Topic 世界のどこで印刷しても、ブランドカラーを正確に再現・管理できるシステム構築を支援

DICのグループ会社「Sun Chemical」(米国)は、Pantone LIVEの機能を通じて、専門技術やネットワーク機能を駆使し、ハインツ(HEINZ)社のブランドイメージをグローバルに担保するプロジェクトで重要な役割を担いました。

地域や包装によってバラつきのあるブランドカラー

世界5大陸に生産拠点を持ち200カ国以上で製品を販売する食品メーカー「ハインツ社」(本社:米国)は、ある課題を抱えていました。ブランドの代名詞である「ハインツ・ビーンズ(伝統的な煮豆料理)」のパッケージカラーが、独自の青色(ハインツ・ビーンズ・ブルー)で指定されているにも関わらず、国や地域、包装の種類によって明らかに差があるのです。 包装形態は缶ラベルをはじめ複数の缶を巻いて運ぶ樹脂フィルムやダンボール製パッケージなども日常的となり、印刷方式もオフセット、グラビア、フレキソなど多岐にわたっています。しかも、地域ごとに印刷会社が異なり、本社が事前に色の再現性をチェック・管理するには膨大な手間やコストがかかります。しかし、長年、消費者に親しまれ、高い品質を約束するブランドカラーが地域ごとに差がある状態は早急に解消せねばなりません。

地域や包装によってバラつきのあるブランドカラー

そして、プロジェクトが組織され、「包装形態に関わらず全印刷工程でブランドカラーの一貫性を確保する体制の確立」に向けて、次の3命題が掲げられました。

  • 使用材料や製造工程に関わらず世界のどこでも再現可能
  • Webで配布でき正確なデジタル色規格でコストを削減
  • 市場変化に即応するため包装を含む発売までの時間短縮

全世界でブランドカラーの一貫性を確保するために

Pantone LIVE(デジタル・カラー・マネジメントシステム)のパートナーとしてプロジェクトに参画したSun Chemicalの役割は、以下の重要なものでした。

  • デザインから校正完了までの工程全体のカラー制御
  • Webを活用したカラー管理システムのストレステスト

Sun Chemicalは、初めに基準となる「指定色のデジタル規格」を設計するため、ハインツ社と色の再現性に関わる許容範囲(公差)を決めました。これは測色計による数値(色差の計測)を基に割り出したもので、個人の主観や環境の相違などに左右されない客観的な目標値となります。次にハインツ社が要求するパッケージごとの推奨材質と完成見本を公表しました。そして、デジタル環境におけるカラー管理システムを運用する会社は、包装形態ごとに忠実な色を再現するために必要な印刷基材のデータ(紙・フィルム・インキ)を提供。印刷システムの開発会社は、これらの情報を基にパッケージ専用ソフトを活用して「デジタル色規格」を作成しました。さらに、Sun Chemicalのグループ会社Sun Branding Solutionsが、測色計と視覚チェックによって、これらプロセスの全ステージを検証したのです。

試験用のパッケージカラー素材を分析する、Sun Chemical社員

試験用のパッケージカラー素材を分析する、Sun Chemical社員

ウェブサイトを介したブランドカラー管理体制の構築

Webを介して世界標準の色規格を共有・管理

こうして2011年8月、「ハインツ・ビーンズ」のデジタル色規格がカラー管理システムのデータベースにアップロードされました。これによって、どの地域の印刷会社がどのような包装形態や印刷方式でパッケージを製作する場合でも、Web上のマニュアルに沿って数値に基づくブランドカラーを再現できる体制が整いました。

Sun Chemicalがシステム運用後の各国・地域におけるパッケージを調査したところ、ブランドカラーの色のバラつきは測色計レベルで約6分の1に低減でき、人の目では区別できないまでに改善されました。また、それまで本社の管理スタッフが現地に出向いて事前に色校正を行うなどの作業も大幅に軽減され、コスト・時間が削減できました。そして、何よりもパッケージを通して消費者が感じる「ハインツ・ビーンズ」の高いブランドイメージを維持するという本来の目的を達成したのです。

 色のバラつきが改善された「ハインツ・ビーンズ・ブルー」のパッケージ

VOICE

世界的なブランドが抱える課題解決に貢献できて幸せです

Patrice Aurenty Business Leader Color Management Sun Chemical Corporation

ハインツ社の課題解決プロジェクトで、私たちに期待された役割は極めて重要で、やりがいも大きなものでした。それだけに、Sun Chemicalのチーム全員が科学的な知見や専門技術を総動員して、膨大なデータ解析やシステムの検証作業にあたりました。 今回の事例のようにグローバル企業が全世界でブランドイメージを維持・管理していくのは容易ではありません。また、同様の課題を抱えている企業が世界に多数あるはずです。私たちは今回のプロジェクトの中で多くの人々と協力して得た知識やネットワークをさらに強化し、Webを介してブランドカラーの一貫性を図るというテーマを探求しながら実績を積み重ねていきます。

Patrice Aurenty
Business Leader Color Management Sun Chemical Corporation

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世界のどこで印刷しても、ブランドカラーを正確に再現・管理できるシステム構築を支援

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DICデジタルカラーガイドのダウンロード数が世界中で41万件を突破(2013年5月31日現在)

DICは2010年10月にカラーガイド(色見本帳)をデジタル化し、スマートフォン(iPhone:Apple社)向け無料アプリケーションとして配信開始。以降、対応OS(基本ソフト)やコンテンツを拡充しながらユーザーを広げています。