

DIC(China)Co., Ltd.でコーポレートコミュニケーションを担当する付 雪。中国地域グループ各社が参加し、社員とその家族も巻き込んだ共創プロジェクトとして、2026年版カレンダーの制作に取り組みました。子どもたちの絵を通じて『Color & Comfort』を可視化し、グループの一体感とその温もりを社内外へ届けた軌跡を追います。
中国のDICグループ各社の架け橋として、インターナルコミュニケーションを担う

▲DIC Chinaでコミュニケーション&マーケティング部を率いる 付 雪
2024年4月、DIC(China) Co., Ltd.(以下、DIC China)に入社した付 雪。コーポレートコミュニケーション&マーケティング部の責任者として、社内外の広報活動、日本や他拠点とのグローバルコミュニケーション、そして中国の各拠点とのインターナルコミュニケーションの促進などを担っています。
「DIC Chinaは、中国地域におけるDICグループ各社を統括し、投資や経営支援を行う地域統括会社です。各社は中国の広大なエリアに点在しており、たとえばインキやパッケージ関連の事業だけでも東北地方の瀋陽、華東地域の南通、華南地域の東莞という3拠点に工場があります。
地域が違えば文化や慣習も異なる中で、私たちがコミュニケーションの架け橋になって、中国のDICグループがワンチームとして一体感を持てるように取り組んでいます」
そんな付たちが、ブランディング活動のひとつとして取り組んだのが、2026年版DICカレンダーの制作です。自社のノベルティとしてのカレンダーを1年間の感謝を込めて顧客や取引先に配布するという文化は、日本と同じく中国にも根づいています。この文化を活用し、DICのブランド価値をより多くの人に知ってほしいと考えたのです。
「カレンダーは、一年を通して触れていただけるコミュニケーションツール。顧客や取引先にDICのブランド価値を継続的に伝える大切なタッチポイントです。
しかし、単純に事業内容や会社概要を載せただけのカレンダーでは、相手に印象を残すのはなかなか難しい。そこで、クリエイティブで、未来への期待につながるものをつくりたいと考えました」
また、カレンダーのコンセプトは経営ビジョンである『Color & Comfort』に決めたものの、公式素材を使用すると堅い印象になってしまいます。
「私には3歳の娘がいて、チームの周さんと趙さんにはそれぞれ12歳と9歳の息子がいます。仕事の合間にもよく子どもの話をしているので、ブレストは広がりました」
DICがめざすより良い未来や心地良さを表現するにはどうすればいいか、3人でブレストを重ねました。
そこで浮かび上がったのが、「子どもたちの絵を使う」というアイデア。
「子どもたちの自由な発想や大胆な色使いは、まさに『Color & Comfort』に合致するだろうと思いました。また、子どもたちこそ『より良い未来』の象徴であり、彼らが描く絵なら私たちが伝えたいブランド価値にぴったりだと考えたのです。
そして、DICグループの会社は、単に利益を生み出す場所ではなく、社員自身やその家族の大切な生活の一部でありたい。社員の子どもたちから絵を募集するという家族参加型の取り組みにより、一体感や安心感、温かい気持ちも表現できればいいなと思いました」
“魔法”のように暮らしを変える——子どもが描いたDIC

▲4月: DICの製品はまるで魔法を持っているかのように、私たちの生活を彩っています。11月:DICのPPS製品は、車、自動車、各種電化製品、プリンター、風力発電装置など、生活のさまざまな分野に広く使われています
2025年10月、付たちのカレンダー制作プロジェクトが始動。ただし、子どもたちの絵を募集する上で、最初から「来年のカレンダーに使用する」と告知したわけではありませんでした。
「私たちにとっても初めての試みだったので、どんな作品が集まるのか不安だったのです。そのため、最初はカレンダーのことは伝えず、従来のインターナルコミュニケーション活動の一環として募集しました」
募集テーマは、DICグループの経営ビジョンでもある『Color & Comfort』。抽象度を下げ、子どもたちがどんな絵を描けばいいのか迷わないように、日本語サイトの「こんなところに!DIC」で生活シーンに広がる製品例を提示しました。
「DICは、食品包装や化粧品、自動車、電子機器など、私たちの暮らしを支える素材を世界中で提供している化学メーカーです。「こんなところに!DIC」を見れば、当グループの製品が身近なところで幅広く使われていることがわかります。子どもたちが、イメージを膨らませやすいように、具体的な製品や使用シーンを示して募集しました」
各拠点に募集告知すると、早くも反響や期待の声が寄せられ、計50作品が集まりました。集まった作品は、子どもたちの豊かな感性が感じられるものばかりでした。
「私がとくに印象に残っているのは、4月のカレンダーに選ばれた絵です。小さなかわいい魔法使いがステッキを持っていて、周りには食品の袋、絵本、口紅、テレビなど身近なアイテムが描かれています。DICの製品は、まるで魔法のように私たちの生活を便利で快適なものに変えていく様子が表現されており、これは大人にはできない、子どもならではの発想だと思います。
また、11月の作品では、女の子が父親と手をつないで楽しそうに話している場面が描かれています。自分の仕事に誇りを持つ父親が、娘にDICの製品を紹介している姿として読み取れ、女の子の笑顔からは『パパは偉いね、この会社はすごいね』という気持ちが伝わってきて、とても嬉しくなりました。
さらに興味深かったのは、各拠点によって作品の傾向の違いが見られたことです。インキ製品を扱う会社からは、多彩な色使いが印象的な絵、合成樹脂の会社からは、樹脂を活用した風車にフォーカスした絵が寄せられるなど、子どもたちがそれぞれの事業や特徴を理解していることも伝わってきました。こうした多様な表現も、中国のDICグループの魅力なのだと改めて実感しました」
2026年のカレンダーに採用されたのは12作品のみですが、これは作品の優劣によって選んだものではない、と付は補足します。
「カレンダーには各月にDICの経営理念や歴史、事業内容などの情報を掲載しているので、その内容とマッチする絵を選んだのです。たとえば2月には会社の歴史を載せているため、時代を超えて愛される製品がモノクロで描かれた作品を採用しました。
カレンダーに採用されなかった作品も、今後WeChatや小紅書(RED)などのSNSプラットフォームで紹介していく予定です。50枚すべてが素晴らしいので、多くの方に見ていただきたいです」
子どもの視点が、DICの製品価値を“生活者の言葉”で再解釈してくれた——。この意味は大きなものでした。
社内外の大きな反響。『Color & Comfort』が具現化された効果を実感

