労働安全衛生

S1-13 労働安全衛生に関する指標

国内DICグループは、職場における安全性の確保および業務に起因するリスクの適切な管理を目的として、労働安全衛生に関する指標を開示しています。国内DICグループは、労働安全衛生を経営の最重要課題の一つであり、事業活動の基盤として重視しています。グループの安全・環境・健康に関する方針に基づき、グローバルに展開する各事業拠点において、「安全第一」の考え方の浸透を図るとともに、労働安全衛生、プロセス安全、セキュリティおよび防災に関する取り組みを推進しています。

また、事故・災害等から得られた知見や操業上の教訓については、関連する拠点および機能部門間で共有し、再発防止策の強化、リスク認識の向上ならびに労働安全衛生慣行の継続的な改善につなげています。

過去の様々な事故や災害の分析を踏まえて策定された『DIC基本安全動作』は、作業中の事故を防止するための標準的なルールや行動規範を定めたものです。このガイドラインは2019年に第5版へ改訂され、グループ全体で統一的に遵守されるよう、日本語、英語、中国語で展開しています。2026年現在、近年の事故・災害の傾向を反映するため、第6版への改訂作業を進めています。

労働安全衛生の実績

報告期間における主な実績は以下のとおりです。

  • 死亡災害件数(自社従業員):0
  • 死亡災害件数(構内の他社作業者):0
  • 記録対象労働災害件数(従業員):137
  • 労働災害および業務関連疾病による休業日数:2,573

これらの指標は、DICグループが各事業拠点における労働安全衛生実績を継続的にモニタリングしていることを示しています。

安全操業の啓発ポスター

健康と安全の指標

従業員 非従業員 事業所内のバリューチェーン労働者 合計

2025

労働災害発生率(TRIR) 3.36 0.00 0.00 3.36
業務上の負傷による休業日数[日] 2,573 0 0 2,573
記録対象となる労働災害[事例] 137 0 0 137
労働災害による死亡者数 0 0 0 0

2024

労働災害発生率(TRIR) 3.53 0.00 0.00 3.53
業務上の負傷による休業日数[日] 2,927 0 0 2,927
記録対象となる労働災害[事例] 147 3 0 150
労働災害による死亡者数 0 0 0 0

2023

労働災害発生率(TRIR) 3.01 0.00 0.00 3.01
業務上の負傷による休業日数[日] 2,533 0 0 2,533
記録対象となる労働災害[事例] 131 0 0 131
労働災害による死亡者数 0 0 0 0

注︓従業員データには、⾮従業員も含まれます。

労働災害発生率(TRIR)および労働災害件数地域別

2025 2024 2023
国内DICグループ TRIR 1.90 1.93 2.09
休業 4 3 9
不休業 11 13 10
DICグループ中国地域 TRIR 1.25 0.90 2.06
休業 3 2 7
不休業 2 2 4
DICグループアジアパシフィック地域 TRIR 0.71 1.28 1.11
休業 4 10 9
不休業 2 1 1
Sun Chemical TRIR 5.13 5.70 4.56
休業 67 67 50
不休業 36 47 41

DICグループは、労働安全衛⽣実績を地域別にモニタリングし、傾向の把握、業務上リスクの評価、職場安全対策の継続的改善に活⽤しています。労働安全衛⽣に関するデータや事故から得られた教訓は各拠点間で共有され、事故分析を通じて根本原因を特定し、再発防⽌を⽬的とした予防措置の実施に役⽴てています。

労働安全衛生に関する目標

DICグループは、労働安全衛生に関する目標を設定しており、地域別のTRIR(労働災害発生率)の低減目標をはじめ、DICグループ各地域を対象にそれぞれ安全目標を設けるなど、労働安全に関する目標を設定しています。

これらの目標は、安全実績管理の一環として少なくとも月1回確認し、前年の実績結果に基づき毎年見直しています。労働安全衛生の継続的改善を支援するため、DICグループではリスクアセスメントの実施、安全教育の提供、緊急対応訓練の実施、および事故分析を定期的に行い、根本原因の特定と再発防止策の実施に取り組んでいます。また、分析結果は各拠点間で共有され、再発防止および全社的な安全意識の向上に活用しています。

災害発生率および安全指標

DICグループは、労働安全衛生実績の把握にあたり、労働災害発生率(TRIR)を含む国際的に認知された手法および指標を採用しており、TRIRを職場安全性に関する主要指標の一つとして活用しています。

