業績の説明
(1) 2024年12月期 当連結会計年度の業績全般の概況
(単位:億円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年同期比 | 現地通貨ベース 前 年 同 期 比 |
|
---|---|---|---|---|
売上高 | 10,387 | 10,711 | +3.1% | △0.1% |
営業利益 | 179 | 445 | +148.1% | +155.8% |
経常利益 | 92 | 379 | +311.3% | - |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
△399 | 213 | 黒字化 | - |
EBITDA | 308 | 957 | +210.3% | - |
US$/円(平均) | 140.51 | 151.04 | +7.5% | - |
EUR/円(平均) | 151.98 | 163.34 | +7.5% | - |
EBITDA:親会社株主に帰属する当期純利益+法人税等合計+支払利息-受取利息+減価償却費+のれん償却額
当連結会計年度(2024年1月~12月)における当社グループの売上高は、前年同期比3.1%増の1兆711億円でした。現地通貨ベースでは0.1%の減収となりました。世界経済を振り返ると、米国や欧州ではインフレ圧力の緩和を受けて、中央銀行が利下げに転じるなど金融政策に変化が見られた一方で、中国では長引く不動産不況や内需の低迷などにより景気の先行きが不透明な状況が続きました。この状況下、当社グループが注力する主な顧客業界の需要動向としては、電気・電子やディスプレイを中心とするデジタル分野のうち、ディスプレイ市場はパネルメーカーの稼働状況に波が見られながらも概ね堅調に推移し、半導体市場も汎用品などの本格的な需要回復に至らなかったものの、生成AI等の成長領域にけん引される形で成長が見られました。モビリティを中心とするインダストリアル分野※では、自動車市場での世界販売台数が堅調に推移したことで、自動車向け材料の需要が底堅く推移しました。こうしたなか、当社グループの出荷動向に関しては、ファンクショナルプロダクツではエレクトロニクスやモビリティ関連の高付加価値製品を中心に回復が見られ、パッケージング&グラフィックでも、ジェットインキや海外のパッケージ用インキが、堅調な需要に支えられて増加しました。また、カラー&ディスプレイの顔料製品も、高付加価値製品であるカラーフィルタ用顔料が堅調であったことに加え、塗料用顔料とプラスチック用顔料についても、顧客による在庫補充の動きが続いたことにより、大きく落ち込んだ前期(2023年1月~12月)から回復しました。こうした出荷動向に加え、円安による為替換算影響も増収要因となりました。一方、事業ポートフォリオの変革を目的に、ファンクショナルプロダクツを中心としたノンコア事業の売却等による撤退を推進し、星光PMC株式会社など撤退事業の売上高が連結対象から外れたことが減収要因となりました。
営業利益は、前年同期比148.1%増の445億円でした。パッケージング&グラフィックとファンクショナルプロダクツでは、高付加価値製品の出荷数量が回復し、品目構成が改善したことに加え、地域や製品の状況に応じて価格対応に努めたことにより、それぞれ大幅な増益となりました。また、カラー&ディスプレイでは、塗料用顔料とプラスチック用顔料の出荷回復に加え、欧米を中心に生産体制の最適化等の構造改革を進め、コスト削減に努めた結果、赤字額が前年同期と比べて大幅に減少しました。
経常利益は、前年同期比311.3%増の379億円でした。
親会社株主に帰属する当期純利益は、213億円の黒字となりました。液晶材料事業の知的財産譲渡に伴う固定資産売却益や政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益の計上などにより、特別利益が増加した一方で、前期に計上した減損損失335億円の影響がなくなったことにより、特別損失が大幅に減少しました。
EBITDAは、前年同期比210.3%増の957億円でした。
※インダストリアル分野とは、自動車、鉄道、船舶などのモビリティ用途と建設機械、産業機械などの一般工業用途に係る製品分野の総称です。
(2)2024年12月期 当連結会計年度のセグメント別業績
(単位:億円)
セグメント | 売上高 | 営業利益 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
前年 同期比 |
現地通貨 ベース 前年同期比 |
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
前年 同期比 |
現地通貨 ベース 前年同期比 |
