特 集 速硬化型無溶剤接着剤DUALAM™ 3 すべての人に健康と福祉を 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 12 つくる責任つかう責任 13 気候変動に具体的な対策を

DUALAMがパッケージ包装の世界を変えていく無溶剤のラミネート加工に新時代を拓く接着剤

DICの価値創造 ラミネート加工からVOC発生を無くしCO2排出も減らしたい

環境負荷は小さいが用途の狭い「無溶剤接着剤」が抱える課題

フィルムを2 層・3 層と貼り合わせるラミネート加工は、パッケージ表層のフィルム裏面に印刷による意匠を施したり、防湿・遮光・ガスバリアなどの機能を付与して密封するために不可欠なプロセスとして広く普及しています。フィルムを貼り合わせるには、溶剤に溶かした接着剤成分を1枚のフィルム表面に塗工し、溶剤分を熱で蒸発させてからもう1枚のフィルムと圧着する方法が一般的ですが、環境汚染の原因となるVOC(揮発性有機化合物)の発生や、化石燃料の燃焼に伴うCO2排出による環境負荷が課題となっています。
一方、溶剤を使わない無溶剤接着剤も普及していますが、ラミネート加工後の意匠性に問題が生じたり、硬化速度が遅いため高生産性を求められる連続ラミネーションに適さないなどの課題があり、使用できるパッケージ用途が限られていました。こうした無溶剤接着剤の課題を克服できれば、汎用性が大きく広がり、パッケージ業界における環境負荷の低減に貢献できます。

硬化速度が速く汎用性を高めた無溶剤接着剤「DUALAM」を開発

無溶剤接着剤の課題克服に向けDICは、従来の主剤と硬化剤をあらかじめ混ぜてからフィルムに塗工する方法を、別々に塗工することで高い性能を発現する接着剤の開発に着手。様々な成分配合や塗工量などのトライ&エラーを重ねた末、2019年に従来の数倍速い硬化速度を備えた革新的な無溶剤接着剤「DUALAM」の開発に成功しました。
さらに、ラミネート加工機メーカーと共同で「DUALAM」の供給ユニットを開発し、既存のラミネーター(塗工加工機)に後付けで設置できる「ラミネーションシステム」として販売を開始しました。

「DUALAM 」の供給ユニット

「DUALAM 」の供給ユニット

これにより、今まで貼合わせできなかった2層のラミネートの実現、3層以上のラミネート構成の連続加工、速硬化による養生時間の短縮、接着剤の使用可能時間(ポットライフ)の延長、意匠性の大幅な向上など数々のメリットを創出しました。既存の溶剤型ラミネート加工機に代えて「DUALAM」のラミネーションシステムを導入することで、VOCおよびCO2排出量の大幅な削減が期待できます。

「DUALAM」によるラミネーションシステム
「DUALAM」によるラミネーションシステム

DICならでは 地球環境のサステナビリティに貢献するパッケージソリューションの提供

無溶剤接着剤の革新が大気汚染と職場環境の改善に貢献

中国で接着剤の市場マーケティングを手がけていたDICのマネジャーは、環境規制の強化を背景に2010年代に、急速に採用が増えていたラミネート加工用の無溶剤接着剤の伸びが鈍化していることに気づきました。調べてみると「溶剤型に比べて、加工後の意匠性が劣る」、「硬化速度が遅く連続ラミネーションに対応できない」などが主な要因でした。
彼はこれらに着目し「環境負荷の低減は時代の要請だ。改良すれば必ず需要は高まる」と確信し、開発プロジェクトの結成を上申したのです。
技術陣はいろいろと試行錯誤する中で、2液混合方式という従来の発想に捉われず、貼り合わせたい2枚のフィルムに別々に接着剤成分を塗工し、フィルムが接触して初めて硬化反応が始まるというアイデアを考案しました。しかし、その実現には乗り越えねばならない幾つもの壁が待ち構えていたのです。

硬化速度の制御に悪戦苦闘して最適な成分配合にたどりつく

新しい接着剤には「塗工しやすい柔らかさ」、「意匠性を損なわない速硬化性」、「連続ラミネーションに適合する硬化スピード」が求められます。しかも、1㎡あたり数gという薄い膜の中で、これらの機能を発揮させねばなりません。
技術陣はこれまでの知見を総動員し、様々な新材料を試しながら最適な成分配合を模索し続けました。特に硬化速度のコントロールは困難を極め、微妙な配合の調整に悪戦苦闘を強いられましたが、ようやくこれらの機能を満たし、従来の数倍の硬化速度を持つ無溶剤接着剤「DUALAM」を完成させたのです。
しかし、挑戦はこれで終わったわけではありません。「DUALAM 」の機能をラミネート加工機で再現できる機械ユニットが必要です。そこで、DICはラミネート加工機のトップメーカーと共同で開発に着手し、接着剤を薄膜化して均一に塗布するコンピュータ制御の供給ユニットを完成させ、ついに「DUALAM」を世に送り出しました。それはDICが掲げる「地球環境のサステナビリティに貢献するパッケージソリューションの提供」を達成した瞬間でした。

ラミネート加工後の外観(意匠性の向上)
提供価値の比較

KEY PERSON of DIC

誰もやっていないからこそDICが取り組む価値がある

パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループ マネジャー(企画開発) 高田 長一

中国に赴任中、ラミネート加工に使う無溶剤接着剤の問題点に気づき、新しい接着剤の開発を提案しました。特に3層以上のラミネート加工は極めて効率が悪く、その改良に着手しようとする企業は見当たりませんでした。それならDICが挑戦する価値があると考えたのです。無溶剤接着剤は環境負荷を低減する必須アイテムであり、用途を広げることで必ずニーズは広がるという確信がありました。実用化には数々のブレイクスルーが求められましたが、多くの方々の協力を得て「DUALAM」を世に送り出すことができ、これ以上の喜びはありません。

パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループ マネジャー(企画開発) 高田 長一

新しい技術により、お客様へさらなる価値を提供します

接着剤技術本部 接着剤技術第1 グループ マネジャー 秋田 康二

接着剤には「塗りやすく、速く固まり、しかも強い接着力を発揮する」という複合的な機能が求められます。「DUALAM」は速硬化(=お客様の生産性向上)が特徴の接着剤です。その一方で、速く固まりすぎる設計にしてしまうと、仕上がりが悪くなり、品質の低下につながることが分かりました。そのため、“ちょうど良い”スピードで固まる仕組みを探すべく幾度となくトライ&エラーを繰り返し、ようやく目標値に達することができました。私たちは今後も、「DUALAM」をはじめとするラミネート接着剤を通じ、環境負荷の低減という課題に果敢に取り組んでまいります。

接着剤技術本部 接着剤技術第1 グループ マネジャー 秋田 康二

2019年に発表後、国内外から多数のお客様が見学に訪れています

新事業統括本部 次世代パッケージングユニット P-2 プロジェクト プロジェクトマネジャー 西村 晋

2019年に「DUALAM」とラミネーションシステムを発表後、国内外から多くの引き合いをいただき、当社への見学希望も後を絶ちません。現在、日本とアジアを中心にプロモーションを展開していますが、2020年初夏から欧州でもプロモーション活動を開始し、2025年までにグローバル市場で90億円の売上を目指しています。また、「DUALAM」を適用できるパッケージ用途の拡大やラミネーション加工機のラインアップ拡充にも取り組み、中期経営計画「DIC111」で掲げた“包装材料の革新による安全・安心の提供”に貢献していきます。

新事業統括本部 次世代パッケージングユニット P-2 プロジェクト プロジェクトマネジャー 西村 晋

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