

長期経営計画「DIC Vision 2030」の実現に向け、日々の仕事や人との関わりの中で、小さな変化が静かに積み重なっています。サークル活動を通じて生まれた社員同士のつながりが、日常の中で「あと2センチの背伸び」の挑戦を後押しする──。人事部の須藤陽介マネジャーの取り組みを通じて、DICの企業文化をひもときます。
「知り合いゼロ」を原動力に。人事部マネジャーが挑む、DICサークル文化の再構築

▲「『月曜日の出社が楽しくなる会社』であり続けることが私のミッション」と、語る須藤。
DICの人事部でマネジャーを務める須藤は、攻めの人材採用と組織開発を通じて、「人と人のつながりによる組織活性化」を担っています。
「普段からさまざまな社員から話を伺う機会が多く、若手からマネジメント層・経営層まで、幅広く接点が持てる仕事でやりがいを感じています」
そんな須藤が現在力を入れているのが、サークル活動の活性化。この取り組みを始めた背景には、自身の転職経験がありました。
「転職は、自身の夢を実現するための大きな挑戦である一方、同期ゼロ・信頼ゼロ・知り合いゼロからの会社人生のリスタート。DICに入社した時、少しでも早く会社の役に立ちたいと考えていたので、まずは社内で“友達”をつくろうと思ったんです」
まず、キャリア入社者が早く社内に溶け込む場づくりに着手しました。コロナ禍で休止していた近隣飲食店を手ごろ価格で利用できる「社員クラブ制度」を復活させ、社員が気軽に交流できる機会をつくりました。そして、次なる一手として考案したのがサークル活動です。
「きっかけは、上司からの『野球やりたいね』というひと言でした。私も野球が好きだったので、『じゃあやりましょう』と野球経験者を集めることにしたんです。まず、入社2年目の若手5人が参加してくれ、キャリア採用の野球経験者に声をかけ、野球好きの役員もすぐに参加してくれました。最終的に、工場や研究所からのメンバーも加わり、15名で本社野球部がスタートしました」
須藤の最終的な狙いは、もちろん野球だけをやることではありませんでした。社内コミュニケーションを活性化させ、「有機的な人のつながり」を増やすこと。業務外の活動を通じて社員が自然につながり、会社へ行くことが楽しみになる──そんな状態をつくりたいと考えていたのです。
野球部の活動は、社内掲示・イントラなどを通じて発信していきました。すると、「私もサークルを立ち上げたい」という相談が人事部に次々と寄せられるようになったといいます。とくに反応が大きかったのが、学生時代にコロナ禍を経験した若手社員でした。
「サークル活動そのものの経験が少なかった世代です。『実はこういう活動に参加してみたかった』という声を多く聞きました」
誰かが声をかけ、別の誰かがそれに応じる。そうした何気ないやり取りが重なり合う中で、部署や立場を越えた関係性が、少しずつ形づくられていきました。
「楽しさ」の可視化で輪を広げる。サポーターも巻き込んだ野球部の成功事例