  • TRIR:3.36

TRIRは、100万労働時間当たりの労働災害死傷者数に基づき算定しており、休業災害および不休業災害を対象に含めております。

DICグループは、グループの各地域における労働安全衛生データを継続的にモニタリングしています。災害データについては、地域別および災害の重大性別に分析を実施しており、休業災害と不休業災害の双方を対象として、傾向分析および改善が必要な領域の特定に活用しています。

これらの指標は、DICグループ全体における労働安全衛⽣実績およびリスク動向の継続的なモニタリングに活⽤しています。

労働安全衛生マネジメント体制

DICグループは、各国・地域の法令および社内のESHマネジメント基準に従い、労働安全衛生マネジメントシステムを運用しています。

このシステムを通じて、グループ全体で体系的な労働安全衛生活動を推進するとともに、継続的な改善に取り組んでいます。

2025年におけるESH監査の概要

2025年、DICグループは、環境・衛⽣・安全に関する法令・社内基準への適合状況を確認し、労働安全衛⽣マネジメントの継続的な改善を推進するため、グローバルで合計108件のESH監査を実施しました。監査の地域別および組織別の内訳については、下表をご参照ください。

事業所 監査件数
国内DICグループ DIC 8
DICグラフィックス(株) 2
その他国内DICグループ会社 9
合計 19
海外DICグループ会社 DICグループ中国地域 9
DICグループアジアパシフィック地域 7
合計 16
Sun Chemical EMEA / Asia 37
NA 27
SCLA 9
合計 73
DICグループ 合計 108

安全衛生に関するリスクアセスメントの実施

DICグループでは、安全衛生に関する危険性や有害性を特定し、事故や労働災害の未然防止活動を行っています。

特に、国内DICグループでは、化学物質に起因するリスクの一層の低減をはかるため、リスクアセスメント手法を刷新し、従業員の化学物質による健康被害防止に取り組んでいます。労働安全衛生法の対象となる化学物質について、体系的にリスクアセスメントを実施しています。その結果に基づき、設備の改善や取り扱い手順の見直しなど、対象に応じたリスク低減策を講じています。

2025年は、法令で指定される化学物質の拡大を受け、これらの取り組みを大幅に強化しました。2026年以降も、各事業拠点において対象物質の範囲を段階的に拡大しながら、リスクアセスメントを計画的に推進していきます。

国内DICグループの労働災害度数率

注︓度数率は、会計年における休業を伴う災害の発⽣頻度を⽰す指標で、延べ労働時間100万時間当たりの死亡者数または負傷者数として算出します。
度数率 =(労働災害による死亡者数または負傷者数 ÷ 総労働時間)× 1,000,000
度数率が1.00とは、従業員500⼈規模の事業所において、1年間に休業を伴う労働災害が1件発⽣することを意味します。
注記︓
・本算定に⽤いる従業員数には、直接雇⽤の正社員、パートタイム社員および契約社員を含みます。
・2025年度のJCIAおよび国内製造業のデータは、現在収集中です。

国内DICグループの労働災害強度率

注︓強度率は、労働時間1,000時間あたりに発⽣した労働災害に よる休業⽇数を表します。
強度率 = (労働災害による休業⽇数合計 ÷ 総労働時間)× 1,000
強度率0.10とは、従業員500名の事業所で1年間に100⽇の休業が発⽣したことを意味します。
注︓2025年度の⽇本におけるJCIAおよび国内製造業のデータは、現在収集中です。

労働安全衛⽣・保安防災

化学プロセス事故の件数

2017年に、ICCA(International Council of Chemical Associations︓国際化学⼯業協会協議会)において、報告すべき化学プロセス事故の基準が策定されました。それに伴い、国内DICグループでは2018年からプロセス事故の発⽣件数を報告しています。2022年からは、直近3年間の実績をもとに⽬標を設定しています。

2025年は、国内DICグループでプロセス事故が12件発⽣しました。プロセス事故発⽣率(20万労働時間当たりの発⽣件数)は0.239件となり、⽬標値の0.110には達しませんでした。未達となった主な理由は漏えいが多く発⽣したためです。今後は、製造プロセスに関連するリスクの継続的な評価を実施し、必要な改善を進めていきます。

指標 2025 2024 2023 2022 2021
ICCA プロセス安全事故[事例] 12 12 7 3 7
プロセス事故発生率
[20万労働時間当たり]
0.239 0.229 0.124 0.055 0.128

