コーポレート・ガバナンス

コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方

当社グループは、コーポレートガバナンスを「企業の持続的な成長・発展を目指して、より健全かつ効率的な優れた経営が行われるよう、経営方針について意思決定するとともに、経営者の業務執行を適切に監督、評価し、動機づけを行っていく仕組み」ととらえ、株主、顧客をはじめとするステークホルダーの信頼を一層高め企業価値の向上を追求することを目的として、経営体制を強化し、その監視機能を充実させるための諸施策を推進します。

コーポレートガバナンスに関する方針

当社は、上記の基本的な考え方に基づき「コーポレートガバナンスに関する方針」を制定し、その内容を開示しております。

コーポレートガバナンス体制

当社は、監査役設置会社であり、取締役会および監査役会を置いています。
このほかに、執行役員制度を導入するとともに、役員指名委員会、役員報酬委員会、執行会議、サステナビリティ委員会、品質委員会およびWSR2020委員会を設置しています。

コーポレートガバナンス体制図
  • 取締役会

    取締役会は、経営方針決定の迅速化および企業統治の強化の観点から、社外取締役3名(そのうち1名は女性)を含む9名の取締役で構成され、原則として月1回開催しており、会社法で定められた事項および取締役会規程で定められた重要事項の決定を行うとともに、業務執行状況の報告がなされ、業務執行を監督しています。

  • 役員指名委員会

    役員指名委員会は、役員候補者の選任等の決定手続の客観性を高めるため、取締役、監査役、執行役員等の選任および解任案を決定し、取締役会に提出する機関として設置され、必要に応じて開催しています。その委員は、独立社外取締役3名を含む5名の取締役により構成され、独立社外取締役が委員長を務めています。

  • 役員報酬委員会

    役員報酬委員会は、役員報酬の決定手続の客観性を高めるため、取締役会の一任を受け、取締役および執行役員等の報酬等の額を決定する機関として設置され、必要に応じて開催しています。その委員は、独立社外取締役3名を含む5名の取締役により構成され、独立社外取締役が委員長を務めています。

  • 執行会議

    執行会議は、業務執行に係る重要な事項の審議機関として原則として月2回開催しています。構成メンバーは、社長執行役員、副社長執行役員、部門長、統括本部長、製品本部長等の取締役会が選任した執行役員等からなり、監査の一環として監査役1名が出席しています。当会議の審議内容および結果については、取締役会に報告しています。

  • サステナビリティ委員会

    サステナビリティ委員会は、当社グループのサステナビリティ経営の諮問機関として、サステナビリティにかかる方針および活動計画の策定並びに活動の評価・推進のために、年数回開催しています。構成メンバーは、社長執行役員、副社長執行役員、部門長、統括本部長、製品本部長、地域統括会社社長等の取締役会が選任した執行役員等からなり、監査の一環として監査役1名が出席しています。当委員会の審議内容および結果については、取締役会に報告しています。

  • 品質委員会

    品質委員会は、当社グループの品質マネジメント状況の報告および進捗管理を行うとともに、当社グループの品質方針、重要施策、重要課題の審議機関として、原則として四半期に1 回開催しています。構成メンバーは、社長執行役員、副社長執行役員、部門長、統括本部長、製品本部長等の取締役会が選任した執行役員等からなり、監査の一環として監査役1名が出席しています。当委員会の審議内容および結果については、取締役会に報告しています。

  • WSR2020委員会

    WRS2020 委員会は、当社グループ社員の働き甲斐と生産性向上を目的として、働き方改革に関わる施策、投資計画等の審議機関として、原則として四半期に1 回開催しています。構成メンバーは、社長執行役員、副社長執行役員、部門長、統括本部長、製品本部長等の取締役会が選任した執行役員等からなり、当委員会の審議内容および結果のうち重要性の高い事項については、取締役会に報告しています。

  • 監査役会

    監査役会は、社外監査役2名(そのうち1名は女性)を含む4名の監査役で構成され、原則として月1回開催しています。監査役会においては、監査方針、監査計画等について審議、決議する他、各監査役が監査実施結果を報告しています。
    監査役は、取締役会、執行会議、サステナビリティ委員会その他重要な会議へ出席する他、代表取締役と定期的に情報・意見の交換を行い、取締役、執行役員および従業員から業務遂行状況を聴取しています。また、監査役直轄組織として監査役室を設置し、監査役職務の補助のための専属のスタッフを置いています。
    常勤監査役の二宮啓之氏は、長年当社およびグループ会社の財務・経理業務を担当し、経理部長、財務経理部門長を歴任しており、社外監査役の千葉通子氏は、公認会計士の資格を有し、監査法人で長年会社の会計監査に携わっており、社外監査役の名倉啓太氏は、弁護士としての企業法務における知見に加え、税理士法第51条に基づく通知税理士として税理士業務に従事しており、3氏とも財務および会計に関する十分な知見を有しています。

