SandboxAQ社及びAmazon社との「ハイパフォーマンスクラウドコンピューティングによる高精度量子化学計算手法の材料開発への適用」に関する研究成果の発表について
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DIC株式会社(本社:東京都中央区、社長執行役員:池田尚志、以下「当社」)は、米国SandboxAQ(本社:米国カリフォルニア州、以下「SandboxAQ社」)及び米国Amazon.com Inc.(本社:米国ワシントン州、以下「Amazon社」)と「ハイパフォーマンスクラウドコンピューティングによる高精度量子化学計算手法の材料開発への適用」に関する共同研究成果を、Amazon社のウェブサイトにて発表しましたのでお知らせします。
化学分野における新たな先端材料の開発には、計算科学技術、特に高精度な量子化学計算の活用が不可欠です。例えば、化学反応の加速や選択性のコントロールのためには、触媒が重要な役割を担います。しかしながら、触媒は複雑な電子配置を有する遷移金属元素*1を含むため、計算科学による触媒活性の定量的な予測や、現実的なサイズの触媒を精密に設計することは困難です。こうした課題解決を目的に、当社は、SandboxAQ社及びAmazon社と、触媒などの遷移金属錯体の電子構造を、分子スケールで正確に明らかにするための共同研究を2022年に開始しました。
本研究により、SandboxAQ社が提供するクラウドサービスQEMIST Cloudを、Amazon社のハイパフォーマンスコンピュータ(AWS)*2上で動作させることで、これまでにない10^270の電子配置を含む現実系の遷移金属錯体の高精度量子化学計算*3に成功しました。そして、本手法を用いて遷移金属錯体の異なるスピン状態間のエネルギーを評価し、汎用的に利用されている従来の計算手法*4ではエネルギーの記述が不十分であることを明らかにしました。
この結果は、DICの目指す計算科学による材料開発推進のためには、現実系の扱える高精度な量子化学計算手法が不可欠であることを示しています。また、QEMIST Cloudが有するTangelo*5とAmazon Bracket*6の互換性を利用することで、量子コンピュータを活用した次世代の材料開発手法への展開が期待されます。
詳細につきましては、Amazon社のウェブサイトよりご確認いただけます。
*1 遷移金属元素:元素周期表の中央に位置する第3族から第11族の元素の総称。エネルギー的に近接したd軌道に起因する複雑な電子配置のため精密な計算が難しい
*2 Amazon Web Services (AWS):Amazon社が提供するクラウドコンピューティングサービス
*3 Incremental Full Configuration Interaction(iFCI)法:ミシガン大学P. Zimmerman教授が開発した高精度量子化学計算手法; P. Zimmerman J. Chem. Phys. 2017, 146, 104102.
*4 密度汎関数法(Density Functional Theory(DFT)):材料系計算で広く用いられている計算手法。簡便だが、不得意とする計算がある
*5 SandBoxAQ社が提供する、量子コンピュータ上で量子化学計算ワークフローを開発するためのPythonパッケージ
*6 Amazon社が提供する、量子コンピューティングサービス
以上
-SandboxAQについて
SandboxAQはエンタープライズSaaSカンパニーであり、AIと量子テクノロジーの融合(AQ)により、世界の様々な困難な問題に立ち向かうためのソリューションを提供しています。Alphabet Inc.で生み出された同社のコアチームとインスピレーションは、2022年にグロースキャピタルに支えられた独立企業へとその姿を変えました。詳細については、以下URLをご覧ください。
【関連リリース】
カナダの量子化学・量子コンピューティングスタートアップ企業Good Chemistry社*との共同研究を開始(2022年4月2日付公表)
*SandboxAQがGood Chemistry社を2024年1月に買収
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