|
パッケージング& グラフィック |
5,419 | 5,698 | +5.1% | +2.4% | 220 | 336 | +52.8% | +58.7% |
カラー&ディスプレイ | 2,273 | 2,570 | +13.1% | +6.9% | △89 | △3 | 赤字減 | 赤字減 |
ファンクショナル プロダクツ |
3,059 | 2,863 | △6.4% | △8.9% | 154 | 210 | +36.0% | +31.6% |
その他、全社・消去 | △364 | △419 | - | - | △106 | △98 | - | - |
計 | 10,387 | 10,711 | +3.1% | △0.1% | 179 | 445 | +148.1% | +155.8% |
[パッケージング&グラフィック]
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
前年同期比 | 現地通貨ベース 前年同期比 |
|
---|---|---|---|---|
売上高 | 5,419億円 | 5,698億円 | +5.1% | +2.4% |
営業利益 | 220億円 | 336億円 | +52.8% | +58.7% |
売上高は、前年同期比5.1%増の5,698億円でした。食品包装を主用途とするパッケージ用インキは、国内では物価上昇の影響により消費財の需要が低調に推移し出荷が減少しましたが、コスト増加分に対する価格対応に努めた結果、増収となりました。また、海外では米州や欧州での消費財の需要の戻りやアジアでの顧客開拓などによって出荷を伸ばした結果、増収となりました。商業印刷や新聞を主用途とする出版用インキは、アジアでは顧客開拓などによって出荷を伸ばしましたが、国内と米州や欧州においては需要減少を背景に出荷が減少したことにより、全体として減収となりました。デジタル印刷で使用されるジェットインキは、顧客による在庫調整の解消により、需要が好調に推移し、出荷を伸ばした結果、大幅な増収となりました。
営業利益は、前年同期比52.8%増の336億円でした。国内では高付加価値製品であるジェットインキの出荷が好調であったことに加え、パッケージ用インキと出版用インキのコスト増加分に対する価格対応を進めました。また、海外では、アジアにおけるパッケージ用と出版用インキの出荷増に加え、米州や欧州において原料価格が下落局面にあるなか、安定した供給やサービスを通じて販売価格の維持に努めた結果、全ての地域で大幅な増益となりました。
[カラー&ディスプレイ]
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
前年同期比 | 現地通貨ベース 前年同期比 |
|
---|---|---|---|---|
売上高 | 2,273億円 | 2,570億円 | +13.1% | +6.9% |
営業利益 | △89億円 | △3億円 | 赤字減 | 赤字減 |
売上高は、前年同期比13.1%増の2,570億円でした。塗料用顔料とプラスチック用顔料は、主要市場である欧州においてドイツを中心とした景気停滞により顧客需要は本格的に戻らなかったものの、顧客による在庫調整が一巡して以降、建築や工業用途を中心に在庫補充の動きが続いたことで、出荷が回復しました。高付加価値製品については、ディスプレイ用途であるカラーフィルタ用顔料は、パネルメーカーの稼働状況によって需要に波が見られながらも概ね堅調に推移し、前期を上回る出荷となりました。化粧品用顔料は、主な顧客である欧米の化粧品メーカーによる在庫調整の動きが続いたことで需要が停滞し、出荷が減少しました。スペシャリティ用顔料は、農業向けが顧客の在庫調整の長期化により出荷減となりましたが、建築向けが欧州での建築需要の回復やアジアでの顧客開拓などにより出荷増となりました。
営業利益は3億円の赤字となりました。高付加価値製品の出荷動向にばらつきがあったなか、塗料用顔料とプラスチック用顔料の出荷増に加え、欧米を中心に生産体制の最適化等の構造改革を進め、コスト削減に努めた結果、前年同期と比べて赤字額が大幅に減少しました。
なお、今期中の撤退を公表していた液晶材料事業については、予定どおり2024年12月で生産を終了しました。
[ファンクショナルプロダクツ]
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
前年同期比 | 現地通貨ベース 前年同期比 |
|
---|---|---|---|---|
売上高 | 3,059億円 | 2,863億円 | △6.4% | △8.9% |
営業利益 | 154億円 | 210億円 | +36.0% | +31.6% |
