CFOメッセージ

DIC Vision 2030の改定に基づき、
キャッシュ創出と最適配分で株主価値向上に努めます

最高財務責任者
取締役 専務執行役員 財務経理部門長
浅井 あさい たけし

業績および財務体質の振り返り

2023年は対前年で減収減益、特別損失により赤字化、と当社にとって厳しい結果となりました。

デジタルやモビリティに関連した高付加価値製品の出荷数量が減少したことに加え、顔料製品の在庫削減のため、米国と欧州の一部の生産拠点を一時的に稼働停止したことにより、大幅な減益となりました。財務体質としては、在庫の削減による運転資本圧縮が有利子負債削減につながった ものの、減益による自己資本減少によりネットD/Eレシオ※1 は1.21倍に悪化しました。

キャッシュ・アロケーション方針の導入

長期経営計画DIC Vision 2030の見直しに伴い、創出したキャッシュの最適配分を目的に「キャッシュ・アロケー ション方針」を定めました。2024年~26年の3年間をかけて事業ポートフォリオ変革と構造改革推進とともに、運転資本改善、資産圧縮によりキャッシュを創出し、それを最適配分することで、財務体質の健全化を進めるとともに株主還元も充実させてまいります。企業価値を向上し、PBR改善、1倍超を目指します。

  • 営業キャッシュフローの拡大と安定化
    DIC Vision 2030において戦略投資枠を設け、積極的な投資を実施してきましたが、買収事業の収益化に想定より時間を要してしまい投資効率(ROICおよびROE)が低下しているのが現状です。今期は業績改善を最重要と考え、早期かつ確実に成果を得られる施策を絞り込み、メリハリのある経営資源の配分を徹底、買収事業の合理化とシナジー追求を促進します。
  • 運転資本改善と資産効率化
    2023年は米国および欧州における顔料製品を中心に在庫圧縮に取り組み、前年対比で運転資本改善とキャッシュ・コンバージョン・サイクル※2の短縮を実現しました。引き続き、地域ごとに定めるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの目標管理を徹底し運転資本の適正化を図ります。特に在庫管理においては、事業ごとに目標を設定し、モニタリングを定期的に実施することで、全社一体となって取り組んでまいります。また政策保有株式の縮減やノンコア事業の資産圧縮等を実行していきます。
  • 資本コストを意識した厳選投資
    財務体質を表すネットD/Eレシオが昨年1.21倍に悪化しましたが、1.0~1.1倍への早期改善を目指します。設備投資、戦略投資においては収益性を重視して厳選して実施し、追加投資については収益確保の可能性を見極めて判断いたします。事業構造改革進展による若干のレバレッジは許容しながらも格付A格を維持できるように事業運営してまいります。
  • 株主還元の強化
    2023年の収益悪化を受け、2023年度の配当については、中間配当50円、期末配当30円、通期80円(対前年△20円)となりました。2024年度より年間配当100円を下限とする配当方針を導入し、安定的な株主還元を実施していきます。また各施策の加速的・積極的な取り組みにより追加キャッシュが創出される場合は株主還元に充当いたします。

※1 ネットD/Eレシオ:ネット有利子負債/自己資本
※2 キャッシュ・コンバージョン・サイクル:企業が原材料や商品を仕入れて資金回収するまでの日数を計算した経営指標

2024年7月2日