリアリティに掲げており、自社使用エネルギーの削減はもとより、製品カーボンフットプリントの提供を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

主なリスク管理の視点

  • 今後カーボンプライシングが導入された場合、原燃料価格や電力価格の上昇、輸出品目の課税措置等が課され、CO₂排出量が直接的なコスト圧迫要因となります。
  • 気候変動に伴う脱炭素社会への移行リスクとして、サーキュラーエコノミー等による急激な需要の変化が起きた場合、これへの対応ができなければ大幅な事業収益の低下をもたらす要因となります。
  • 極端な物理的リスクとして、異常気象による気象災害が深刻化・頻発化すると、事業所の稼働停止、原料調達の不安定化等により製品供給不能や供給の遅延を生じる可能性があり、事業収益の低下と事業継続の可否に関わるリスクとなる可能性があります。

CO₂排出削減の移行計画

DICグループはCO₂排出削減目標を持つ企業として、次のような移行計画を持って活動を進めます。
この進行にあたり、DICグループでは現在、2030年までに約130億円の環境投資の実施(日本国内を対象)を計画しています。

  • Scope1:CO₂排出量の算定にあたっては、日本は環境省の排出係数を使用。その他の地域は、US EPA(U.S. Environmental Protection Agency)の排出係数を使用。
  • Scope2:電力のCO₂排出量の算定に当たっては、日本は環境省の排出係数を使用。北米はeGRIDの排出係数を使用。それ以外の地域は、IEA(2023年度版)の排出係数を使用。
  • 3つの施策の効果の算定は、2022年のCO₂排出量と生産数量、および2023年の生産数量を用いて、2023年のCO₂排出量を推定する手法で算出しています。また購入グリーン電力のCO₂排出量は、グリーン電力使用量にグリーン電力切り替え前などの排出係数を乗じて推定しています。
  • 2030年のCO₂排出量推計は、2022年排出量に無施策のまま、事業拡大した場合の推計値。

TCFDシナリオ分析

・シナリオ分析の条件

2024年にDICは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2023年3月に発表した第6次評価報告書に基づく気候シナリオSSP1-1.9、SSP2-4.5、SSP5-8.5と、2023年10月に国際エネルギー機関(IEA)が発表したWorld Energy Outlook 2023に基づく外部環境シナリオを参考に、2020年に公表したシナリオ分析結果を見直しました。前回の分析では2030年までを対象としていましたが、今回は2050年まで対象期間を延長しました。これらのシナリオが示唆する将来の気候変動とエネルギーの状況を踏まえ、次の3つの世界観(移行、適応、適応の限界)※1を設定し(下図)、それぞれの世界観のもとで当社にとってのリスクと機会、およびその対応策について分析をしました。

・3つの世界観

移行:地球温暖化を産業革命前より1.5℃上昇に抑えることを目標に、各国がCO₂排出量削減のための対策を劇的かつ即座に実施する。省エネや共同輸送など、効率的なエネルギー利用が求められる。カーボンプライシング※2は、多くの国で新たに始まり、拡大し、価格は上昇していくだろう。
適応:地球温暖化は2040年代半ばまで拡大し、1.5℃を超えるが2℃は超えない。地球の気温上昇へ適応するためには、レジリエントな対策と行動が必要である。遮熱や放熱といった対策は、適応の世界に有効だろう。現在100年に1度といわれる極端な気候現象は、10年に1度、あるいは1年に1度の確率になると予想される。
適応の限界:地球温暖化は2050年に2℃を超えてゆき、2100年には5℃に迫る。予期せぬ天候や気候の極端さが増大し、食糧不安や供給不安を引き起こし、何世紀にもわたって人々が暮らしてきた場所からの移住が余儀なくされる。こうした変化は、複合的、連鎖的で、国境を超えて生活の質に悪影響をもたらす。こうした悪影響から、パンデミックや紛争といった非気候リスクが増大されると予測される。

  • 適応と適応の限界の関係:気温の上昇に伴って、「適応」に続いて「適応の限界」が訪れ、適応の世界観から適応の限界の世界観へと連続的にシフトしていくことを想定している。
  • カーボンプライシング:2030年135USドル、2050年200USドル