売上高は、前年同期比6.4%減の2,863億円でした。なお、星光PMC株式会社の売却等の事業撤退による影響を除くと、7.8%の増収となりました。デジタル分野については、半導体などのエレクトロニクス材料を主用途とするエポキシ樹脂はAIサーバーやPC、スマートフォンの需要増に伴い関連製品の出荷が伸び、品目構成が改善したことで、増収となりました。スマートフォンなどのモバイル機器を主用途とする工業用テープも、着実に需要を取り込んだことで、増収となりました。インダストリアル分野については、自動車市場での世界販売台数が堅調に推移するなか、PPSコンパウンドの出荷数量が国内を中心に増加するなど、モビリティに関連した製品が底堅く推移しました。
営業利益は、前年同期比36.0%増の210億円でした。事業撤退による影響を除くと、65.9%の増益でした。エレクトロニクスやモビリティに関連した高付加価値製品の出荷回復により品目構成が改善したことや、各製品において価格対応に努めたことにより、大幅な増益となりました。
(3)次期の業績全般の概況
(単位:億円)
当連結会計年度 | 次期見通し | 前年同期比 | |
---|---|---|---|
売上高 | 10,711 | 11,100 | +3.6% |
営業利益 | 445 | 480 | +7.8% |
経常利益 | 379 | 440 | +16.1% |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
213 | 240 | +12.6 |
EBITDA | 957 | 1,020 | +6.6% |
US$/円(平均) | 151.04 | 150.00 | △0.7% |
EUR/円(平均) | 163.34 | 158.00 | △3.3% |
次期の世界経済については、貿易摩擦をはじめとする地政学上のリスクの高まりを背景に、国内外の景気・物価や資源価格の動向が、引き続き不確実性の高い状況となる見通しです。
このような状況において、当社は2024年2月に公表した長期経営計画「DIC Vision 2030」の見直しで掲げた基本方針に沿い、引き続き以下の考えを念頭に事業運営に注力しながら、外部環境の変化に対しても迅速な対応を講じることで、業績の回復軌道を維持できるように努めます。
・事業ポートフォリオの変革を一層加速し、成長軌道の道筋を明確化させる。
・あらゆる施策を通じて、買収した事業の早期収益化、収益向上を実現する。
・需要回復局面において、確実に需要を取り込み、売上と収益の向上を図る。
・費用対効果の観点から、早期且つ確実に成果が得られる施策にリソースを有効投入する。
「DIC Vision 2030」の見直しの詳細は、 長期経営計画
以上を踏まえて、当社グループの2025年通期の売上高は前年同期比3.6%増の1兆1,100億円、営業利益は7.8%増の480億円、経常利益は16.1%増の440億円、親会社株主に帰属する当期純利益は12.6%増の240億円を予想しています。
(4)次期のセグメント別業績見通し
(単位:億円)
セグメント | 売上高 | 営業利益 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
当連結 会計年度 |
次期見通し | 前年 同期比 |
当連結 会計年度 |
次期見通し | 前年 同期比 |
|
パッケージング& グラフィック |
5,601 | 5,748 | +2.6% | 316 | 294 | △7.1% |
カラー&ディスプレイ | 2,570 | 2,731 | +6.3% | △3 | 61 | 黒字化 |
ファンクショナル プロダクツ |
2,960 | 3,027 | +2.3% | 214 | 210 | △2.1% |
その他、全社・消去 | △419 | △406 | - | △82 | △84 | - |
計 | 10,711 | 11,100 | +3.6% | 445 | 480 | +7.8% |
(注)2025年度より「パッケージング&グラフィック」、「ファンクショナルプロダクツ」及び「その他、全社・消去」のセグメント間で、売上高と営業利益の一部についてセグメント区分を変更します。
これに伴い、当連結会計年度についても、変更後の数値に組み替えて記載しています。
業績の見通しは、現時点で入手可能な情報に基づき、当社が判断したものであり、潜在的なリスクや不確定要素が含まれています。業績に影響を与え得る重要な要素としては、国内外の経済情勢、市場の動向、原材料価格や金利、為替レートの変動などのほか、紛争・訴訟、災害・事故などのリスクがあり、また、事業再構築に伴う一時損失が発生する可能性があります。ただし、業績に影響を与え得る要素はこれらに限定されるものではありません。