スピルリナによる、環境に優しく持続可能な感染症対策への新戦略 ー東京科学大学・日本文理大学・株式会社キョーリンと、「住血吸虫症の感染を抑えるスピルリナの新たな用途」に関する共同論文を発表ー

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2025年5月8日

DIC株式会社(本社:東京都中央区、社長執行役員:池田尚志)は、国立大学法人東京科学大学、学校法人文理学園日本文理大学、株式会社キョーリン(本社:兵庫県姫路市、代表取締役社長:神畑道子)と「住血吸虫症*1の感染を抑えるスピルリナの新たな用途」に関する共同論文を発表し、4月2日付の日本熱帯医学会学会誌「Tropical Medicine and Health」に掲載されました。本共同論文では、スピルリナを中間宿主*2である巻貝に与えることで、巻貝を生かしながら感染幼虫を抑える、環境に優しく持続可能な感染症対策方法を発見しました。

<研究の背景>
住血吸虫症は、世界で2億5千万人以上が感染している「顧みられない熱帯病(NTDs)*3」の一つで、主にアフリカ、中南米、東南アジアで流行しています。この病気は、水中に存在する幼虫(セルカリア*4)が皮膚を通じて体内に侵入し、血管内で成虫となって産卵することにより発症します。感染源となる巻貝(中間宿主)を駆除する農薬は高い効果を持つ反面、環境影響が大きいことが課題です。

<研究成果のポイント>
■ 住血吸虫症の新たな対策法として、環境毒性を示さない「スピルリナ飼料」を開発。中間宿主巻貝内でのセルカリアの発育を抑制する効果を確認しました。
■ スピルリナ飼料の直接投与により、セルカリアが死滅すること、飼料が巻貝の健康には影響を与えず、住血吸虫に対して選択的な効果を示すことを確認しました。
■ 従来の巻貝駆除薬は環境負荷が高く普及が進まない中で、本研究によるスピルリナ飼料は、寄生虫のみを抑制する安全で持続可能な代替策となる可能性を提示しました。今後は、野外試験や他の寄生虫症への応用も視野に入れています。

本研究成果により、サステナブルな素材であるスピルリナが、住血吸虫症の解決策として活用されることが期待されます。
なお、本研究成果は特許を取得しています。

<当社のスピルリナについて>
当社は、1970年代より50種類以上の健康・栄養成分を含む食用藍藻類「スピルリナ」の培養研究に取り組み、世界で初めて屋外培養に成功しました。以来、藻類研究のパイオニアとして、健康食品や食用色素、食品素材、飼料分野へ展開してきました。

DICグループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」において、” Quality of Life(QOL)社会 ”に貢献するため、「ヘルスケア領域」を重点事業領域の1つに定め、ヘルスケア分野の事業拡大を掲げています。消費者の健康志向を背景に、今後も“食の安全・安心”に注力した食品やサプリメントなどの製品開発を進めていきます。


*1 住血吸虫症:住血吸虫による感染症で、成虫が血管内に寄生し、産生された虫卵により肝臓や腸、膀胱などに障害を引き起こす。主に流行地の汚染された河川や湖に入ることで感染する。
*2 中間宿主:終宿主とは異なり、その中で有性生殖は行わないが、寄生虫が成長や変態をするために必要な宿主。住血吸虫の場合、巻貝がこれにあたる。
*3 顧みられない熱帯病:熱帯地域の貧困層で蔓延しているWHOが定める21の寄生虫・細菌感染症のことを指す。世界で約16億人が感染のリスクにさらされており、貧困による劣悪な衛生環境などにより蔓延し、労働力や生産性の低下を招き、貧困から脱出できない原因にもなっている。
*4 セルカリア:住血吸虫の幼虫の一形態で、中間宿主巻貝より水中に放出され、ヒトの皮膚から侵入し感染を引き起こす。

<研究の詳細>
本研究では、巻貝にマンソン住血吸虫を感染させ、スピルリナを含む飼料を与えたところ、セルカリアの排出が大幅に減少することを発見し、スピルリナの効果について検証しました

<掲載概要>
掲載雑誌:「Tropical Medicine and Health」
論文タイトル:Development of a spirulina feed effective only for the two larval stages of Schistosoma mansoni, not the intermediate host mollusc
掲載URL:https://tropmedhealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41182-025-00727-3

以上

DICは日本で有数のファインケミカルメーカーです。DICを中心に世界全体でSun Chemical Corporationを含む約170の子会社によってグループが構成され、60を超える国と地域で事業を展開しています。グループ全体として、人々の生活に欠かせない包装材料、テレビやPC等のディスプレイに代表される表示材料、スマートフォンなどのデジタル機器や自動車に使用される高機能材料を提供するグローバルリーディングカンパニーと認知されています。これらの製品を通じて、社会に安全・安心、彩り、快適を提供しています。DICグループは持続可能な社会を実現するため、社会変革に対応した製品や社会課題の解決に貢献する製品の開発にグループ一丸で取り組んでいます。連結売上高は1兆円を超え、世界全体で21,000名以上の従業員を有するなか、DICグループはグローバルで様々なお客様に寄り添っていきます。詳しくは、https://www.dic-global.comをご覧下さい。

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