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声を束ね、1つの答えへ。TOKYO PACK 2026をつくり上げた2人の舞台裏


8部署、26の展示テーマ、異なる製品、異なる顧客、異なる思いを、どうすれば「DICとしての1つの提案」にできるのか。約1年にわたり、その答えを探してきたのが、パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループの岩崎みづえと趙忻です。
DICは、「価値を包み、未来を創る」をテーマに、国内最大級の国際包装展『TOKYO PACK 2026』に出展。インキ、接着剤、フィルム、樹脂など、グループが持つ多彩な製品・技術と、パートナー企業の強みをつなぎ、顧客の課題を起点とした「トータルパッケージング」を提案しています。会場では、ARを使った技術体験や、パートナー企業と連携した実演展示なども見どころです。
「現業だけでも忙しいのに」という社内の声もあったといいます。2人が1年かけて挑んだのは、単なる「展示会の企画・運営」ではありませんでした。2人の奮闘によって実現した、『TOKYO PACK 2026』出展の舞台裏に迫ります。

▲写真右から
岩崎みづえ(いわさきみづえ)
DIC株式会社 パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループ マネジャー
営業や事務、展示会の企画・制作、役員秘書など、さまざまな業務を経験。10年以上にわたり展示会の企画・運営に携わり、DICの幅広い製品・技術を束ねた提案活動を推進している。
趙忻(ちょうきん)
DIC株式会社 パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループ
財務部を経て、新事業開発やマーケティングに従事。市場調査やデジタル施策、国内外の関係者との連携など幅広い業務を担当し、『TOKYO PACK 2026』では初めて事務局を務め、展示全体の企画・運営に携わる。
TOKYO PACK 2026開催中
| 会期: | 2026年10月14日(水)~16日(金)10:00~17:00 |
|---|---|
| 会場: | 東京ビッグサイト 東1~3・7・8ホール |
| DICブース: | 東2ホール 2R04 |
「あれば望ましい」から「なければ成り立たない」へ。パッケージ業界の転換点
──本題の『TOKYO PACK 2026(以下、TOKYO PACK)』に入る前に、まずは業界の状況からうかがいます。原材料価格の高騰などにより、生活に身近な場面でもパッケージの変化を感じるようになりました。パッケージ業界では現在、どんな変化が起きているのでしょうか?
趙:環境対応への関心は以前から高まっていましたが、最近は原材料価格の高騰などを背景に、環境負荷を抑えるだけでなく、コストや生産性も含めて両立させたいというニーズがより強くなっていると感じています。
パッケージには、中身を守る品質や機能はもちろん、環境への配慮や経済性など、さまざまな価値が求められます。「環境に良い」というだけではなく、複数の課題を同時に解決していくことが、これまで以上に重要になっています。

▲パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループの趙忻
岩崎:企業としては、環境対応を見送ることも現実的ではありません。EUでは包装廃棄物に関する規則「PPWR」(※1)の適用が始まり、EU市場向けに製品を扱う日本企業にも影響します。
これまでは企業ごとに環境対応への温度差がありましたが、今後は「あれば望ましいもの」ではなく、事業を続けるうえでの必須条件になっていくはずです。ただ、これは同時にチャンスでもあります。すべての企業が変化を求められることで、新しい技術やサービスの開発が進むからです。
※1:PPWRとは「Packaging and Packaging Waste Regulation」の略。包装廃棄物の削減や、包装材の再使用・リサイクル促進などを定めるEUの規則

▲パッケージング&グラフィック事業部門 事業開発グループ マネジャーの岩崎みづえ
──そうした変化に対応するための指針が、DICが掲げる「5R」なのでしょうか。
岩崎:はい。DICでは、一般的な3R(Reduce、Reuse、Recycle)に、「Renew(再生)」と「Redesign(再設計)」を加えた「5R」を、サステナブルなパッケージを実現するための指針として掲げています。
資源を循環させるだけでなく、再生可能な材料の活用や、最初から循環しやすい設計まで視野に入れているのが特徴です。

モノを並べるのではなく、答えを並べる。「トータルパッケージング」の狙い
──そうした業界の変化があるなか、DICは2026年10月14日から開催されている『TOKYO PACK 2026』に出展しています。DICにとって、これはどのような場なのでしょうか?
趙:単に製品を展示してPRするだけの場ではありません。普段の営業活動では、それぞれの部署が担当する製品ごとにお客さまと接することが多いのですが、ここではDICの製品や技術を集め、トータルパッケージングとしてソリューションを提案しています。