注︓報告すべきプロセス事故の基準は、以下の①〜④のすべてが該当した場合が対象となります。主に製造プロセスが関わる⽕災・爆発・漏えいが該当します。
①化学物質か化学プロセスが直接関係している、
②製造、物流、貯蔵、ユーティリティー、パイロットプラントで起きた事故、
③プロセスユニットからの物質またはエネルギー(⽕災、爆発、爆縮)の放出、
④以下のいずれかの事象が発⽣した場合︓労働災害、設備損傷、避難、GHS該当物質の放出。

化学プロセスのリスクアセスメント

DICグループの⼯場では、化学反応を⾏うプラントからプレス機などの加⼯系設備まで、⽤途に応じた様々な装置が稼働しています。そこで、国内DICグループでは2013年に「DICプロセスリスクマネジメントガイドライン(PRM)」を制定し、各事業所で計画的にリスクアセスメントを進めています。

PRMは、⽣産および研究開発業務におけるリスクの包括的把握と継続的な低減を⽬的に、取り扱う化学物質や⽣産⼯程・⽣産フォーミュラ、機械設備、作業⾏動に関わるリスクアセスメントの実施時期や実施体制を⽰したものです。さらに、2020年からは、化学プラントの事故(漏えい、⽕災、爆発)に特化したリスクアセスメントであるHAZOP(Hazard and Operability Studies)を開始しました。DICでは、これまでに四⽇市・千葉・⿅島・堺・北陸⼯場など、化学反応系プラントが存在する⼯場で評価を⾏っている他、2026年に国内共通のガイドラインを制定する予定です。

DIC BCPortalの運⽤

⽇本は、位置、地形、地質、気象などの⾃然条件から、台⾵、豪⾬、洪⽔、地震、津波などによる災害が発⽣しやすいといわれています。また、化学プラントが⽕災・爆発・有害物質の漏えいなどの事故を起こせば、地域社会に多⼤な影響を及ぼします。このような緊急事態の際、的確に判断を⾏い、迅速な⾏動につなげるためには、正確な情報収集・把握・共有が必要となります。⾮常事態においても、安定的な対応を可能とするために災害等情報管理ポータルシステム「DIC BCPortal」を運⽤しています。

DIC BCPortal導⼊に伴い、迅速・正確な情報共有体制を早期に整備し、DICグループとして的確な意思決定をすることが可能となりました。

緊急対応の訓練

国内DICグループの⽣産拠点では、⽇常の保安パトロールや設備の定期点検、BCP(事業継続計画)の観点から、万⼀の事態を想定した様々な緊急対応訓練を計画的に実施しています。

データの⼊⼿可能性および対象範囲

労働安全衛⽣に関するデータは、DICグループの⾃社従業員に加え、該当する場合には構内で業務に従事する他社作業者も対象としています。

なお、災害発⽣率やマネジメントシステム適⽤率などの⼀部指標については、地域ごとのデータ取得状況や算出⽅法の違いにより差異が⽣じる場合があります。

国内DICグループの取り組み

国内DICグループでは、2014年に安全教育専⽤施設として「埼⽟安全体感研修センター」を設置し、新⼊社員研修や階層別研修などに継続的に活⽤しています。
DICおよびDICグラフィックス株式会社では、経験の浅い従業員の労働災害ゼロを⽬指し、新⼊社員研修の必須項⽬として、「安全体感教育」および「危険予知訓練(KYT)」を実施しています。
また、千葉、堺、北陸、東京、⿅島の各⽣産拠点では、それぞれの拠点に応じた安全教育⽤の設備やプログラムを整備し、安全⽂化の醸成に取り組んでいます。
2015年には、国内拠点で移動使⽤できる⼩型の安全体感教育⽤の機器6台を開発・導⼊しました。さらに、レスポンシブル・ケア部⾨では、各拠点で複数の従業員が研修講師を務められるよう、インストラクター認定制度を設け、グループ全体で有資格講師の育成を進めています。
近年では、千葉、北陸、⿅島の各⼯場において、VR技術を活⽤した臨場感のある安全体感研修を導⼊しています。

工場の安全と環境を守るe-ラーニング講座

労働安全衛生・保安防災のレベル向上を継続して図っていくには、社員一人ひとりが化学物質や製造プロセス、法規制などに関する幅広い知識を習得していく仕組みを構築することが重要です。

