“夢の新素材” 植物由来の「セルロースナノファイバー(CNF)」の事業化に成功した星光PMCをご紹介!

  • サステナビリティ
2020年1月21日

企業の「持続可能な社会づくり」への貢献が重要課題とされる昨今。DICグループは、社会の課題にまっすぐ向き合いながら、次の成長軌道を目指しています。グループ企業の星光PMCは、製紙用薬品のトップ企業でありながら、環境貢献型の新製品開発でも成果をあげています。同社を率いる滝沢智社長に事業にかける思いと具体的な取り組みについて聞きました。

―まず事業に関して、また環境貢献へのお考えを教えてください
星光PMCは、製紙用薬品、インキ・トナー用樹脂、粘着剤、化成品の4つの事業、そして新規開発を柱としています。環境貢献に関しては、公害を克服してきた製紙産業に関わる企業として1968年の創業時から自然と重視してきたと思います。祖業である製紙用薬品事業では、主に紙に強度や耐水性をプラスする薬品を製造販売しているのですが、リサイクルを繰り返した古紙でも、当社の乾燥紙力剤を使うことで丈夫な段ボールに再生することが可能になります。インキ用途となる樹脂事業も同様で、溶剤の低減や水性化、バイオマス原料の活用などを通して、美しい印刷と環境負荷の低減の両立を実現してきました。
私は高校生のとき、偶然書店で見つけた雑誌に、「公害を起こしたのは化学だが、解決できるのもまた、化学である」といった内容の一文を見つけたことがあり、化学の道を志す契機になりました。環境への配慮が自然なことに感じるのはそういう言葉との出会いが大きいかもしれませんね。
そして今、まだ道半ばではありますが、当社の社員やDICグループの皆さんと共に、化学の力で環境負荷を低減するビジネスと研究開発を展開できています。化学の力を改めて実感し、同じ志を持つ仲間がいることを誇らしく感じています。

―昨年経営理念の刷新をされましたが背景について教えてください
2018年に創業50周年を迎えたのを機に経営理念を刷新しました。これは、改めて「技術を通して地球環境に貢献する企業」という方向性を明確にしたいという思いから策定しました。また、経営理念をより具体的に実践していくために、社員から意見・アイデアを募り「エコテクノロジーで未来を創る」という新しい経営ビジョンを掲げました。エコテクノロジーとは、「環境を守り、持続可能な社会を実現するための技術」を意味しています。

―中期経営計画「New Stage 2021」達成の上で、特に重視して取り組まれていることをお聞かせください
中期経営計画「New Stage 2021」では、「環境技術を軸にして国内事業基盤の強化と、海外展開推進・新事業構築を通じ、持続的な社会の実現に貢献するグローバル企業を目指す」という基本方針を掲げています。国内事業基盤の強化については、お客様のニーズに今まで以上にお応えできるよう、営業および開発体制の強化・整備を進めています。また海外展開については、新綜工業(台湾)を起点にした粘着剤の拡販や、成長著しい東南アジアをターゲットにした製紙用薬品事業の拡大を進めています。さらに新事業構築については、実用化を進めるべくお客様とのより積極的な取り組みや、競争力を高めるための体制強化や仕組みづくりを推進しています。
その中で、カギとなるのはやはり「人」だと考えます。いかにお客様のニーズやその背景・社会的な流れを捉えられるか。いかに言語や文化、商習慣の異なる海外の市場にマッチした開発、販売、製造ができるか。いかにこれまでに経験のない新しい用途や分野を柔軟に理解し、対応することできるか、が重要であり、それらすべては人材に帰着します。そのため、この中計ではより積極的な人材登用や人材育成を進めていく予定です。また、環境技術については、環境に特に貢献する製品(環境戦略製品)の売上を指標化した「Green Index」を独自に定め、中計最終年度には対 2018年度比で26%以上のアップを目指します。

―新事業の現状や製品について教えてください
もともと製紙用薬品と印刷インキ用樹脂が主力であった当社は、2005年ごろから将来を見据え新たな事業軸構築の必要に迫られました。私が社長に就任する以前から、当社は毎年売上の約7%を研究開発費に注いできましたが、中堅化学企業として限られた経営資源を投下するには、的を絞る必要もありました。
現在は植物由来の持続型資源として注目を集める「CNF(セルロースナノファイバー)」や、スマートフォンや太陽電池の電極としての応用が期待される「銀ナノワイヤー」など、次世代素材の開発に取り組んでいます。CNFは将来的には自動車部品や樹脂部品、住宅建材や家電筐体など幅広い用途への活用が期待され、2018年には当社のCNF「STARCEL」がスポーツメーカーのアシックスにランニングシューズの材料として採用されました。当社のエコテクノロジーが製品として評価されたことで、社員が改めて経営ビジョンの意義や挑戦する社風を心に刻むことができたと自負しています。
一方、スマートフォンなど電子媒体のタッチパネルに使われる銀ナノワイヤーは、従来素材よりも反応が良く、曲がるディスプレイやウエアラブル端末にも応用が可能です。レアメタルを使う従来品よりも安定供給が可能なことから、ユーザーからの注目度の高い素材です。こちらは商用化まであと一歩のところまで来ています。価値ある研究を続けても、製品を世に出さなければその価値を伝えることはできません。CNFでは次なる一手を、銀ナノワイヤーでは1日も早い実用化を目指していきます。

