特 集
バイオマスプラスチックを使った梨地フィルム
DIFAREN® A7440Bio
DICの価値創造 脱炭素社会の構築に向けてバイオマスプラスチックの用途拡大へ
2050年の「温室効果ガス排出ゼロ」目標に向けて
今、世界が直面する喫緊の課題である地球温暖化の抑制に向けて、日本は「2050年に温室効果ガス排出を全体としてゼロにする脱炭素社会へ」という目標を掲げています。その実行計画の中で、国は『バイオマスプラスチックの普及に向けた量産体制』を重要テーマと位置づけ、産業界に取り組みの推進を働きかけています。
バイオマスプラスチックは、原料の一部である植物が成長段階で大気中のCO₂を吸収することから、燃やした時にCO₂が発生しても実質的に大気中のCO₂は増えません。この「カーボンニュートラル」の考え方に基づいてバイオマス資源を活用することで、石油資源への依存を減らし、地球温暖化防止や資源循環を加速しようとしているのです。
原料の20%にバイオ資源を活用した梨地フィルム「DIFAREN® A7440Bio」を開発
食品包装用フィルムは、内容物保護性や包装適性が求められており、耐熱性・ヒートシール性・剛性・柔軟性・耐寒性・開封しやすいイージーピール性など多様な機能が求められます。
DICは、1970年に異なる特性を備えた複数の樹脂を1工程で積層する包装用多層フィルムを開発。さらに、この製法で和紙のような外観と梨皮のような風合いを実現した高意匠性の梨地フィルム「DIFAREN® A7440シリーズ」も開発し、食品包装の分野で高い支持をいただいています。
こうした中で、脱炭素社会に向けた取り組みの一環として、原料の一部に再生可能資源である植物由来のバイオマスプラスチックを使った梨地フィルム『DIFAREN® A7440Bio 』を開発。DIFAREN®シリーズ製品として初めて(一社)日本有機資源協会が認定するバイオマスマークを取得し、2020年8月に上市しました。
DICならでは 現行の設備で高意匠性フィルムのバイオマス度20%を実現
石油由来樹脂とバイオマスプラスチックとの物性バランスを追求
梨地フィルムは、紙のような風合いでありながら、紙粉の発生もなく衛生的で高級感を表現できることから、日本だけでなくアジア・欧米でも高い関心を集めています。しかし、従来の機能性と意匠性を保ちながら原料にバイオマスプラスチックを活用するのは容易ではありませんでした。
主原料の石油由来樹脂に、バイオマスプラスチックを混ぜると物性バランスが崩れ、様々な不具合が生じます。
DICの技術陣はこの課題を克服するため、フィルムのミクロ構造を観察し、トライ&エラーを繰り返しながら最適な樹脂配合を探求。そして、製造を担うキャストフィルムジャパン(株)と連携して永年培った多層製膜技術を駆使し、20%のバイオマス度を満たす『DIFAREN® A7440Bio』の生産に成功しました。しかも、特別な装置を追加することなく現行の設備で従来の機能性と風合いを兼ね備えた梨地バイオマスフィルムの量産化を実現したのです。
環境対応型のインキや接着剤と併用してバイオマス度を向上
DICグループのバイオマスマーク認定を受けた環境製品は、梨地バイオマスフィルムのほかに、DICグラフィックス(株)が開発したバイオマス由来の原料を使用したインキ(ラミネート用グラビアインキ フィナートBMなど)、接着剤(ディックドライLX-500-BMなど)をラインアップしており、インキ・接着剤・フィルムの各分野で環境対応型製品の提供が可能です。
シーラントフィルムにヒートシールOPP(2軸延伸ポリプロピレン)などを用い、バイオマス由来原料を使用したインキと接着剤、梨地バイオマスフィルムを基材に使うことで、フィルム全体のバイオマス比率を高めることができます。このような包材に対して様々なバイオマス製品を提供できるのは、インキ・接着剤・フィルムすべてを開発・生産するDICグループならではの強みです。
KEY PERSON of DIC
「環境対応で他社と差別化したい」というニーズに応える画期的な製品
食品メーカーなどのお客様は、他社と差別化を図ることができる包装材料を絶えずリサーチしています。今まで、高級感の訴求で一定の評価をいただいていた梨地フィルムですが、さらに、バイオマスプラスチックを使用した『DIFAREN® A7440Bio 』をラインナップできたことはとても喜ばしく感じています。実際、包装展示会でも大きな手応えを感じています。当初はバイオマスプラスチックの含有率を上げるのは困難と思っていたので、技術・製造の頑張りに感謝の気持ちでいっぱいです。この製品を突破口に、当社の環境対応力をアピールし、国内外問わず積極的に展開していきたいです。
DIC(株) パッケージ&グラフィック事業部門 フィルム営業グループ マネジャー 伊藤 雅晴
梨地フィルムのバイオ化を糧に多様なバイオ素材の用途拡大にチャレンジ
石油由来の原料に植物由来のバイオマスプラスチックを置き換えて梨地の風合いを再現する今回のプロジェクトは、難関の連続でした。ラボレベルで成功しても生産ラインで不具合が生じることも一度や二度ではなく、安定生産が確認できた時は、まさに感無量でした。それでも私たちは満足していません。世の中には数多くの環境対応型原料があり、それらを使いこなしていくのが化学メーカーの使命です。一方で、フィルムを1μmでも薄くして、廃棄物削減に貢献する薄肉化への挑戦も続きます。いずれもハードルの高いテーマですが、今回の経験を糧にしてサステナビリティのさらなる高みを目指します。
DIC(株) パッケージ技術本部 パッケージ技術4 グループ 研究主任 木田 智久
2021年度の特集
ケミカルリサイクルで食品容器を 持続可能な完全循環型再生へ
化学メーカーの「DIC」と食品容器メーカーの「エフピコ」が協働してケミカルリサイクルによる「ポリスチレンの完全循環」に取り組みます。
バイオマスプラスチックを使った梨地フィルム DIFAREN® A7440Bio
高級感漂う意匠性を維持しながら、二酸化炭素の排出を削減した新たな食品包装フィルムを開発しました。
肌のバリア機能(保湿力)を体の中から高める機能性表示食品「フィコナ スキン モイストリフティング タブレット」
様々な肌課題を抱える女性のために、食用藍藻スピルリナから抽出した「フィコシアニン」による“飲むスキンケア”を開発しました。