その仕組みの一つとして、国内DICグループでは2016年度にインターネットを活用したe-ラーニング講座を導入しました。工場の操業に関わる重要な法令として「消防法」、「大気汚染防止法」、「高圧ガス保安法」などを受講科目に選定し、その後、法令だけでなく「静電気」も科目に追加しました。

RC部員や各事業所の安全環境担当者、製造部門担当者の視点から、教材の有効性も確認しています。最大16講座あり、テストで力量を確認しています。2025年度は、185名が受講しました。

2022年度からは、株式会社ラキールより安全衛生教育サービスを導入し、安全教育用の動画を配信しています。

災害カレンダー

国内DICグループにおいては、過去に発生した事故災害を月次カレンダー形式でまとめ、社員全員が閲覧できる「災害カレンダー」を2022年から社内ポータルのトップ画面に設置しています。

事故災害が発生した日に1発生工場名、2事故災害の種別(熱中症・薬傷等)、3被害程度(休業・不休業等)の情報が掲載され、利用者が気になる災害をクリックすると発生状況や対策をまとめた詳細なデータを閲覧することができます。

月間の災害がまとめて表示されているため、各月の災害傾向を視覚的に把握することもできます。社員一人ひとりが、過去その日に起きた災害を確認することで、グループ全体の安全・防災の意識を高めています。

安全体感教育

日本、中国地域、アジアパシフィック地域のDICグループにおいて、安全体感教育を行っています。

安全体感教育とは、危険を疑似体験することにより、危険に対する感受性を高めたり、危険敢行性(危険の受け入れやすさ)を低下させる教育プログラムです。2012年に国内DICグループで安全体感教育を開始したことを皮切りに中国地域、AP地域にも幅広く安全活動を展開してきました。

こうした取り組みの結果、国内DICグループの度数率が以前のレベルから半減するなど、大きな効果として現れてきました。

DICグループの安全体感教育研修では、通常の生産活動において一般的に発生しやすいとされている動力機器への"はさまれ"や"巻き込まれ"、高所からの墜落・転落、カッターでの切創などの災害事例を、社員が疑似体験します。この体験を通じて、危険敢行性を低下させ、危険感受性を高めることで、潜在的な危険に対して「自ら考え、行動し、自分と仲間を守る」という意識変革を目指しています。

Sun Chemical「SunCare® ライフ・セービング・コミットメント」

高リスク業務への対応

Sun Chemicalは、重大災害および死亡災害の防止に向けたDICグループの取り組みの一環として、リスクの高い作業を対象としたグローバル安全フレームワーク「SunCare® ライフ・セービング・コミットメント」を導入しています。

本コミットメントは、重大事故につながる可能性が特に高い業務を対象として、遵守が必須となる10項目の安全要件を定めたものです。対象には、密閉空間作業、高所作業、エネルギー遮断、ライン・オブ・ファイア・リスク(挟まれ・巻き込まれ・飛来落下リスク)、火災・爆発リスク、有害物質の取扱いおよび運転業務等が含まれます。

これらの取り組みは、過去の重大災害事例の分析に基づき策定しており、Sun Chemicalのグローバル安全管理システムに組み込まれています。また、適用される法令および業界慣行との整合性を確保しています。

本フレームワークは、重大リスクに直結する重要行動および安全な作業環境の確保を重視しています。運用にあたっては、作業開始前のリスク確認、作業停止権限、管理職および監督者の責任の明確化を通じて実効性を担保しています。従業員および請負業者は、安全でない状態を認識した場合、是正に向けた行動をとることが求められます。

導入状況

本プログラムは、2025年にSun Chemicalの各拠点において体系的な手法によりグローバル展開を完了しています。主な導入内容は以下のとおりです。

  • 従業員および請負業者に対する教育・訓練の実施
  • 拠点手順書および作業許可制度への組込み
  • 請負業者管理および受入プロセスへの統合

また、グローバルで安全一時作業停止を実施し、各拠点における理解促進および実務への適用を強化しています。

統合の推進

ライフ・セービング・コミットメントは、手順、トレーニング、コミュニケーションツールを通じて日常業務に組み込まれています。シニアリーダーシップによる監督は、一貫した実施を支援し、安全な行動および介入に対する期待を強化します。

本フレームワークは、重大事故の削減と、DICグループ全体における安全パフォーマンスの向上に向けた取り組みに貢献しています。