  • 内部監査部門

    内部統制部は、内部統制状況のモニタリングを含む内部監査を実施しています。アジア・オセアニア、中国、米州・欧州においては、各地域における内部監査部門が、それぞれの内部監査を実施しています。

  • 会計監査人

    会計監査人には、有限責任監査法人トーマツが選任されています。当社は、当該会計監査人に正確な経営情報を提供し、公正な会計監査が実施される環境を整備しています。
    監査役、会計監査人および内部監査部門は、それぞれ独立した監査を実施していますが、相互に定期的に連絡会議を開催するなどにより緊密な連携を図っており、効率的で実効性のある監査の実施に努めています。

委員会の状況

現状のコーポレートガバナンス体制を採用する理由

当社は、執行役員制度を導入することにより、意思決定と執行を分離し、業務執行の迅速化と責任の明確化を図っています。また、独立性の高い社外取締役3名を取締役会に加え、経営者の業務執行に対する監督機能を強化しています。さらに、社外取締役3名をメンバーに含む「役員指名委員会」と「役員報酬委員会」を設置し、役員候補者の選任および役員報酬の決定に際して、外部の客観的な意見が反映されるようにしています。
また、公認会計士および弁護士である社外監査役2名を含めた4名の監査役が会計監査人および内部監査部門と連携しながら監査を行っています。
以上のとおり、コーポレートガバナンスが有効に機能する体制となっています。

内部統制システム

01内部統制システムおよびリスク管理体制の整備・運用の状況

当社は、当社グループが「The DIC Way」に則った経営を行うに当たり、会社法に基づき、内部統制システムを以下のとおり整備・運用しています。

  • 当社グループの取締役および使用人が遵守すべきコンプライアンスに関する基準として、「DICグループ行動規範」を定め、その周知徹底を図っています。
  • 当社グループ共通の内部通報制度を制定し、業務上の情報伝達経路とは独立した複数のルートからなるコンプライアンスに関する通報窓口を設け、国内外からの通報に速やかに対応できる仕組みを整備しています。
  • 当社グループにおいて、取締役の職務が適正かつ効率的に執行される体制を確保するため、組織および権限に関する規程を制定しています。
  • 当社グループの経営方針および経営戦略に基づき、長期経営計画・年度予算を策定、周知することで当社グループの目標を共有しています。これらの進捗状況については取締役会に報告しています。
  • 取締役の職務の執行に係る情報を記録し、文書管理に関する規程に基づき適切に保存および管理しています。また、情報管理体制に関する規程を制定し、当社グループにおける秘密漏えいの防止体制を整備しています。
  • 「 リスクマネジメントに関する方針」を定め、当社グループの経営に重大な影響を及ぼすリスクを認識、評価し、優先順位を決めて適切に対応しています。
  • 子会社ごとに事業遂行および経営管理の観点から所管部門を定め、また、各子会社に取締役を派遣することによって各社の業務執行を監督しています。
  • 子会社における重要案件等、当社の承認、当社への報告が必要な事項を明確にしています。

02反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方およびその整備状況

当社グループは、「DICグループ行動規範」において、反社会的勢力には断固とした姿勢で臨み、その要求には決して屈しないことを基本方針としています。
反社会的勢力による不当要求等に対しては、当社総務人事部を統括部署とし、当社の各事業所および国内の当社グループ会社に防止責任者を設置し、弁護士や警察等と連携して毅然とした対応をとります。また、「反社会的勢力対応マニュアル」を配付し、社内への周知徹底を図ります。

社外取締役および社外監査役

01社外取締役および社外監査役の員数および役割

当社の社外取締役は3名、社外監査役は2名です。
社外取締役3名は、長年にわたり会社経営に携わっており、経営者としての豊富な経験や見識を当社の経営に反映させることができ、取締役会に出席する他、役員指名委員会および役員報酬委員会のメンバーとして、当社から独立した立場から当社の経営の監視にあたり、コーポレートガバナンスの強化の役割を果たすことができると考えています。
社外監査役2名は、企業の会計・法務分野において活躍する公認会計士および弁護士として、当社グループの経営に対する専門的、多角的、独立的な視点からの監査機能の強化に資することができると考えています。