▲DICのブース
──トータルパッケージングとは?
岩崎:1つの製品を売るだけではなく、「この課題ならDICの技術をこう組み合わせられないか」を、お客さまと一緒に考えていく。その姿勢をかたちにしたものがトータルパッケージングです。
趙:パッケージは、フィルムやインキ、接着剤、樹脂など、さまざまな材料を組み合わせて作られています。お客さまが求めているのも、単に「このインキを別の製品に変えたい」といったことだけではありません。「パッケージのリサイクル性を高めたい」「中身を守りながら、使用する素材を減らしたい」など、パッケージ全体を見据えた課題解決が求められています。
岩崎:DICはパッケージに使われる幅広い材料を扱っているため、その組み合わせに関する知見を持っています。たとえばリサイクル性を高めたいという要望に対して、フィルムを1つの素材にまとめる「モノマテリアル」(※2)に加えて、リサイクルの妨げになりにくいインキや接着剤も組み合わせることで、パッケージ全体のリサイクルしやすい設計を提案できます。
※2:リサイクルしやすくするため、パッケージを構成する素材を1つにまとめる考え方


──DICの提案がお客さまにどう受け止められるか、リアルな場で確認する意味でも、貴重な機会となりそうですね。
趙:はい。当社が展開するウェブサイトの記事や、ウェビナーの閲覧データを見れば、お客さまがどんなテーマに関心を持っているかわかります。ただ、「なぜ興味を持たれたのか」「どのような背景や課題があるのか」までは、数字だけでは見えてきません。
展示会なら、来場した方と直接話すことができます。開発途中のテーマに対する反応を聞き、研究開発や事業化の方向を修正する機会としても活用しています。
岩崎:普段の営業活動では、フィルムなどの素材を加工してパッケージへと仕上げるコンバーター(※3)がお客さまの中心です。一方、その先にいる食品メーカーや日用品メーカーは、消費者に近い立場から市場の変化や将来のニーズを捉えています。
展示会には、そうしたメーカーも含め、パッケージ業界に関わる幅広い方々が訪れます。普段は直接接点を持ちにくい方々の声を聞き、市場の変化や新たなニーズを直接確認できることも、この場ならではの大きな価値ですね。
※3:フィルムや紙などの素材に印刷、ラミネート、製袋などの加工を施し、パッケージに仕上げる事業者
8つの部署、26のテーマ。それぞれの想いを、1つの展示に紡ぐまで
──準備はどのように進めてきたのでしょうか?
岩崎:準備を始めたのは約1年前です。まず「DICとして何を伝えるのか」という全体のテーマが重要です。事業開発グループで「価値を包み、未来を創る」というテーマを決め、それをパッケージに関連する部署へ共有したうえで、各部署から展示したいテーマを募りました。
今回は社内8部署から、26のテーマが集まりました。ただ、インキ、フィルム、接着剤、ポリスチレン、コーティング剤など、それぞれの部署で戦略もお客さまも異なります。当然、展示会で伝えたいことも違います。
そこで各チームと分科会を開き、製品の特徴だけでなく、「お客さまにどのような価値を提供できるのか」を確認しました。パネルに何を書くのか、どんなサンプルを見せるのかなどの細部についても何度も話し合い、26テーマを活かしつつ、コンセプトを共通点としてまとめていきました。

▲DICとartience、フィルムパッケージ向けリサイクル評価の共通プロトコルを策定

▲「価値を包み、未来を創る」を体現する6つの展示テーマ
──たくさんの関係者が参加するなかで、方向性が異なるテーマを束ねていったのですね。苦労も多かったのでは?
趙:私は2024年の『TOKYO PACK』には、1つの展示品を担当する立場で参加しました。今回は初めて事務局として全体を見る立場になり、個々の展示だけでなく、展示会全体を俯瞰して考えることの重要性を実感しました。
各部署にはそれぞれ伝えたい製品や技術がありますが、事務局の役割は、それらを単純に並べるのではなく、異なる訴求を整理し、DICとしてどんな価値をお客さまに届けるのかという視点で、展示全体を組み立てていくことです。
ブース設計や情報発信、セミナー運営なども含め、26の展示テーマを俯瞰しながら、個々の要望と展示全体のバランスを取っていくことが求められました。

岩崎:なかでもノベルティの準備では、コスト面と品質が課題となるなか、私たちのグループのタイ出身の社員が、現地タイの会社につないでくれました。国内外のメンバーの強みを借りながら、展示を1つずつかたちにしていったんです。

▲トートバッグや缶バッジなどのノベルティを制作
──社内の協力を得ていくのも、簡単ではないように思います。
岩崎:そうですね。以前は「通常業務が忙しいのに、さらに業務を増やさないでほしい」という反応もありました。そこで、参加に慎重な部署には個別にお時間をいただき、展示会は単なるPRの場ではなく、市場調査や開発テーマの検証にもつながる営業活動であり、マーケティング活動でもあることを、丁寧に伝えていきました。
最初は負担を感じる声もありましたが、実際に展示すると、想像以上の反響を得られることがあります。現場での反応を目の当たりにすることで、「次もやってみよう」と社内の意識が変わります。そうした経験を重ねることで、展示会を「事業につながる場」としてとらえてもらえるようになりました。
異なるキャリアが、つなぐ力に。二人の強みが活きる瞬間
──岩崎さんと趙さんは、それぞれのどんな強みを生かして準備を進めてきたのでしょうか?
趙:今回一緒に担当して、岩崎さんが積み重ねてきた経験の大きさを改めて感じました。展示全体を俯瞰しながら関係者をつなぎ、先回りして動く姿から、多くを学んでいます。
岩崎:ありがとうございます(笑)。私はこれまで、営業や事務、展示会の制作に関わる部署、役員秘書など、さまざまな仕事を経験してきました。制作する側と、展示を依頼する側の両方を経験していることは、現在の仕事に活きていると思います。
また、展示会は社内の製品部門だけでは成り立ちません。海外のグループ会社、社内の関連部署など、多くの部署や関係者と連携します。特定の製品を売る仕事ではなく、さまざまな人や技術をつなぐ機会が多かったからこそ、全体を見て考える視点が身についたのかもしれません。