各世界観におけるシナリオ分析結果

移行の世界観

R:リスクへの対策 O:機会への対策

リスク 機 会 対 策
政策と法律
カーボンプライシングの導入は世界中で実施されるだろう ・排出権取引、炭素税、炭素国境調整メカニズムなどの政策実施によりコストが増加する
・DIC グループの Scope1,2 の CO₂ 排出量は、2030 年には、非対策シナリオでは 1,221kt-CO₂ で 1 億 4,900万ドル、 対策シナリオでは 461kt- CO₂ で 6,300 万ドルに達すると予想される
エネルギー効率の改善とグリーン電力への移行と(購入と自家発電の両方を含む)、化石燃料削減を推進する R:適切な地域に適正な価格で炭素価格を適用し、CO₂ 排出削減を促進する
R:CO₂ 排出への支出を避けるため、 Scope1,2 からの排出は、電化と再生可能エネルギーの導入によって削減する
O:機能性の向上と、低炭素に貢献する製品を促進することにより、炭素価格の影響を軽減する製品を提供する
非財務情報の開示に対する需要は世
界的に高まるだろう
世界各国からの開示要請に対応するた めのシステム構築・運用に伴う費用が 発生する   R:欧州のCSRD への対応が求めら れ、2026年に報告する予定
技術革新
需要の変化が起こり、サーキュラー エコノミーが支配的な考え方になる ・世界的なプラスチック規制の導入により、使い捨てプラスチックの需要が減少する
・リサイクルが困難な素材の需要が減少する
・リサイクル可能なプラスチックや堆肥化可能なプラスチックの需要が増加する
・法的拘束力のある規制、課税、賦課金の導入を通じて、バイオ素材やリサイクル素材の利用が促進される
O: 顧客や消費者と共同で、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの検討を加速させる
O: バイオ素材や、製品のリサイクルを容易にする持続可能な素材開発に注力する
低炭素またはカーボンネガティブに 貢献する製品を開発する   低炭素またはカーボンネガティブ製品 や、顧客プロセスにおける低炭素化を 支援する製品に対する需要が高まる O: 低VOC、低エネルギー消費といっ た低炭素に貢献する製品を推進 する
行動変容
直接生産やサプライチェーンにおけ るCO₂ 排出削減の要請に応える必 要がある 1.5℃目標に向けたCO₂ 排出削減が始 まり、その流れはサプライチェーンを通 じても求められる   R:Scope1,2 の排出量50 % 削減、 Scope3のカテゴリー2、3、4、5、 12の排出量13.5%削減、Scope3 のカテゴリー1 のサプライヤーエ ンゲージメント率80%という目標 を実行している
R:私たちは1.5 ℃目標に対応した SBTへの移行を検討している
R:目標達成に向けて、省エネや再生 可能エネルギー設備への投資を継 続する
直接生産とサプライチェーンにおける生物多様性への取り組みが必要となる 生物多様性に配慮していない製品は市場から排除される   R:原材料や生産現場における生物多様性に配慮する

適応の世界観

R:リスクへの対策 O:機会への対策

リスク 機 会 対 策
政策と法律
現在の100年に1度の極端な気候現象は、10年に1度、あるいは1年に1度の確率に変化すると予想される ・頻発する気候関連災害によりサプライヤー施設の生産が停止する
・頻発する気候関連の災害や、それによる安全操業への懸念により自社工場の生産を停止する
・損害保険料が上昇する
R:主要原材料について、複数地域での2社共同調達を推進し、BCP対応を強化する
R:主要製品について、原材料と製品の十分な在庫を確保する
R:印刷インキやその他の生産施設を世界中に配置し、補完的な能力を確保する
R:高潮や洪水によって港湾施設が被害を受けた場合、その影響を最小限にとどめるために他社と協力する
R:沿岸地域に立地するサイトへの対策を強化する
慢性的状況
地下水資源が枯渇する 水に関するリスクの増大が懸念される地域では対策が必要になる R:水に関するリスクに対処するための対策を実施する。関連するトレーニングを提供することにより、BCPの有効性を強化する
気候変動はライフスタイルと消費パターンを一変させる 高温に適応した新しいライフスタイルが求められ、既存製品の需要が減少する可能性がある 高温に適応する新しいライフスタイルは、コーティング材や包装材、ヘルスケアにチャンスをもたらす O:気温上昇に伴う断熱、遮熱用製品 の需要に応える製品を開発する
O:食生活の変化は、飲料産業と食品(冷凍)用長寿命包装材料のビジネスの拡大・発展を促進する
O:ヘルスケアおよびライフサイエンス分野でのビジネスを拡大し、健康を促進する
生物多様性の喪失は、植物の不作を常態化させる 植物の不作による植物由来原料の供給が停止する R:レジリエンスを強化する