―最後に、DICとの協業などについて教えてください
現在さまざまな部分で、一緒にやらせていただいています。例えば、当社より、DICに樹脂を卸し、反対にDICより原料を購入することもあります。DIC北日本ポリマをはじめ生産委託で協力をいただくなど、多様な協力関係を展開しています。加えて、原料の共同購入や管理部門から労働組合にいたるまで緊密な交流があり、当社だけでは不足する知見を補うことができています。
前述したCNF複合素材でも、研究のスタート段階から当社とDICが共にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトに加わり、協力して研究を重ねてきたことが商用化につながりました。
DICも当社も、新規事業の育成やサステナビリティへの貢献という共通の目標を掲げています。両社の技術を結集し、環境に貢献するビジネスを創出していくため、さらなる連携を深めていきたいと考えています。

星光PMC株式会社 ホームページ

新事業の創出はDICグループの未来を開く扉と言えます。そんな中、星光PMCのCNF素材である、STARCEL(スターセル)が、アシックスのシューズに採用され、注目を集めています。製品について、またその開発秘話について紹介します。

アシックスの高機能ランニングシューズに採用!

高い強度と軽さ、熱に強い特性が評価され、2018年にはアシックスの高機能ランニングシューズ製品「GEL-KAYANO 25(ゲルカヤノ25)」のミッドソール部材の原材料の一部に採用された。

CNF(セルロースナノファイバー)とは?

CNFは植物の主成分であるセルロースを、ナノサイズまで解きほぐした繊維。鉄鋼の約5倍の強度を持ちながら重さは5分の1程度と軽いうえ、環境負荷が少なくリサイクルもしやすい素材です。現在はボールペンのインクや紙おむつの消臭剤として商品化の例はあるものの、用途は限られています。今後、さらに研究が進むことで建築材料や、自動車などの輸送機器材料といった用途への応用が期待されており、その市場は世界中に広がると予想されています。経済産業省は2030年にはCNF関連市場を1兆円規模に育てる目標を掲げています。

星光PMC開発のCNF=STARCEL

STARCELは京都大学と星光PMCやDICを含む産学連携プロジェクトが開発した「京都プロセス」という製造法を採用し、独自の改良を加えた星光PMCのCNFです。現在、主に商用化されているゲル状のCNFより応用範囲が広く、電子デバイスから自動車まで、幅広い用途での活用が可能です。社名の星(スター)とセルロースに由来し、STARCEL(スターセル)と名付けられました。

※STARCELは、本文および図表中で「®」は明記しておりませんが、星光PMC株式会社の登録商標となります。

1.効率的に製造できる「京都プロセス」
次世代素材は製造コストが高いことが普及のネックとなりがちですが、STARCELが採用する京都プロセスはCNFを分散させる工程が不要なうえ、水を使用しないため脱水処理の必要がなく、製造にかかる時間とコストを大幅に削減。これはセルロースの表面処理の工程で星光PMCの製紙用薬品の知見が生かされています。


2.自動車や家電、建材にも使える
先に実用化されていたCNFの多くは水となじみやすい親水性で、そのままでは固い素材に利用したり、解きほぐしたりして樹脂に均一に混ぜることが難しいとされてきました。これに対しSTARCELは水と混ざりにくい疎水性で、樹脂中に均一に分散させることができるため強度や耐久性が高く、自動車や家電、建材といった用途にも活用が可能になります。


3.原料が植物なので環境負荷が低い
CNFは植物を原料とするため、計画的な植林と利用を進める限りは枯渇する心配がありません。特に森林資源が豊富な日本では、調達しやすい原料です。現在、自動車や家電などに幅広く利用されているガラス繊維はリサイクルができないため、環境意識の高い欧州などで使用を規制する動きもみられますが、CNFは焼却可能で、リサイクルもしやすい素材です。


4.「ポスト炭素繊維」の期待も
CNFは軽くて丈夫なうえ、プラスチックなどに混ぜて自動車や家電などの部材に活用することが可能です。こうした分野では現在炭素繊維が広く採用されていますが、CNFはその性能と環境負荷の低さから「ポスト炭素繊維」とも目される存在です。自動車や航空機に活用されれば車体や機体が軽量化するので、燃費の向上やCO2の削減も期待できます。

エコプロアワード

2019年の第2回エコプロアワードで、STARCELが奨励賞を受賞しました。エコプロアワードは日本の環境貢献製品の普及拡大を目的として、一般社団法人産業環境管理協会が主催する名誉ある賞です。