▲2025年7月、東京都中央区春季軟式野球大会(第4部)において、
「本社野球部」は初参戦・初優勝を果たしました。
当初は個人の呼びかけから始まったサークル活動でしたが、社員の反応を受け、人事部を中心に検討が進められました。その結果、「文化体育サークル規程」の整備や予算の確保が行われ、2026年からは会社としての施策へと発展し、本格的に推進されることになりました。
立ち上げたいサークルを募集すると、全事業所から申請があり、バドミントン、サッカー、駅伝、eスポーツ、ボウリング、ボードゲーム、ヨガなど28の団体が誕生しました。
サークル活動を社内に浸透させるため、須藤たちが最も心がけたのは「多くの社員がサークル活動を知っている状態」をつくることでした。
また、一般社員に加え、発信力や影響力のある役員層にも参加してもらうことで、人が人を呼ぶ形で活動が自然に広がっていく状態を意識しました。
「活動に参加する人が増えるにつれ、『〇〇さんが参加しているのなら』と、参加の輪が自然と広がっていきました。気づけば、立場や役職に関係なく声をかけ合う楽しそうな場面が、あちこちで見られるようになっていました」
さらに、サークル活動に注目が集まったきっかけであり、須藤自身も参加する野球部では、さまざまな試みを実践しています。
「社内報には、野球部の試合結果だけでなく打率などの個人成績や顔写真も掲載しています。すると、社内でも『昨日勝ったんだね』『○○さんは調子がいいね』などと声をかけられる社員の姿が見られるようになりました。
創設1年目、東京都中央区春季軟式野球大会第4部では快進撃を続け、初参戦・初優勝。勝ち続けたことで雰囲気も盛り上がり、活動の継続性も見えてきました。目的は勝つことではなく“友達”をつくることと言いながら、こうなると勝ちたくなってしまいますね(笑)」
野球部の最大の特徴は、選手だけでなく多様なサポーターも参加していることにあります。
「草野球チームでありながら、勝ち進むと30人ほどの社員が応援に駆けつけてくれるようになりました。『同じ職場の仲間が頑張る姿を見たい』『会社のチームが勝つところを見たい』という社員の声は本当にありがたいです。
また、社内報用の写真掲載のためにカメラマンを募集すると、『野球に詳しくないけどいいですか?』と、カメラが得意な若手社員が来てくれました。そのほか、スコアラーやチームサポートメンバーも多数加入しています。
普段仕事では接点がなかった社員がサークルをきっかけに集まり、活動が盛り上がる。すると『楽しそうなお祭りだな』と、さらに人が集まり多くのつながりが生まれる──野球以外のサークルでもこんな好循環が生まれ、プレーする以外も楽しめる交流の場を社内に増やしたいと考えています」
長期経営計画「DIC Vision 2030」の実現へ。サークル活動が育む挑戦する勇気と、共に戦う仲間の存在

▲本社のカフェテリアでは募集掲示板に人が集います。
サークル活動は、全事業所で28団体、563名が参加するまで広がりました。
サークル活動が活性化したことで、社内には確かな変化が生まれていると須藤は感じています。
「入社2~3年目の社員からは、『部署を超えて相談できる社員が一気に増えた』『これまで接点のなかった部署に連絡しやすくなった』という声が増えました。一方で、役員や管理職からは『若い世代とフラットに話せるのが、とても新鮮で楽しい』という声もあります。
私自身も、野球部のパーカーを着て社内を歩いていると、『今度うちのサークルにも来てください』や『この相談は人事の誰にしたら良いですか?』などと話しかけられ、縁遠かった人事を身近に感じてもらい、職場の役に立つきっかけになれていたら嬉しいです」
さらに、部門を超えた交流はビジネス面にも良い影響を与え始めています。
「野球部では、扱う製品が異なる営業担当同士が知り合ったことで、『最近、顧客のトレンドとしてこんな話があるよ』という情報交換がよく行われています。また、営業から技術部門の人に『顧客からこんな意見をいただいた』『営業現場でこんなことに困っている』という話をしているシーンもよく見かけますね。練習の合間や飲み会などで何気なく話したことが、新しい事業や業務改善につながる──そんな波及効果がいろんなサークル活動の中で起きたら嬉しいですし、人のつながりってやはり重要だなと感じます」
こうした日常のやりとりの中から自然と生まれてきた変化は、DICの長期経営計画「DIC Vision 2030」で描く方向性とも、少しずつ重なってきました。
「『DIC Vision 2030』については、社長からのメッセージとともに全社員へ周知されました。目指す事業ポートフォリオを実現し、企業価値を高めていくためには、これまでと同じやり方を続けるだけでは難しい――その認識は、社内でも共有されてきています。
DICには、長年培ってきた技術力に加え、社員同士が互いを尊重し、協力し合う土壌があります。その中で、一人ひとりがこれまで踏み出してこなかった領域に、ほんの半歩だけ踏み出してみる。そんな行動の積み重ねが、次の成長につながっていくのではないでしょうか。
一人で背伸びをするのは難しくても、隣にいる仲間と声を掛け合い、『困ったらあの人に相談してみよう』というつながりが深まれば、心強いはずです。サークル活動によって、そんなつながりをたくさん増やし、DICの文化をより強固で前向きなものにしたいですね」
DICのポテンシャルを信じて。「あと2センチの背伸び」をし、「ありがとう」を伝え合おう

