「ラミネート加工も、次はノンソル（無溶剤）の時代だね！」とお客様から期待され、環境負荷の少ない無溶剤型の接着剤を試作しては失敗を繰り返していました。
ラミネート加工後の意匠性を高められず、硬化速度が遅いために高生産性を求められる連続ラミネーションに適さないなどの課題をクリアできなかったのです。

そして、試行錯誤を続ける中で、主剤と硬化剤を混ぜてからフィルムに塗工する従来の方法から、2剤を別々に塗工する方式に変更することで、大きな課題の一つである「ポットライフ（接着剤の使用可能時間）の延長」を解決できるのではないか。また、塗工を分けることで主剤と硬化剤の性能も上げられるのではないかと着想しました。結果的に、これが突破口になりました。

ただ、主剤と硬化剤を別々に塗工すると工程が複雑になり、ラミネート加工装置を一つの塗工システムとして高度に制御する技術が不可欠です。これは我々だけでは実現できません。そこで、ラミネート加工のトップメーカーである富士機械工業㈱様に開発の協力をお願いしたのです。

新しい接着剤には「塗工しやすい柔らかさ」、「意匠性を損なわない速硬化性」、「連続ラミネーションに適合する硬化スピード」が求められます。しかも、1㎡あたり数gという薄い膜の中で、これらの機能を発現させねばなりません。

プロジェクトは知見を総動員し、様々な新材料を試しながら最適な成分配合を模索しました。特に硬化速度のコントロールは困難を極め、配合の調整に悪戦苦闘しましたが、2019年、従来の数倍の硬化速度を持つ無溶剤接着剤『DUALAM™️』を完成させました。

そして、富士機械様と連携して、『DUALAM™️』を薄膜化して均一に塗布するコンピュータ制御の供給ユニットを完成させ、既存のラミネーター（塗工加工機）に後付けで設置できる「ラミネーションシステム」として販売を開始しました。

『DUALAMTM™️』は接着剤と機械をセットで販売するシステム製品です。お客様には新たな設備投資となりますが、今まで叶わなかった高意匠・無溶剤の2層ラミネート、3層以上のラミネート連続加工、速硬化による養生時間の短縮、ポットライフの延長など数々のメリットを享受いただけます。 そして、何よりVOC問題の解消、CO₂排出量の大幅削減など環境上のメリットは計り知れません。

システムが完成し、初めて見たラミネートサンプルの美しい外観に驚きました。
これまで10年間、無溶剤接着剤に関わってきましたが、これほどの仕上がりを見たのは初めてです。
お客様からも「こんなに外観がキレイにできるとは思わなかった」とお褒めいただきました。
このプロジェクトに関わったすべての人が同じような感想を抱いたと思います。

お客様の工場でラミネート加工された製品がスーパーマーケットに並んだ時の感動は、さらに大きなものでした。私は自身が関わった最終製品は、店頭で必ず手に取り、状態を確認するとともに消費者の反応も観察しますが、「世の中に少しは役立てたかな」「いや、もっと進化できるはず」と考えるのもこの時です。