CFOメッセージ
ROIC経営の推進により
キャッシュの創出と最適配分を徹底します
最高財務責任者
取締役 専務執行役員 財務経理部門長
浅井
健

業績および財務体質の振り返り
2024年の売上高は前年対比+3.1%、営業利益は+148.1%と2023年の厳しい業績から改善しました。資本効率の追求として星光PMC株式会社の売却、液晶事業の知的財産の譲渡を実施しました。また、構造改革とコスト削減により2023年に大幅赤字であった顔料事業の赤字幅が大きく改善しました。財務体質としては、業績回復に伴う着実なキャッシュフローの創出および資産売却によりネット有利子負債は前年対比190億円削減、増益および円安による自己資本増加によりネットD/Eレシオ※1は1.05倍に改善し、目標レンジである1.0~1.1倍を達成しました。
キャッシュ・アロケーション方針の進捗と課題
2024年に掲げた“長期経営計画DIC Vision 2030の見直し”において、創出したキャッシュの最適配分を目的に「キャッシュ・アロケーション方針」を定めました。初年度である2024年は顔料事業の構造改革や海外の印刷インキを中心とした販売価格の維持に取り組んだ結果、業績改善による営業キャッシュフローの創出を実現するとともに、資産圧縮として上述の事業譲渡に加えて、政策保有株式の売却を積極的に進めました。一方、運転資本については売上高の増加に伴い増加傾向にあったため、棚卸資産を中心に圧縮努力を継続し、キャッシュ・コンバージョン・サイクル※2を改善していきます。
追加株主還元
2024年はキャッシュ・アロケーション方針において株主還元の下限として設定した年間配当100円を実施することができました。2025年については、年間配当100円の維持に加え、100億円程度の追加株主還元を実施する予定です。今後も資産売却等による追加のキャッシュイン創出時には、その都度、キャッシュ・アロケーション方針に基づき機動的な株主還元を検討し、実施していきます。
資本コストを意識した経営の実現に向けた対応
2024年に当社の株価は上昇しましたが、PBRは0.8倍と依然として1倍を下回っています。企業価値向上のためには資本収益性の改善を重要な経営課題であると認識し、選択と集中による資本効率の向上に取り組みます。設備投資、戦略投資においては引き続き資本コストや収益確保の可能性を重視した厳選投資を実施していきます。ROICは3.8%、ROEは5.6%と前年対比で改善しましたが、目標レンジであるROIC4.0~5.0%、ROE7.0~8.0%を目指していきます。
セグメント別ROIC管理
経営資源の最適配分を推進していくため、従前より社内管理上の経営指標としてセグメント別ROICを導入していましたが、2024年実績から対外公表することとしました。ROICスプレッド※3拡大のための課題と施策を明確にし、株主や投資家をはじめとした資本市場と対話するための一歩という位置づけです。2024年のセグメント別ROICは、パッケージング&グラフィック部門とファンクショナルプロダクツ部門が堅調な業績により全社目標を上回る水準となりました。一方、カラー&ディスプレイ部門は、赤字幅の大幅改善が見られたものの、依然として収益力の強化に課題が残っています。欧米を中心とした生産拠点の統廃合、構造改革推進による固定費の抜本的削減への取り組みを継続実施していくとともに、本来の成長軌道に向け、戦略製品の展開や高機能製品への注力を進めることでROICを改善していきます。
- ネットD/Eレシオ:ネット有利子負債/自己資本
- キャッシュ・コンバージョン・サイクル:企業が原材料や商品を仕入れて資金回収するまでの日数を計算した経営指標
- ROICスプレッド:ROICから資本の調達コストを示すWACCを引いた値
キャッシュ・アロケーション方針


※4 全社合計の営業利益には上記3セグメントの他に全社部門の営業費用を含んでおります。

2025年7月3日