サークル活動を通じたDICの組織活性化と風土改革に取り組む須藤ですが、サークル活動の活性化をゴールとは考えていません。この活動を通じて社員が元気になり、働きがいを感じ、月曜日に会社へ行くのが楽しみになる──サークル活動は、そんな状態をつくるための手段の1つなのだと言います。
「最終的に目指したいのは、家族や友人に『DICっていう会社で働いてるんだ』と自慢したくなる会社、周囲からも『DICっていい会社だよね』と言ってもらえる会社にしたいんです。そのためにも、今後は参加者自身が発信できるような仕掛けをつくりたいと思っています。仕事も遊びも一生懸命やる社員を増やし、DICが今日よりも明日にもっとパワーアップできたら嬉しいです」
人事業務からサークル事務局や野球部の活動まで、すべてにバイタリティを発揮する須藤。その熱量の源泉は、どこにあるのでしょうか。
「働く時間は人生の多くを占めるからこそ、会社は楽しく居心地のいい場所にしたいと思っています。キャリア入社者も新卒入社者も、入社初日は誰も知り合いがいない状態で、その会社の文化や共通言語もわからないことから始まります。私は新しい仲間が、新しい環境に早く溶け込み、持てる能力を如何なく発揮できるよう支援をしたいですし、目の前に困っている人がいて、自分が何かアクションを起こすことで解決できるなら役に立ちたい──そんな“おせっかい”な性格なんだと思います」
そして須藤は、サークル活動活性化の取り組みを通じて、DICの魅力を再発見したと語ります。
「感じているのは、この会社には人の挑戦や『やってみたい』という思いを、頭ごなしに否定しない空気があるということです。社員のやりたいことに対して『まずはやってみろ』と背中を押してくれる『進取の精神』があります。『リスクがあることはやらない』と慎重な判断も大切ですが、成功も失敗も経験とする文化や風土はDICの大きな魅力だと思います。
そしてチャンスをつかみ、やり切ると、たくさんの人から『ありがとう』という言葉が返ってくる。この『ありがとう』が聞こえる距離感で仕事ができるからこそ、次なるお役立ちテーマを見つけ、貢献したいと思います」
社員同士の新たな交流も生まれ始めたDIC。こうした小さな行動の積み重ねを通してさらに「挑戦するマインド」を持つ社員が増えていくと考えています。みんなで「あと2センチの背伸び」をし、「ありがとう」をもっと伝え合おうと、須藤は呼びかけます。
「サークル活動の申請受付を始めた頃、『どんなサークルがあったら参加したいですか?』と意見を募った時、ある社員が『バレーボール』と書きました。書くこと自体も小さな勇気のいる行動です。そして、その勇気ある行動に対して、『一緒にやろう』と声をかける勇気、動き出す勇気。こうした一つひとつが『あと2センチの背伸び』ということなのだと思います」
次に生まれる「あと2センチの背伸び」は、特別な決意から始まるものではないのかもしれません。
日常の中の、ちょっとした声かけや関心が、新たなつながりを育てていく。
DICには、そうした変化が自然に生まれてくる土壌が、まだたくさんあります。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです
プロフィール
須藤 陽介
人事部 人事グループ マネジャー
2007年大学卒業、自動車メーカー入社。その後、資源素材メーカー、ビールメーカーで幅広く人事部門を経験し、2023年DIC入社。採用・組織開発を担当。モットーは「明るく、楽しく、前向き」、「夢は大きく、志は高く」。趣味は都市対抗(社会人野球)観戦、初めて訪問する街のスーパーマーケットで買い物すること。
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