DICと日立、樹脂製造における次世代プラント実現に向け本格的な協創開始 -製造プロセスを自動化するデジタルツイン技術の実用化に向け、高精度な反応予測モデルを構築-

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2021年12月15日
#DX #デジタルトランスフォーメーション #スマート工場 #デジタルツイン技術

DIC株式会社(以下、DIC)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、このたび、IoTデータの利活用とデジタルツイン技術により、樹脂製品の製造におけるバリューチェーン全体の最適化を図るスマートな次世代プラントの実現に向けて、本格的に協創を開始します。

まず両社は、2024年までに、製造プロセス全体を自動化するデジタルツイン技術の実用化に取り組みます。これまではサンプリングした製品の状態や品質を確認・監視しながら、熟練者がDCS*1操作値の補正や追加操作により反応を制御していましたが、本協創では、サイバー空間でAIなどを用いた高精度な反応予測モデルにより運転状況をデジタル化するとともに、Process Informatics*2により最適な運転条件を導き出し、それらをフィジカル空間(現場)にフィードバックする仕組みを構築します。これにより、現場でのサンプリング確認が最小となり、品質の安定化、オペレーターの作業効率向上、新製品導入時の立ち上げ期間短縮が図れるとともに、生産性向上によるCO2排出量の削減にも貢献します。また、構築したモデルを他工場に展開することで、製造拠点ごとの品質誤差や生産品目の偏りを抑制することが期待できます。
*1 DCS(Distributed Control System): 分散制御システム。
*2 Process Informatics: 統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により、製造条件を最適化する取り組み。

DICと日立は、本協創の第一フェーズとして、2021年3月から、DICの国内3工場で製造される樹脂製品を対象に、”理論モデル×現場データ×AI解析”による高度な反応シミュレーションを実現するための反応予測モデルの探索と精度検証を行いました。
従来、プラント内の反応や蒸留といった操作においては、文献を基に各操作の理想状態をモデル化した理論モデル(文献値)を用いたシミュレーションにより、品質値(粘度など)の各種パラメータの挙動が推定されてきました。一方で、製造現場におけるセンサーデータや分析データといったパラメータは、その動特性が、装置サイズ・設備構成により大きく影響を受けることから、シミュレーション結果(理想状態)と現場データに乖離が発生します。そのため、プラントの設計時にその乖離を想定しておき、現場では熟練者が感覚的に調整することが一般的です。また、少量多品種のバッチ生産では同一製品におけるデータ数が少なく、共通する特徴や関連性の探索や普遍的なルールを導き出すアプローチには限界がありました。
そこで本協創では、日立がこれまでプロセスライセンサー*3として培った化学プロセスに関する知見を生かし、少数の現場の実運転データ(DCSデータ、原料データ、サンプリングの分析結果など)から文献上の反応理論式に用いる変数を作成し、その変数を用いた新理論モデルを構築することで乖離を抑えました。そして、この新理論モデルと現場データを用いたAI解析により、品質値に影響を与える因子を分類し、高精度の反応予測モデルの構築を実現しました。この結果、熟練者の経験則から感覚的に認識していた反応影響因子を、反応理論や装置などに明確に細分化し反応状態と紐づけて管理することで、反応性や装置の違いを考慮した高精度なシミュレーションが可能となりました。
また、本協創で構築した反応予測モデルは新理論モデルを活用しているため、少数データから構築可能で、かつ反応機構が類似する品種への転用が容易です。さらにAI解析によりさまざまな品種のモデル構築に対応できる汎用的なデータセットを確立することで、新規モデル構築時に必要な因子をデータセットから網羅的に検索して容易に抽出することが可能となり、少量多品種のバッチ生産における高品質化、高効率化に貢献できることを確認しました。
*3 プロセスライセンサー: 特定の製品を製造する一連のプロセス技術・ノウハウを保有・提供する企業。

DICと日立は、2022年中に反応予測モデルに基づいた最適運転条件の探索に関してプロトタイプによる検証、およびシステム化を行います。その後、DICのプラントにおける最適運転条件のフィードバックの実施・検証を経て、2024年にプロセス全体を自動化するデジタル技術の実用化を開始するとともに、国内外の複数拠点へ展開していく予定です。
DICは、「中期経営計画 DIC111」において、IoTの導入やAIを活用した製造現場の効率化とスマートな工場の実現を目指しています。自社工場内でデジタル化を進め、販売先からの要望に応えながら、サプライチェーン全体で合理化・効率化を実現し、第二のインフラとして当社の競争力を向上させていきます。
日立は、本協創で得た成果をLumada*4 ソリューションとして確立し、国内外の化学メーカーに展開していきます。また、多様なLumadaソリューションによる事業活動の強靭化(レジリエンスの追求)を通して、今後も持続可能な社会の実現に貢献していきます。
*4 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。https://www.hitachi.co.jp/products/it/lumada/index.html

以上

日立は、データとテクノロジーで社会インフラを革新する社会イノベーション事業を通じて、人々が幸せで豊かに暮らすことができる持続可能な社会の実現に貢献します。「環境(地球環境の保全)」 「レジリエンス(企業の事業継続性や社会インフラの強靭さ)」 「安心・安全(一人ひとりの健康で快適な生活)」に注力しています。IT・エネルギー・インダストリー・モビリティ・ライフ・オートモティブシステムの6分野で、OT、ITおよびプロダクトを活用するLumadaソリューションを提供し、お客さまや社会の課題を解決します。2020年度(2021年3月期)の連結売上収益は8兆7,291億円、2021年3月末時点で連結子会社は871社、全世界で約35万人の従業員を擁しています。
詳しくは、日立のウェブサイト(https://www.hitachi.co.jp/)をご覧ください。

DICは日本で有数のファインケミカルメーカーのひとつであり、DICグループの中核企業です。DICグループは、世界全体でSun Chemical Corporationを含む約190の子会社によって構成され、60を超える国と地域で事業を展開しています。グループ全体として、人々の生活に欠かせない包装材料 、テレビやPC等のディスプレイに代表される表示材料 、スマートフォンなどのデジタル機器や自動車に使用される高機能材料を提供するグローバルリーディングカンパニーと認知されています。これらの製品を通じて、社会に安全・安心、彩り、快適を提供しています。DICグループは持続可能な社会を実現するため、社会変革に対応した製品や社会課題の解決に貢献する製品の開発にグループ一丸で取り組んでいます。連結売上高8,000億円を超え、世界全体で22,000名以上の従業員を有するなか、DICグループはグローバルで様々なお客様に寄り添っていきます。詳しくは、https://www.dic-global.com/をご覧下さい。

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