02社外取締役および社外監査役の独立性に関する基準

当社は、社外取締役または社外監査役を選任するための当社からの独立性に関する基準を、以下のとおり定めています。当社の社外取締役および社外監査役は、同基準に基づき、一般株主と利益相反が生じるおそれはないと判断しており、いずれも株式会社東京証券取引所が定める独立役員に指名しています。

独立社外役員の独立性判断基準

当社は、独立社外役員を選任するに当り、以下のような関係にある者については独立性が認められないと判断する。

  • 現在または過去10年間において、当社および当社の連結子会社(以下当社グループという)の業務執行者であった者
  • 過去3年間において、以下の1~8のいずれかに該当していた者
    • 当社グループの主要な取引先(一事業年度の取引額が、当社グループの売上高の3%を超える取引先)またはその業務執行者
    • 当社グループを主要な取引先(一事業年度の取引額が、当該取引先の連結売上高の3%を超える取引先)とする者またはその業務執行者
    • 当社の議決権の5%以上を有する株主またはその業務執行者
    • 当社グループの主要な借入先(一事業年度の借入額が、当社グループの総資産の3%を超える借入先)またはその業務執行者
    • 当社グループから年間1,000万円を超える寄付を受けた者または受けた団体に所属する者
    • 当社グループの会計監査人もしくは会計参与である会計士等または監査法人等の社員、パートナーもしくは従業員である者
    • 上記6に該当しない者であって、当社グループから役員報酬以外にコンサルタント、会計士、弁護士等専門的サービスを提供する者として年間1,000万円を超える報酬を受けた者またはコンサルタント、会計士、弁護士等専門的サービスの対価としてその連結売上高の3%を超える報酬を受けた団体に所属する者
    • 当社の業務執行者が他の会社の社外役員に就任している場合における当該他の会社の業務執行者
  • 上記1および2に掲げる者の配偶者または二親等以内の親族
  • 当社の社外役員としての在任期間が8年を超えた者

03社外取締役および社外監査役に対するサポート体制

取締役会の開催にあたっては、取締役、常勤監査役と同様、社外取締役と社外監査役に資料の事前配付が行われています。また、社外取締役に対しては、担当役員が事前に付議事項について説明を行い、社外監査役に対しては、常勤監査役が必要に応じて事前説明を行っています。

コーポレートガバナンス体制に関するその他の取り組み

01取締役会の構成

  • 取締役会は、重要な業務執行を決議し、経営の監督の実効性を確保するために必要な知識・経験・能力のバランスを勘案し、独立性を有する社外取締役と、当社グループの事業に精通する者から構成し、経営陣への権限委任を前提として適切な規模とします。
    さらに、当社グループのグローバルな事業活動に対応するため、取締役会構成員の多様化を図ります。なお、取締役会構成員のうち2名(社外取締役、社外監査役各1名)は女性です。

  • 取締役会の役員構成

取締役会の構成

  社内 社外 合計 社外役員の比率
取締役 社内:6名 社外:3名 合計:9名 社外役員の比率:33.3%
監査役 社内:2名 社外:2名 合計:4名 社外役員の比率:50.0%
合計 社内:8名 社外:5名 合計:13名 社外役員の比率:38.5%

取締役・監査役の構成 各役員のスキル・マトリックス

取締役会は、重要な業務遂行を決議し、経営の監督の実効性を確保するために必要な知識・経験・能力のバランスを勘案して構成し、現在の取締役・監査役のスキル・マトリックスは下記のとおりです。

取締役・監査役の構成 各役員のスキル・マトリックス

02役員報酬について

当社の取締役の報酬は、役員報酬委員会において、市場性等を参考に決定しており、「基本報酬」、連結業績および個人の目標達成度に応じた「賞与」、並びに中長期的な業績に連動する「株式報酬」で構成されています。なお、賞与および株式報酬については、執行役員を兼務する取締役を支給対象とし、それ以外の取締役および社外取締役については、基本報酬のみを支給しています。
監査役の報酬は、基本報酬のみで構成され、監査役会で定めた内規に基づき、当社取締役報酬とのバランス、監査役報酬の市場性を考慮して、監査役全員の協議により決定しています。

