ケミカルリサイクルとは

ケミカルリサイクルとは、使用済みプラスチックを化学的プロセスを通じてリサイクルする方法のことです。
マテリアルリサイクルが使用済プラスチックを再生材の原料として使用するのに対し、
ケミカルリサイクルでは、使用済プラスチックの化学構造を変化させることから、高品質な再生原料を得ることが可能です。

創業110年を超えた老舗化学メーカーが「ケミカルリサイクル」について、わかりやすく解説します。

ケミカルリサイクルへの関心が高まる理由

ケミカルリサイクルへの国際的な関心が高まっている理由は、 廃プラスチック問題の深刻化とマテリアルリサイクル の限界が認識されたからです。

廃プラスチック問題の深刻化

欧州では、多くの廃プラスチックが埋め立てられており、これは長期的に分解されないまま環境に残り続ける問題を引き起こしています。また、アメリカでは、リサイクルされるプラスチックはごくわずかで、多くが埋立地か焼却炉で処理されています。
日本はプラスチックゴミ廃棄量がアメリカに次いで世界2位*1となり、日本国内での事業者・自治体・生活者の連携を通じた廃プラスチックを循環させるための仕組みづくりが急務となっています。

そして近年、SDGsへの関心の高まりを背景に、マテリアルリサイクルよりもケミカルリサイクルの方が有効な廃プラスチックのリサイクル手段として注目されています。ケミカルリサイクルでは、プラスチックを燃料や化学材料へと変換する熱分解法やガス化法が開発され、欧州ではこれらの技術を用いた大型プラントの建設も進んでいます。
*1 2018年6月に発表のUNEP(国連環境計画)の報告書より

マテリアルリサイクルの限界

一方で、マテリアルリサイクルは汚染が激しい廃プラスチックには適しておらず、特に食品や飲料用プラスチックの再利用には衛生面や臭気の問題から制限があります。こうした現実的な問題から、マテリアルリサイクルのみでは持続可能な社の実現が困難です。
これらの問題を解決するために、ケミカルリサイクルが解決策として期待されているのです。

ケミカルリサイクルは、使用済みプラスチックを原料に戻すことで、資源を再利用し、廃棄物を削減し、持続可能な社会の実現に貢献するため、今後さらなる進展が予想されます。

ケミカルリサイクル手法一覧

参照文献: 一般社団法人プラスチック循環利用協会 | プラスチックリサイクルの基礎知識2023
ケミカルリサイクルの手法説明
原料・モノマー化技術 使用済みPETボトルから新品PET樹脂を生成する技術。使用済みPETを化学的に分解し、エチレングリコール(EG)やテレフタール酸ジメチル(DMT)、テレフタール酸(TPA)などのモノマーに戻した後、再びPET樹脂に合成します。このリサイクルPET樹脂は、飲料ボトルなどの容器に再利用可能で、帝人株式会社やアイエス株式会社などが実用化を進め、年間数万トンの処理能力を持つ設備を稼働させています。
高炉原料化技術 廃プラスチックをコークスの代わりに使用し、製鉄プロセスで銑鉄を生産する技術です。廃プラスチックは鉄鉱石の還元剤として機能し、塩化ビニル含有プラスチックは特別な処理を経て高炉に供給されます。NEDOの委託を受けて開発されたこの技術は、JFEプラリソース株式会社などで使用されています。
コークス炉化学原料化技術 廃プラスチックを熱分解し、コークスや化学原料、高カロリーガスを生成する技術。日本製鉄株式会社が開発し、廃プラスチックを100℃に加熱して処理後、石炭と混合し炭化室に投入、熱分解を行います。得られる製品には化学原料となる炭化水素油や発電に利用されるコークス炉ガスがあります。
ガス化技術 プラスチックを限られた酸素の環境下で加熱し、炭化水素、一酸化炭素、水素などに分解する技術。高温で反応させることにより合成ガスを生成し、化学工業原料に変換します。荏原製作所、宇部興産(UBE株式会社)が開発に協力し、ショーワ電工株式会社(レゾナック株式会社)やJFE環境株式会社がこの技術を利用しています。
油化技術 高温で廃プラスチックを石油に戻す技術。しかし、エネルギー消費が大きく、安全対策や採算性の問題から、多くの施設が撤退を余儀なくされています。開発は進んでおり一定の成果を上げているものの、実用化にはコストの削減や事業規模の確保などの課題が残されています。

まとめ

ケミカルリサイクルは廃プラスチックを新たに生まれ変わらせるための手段の1つとして、SDGsの目標達成のためにも非常に期待されているリサイクル方法です。ケミカルリサイクルなどのプラスチックのリサイクル方法を正しく理解することで、より地球環境の未来をよくすることにつながります。

私たちDICはポリスチレンのリサイクルをより拡大していくために、ポリスチレンのリサイクル技術においてケミカルリサイクルと”世界初”の溶解分離リサイクル技術を用いたポリスチレン完全循環型モデル「RePOS®」(リポス)を開発しています。