DICの人的資本経営とキャリア自律~“想いを共に”自律する
宮城まり子先生 × 池田尚志社長 対談

2024.09.02 ピープル
DICの人的資本経営とキャリア自律~“想いを共に”自律する 宮城まり子先生 × 池田尚志社長 対談
DICの人的資本経営とキャリア自律~“想いを共に”自律する 宮城まり子先生 × 池田尚志社長 対談

DICグループは、経営ビジョン「彩りと快適を提供し、人と地球の未来をより良いものに -Color & Comfort-」を掲げ、社員が目指すべき方向性を示しています。社会的利益の追求という共通課題に向けて、多様な社員が一体感を持って協働するエンゲージメントの高い組織を目指しています。
人的資本価値を最大化する取り組みとして、キャリア支援担当では、キャリア面談や年代別キャリア研修のほか、社員一人ひとりのキャリア自律に向けた支援施策を実施しています。2024年6月にはキャリアをより身近に感じてもらうイベントとして「キャリアデザイン月間」を行いました。その内容の1つとして、キャリア心理学の第一人者である宮城まり子先生と池田尚志社長が対談し、自己実現に向けたキャリアの切り拓き方について深く語り合いました。

模索する時代を受け入れ、未来に何をやりたいかを考える

司会: 宮城先生は、「キャリアを拓くのは自分」とされています。DICの中でどうキャリアを切り拓いていくのか、そのために大事なことは何なのか、池田さんの経験をお願いします。

池田: 私は常に自分の将来ややりたいことを意識してきました。技術研究職として入社し、お客様のところに行き自分で開発したものを売る仕事がとても楽しかったです。3年先、5年先にやりたいことを考えていた時、事業を運営することや仕事がどう回っているかに興味を持ちました。さらに、留学も一つの転機でした。

宮城: 入社して3年ぐらいから、もう何をやりたいかを考えていたのはすごいですね。海外で働きたいということを上司に話したり、勉強したり準備しましたか?

池田: 新人の時代は、仕事の未来、自分の未来を模索する時期だったと思います。 入社時からグローバルな環境で働きたいことを伝えていました。例えば、海外向けの資料を英語で作るとか、自ら手を挙げてプレゼンするなど、海外に向けて準備をしていました。


宮城: 実現するためには何をやるべきか意識し、自己啓発しながらキャリアを切り拓いてきた実感はありますか?

池田: 正直そこまではないです。紆余曲折あり、悩む時期もありました。将来や社会への貢献、自分自身の仕事、能力ついて思い悩むことはありました。

一生懸命やることから突破口が開かれる

宮城: 皆さんもそのような苦労はありますね。「思うようにならないときはどうしたらいいですか?」という質問がありましたが、そういう時はどうされていましたか?

池田: 私はかなりポジティブな性格で、その時々で何か良いことがあるだろうと考え、大変な状況でも学ぶことがあると思うようにしていました。気持ちを明るく保つために、心がけていました。

宮城: 大事ですね。キャリアはうまくいくことばかりでは築けません。想定外のことがあっても、そこで落ち込むのでなく、何か得るものがあると思って一生懸命やることで、突破口が開かれると思います。
また、「他の捉え方がないか?」と考える事が大事です。経験を将来どこに活かすか、仕事を通じて得られるもの、人脈、スキル、知識など、幅広げられる機会でもあります。

池田: 広い捉え方をするためにも、周囲の役割が大きいですね。私も周りの人にサポートされ、相談に乗ってもらい、一緒に働くことで勇気づけられ、多くを学びました。その経験で多様な見方ができるようになったと思います。

宮城: 一人で考え込まず、いろんな人と話をしてみると、新しい気付きがあります。いろんな人とコミュニケーションを取ることで得られることが多いです。
キャリアは一人で作るものではなく、仲間やチーム、組織の中で育まれるものです。組織の中に多くのチャンスがあり、どんなことでも本気で取り組むことが大切です。


池田: そうですね。どんな仕事にも意義があります。最近社長になり、会社の役割を社会に問いかけ、社会に役立っていくとの想いを持っています。社員一人ひとりの仕事が価値あるものだと強く思っています。

宮城: その通りです。「なんで私が?」ではなく「この仕事は私にしかできない」と思うことが大切です。

池田: それを周りも認めることも重要ですね。

人に話すことで自分自身が見えてくる

宮城: 特にマネジャーの方は部下一人ひとりに関心を持ち、フィードバックをして欲しいです。見てくれている人がいると励みになります。常にその意識を持ち、部下の良いモデルになっていただきたいです。

池田: キャリアは個人のものとして捉えがちですが、実際には人との関わりの中で相互作用があります。自身にも人のキャリアにも影響を与えると感じます。
上司と部下が構えずに、考えを伝え合い、部下は正直にオープンに話をする。お互いに思いをぶつけ合いながら、同僚や後輩と共に成長していくイメージですね。