2021年度に支払った報酬等の総額、報酬等の種類別の総額および対象となる役員の員数

区分 報酬等の総額(百万円) 報酬等の種類別の総額(百万円) 対象となる役員の員数
基本報酬(固定報酬) 賞与(金銭報酬) 株式報酬(非金銭報酬)
取締役
(社外取締役を除く)
290 206 68 16 7名
監査役
(社外監査役を除く)
60 60 - - 2名
社外役員 72 72 - - 6名
    (注)
  • 上記には、2021年3月30日開催の第123期定時株主総会終結の時をもって退任した取締役(社外取締役を除く)1名、社外監査役1名を含んでいます。
  • 株式報酬の総額は、業績連動型株式報酬制度に基づく当事業年度分の付与ポイントに相当する株式数の当社株式の価額を記載しています。

03取締役会の実効性評価

取締役会は、毎年、取締役会の実効性について全取締役および監査役が実施した自己評価の結果を分析・評価します。
2021年度においては、取締役会で決定した自己評価や取締役会の運営等に関する質問事項について、取締役・監査役全員に回答を求めるとともに、回答内容等について個別にインタビューを実施し、その結果に基づき取締役会で分析・評価を行いました。
その結果、社外役員を中心として自由かつ活発な議論が行われ、取締役会において適切に審議がなされていることを確認しました。また、2020年度の評価で指摘された課題についても、長期経営計画の策定に当たり複数回にわたる説明・審議の場を設け、議論の充実を図る等の改善がみられ、当社の取締役会の実効性は確保されていると判断しております。
2022年度は、取締役会の一層の実効性向上を図るために、長期経営計画「DIC Vision 2030」に掲げる主要施策の進捗確認を定期的に実施するとともに、グローバルな内部統制およびリスク管理体制に対する取締役会の監督強化等に取り組むこととし、今後も改善に努めてまいります。

その他の取り組み

01中核人材の登用等における多様性の確保

当社は多様性の確保に関する考え方に関し、Diversityを通じて多様性を互いに理解・尊重することにより、創造的な思考を生む企業文化を醸成し、すべての社員にとって働き甲斐のある職場づくりを通じて、新しい価値観を経営に反映させる「ダイバーシティ経営」を推進するとともに、「サステナビリティ基本方針」において多様性の尊重を規定しています。
多様性の確保に関する測定可能な目標として、「国内女性管理職比率」および「国内外国人社員比率」の目標を設定し、統合報告書に具体的な数値を示すと共に、中途採用比率等も含め毎年の実績値を掲載しています。
多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針に関しては、「多様な人材を適所適材に配置し、発揮される能力を最大化するための環境を整備する」との方針を示し、ダイバーシティ担当役員を配置して体制整備に努めています。また、長期経営計画では、人的資本経営強化のための3つの重点施策として「人材育成」「人的流動性(採用・サクセッション)」「エンゲージメント向上・組織力強化」を掲げるとともに、2020 年には全社プロジェクトであるWSR2020を立ち上げ「生産性の向上」と「働き甲斐の向上」の実現を目指した、ニューノーマルを見据えた新しいワークスタイルへの刷新を進めています。

02サステナビリティの取り組み等

当社は、自社のサステナビリティについては、環境・社会性・ガバナンスの観点から化学企業として取り組むべき活動テーマを定め、その推進状況を定め、その推進状況を統合報告書に開示しています。人的資本については、長期経営計画の「人的資本経営の強化」において「人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオを構築する」と明示し、統合報告書の「人材マネジメント」にページ内で様々な取り組みについて開示しています。また、知的財産については、重要な経営課題である「新しい価値の創造」のために知財権の活用が不可欠と考え、IPランドスケープ等を積極的に活用し、自社・他社間の相対的財力を把握することで、知財情報の事業への活用を進め、事業部門、技術部門、知財部門が一体となった体制を構築し、事業戦略に合致した知財戦略を進めています。これらの取り組みは、統合報告書の「新しい価値の創造」などにおいて情報開示を行っています。
さらに、当社はTCFDへの賛同表明を行い、国際エネルギー機関(IEA)による、WEO「持続可能な発展シナリオ」で示されたカーボンプライシング等のデータや脱炭素技術等に関するデータ、国際気候変動に関する政府間パネル(IPPC)による、気候変動予測シナリオ(RPC8.5)を踏まえた、沿岸に立地する工場の災害、インフラ機能の停止等についての他社被害事例を含めたリスクに関するデータを収集・分析し、気候変動に係るリスクおよび収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響についてシナリオ分析を実施し、統合報告書においてTCFDの枠組みに沿った情報開示を行いその充実に努めています。

コーポレートガバナンスの強化の変遷

コーポレートガバナンスの強化の変遷