適応の限界の世界観

R:リスクへの対策 O:機会への対策

リスク 機 会 対 策
急性的状況
突発的な天候や気候の極端な変化は、公衆衛生や環境に問題を引き起こす ・熱中症による人材不足で工場操業に支障が出る
・極端な高温による火災やオーバーヒートなどにより、プラントが機能不全に陥る
R:関連するトレーニングを提供することにより、BCPの有効性を強化する
急性的状況
食料安全保障の観点から、食用植物を化学原料や燃料として利用することは難しくなる 食用の植物に由来する原料の使用が難しくなる R:バイオマスの原料を、食用から非食用に切り替える
気候変動が引き起こす不安定性は、気候以外のリスクを増大させる ・気温の上昇に伴う新たなパンデミックの出現が、通常の事業運営に支障を来たす
・食料供給や住居が不安定になると、紛争や暴動が起こり、通常の業務が停止する
R:関連するトレーニングを提供することにより、BCPの有効性を強化する
R:事業の戦略的縮小、中核資産、データ、危険化学物質の保護、避難手順、従業員の家族への支援などを含む緊急時計画の準備をする
R:競争相手よりも、入念に緊急時計画を準備する

シナリオ分析後の2020~2023年における取り組み

  • ICP(社内カーボンプライシング)の導入
    排出するCO₂に価格づけを行い、気候変動リスクを定量的に把握し、またCO₂排出削減に対してインセンティブとなるように、インターナルカーボンプライシング制度(ICP)の導入を決定。2021年度より、日本国内並びにAP、中国地域における投資額が5,000万円以上のCO₂排出量増減を伴う設備投資案件からICPを導入し、設備投資で得られる効果にCO₂排出削減コストを付加できる仕組みを構築
  • 株式会社エフピコと、プラスチック食品包装容器などの素材であるポリスチレンの完全循環型リサイクルの社会実装に向けた検討を本格化
  • サステナブルファイナンスによる資金調達
  • 国内34事業所でグリーン電力導入開始、インドネシアのカラワン工場にて、低炭素燃料ボイラー(石炭→LNG)の稼働開始などエネルギーの低炭素化を実施
  • 製品カーボンフットプリントの提供を開始し、提供エリアを拡大中
  • 省エネ・再エネ設備投資の一環として、新たに堺工場にバイオマスボイラーの導入を決定

03リスク管理

リスクを識別・評価しリスク管理を行うプロセス

DICでは、サステナビリティ活動の根幹に位置づける「サステナビリティ・テーマ活動」の中で、気候変動対応に関連するリスクについて認識し、その対応と評価、リスクの管理を行っています。
サステナビリティ委員会の直下の「サステナビリティ部会」にて重要なリスクと重要な機会の抽出と議論を行い、重要と認識された案件はサステナビリティ委員会に上程する仕組みとなっています。

04指標と目標

気候関連リスクおよび機会のうち、移行リスクを評価する重要なKPIとしては、Scope1,2を利用しています。世界的な脱炭素社会実現の動きが加速する中、積極的に脱炭素社会の実現に取り組んでいく決意のもと、DICグループは、Scope1,2のCO₂排出量の長期削減目標として「2030年度50%削減」および「2050年度カーボンネットゼロ」の実現を目指しています。

  • Scope1,2、2013年度の排出量を基準とする。

2023年度の主な活動と実績

01DICグループのエネルギー使用量と温室効果ガス排出量(Scope1,2)の実績

2023年度のエネルギー使用量は、12,799,823GJ、CO₂排出量は534,889トンでした。生産数量1トン当たりのCO₂排出量を指標化したCO₂排出原単位は233.0kg-CO₂/tでした。
2023年度のCO₂排出量削減目標を達成できた理由としては、日本でグリーン電力の導入が拡大したことや、インドネシアのカラワン工場で石炭ボイラーからLNGボイラーへ低炭素化したことがあげられます。
これは、ICP(社内カーボンプライシング)制度を設備投資案件へ取り入れるなど、今まで以上に積極的な省エネ・低炭素化施策に取り組んだ成果の現れといえます。
今後も引き続き高効率設備の導入や工程改善、設備稼働率の向上といった省エネ施策を実施するとともに、バイオマスなどのクリーンな燃料への転換や太陽光発電の導入といった再生可能エネルギーの採用を増やしていく計画です。取り組みの概要については次項以降で後述します。
また、サステナビリティ委員会にて国内DICグループの全事業所にグリーン電力の導入を決定いたしました。これに伴い、2022年11月より、DIC本社ビル(ディーアイシービル)および第2ディーアイシービルの購入電力をグリーン電力に切り替えました。さらに、2023年4月から国内DICグループの他事業所でも順次グリーン電力への切り替えを進め、合計34事業所へと拡大しました。今後は、海外でもグリーン電力の導入の検討を進めていきます。
なおCO₂排出量(Scope1&2)は、第三者機関による検証を受けています。