東京モーターショーで展示

2019年10月に開催された東京モーターショー2019では、STARCELが材料として採用された環境省のNCV(ナノセルロースビークル)プロジェクトのコンセプトカーが出品されました。

アシックスのシューズに採用され注目を集めるSTARCEL。
その開発秘話を取締役技術本部長の岩田さんにお聞きしました。

2006年、日本経済新聞に京都大学の矢野浩之教授がCNFを開発したことを報じる記事が掲載されました。この記事を目にした社長の滝沢は、「当社でも貢献できる」と直観的にひらめいたそうです。滝沢にとってセルロースは大学時代から研究してきた思い入れのある分野だったこともあり、早速矢野教授のもとへ足を運びました。それをきっかけに、矢野教授が指揮するNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のCNF関連プロジェクトにDICとともに参画、製品化に向けた挑戦がスタートしました。

2007年にNEDOのプロジェクトに参加して以降、6年間研究を継続してきました。そして2013年には、経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業に採択され、CNF製造のプラントを設置できることになりました。当社独自の技術なので、モデルとなるプラントがこの世に存在しません。ゼロから仕様を決めていく作業は開発者の醍醐味を感じた半面、税金を原資とする助成金を使っていたためプレッシャーも大きくのしかかりました。

2014年にスポーツメーカーのアシックスから、「ランニングシューズのミッドソールの材料に使えないか」という打診が舞い込みました。自動車向けしか想定していなかった開発陣にとっては寝耳に水の申し出でした。サンプルを納品したものの、当初は良い評価を得られず、アシックスの要望を丹念に聞き取りながら改良を重ねました。そして2年後、ついに同社のミッドソールへの採用が決定、世界初となるCNFを使ったランニングシューズが誕生することになりました。

アシックス向け量産体制を整備するため、生産設備を研究所の小型機から工場の大型機に移行した際、完成した素材の中に異物が見つかりました。調べたところ、これは解きほぐしきれなかった繊維の固まりと判明。納品期限が迫る中、われわれはほぐれやすい変性セルロースパルプ開発のやり直しに迫られることになりました。開発が難航する中、途中で加わった研究員の山田修平さんがあっさりと問題を解決。視点を変えた取り組みが功を奏しました。開発されたパルプはその功績から「山田パルプ」と呼ばれています。

STARCELを使ったアシックスのランニングシューズは、軽さはもちろん、長く履いてもソールがへたりにくい優れた耐久性が評価され、すでに全世界で500万足を売り上げています。この実績を武器に、次に狙うのはより市場規模の大きい自動車向けなど構造材料としての採用です。環境負荷の小さいSTARCELの用途が拡大することで、環境に対するインパクトも大きくなります。世界中の道をSTARCELが使われた車が走る日を夢見て、開発を続けてまいります。

星光PMCでは、海外に多くの販路を持つKJケミカルズ、台湾の粘着剤メーカー新綜工業をグループに迎え、経済成長が続くアジア地域を中心にビジネスを拡大しています。そんな同社グループを紹介します。

KJケミカルズ株式会社
当社の前身は、株式会社興人の化成品事業部で、1970年代に事業を開始して以来、核酸誘導体やアクリルアミド誘導体を中心とした機能性モノマーの製造販売を行っています。2014年4月に星光PMCのグループ会社として新たな一歩を踏み出しました。当社製品は、製紙、石油掘削および、家庭用洗剤で使用される水溶性高分子の原料として、また、水系塗料、UV硬化型インキ・コーティング用樹脂の原料として世界中の皆さまからご愛顧いただいております。今後も製造技術にさらに磨きを掛け、安全でより魅力あふれる機能を有したアクリルモノマーならびにその周辺製品を提案してまいります。

新綜工業股份有限公司
当社は、台湾で1998年に設立された、工業用両面テープ、保護テープ、医療テープおよび光学テープなど多種多様なアクリル系粘着剤の開発・製造・販売を行うメーカーです。中国および台湾を中心とした顧客に対して、ニーズに合わせた特徴のある粘着剤を供給して強固な事業基盤を築いています。2019年1月に星光PMCのグループ会社となり、現在は当社の豊富な粘着剤設計の知見と星光PMCグループの事業基盤との相乗効果の発現を進めています。環境にやさしい無溶剤型粘着剤の販売を含めた高品質な粘着剤を迅速に供給し続けることにより、星光PMCのグループビジョンを体現し、中期経営計画に掲げた海外事業拡大の一翼を担ってまいります。

星光PMCでは、中期経営計画「NewStage2021」に掲げた海外事業展開の一環として、2019年末にベトナムに製紙用薬品を製造・販売する現地法人を設立。ベトナムを中心とするASEAN各国は、経済成長を背景に紙・板紙の生産量増加が見込まれており、高品質な製紙用薬品をタイムリーに提供することで、アジア地域における製紙産業の発展に貢献します。

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