Feel DIC STORY
PROJECT 2

モノマテリアル化を推進し
リサイクルしやすい包装材へ

多様な材料に新たな機能を加え、
包材全体のモノマテリアル(単一素材)化を促進。
そのプロジェクトの背景やプロセス、
開発秘話までを語りました。

DICグラフィックス株式会社
リキッドインキ製品グループ
内藤マネジャー

取り組み
の背景
QCD以外に製品に求められる
「環境性」という社会価値

私は20年以上、軟包装材料のインキと接着剤の販売に携わってきました。 その前半10年間は「Q(Quality 品質)・C(Cost 価格)・D(Delivery 納期)」をいかに高めるかが最重要のテーマでした。

市場ニーズの風向きが変わったのは2010年以降、地球温暖化がクローズアップされ始めた頃で、QCDに加えて環境対応を製品設計に反映させる必要が出てきました。 それはインキや接着剤など単体レベルではなく、包材全体で環境配慮を高めるという課題で、
どのように具現化すればよいのか、私にはその明確なビジョンを描けませんでした。

自分の中で「リサイクル」をテーマに製品を見つめ直したのは、2018年にベトナムから帰国してからです。営業と戦略担当を兼任することになり、コンバーター(加工事業者)に最も近い立場で、国内外のブランドオーナーとも協議する機会が増えてきました。
そうした中で、包材を評価するうえで、機能性を示す数値だけでなく、環境配慮という「社会的な価値」で表現できないかと考えるようになりました。

新たな
気づき
子どもの玩具の片付け方が
「モノマテリアル化」推進のヒントに

包装には、内容物の保護・扱いやすさ・情報表示などの機能が要求され、袋を破って内容物を取り出すまで機能を保ち続ける必要があります。 一方で、役目を終えた後のリサイクル工程では、ラミネートされたフィルムの分離性、インキと接着剤を除去する容易性が必要です。つまり使用段階までの機能とリサイクル性は相反するもので、これを両立させるのは困難だろうと考えていました。

そのため最初はラミネート(複層)ではなく、単層フィルムによる開発を検討しました。しかし、単層では包材としてのコシ(強靭性)が出にくく、使用できる範囲も限られ、解決策になりませんでした。
どうすればリサイクルしやすく大多数の食品包装に適合する包材を提案できるのか、プロジェクトメンバーは悩み続けました。

そんな中で、大きな気づきになったのが、子どもが玩具を片付ける様子を見た時のことです。
我が家では、レゴブロックで遊んだ後に片づける際、レゴと同じ色のプラスチック箱に1個ずつ分解して収納するのがルールです。ある日、その様子を眺めていると、子どもは組み立てたブロックを分解せず同じ色のブロックをまとめて入れていました。

「分解しないとダメだよ」と言おうとした瞬間、「同じ種類であれば、わざわざ分けなくても同じ箱に入れていいんだ」と頭をかすめ、「そうか、フィルムの種類が同じであれば、フィルムを分離しなくてもリサイクルできる」と思いついたのです。
こうして、コーティング剤・接着剤・インキ・フィルムなど、カテゴリーの異なる包装材料を「モノマテリアル化」というキーワードを軸に開発を進めていきました。

DIC
ならでは
マテリアルに新たな機能を付与する
「バリアマテリアル」の視点

すでに当社が上市していた酸素バリア接着剤の存在が、プロジェクト推進の大きな力になりました。
これはフィルムを貼り合わせる接着剤にバリア機能を持たせることで、それまでの酸素バリア用フィルムを代替させ、複層フィルムの薄膜化やモノマテリアル化を進められます。

これは、食品包装に多く使われるプラスチック軟包装が、フィルムのほかインキ・接着剤・コーティング剤など異なるマテリアルを積層させて使うことから生まれた視点で、バリア機能を多種多様なマテリアルに付与する「バリアマテリアル」という展開の可能性を示しています。

◆酸素バリア用フィルムの代替となるバリア接着剤を開発し
 積層フィルムを削減して「モノマテリアル化」を進めた事例

▲DICレポート2015 特集 酸素バリア接着剤「PASLIM」より
 

DICブースでは、コーティング剤と接着剤によるパッケージの『モノマテリアル化』を企画展示。ぜひご高覧ください。

プロジェクト
の成果
プラスチック新法の施行前日に
モノマテリアル対応の製品群をリリース

2022年4月1日、国内で「プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)」が施行されました。 この法律は、製品設計から廃棄物処理まで、プラスチックの商流すべての段階で資源循環を促進するためのもので、製造事業者は製品構造や材料についても資源循環を意識した対応が求められます。

当社がリサイクルに適したモノマテリアル包装材料に対応するインキやコート材、接着剤、特殊シーラントフィルムなどの製品ラインアップを拡充するというニュースを発表したのは、この新法施行の前日でした。
そこでは、最も重要な課題である内容物の「保香性」と「耐熱性」の機能保持についても、DIC独自の技術により新たに6製品を開発し、ラインアップを21製品に拡充したプロジェクトチームの成果も盛り込まれていました。

プロジェクトメンバーは、この日に照準を合わせてギリギリまで資料を修正し、全国営業への説明会を開催するなど疲労困憊でしたが、マスコミ、ブランドオーナー、コンバーターから予想を上まわる反響をいただき、まさに感無量でした。

モノマテリアル包材向け製品ラインアップ
①ラミネート構成の包装材料

②モノウェブ(フィルム単層)構成の包装材料

資源循環
の課題
多くの方々との協業による
サプライチェーンの連携が不可欠

初期のプロジェクトは完了し、各製品も完成していますが、プラスチック資源の再生循環を進めるにはまだまだ進化が必要だと感じています。

日本の包材の完成度は、世界でも極めて高いレベルにありますが、モノマテリアル部材が継続的に評価され採用いただくには、耐熱性・保香性など当社製品の特長となる物性をさらに向上させる必要があります。そして、当然ながら販売する営業にも深い製品知識とやり遂げる強い意志が求められます。

さらに、プラスチック問題の解決には、各サプライチェーンの連携が不可欠であり、ブランドオーナーやコンバーターだけでなく、実際にリサイクルを行っているリサイクラーとの連携も進めたいと考えています。そうした協働の中では必ず新たなテーマを発見できるはずで、当社の製品群がサプライチェーン全体に貢献できる可能性も秘めていると考えます。

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