CO₂排出量の増減要因について

  
CO₂ 増減要因 CO₂増減量(トン) 削減率(%)
国内 日本:グリーン電力化 -62,533 -71,820 10.0
日本:事業所における省エネ -6,373
日本:生産数量減少 -2,914
海外 AP:インドネシアでの石炭ボイラーからLNGボイラーへ更新 -22,695 -44,269 15.8
AP:インドでのPPA導入 -1,407
AP:グリーン電力化 -2,021
AP:事業所における省エネ -1,872
AP:生産数量減少 -13,549
AP:その他要因(事業所の再構築) -2,725
中国:事業所における省エネ -2,708 9,541
中国:事業買収 7,770
中国:生産数量増加 2,693
中国:その他要因(新規設備投資等) 1,786
Sun:生産数量減少 -78,764 -78,764
その他海外:生産数量減少 -244 -244 25.8
CO₂増減量 合計 -185,555
2022年度 CO₂排出量(グローバル) 720,444
2023年度 CO₂排出量(グローバル) 534,889

地域ごとの活動報告

日本国内の活動

国内DICグループにおける再生可能エネルギーの大半は、バイオマスボイラー、風力発電、太陽光発電(PPA含む)によるものです。2023年度は、これらの再生可能エネルギー設備由来のエネルギーは549千GJ(原油換算量14,171㎘)となり、国内DICグループで消費するエネルギー(熱・電気)のうち、12.4%を賄っています。また、CO₂排出量削減効果は、38,069t-CO₂となり、これは国内DICグループのCO₂総排出量の21.8%を再生可能エネルギーで削減した計算になります。
国内DICグループのオフィス・研究所は20事業所(総合研究所除く)ありますが、2023年度のエネルギー使用量は前年比で1.6%減少しました。減少した要因としてオフィス・研究所でも省エネに取り組んだことがあげられます。全般的に取り組んだ省エネ施策は、①古くなった照明器具や空調機器をトップランナー基準に準拠した高効率タイプにリプレイス、②照明の不要時消灯やエアコンの温度設定を徹底、③ビル管理会社と協働で、「こまめな」省エネ活動に取り組んだことです。さらに、④2021年11月よりWSR2020プロジェクトの一環で開始した、通年でノーネクタイ・ノージャケットの服装を可とした活動も継続して行いました。
また、2023年度は国内33事業所で新たに再生可能エネルギー由来電力を導入し、大幅なCO₂排出量を削減しました。本取り組みを加えたCO₂排出量削減効果は100,601t-CO₂となり、国内DICグループのCO₂排出量は、前年比34.5%減少となりました。今後も、DIC NET ZERO 2050で公約いたしましたCO₂排出量削減の新しい中長期目標の達成に向けて、積極的に活動していきます。

欧州地域の活動

温室効果ガス排出量を削減するためにサンケミカル社が行った持続可能性に関連する投資の一例として、サンケミカル社ウィーン工場では、古い2台の蒸気発生ボイラーを、よりエネルギー効率の高い小型のモデルに交換しました。この新しいボイラーは、既存の熱回収インフラストラクチャーに統合され、CO₂換算で年間300トンの削減につながっています。
環境影響削減の他の例としては、エネルギー効率化プロジェクトがあり、これによりサンケミカル社は環境影響とコストの両方を削減することができています。廃熱の回収と再利用は、多くの施設で特に重視されている手法です。

2022年度 サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量
(DICグループ)

AP地域の活動

インドネシアのPT. DIC Graphicsカラワン工場で石炭ボイラーをLNGボイラーに更新しました。燃料の低炭素化により排出するCO₂量の削減に大きく貢献しています。また、同工場ではヤシ殻を利用したバイオマスボイラーを保有しており、環境に配慮した生産活動を行っています。