▲会場では毎日7つの異なるテーマでプチセミナーを開催
岩崎:趙さんは、英語や中国語を生かしたコミュニケーションに加え、海外の情報や市場の調査・分析、新しいデジタルツールへの対応なども得意としています。そうした強みを活かして今回の準備を全面的に支えてくれていて、本当に助けられました。
趙:私は大学で会計学を学び、入社後は財務部で働き、その後、新事業開発を経て、現在はパッケージング&グラフィックのマーケティングを担当しています。一見すると異なる仕事ですが、振り返ると、それぞれの仕事で培った、事業や市場を幅広く見る視点が、現在の仕事に活きていると感じます。
また、中国出身で、日本で働きながら海外のメンバーとも関わってきた経験も、異なる立場や考え方を理解し、人や情報をつなぐうえでの強みになっていると思います。
今年参加したドイツの国際包装展『interpack 2026』も、海外の市場動向や新しい取り組みを自分の目で見る貴重な機会になりました。展示の見せ方やお客さまとのコミュニケーション、デジタルツールの活用など、日本とは異なる工夫も多く、さまざまな気づきがありました。そうした海外の視点も取り入れながら、今の仕事に活かしていきたいと思っています。

DICだけでは、解決できない。他社と共創した理由
──今回ならではの展示で工夫されたポイントを教えてください。
趙:今回の展示では、製品別に並べるのではなく、「リサイクル性を高める」「省資源化を推進する」など、お客さまの課題を起点に6つの展示ゾーンを設けました。
また、今回の大きな特徴の一つが、国内外のパートナー企業との共創です。装置や材料など、それぞれ異なる技術や強みを持つ企業との共同提案も紹介しています。パッケージを取り巻く課題は、一社だけですべてを解決できるものではありません。だからこそ、企業の枠を越えて技術や知見を持ち寄り、一社では難しい課題の解決を前に進めていくことが重要だと考えています。
そのほか、各展示テーマの担当者による「プチセミナー」など、来場者の方に技術をより分かりやすく知っていただき、担当者と直接対話できる工夫も取り入れています。

▲見るだけではない、ARで体感するDICのソリューション
岩崎:タブレット端末を使った「AR(拡張現実)体験」もその1つです。工場の内部や、使用済みパッケージのフィルムから印刷インキやコーティング剤を除去して、良質な再生樹脂に変える「DeReSus®」の工程など、普段は見ることが難しい技術を、画面上に現れる立体的な映像を通じて体験できるようにしました。

岩崎:技術は、言葉やパネルだけでは伝わりにくいことがあります。見るだけでなく、自分で画面を動かしながら体感することで、仕組みや価値を直感的に理解していただきたいと考えました。
趙:そうした共創の一例として、海外の装置メーカーと連携した展示もぜひ見ていただきたいですね。DICの無溶剤接着剤と、ノンソルベントラミネーター(フィルムを貼り合わせる装置)を組み合わせ、実際に装置を動かしながら紹介するコーナーを設けています。

──今回の展示で得た経験を、今後どのような挑戦につなげていきたいですか?
岩崎:次回以降の『TOKYO PACK』でも、毎回何か新しいものを提案したいと思っています。同時に、国内だけでなく海外の展示会にも目を向け、DICの技術やソリューションを発信する機会を広げていきたいですね。
リアルイベントなど、お客さまとの接点も多様になっています。それぞれの特性を活かしながら、DICが持つ価値をより多くの方へ伝えていきたいと思います。
趙:パッケージのサーキュラーエコノミー(※4)は、1社だけでは実現できません。バリューチェーンに関わる企業が、それぞれの強みを持ち寄り、連携して取り組むことが必要です。
今後は、展示会をその場限りのイベントで終わらせず、そこで得たお客さまの声や市場のニーズを、次の提案や開発につなげていきたいです。国や部門を越えて人や情報をつなぎながら、さまざまなパートナーとともに、新しい事業や価値を生み出していきたいですね。
※4:資源を採取し、製品を作って廃棄する一方通行の経済ではなく、製品や材料を循環させながら使い続ける経済の仕組み

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