宮城: そこには心理的安全性が大切です。何を言っても否定されず、自由に意見を言える風土がないと、クリエイティブな発想は生まれません。
そのためには、”互聴”~互いに聞き合うことを大事にしています。互いに関心を持って話を聞くことが安心感を生みます。上司はすぐ教えてあげたくなり、自分の経験ばかり言う人がいますが、まずは相手の話を最後までしっかり聞き、考えさせることが重要です。良い聞き手になることは、心理的安全性を高めるために重要です。

池田: 導くような聴き方は難しそうですが、大事なことですね。

宮城: この会社では「聴く」ことを大切にしていています。 一人ひとりがどうありたいかを発言し、それを受け止めてくれる風土があります。人事や上司、会社の組織がそれを支えないとキャリア自律は育ちません。
人に話すことで、心の中が見えてきます。1on1の面談は実り多い大事な時間で、上司は部下を深く理解し、部下も自分がどうありたいかを明確にできます。


池田: 話していく中で、自分の中で整理され、考えがまとまっていくことが一番理想的ですね。その共有の先に成長につなげるための、ステップはありますか?

個人にとっても会社にとってもWin-Winな関係に

宮城: フォローすることが大切です。「その後、どう?」とか「どんな感じですか?」と聞き、必要ならアドバイスをすることを薦めます。

池田: 緩やかに導く感じですね。会社組織として考えると、会社や部署の目標があり、その中で社員一人ひとりがメンバーとして働いています。目標に向かって皆が同じ方向に進むことが大切です。個人にとっても会社や部署にとっても、個人が育つことは部署の成長と生産性向上につながります。
それがWin-Winの関係ですね。先生と対談して、キャリア形成の原点を再確認しました。

宮城: お話を伺って、一人ひとりを大事にされていることや、ご経験からの実感をもって話されていることに非常に説得力を感じました。キャリア形成のプロセスでは、一人ひとりが自分のキャリアを考え、実現する努力が大事です。
自分が何をやりたいのか、どうありたいのかを考え、そのための準備が必要です。それを行動に移し、ありたい自分、なりたい自分、やりたいことを実現できる会社を作っていただきたいです。
それは社員にとって素晴らしいことであり、結果的に、社員が自己実現できる会社は、選ばれる会社としてますます発展していくと思います。

プロフィール
宮城まり子 (みやぎ まりこ)
キャリア心理学研究所代表、臨床心理士

慶応義塾大学文学部心理学卒業、早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了、その後、臨床心理士として精神科、小児科、心療内科などでカウンセリングを担当
カリフォルニア州立大学大学院キャリアカウンセリングコースに研究留学。
立正大学教授、法政大学キャリアデザイン学部、および大学院教授を歴任。2018年に退官し、現在は臨床活動、講演、研修、スーパービジョンなどを行っている。
著書には、『キャリアカウンセリング』(駿河台出版社)、『7つの心理学』(生産性出版)、『聴く技術』(永岡出版)など

プロフィール
池田尚志 (いけだ たかし)
DIC株式会社 代表取締役 社長執行役員

大阪府出身。1990年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程を修了。大日本インキ化学工業(現DIC)入社し、千葉工場でポリマの研究開発に従事。社内の第1回MBA(経営学修士号)公募制度に応募し、米国ノースウェスタン大学に留学。2001年にMBA取得。その後DICファンクショナルプロダクツ事業企画部長、コンポジットマテリアル製品本部長、ファンクショナルプロダクツ事業部門長を歴任し、22年に常務執行役員。24年1月より現職。

DICが目指すキャリア自律の取り組み (キャリア支援担当)

現在、キャリア支援担当は「“想いを共に”自律する」を合言葉に、社員のキャリア自律に向けた取り組みをすすめています。「一人ひとりが自分の“想い”を描き、それを上司や周囲に伝え、その“想い”と会社の”想い“を重ね合わせ、共に成長していく。これがDICにおけるキャリア自律です。
今年新たに始めたキャリアデザイン月間では「自分のキャリアを考え、伝えよう!」をテーマに掲げました。社員が日々の業務からふと立ち止まって「何をやりたいか、どうありたいか」を考えてみよう、それを上司と話をしてみよう、上司は部下の話を聴いてキャリア開発を部下と共に歩みだしてみようということです。ごく基本的なことですが、キャリア自律とコミュニケーションの第一歩として大事なことだと考えています。宮城先生と社長との対談では、社長のこれまでの経験の話を起点に、キャリアについてざっくばらんに対話が行われ、司会がいらないくらいに話が盛り上がりました。その内容は、今年1月に就任した社長の人柄を知る内容でもあり、多くの社員からも好評でした。
今後も、キャリア自律について気づきや考えを深める様々な施策をすすめていくことで、社員と会社が共に成長・発展するよう貢献してまいります。

(総務人事部採用・研修グループGM  鈴木卓也)

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