DICグループの再生可能エネルギーへの取り組み

再生可能エネルギーによるCO₂排出量削減推移

  単位 2020 2021 2022 2023
再生可能エネルギー(熱利用)
(バイオマス燃料(熱利用))
t-CO₂ 35,578 37,512 39,742 36,192
再生可能エネルギー(自家発) t-CO₂ 18,332 17,418 12,568 6,874
再生可能エネルギー(グリーン電力等) t-CO₂ 0 0 6,009 64,554
再生可能エネルギー(合計) t-CO₂ 53,909 54,929 58,319 107,620
DICグループCO₂排出量 t-CO₂ 551,049 588,985 720,444 534,889
再エネ+DICグループCO₂排出量 t-CO₂ 604,959 643,914 778,763 642,509
再エネによるCO₂削減率 % 8.9% 8.5% 7.5% 16.7%
バイオマス燃料(電気利用) t-CO₂ 7,739 6,542 7,277 1,100
太陽光発電 t-CO₂ 8,165 8,054 2,320 3,072
風力発電 t-CO₂ 2,025 2,451 2,683 928
小水力発電 t-CO₂ 403 371 288 1,774
再生可能エネルギ-(自家発) t-CO₂ 18,332 17,418 12,568 6,874
エネルギーミックスの状況
エネルギーミックスの状況

02サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(Scope3)

DICグループではサプライチェーンを通じたCO₂排出量削減の重要性を認識し、関連するすべてのカテゴリーについて、その把握と削減に取り組んでいます。また、すべてのカテゴリーについて、その算出方法の見直しによる精緻化を進めています。

2023年度 サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量 (Scope3)(DICグループ)

カテゴリーNo カテゴリー名称 排出量(t-CO₂)
1 購入した原材料・サービス 4,658,043
2 資本財 164,043
3 Scope1, 2に含まないエネルギー 136,579
4 上流での輸送・配送 259,542
5 事業活動で排出された廃棄物 69,692
6 出張 2,893
7 雇用者の通勤 6,825
9 下流での輸送・配送 308
10 販売した製品の加工 144,565
12 販売した製品の廃棄 1,268,613
15 投資 17,626

購買における取り組み

DICグループは「DICグループサステナビリティ調達ガイドライン」を策定・周知し、取引先へ温室効果ガスの排出量削減を働きかけています。また各種調査を通じて、その活動状況や削減目標を確認するとともに、活動の啓発を進めています。
原料単位での取り組みとしては、調達原料のカーボンフットプリントの調査やバイオ原料・リサイクル原料の探索を推進しています。
詳細は「持続可能な調達」の「持続可能な原料への取り組み」の項目をご参照ください。

物流における取り組み

日本国内においては、使用トラックの大型化や積載効率向上を進めるとともに、モーダルシフトを積極的に推進し、トラック、鉄道、船の組み合わせによる効率輸送を継続して実施しました。また海外においては各国の実情に沿った効果的な取り組みを進めています。
長期的には、次世代モビリティの利用による温室効果ガス排出削減も見据え、輸送手段の多様化を積極的に検討します。

製品カーボンフットプリント算出に向けた取り組み

カーボンニュートラルを実現するためには、サプライチェーン全体でのCO₂排出量の削減が重要であり、個々の企業、個々の製品がどれだけCO₂を排出しているのかを算出し、削減していく必要があります。製品カーボンフットプリント(PCF)の算定には、ISO14067:2018やGHG Protocol等の国際ルールはあるものの、解釈の余地のある箇所や明記されていない箇所があり、算定を行う企業が自ら解釈し、独自に具体的な算定方法を設定する必要があります。DICグループでは、サンケミカル社と欧州の非営利団体Together for Sustainability(TfS)や経済産業省・環境省のガイドラインなどの情報を共有した上で、DICグループとしての統一したPCF算出のガイドラインを策定し、PCF算定を実施しています。2023年度はDICグループで1,809製品(DICは179製品、サンケミカル社は1,630製品)のPCFを算出し顧客に提供しています。

製品の削減貢献(Avoided Emission)

削減貢献(Avoided Emission)とは、製品が使用される場面などでCO₂の排出削減に貢献することです。例をあげると、車体の軽量化による燃費向上に貢献する製品や、断熱作用による冷暖房エネルギーの削減に貢献する製品などがあります。企業の活動を通じた気候変動の緩和を可視化する評価項目として、近年注目されています。まだまだ算定方法の精緻化や信頼性向上などの点で改善の余地はありますが、サプライチェーンを通じた脱炭素社会への寄与度を明らかにすることのできるこの項目について、適切に表現することを進めていきます。

イノベーション

オープンイノベーションを活用し、当社製品のマテリアルおよびケミカルリサイクルと、CO₂カーボンリサイクルによる原料化を推進して、DIC Vision 2030に掲げるカーボンネットゼロを実現し、地球環境と社会のサステナビリティに貢献していきます。

