エネルギーミックスを進化させ、さらなる脱炭素化を推進
~DIC が掲げるCO₂排出量長期削減目標「2050年度カーボンネットゼロ」の実現に向けた鹿島工場の取り組み~ <後編>

2022.09.12 事業を通じた社会貢献
大きな省エネ・CO₂削減効果を求める場合は設備更新の機会を逃さない
大きな省エネ・CO₂削減効果を求める場合は設備更新の機会を逃さない

気候変動への対応が、世界中で危機感を持って捉えられ、企業の温暖化対策に注目が集まる今日。DICグループはCO₂排出量の削減目標を更新し、「2030年度 CO₂排出量50%削減(基準年2013年度)」、「2050年度カーボンネットゼロ」を決定した。こうした中、エネルギー管理でDICの国内グループをリードしてきた鹿島工場原動2グループ川口和男グループマネジャー(以下、川口さん)に、鹿島工場で行っている省エネ・再エネの取り組み、2050年のカーボンネットゼロの実現に向けたロードマップについて語ってもらった。

設備更新の機会を逃さない

前編の通り、既存の枠組みを超えた、エネルギーミックス再編計画を立案できたのは、さまざまな現場で改善活動に従事してきた社員の経験や知識によるところが大きい。川口さんは、もちろん省エネへの取り組みは一過性ではなく、地道かつ継続的な努力が必要だが、より大きな省エネ・CO₂削減効果に結びつけるためには、数年ごとに訪れる設備更新の機会を逃さないことがポイントだという。

「化学工場における設備耐用年数は約8年、そうした時期が来たらその機会を逃してはダメなのです。設備機器の省エネ性能も向上してますし、需要も変化しているので、単純に前例踏襲をしてしまうと数年後にきっと後悔することになります。そこで設備保全3ヵ年計画の確実な立案が大事になります。例えばテーマによっては原動連携WG活動や生産企画部を巻き込んだ活動にしていくこともポイントだと考えています」

震度5強で電源を停止するなど、何よりも安全第一を徹底

エネルギー管理とともに、原動グループで担っているもう一つの大きな役割が火災・爆発・漏洩などの緊急事態の対応だ。例えば、万一工場で火災が発生したら迅速に消火ポンプを起動して送水したり、化学品が漏洩したら迅速に水門を閉止して海域への流出を防止し、非常ピットに回収したりする役割も担っている。

「鹿島工場は、震度5強の地震が発生したら全てのボイラー運転や都市ガスの供給を緊急停止させて工場の安全を確保します。これも原動グループの役割です。もし電力会社から供給を受ける電気が停電した場合は、受電との系統連系の関連から全ての常用発電機も停止します。その様な中で安全防災を確保するために非常用発電機を備えており、異常反応の防止に役立てています」

こうした安全性重視の考え方は震災前に既に構築されていたという。

「東日本大震災時は、その激しい揺れで構内の母線電源ケーブルが切断され、周囲の道路が波打つほどの被害を受けて原材料・資材などの搬入が困難になったため、工場の操業はストップしました。その後、携帯電話や液晶TV生産などの世界的サプライチェーン寸断が懸念されたためその製品を支える素材の生産現場復旧に集中し、なんとか3週間で生産再開に漕ぎつけました。しかし工場が全面再開するには約2カ月もかかりました。この時も何よりも設備機器の安全性確認を第一に、設備補修や点検作業、試運転での動作確認をくり返し行うことでその後の安全安定操業につなげました」

鹿島工場の省エネ・CO₂削減の取り組みをグローバルに水平展開

災害対応や環境対策など、企業には多様な役割や責任が求められる一方で、持続的成長を実現するうえでは競争力を高め、事業価値を高めるといった本来の活動も欠かせない。世界有数の顔料メーカーとしての地位を強化し、より幅広いソリューションをお客様に提供するために、2021年に「BASF Colors and Effects(以下、C&E社)」を買収した。これによってグループの事業規模は拡大する一方で、CO₂排出量は増加することが予想されるが、この対応に向けても原動グループの実績や経験が役立つと川口さんは語っている。

「DICグループのエネルギー使用量(=CO₂排出量)の約6割は海外事業所が占めます。C&Eを含めると更に海外のウエイトは高まります。私も本社でエネルギー戦略を担当していた際は、中国やアジアパシフィック地区の現地法人工場に『省エネ診断』『省エネ推進会議』で訪問し、経営層と環境投資の重要性について語りあってきました。現在、私はその担当からは退きましたが、新しくDICグループ入りしたC&E社がアジア・米国などに有する生産拠点でも、鹿島工場がこれまで培ってきた省エネ・脱炭素の取り組みを水平展開できるように、本社と連携して支援していきたいと思っています」

前向きでエネルギッシュな川口さんに最後に、モットーを聞いた。「私のモットーは、“楽しくラクに”です。どんなに大きな目標も、一人ひとりの、一つひとつの取り組みの積み重ねです。設備を入れたからといって簡単に目標が達成できるものではありません。継続性も大切です。改善点を発見する醍醐味を若いメンバーには味わってもらいたいです。自分たちの改善が作業をラクにし、ラクになれば仕事が楽しくなっていく。その循環だと思っています。そのために誰もが気軽に「こうしてはどうか」の声をあげられるような環境づくりをしていっています。職場での「ねぇどうする?こうする?」の会話で溢れかえる職場に変える。言うは易しですが、これが今の私の重要な任務だと思っています。この“楽しくラクに”の考え方の下で、会社をもっとよくしていこう。そして、DICグループの経営ビジョン“彩りと快適を提供し、人と地球をよりよいものに”を実現していこうと、若いメンバーに伝えています」

今後とも省エネ・再エネに向けた取り組みを加速させていきたい

鹿島工場 柴崎秀樹 工場長

鹿島工場は、DICグループ内における再生可能エネルギーやエネルギーミックスの最先端拠点と自負しています。
こうした脱炭素・再エネの中心を担う「原動2グループ」は、若いメンバーを中心に、24時間体制で多様なエネルギー・排水処理設備を円滑に運用してもらっています。
工場全体としても地道な省エネ・改善活動を継続して行うとともに、従業員のモチベーションを高いレベルで維持できるようにさまざまな取組みを行っています。このような組織一丸となった活動の積み重ねや新たな再エネ設備の導入・エネルギーミックスの再編などによって、将来にわたって鹿島工場はDIC グループ内で脱炭素推進をリードする存在であり続けたいと考えています。