▲子どもの作品を投稿したDIC Chinaの社員の皆さん
2026年版カレンダーが完成し、社内外への配布が始まると、付たちの想像を超えた大きな反響が寄せられました。
「お客さまからは『子どもの目を通してDICという企業の温かみを感じ、信頼できる製品をつくっている会社だと確信した』という嬉しい感想や、取引先から『ぜひ追加配布してほしい』との声が営業担当を通じて届きました。
また、社員の皆さんから『自分の子どもや同僚の子どもの作品を紹介してくれて嬉しい』『親戚にもカレンダーをプレゼントしたいから自費で購入したい』などのコメントも。日本の本社からは、『ブランディングの資産になる素晴らしい取り組みで、日本や他の地域でも参考にしたい』というコメントをもらい、達成感を覚えました。
今回のプロジェクトによって、『Color & Comfort』というブランドスローガンは、認知されるだけでなく、社員や家族によって承認され、さらに自発的に表現される段階へと進化しました。子どもたちが、抽象的な概念を絵として具現化してくれたことで、3段階の深化を遂げたのだと感じます」
カレンダーの取り組みが成功した要因として、中国のDICグループがこれまで注力してきたインターナルコミュニケーション活動の効果が大きいと、付は考えています。
「私は入社してまだ2年ほどですが、各地に拠点が分かれているにもかかわらず、グループとしてこれほど一体感があることに、とても感心しました。それは、各拠点がお互いの事業や文化に興味を持ち、リスペクトし合いながら日頃からコミュニケーションを取っているからだと思います。グループ横断で活用している社内ポータルサイトには、各社のニュースや社内活動の様子が積極的に投稿されますし、それを参考にして他社が同じような活動を始めるケースもあります。
そして、そうしたコミュニケーションを促進するのが、私たちの役割です。最近の取り組みの一部を紹介すると、各社の社員から『自分の会社の中で一番好きな風景』の写真を募集し、コラムにしてシェアしました。各拠点は離れているので、なかなか実際に足を運ぶ機会はありませんが、みんなで写真をシェアすることで、現地を訪れたような気持ちを共有できたと思います。
また、各工場の夏場の高温対策を紹介し、その流れで夏に食べる地元のおいしいものについても投稿を集めるなど、仕事の話だけでなく、日常の中の他愛もないテーマも交え、気軽にコミュニケーションが取れるように工夫しています」
経営ビジョンを実現するには、社員一人ひとりが共感し、伝達していくことが重要

▲チームのメンバー 左から趙、付、周
社員と家族がブランドの担い手になることは、短期の話題喚起にとどまらず、中長期の信頼と企業価値を積み上げる基盤になります。
今回のカレンダー制作を通じて、付は経営ビジョンや企業ブランドに対する新たな気づきを得ました。それは、抽象的な概念を具体的な形で表現し、社員一人ひとりが共感して伝えていくことの重要性です。
「一般的に経営ビジョンや理念は、会社から一方的に伝えられるケースがほとんどだと思います。しかし、それらを社内外にしっかりと浸透させ、実現するためには、一方通行の発信ではなく、社員一人ひとりの力が必要なのだと改めて感じました。
ビジョンやブランドはとても抽象的なものですが、今回の子どもたちの絵のように『みんながひと目で理解できる形』にすることで、共感性は一気に高まりました。そして、社員の家族も含めた共創イベントにより、会社と社員の間に双方向性が生まれ、エンゲージメントも向上したはずです。
子どもたちが描いてくれたのは、仕事と家庭、企業と社会、そして現在と未来の絆です。それにより、カレンダーは単なるノベルティではなく、ブランド価値の語り手になってくれたと感じています」
このプロジェクトは、本社や他の海外拠点からも反響がありました。
「中国発の取り組みでありながら、社員参加型でブランドを共創するこのモデルは、国や文化を超えて応用できると考えています。本プロジェクトが、ブランド共創の新たなヒントとなれば嬉しいです。グローバル各拠点から、すべてのDIC社員がブランドストーリーの語り手となり、『人と地球の未来をより良いものに』というビジョンが表現されることを願っています。
私は、DICグループの多様性は組織の魅力や強みのひとつだと考えています。多様でありながら一体感を持ち、それぞれの力を合わせてDICならではのブランド価値をこれからも共につくっていきたいですね」
最後に今後の展望について尋ねると、付は「プレッシャーを感じている」とはにかみながらこう語ります。
「2026年のカレンダーがとても好評だったので、来年はどんなテーマにするか実はかなり悩んでいます。理想とするのは、今回のように中国地域の社員やその家族で力を合わせるのはもちろん、パートナーや取引先、お客さまも巻き込んで共創すること。より多くの方たちとブランドビジョンを共有し、それを体現する活動にできたら嬉しいですね。
そして、先進的な製品やソリューションを提供するだけでなく、社員が誇りに思い、顧客に信頼される企業となり、子どもたちが安心できる未来を築きたいと思います」
※ 記載内容は2026年3月時点のものです
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