Feel DIC STORY
PROJECT 1

印刷インキの脱離技術で
マテリアルリサイクルの拡大へ

プラスチック軟包装の
リサイクルプロセス技術開発プロジェクト
その背景・プロセスから
課題・今後の展開まで開発者が熱く語りました。

次世代パッケージングビジネスユニット
兼松マネジャー

取り組み
の背景
世界のプラスチックのリサイクル率が10%以下
なぜ、もっと高められないのか?

私が驚愕したのは、世界で製造されたプラスチックのうちリサイクルされる量が、わずか10%未満(2017年)という事実でした。容易に分解されないプラスチックの多くが未だに埋め立て処理されている現実に愕然としました。

生活をしている中でも、家庭で食品包装フィルムをごみ箱に入れるたびに、そのほとんどが焼却されてしまうことを想像して残念な気持ちになります。これらを資源として循環利用することに何か貢献できないか?考えずにはいられません。
娘から「同じプラスチックなのに、なぜリサイクルできるものとできないものがあるの?」「どれもリサイクルして作ればいいのに」と言われ、化学業界に身を置く者として「それを当たり前にしなければ・・」と強く決意したことを覚えています。

プラスチックのリサイクルが進まない理由の一つに異素材の混入があります。再生するプラスチックにとって不純物が混じると、外観に影響が出ると共に物性が低下した再生品になります。
印刷インキもリサイクルの観点からは異素材になります。リサイクルをする際にこうした異物を取り除くことが出来ないか、検討を始めました。

DICの
使命として
自社製品の課題を自ら解決する

たとえば軟包装フィルムは、包装材としての機能を満たすため印刷インキや接着剤など複層構造で成形されています。そのため従来のマテリアルリサイクルでは、印刷インキなどが着色されたままプラスチックペレットに再生加工されることから再利用できる用途が限られていました。 しかし、フィルムから印刷インキを取り除く技術を確立できれば、無着色のリサイクルプラスチックペレットに戻し、再生プラスチックの用途は格段に広がります。

ただ、その実現は容易ではありません。そもそも印刷インキや接着剤は剥がれないように設計されており、これらをリサイクル時のみに脱離させることは難題です。
実際、実験室ではうまくいった方法を大量処理用にスケールアップすると目論見通りにはいかず、原因も分からないこともしばしばでした。現在も同僚らと議論を積み重ね、社外の力も借りながら試行錯誤を続けています。

そんな中でも「自ら生み出した課題は自ら解決する」。それが化学会社の技術者に課せられた使命と考えます。高品質の再生プラスチックが実現可能となるリサイクル手法の開発に貢献したいと考えます。

 

DICブースでは、プラスチック軟包装の脱インキシステムを企画展示。
ぜひご高覧ください。

課題解決
への道筋
様々なリサイクルプロセスを学びつつ
DICの知見を加えて革新的なリサイクルを

印刷インキの脱離技術をマテリアルリサイクルの環に実装するには、現行のリサイクルプロセスを深く学び、さらに当社の知見を活かせるプロセスを構築する必要があります。
しかし、プロジェクトを進める中で、新たなリサイクル方法を考案するものの、化学素材メーカーである私たちには、大きなプラントを組み上げる経験も知識も足りないことを痛感しました。

この課題を克服するには私たちがイメージするプラントを実現できる企業はもちろん、共に再生プラスチックの新たな価値を創り上げる心意気を持ったパートナーと協働することが不可欠です。
同時に、この取り組みに賛同し、廃プラスチック(廃棄されているプラスチック軟包装やフィルム)を提供していただける会社、再生品を利用していただける企業や自治体と一緒に取り組ませて頂きながら「サーキュラーエコノミー」の環を広げていくことが重要です。

成果と
ビジョン
成果を一つ一つ積み上げながら
リサイクルネットワークを拡大していきたい

プロジェクトの成果の一つとして、2021年5月から大手製パンメーカーと協働し、使用済み軟包装フィルムから印刷インキを脱離させて無着色ペレットに戻し、新たな用途に再資源化するマテリアルリサイクルの検証事業を行っています。

高度なマテリアルリサイクルの実現には、使用済みプラスチック製品を回収して再生する静脈の整備だけでなく、リサイクルまで視野に入れた原料調達や製品設計など最上流からの取り組みも不可欠です。
そして、強固な資源循環の環を形成するには、多くのパートナーの参画によるハードとソフト両面での協力が欠かせません。

プロジェクトを進める中で、社内外の方々から、プラスチックのマテリアルリサイクルに対する共感や期待の大きさを感じ、その思いに触れるたびにやりがいが湧き上がってきます。
私はこれまで新しいものを生み出すことが最先端と考えてきましたが、「すでにあるものを見直し、環境に優しくサステナブルなものに創り変えていく仕事こそが最先端である」と考えています。

廃棄プラスチック問題の解決には、多くの困難が立ちはだかっていますが、私たちはチャレンジを続けます。一つでも多くの成功事例を積み重ね、点を線でつないで面に広げ、やがては精密に制御されて機能する鉄道網のようなリサイクルネットワークを思い描いています。

NEXT PROJEDCT

サーキュラーエコノミーは、
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