オゾン層対策

代替フロンの「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」は、機器・設備の冷媒として広く普及しています。しかし、HFCはオゾン層破壊物質ではないとはいえ、CO₂の100倍~10,000倍以上の温室効果があり、HFCの影響による今世紀末までの平均気温上昇は、約0.5℃分と推計されています。
このような中で、2016年10月、ルワンダのキガリで開催された「モントリオール議定書」の第28回締約国会議においてHFCの生産および消費量の段階的削減義務を定める改正(キガリ改正)が行われました。これに伴い、日本でもオゾン層保護法が改正されました。キガリ改正は日本を含む156ヶ国が批准(2024年1月11日現在)。20ヶ国以上の締結という発効条件を満たしているため、2019年1月1日に発効されました。
日本国内においては、フロン回収・破壊法の法改正を経てフロン排出抑制法が2015年4月に施行されており、フロン類の漏えい量把握と一定量以上フロン類を漏えいさせた者からの報告が義務化されました。さらに2020年4月より改正フロン抑制法が施行され、ユーザーがフロン回収を行わない違反に対する直接罰が導入されています。

国内DICグループの2023年度の漏えいフロン量はCO₂排出量換算値で452トン(1事業所または1企業の漏えい量が1,000トン以上で国に報告義務あり)でした。漏えいフロン量はフロン排出抑制法が施行された2015年度から管理を行っていますが、これまでは国への報告義務が必要な水準以内を下回って推移しています。
2023年度には、これらのフロン排出抑制法の遵守活動が認められ、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構により実施された「第3回JRECOフロン対策格付け」でもっとも優秀なAランク企業に3年連続で選定されています。
今後もDICグループは、継続した法遵守活動とともに、空調機器選定時においてノンフロンなど環境負荷の低い冷媒を選定することに努めるなど、漏えいフロン量の削減に取り組んでまいります。

漏えいフロン量(CO₂換算値)

データ集

項目 単位 バウンダリー 2019年度実績 2020年度実績 2021年度実績 2022年度実績 2023年度実績
GJ 換算エネルギー使用量 1,000GJ 日本 4,184 3,827 4,183 4,028 4,447
中国 1,056 1,036 1,197 1,066 1,110
AP 1,623 1,606 1,835 1,650 1,178
サンケミカル 3,784 3,791 3,196 7,767 6,017
その他 69 118 63 58 48
グローバル 10,717 10,379 10,474 14,569 12,800
エネルギー原単位 GJ/t 日本 3.706 3.733 3.656 3.687 4.391
中国 5.574 5.698 4.749 4.881 3.914
AP 6.810 7.151 7.389 7.331 5.825
サンケミカル 4.371 4.705 3.739 7.603 7.557
その他 133.440 3.030 108.223 110.776 102.070
グローバル 4.423 4.559 4.189 5.695 5.577
CO₂排出量 t 日本 232,028 209,018 224,916 208,231 136,412
中国 63,000 60,163 70,342 62,457 71,998
AP 122,812 123,227 144,107 127,851 83,583
サンケミカル 173,146 153,374 147,553 319,946 241,182
その他 2,107 5,267 2,068 1,958 1,715
グローバル 593,093 551,049 588,985 720,444 534,889
Scope1 t 日本 135,428 118,786 135,612 128,458 112,591
中国 14,004 13,098 15,287 14,635 22,896
AP 66,199 69,597 88,575 76,127 44,028
サンケミカル 53,780 50,283 51,503 121,361 97,600
その他 1,236 1,299 1,085 1,029 944
グローバル 270,647 253,064 292,063 341,610 278,059
Scope2 t 日本 96,600 90,231 89,304 79,773 23,821
中国 48,996 47,065 55,054 47,822 49,102
AP 56,613 53,630 55,531 51,725 39,555
サンケミカル 119,366 103,091 96,050 198,585 143,582
その他 871 3,967 982 929 771
グローバル 322,446 297,986 296,922 378,834 256,830
CO₂原単位 kg/t 日本 206 204 197 191 135
中国 332 331 279 286 254
AP 515 549 580 568 413
サンケミカル 200 190 173 313 303
その他 4,053 135 3,579 3,731 3,616
グローバル 245 242 236 282 233

※ 2022年度からC&E 含む
※ 2023年度からエネルギーに非化石、再エネ含む
※ 数値は四捨五入しているため、総数と内訳の合計が一致しない場合があります