特 集 プリンテッドエレクトロニクス
高度情報社会をもっと快適に、環境影響を小さく
社会の課題 電子回路の工程を簡素化して省資源・省エネ・低コスト化を
私たちの便利で快適な生活は、高度な電子・電気製品に支えられ、そこには無数の電子回路が使われています。回路パターンの形成には「フォトリソグラフィ」という方法が使われています。これは全面に形成した機能層の必要部だけを残して、不要部を薬液で溶かし去るものです。このため多段の工程が必要で高額の設備投資が必要な上、希少金属を含めた各種材料やエネルギーの大量消費、環境負荷物質の発生などが課題となっています。
こうした中で、既存のフォトリソグラフィにはない特徴をもつ次世代技術として、印刷技術を応用した「プリンテッドエレクトロニクス(PE)」が関心を集めています。これは、基板への保護膜(レジスト)塗布―露光―現像―機能性層除去といった工程を印刷(印刷機とインク)に置き換えるもので、工程を大幅に簡素化し、低温焼成による柔らかいフィルム基板への対応も可能にします。しかも設備やエネルギー消費が少なく、工程で発生する環境負荷物質も削減できます。
DICの取り組み 高精細・低温焼成に対応したプリンテッドエレクトロニクス用インクを開発
回路の配線を印刷で行うには、電気を通す性質とともに高精細印刷に対応した導電性インクが不可欠であり、その特性次第で回路やデバイスの信頼性が大きく左右されます。
DICは、独自の分散技術により、グラビアオフセット印刷をはじめ、微粒子を噴射するインクジェット印刷、5マイクロメートル程度の精細な線描画が可能な凸版反転印刷などに対応したプリンテッドエレクトロニクス用インクを開発。
特に、銀の超微粒子(直径が10~30ナノメートル※)からなる「ナノ銀分散体」や、マイクロメートルサイズの銀粒子を均一かつ精緻に分散させた導電性銀インクは、高い導電性や基材への密着性を実現しました。
また、焼成温度が低いことからプラスチックなど耐熱性の低い基材にもパターンを形成でき、電子ペーパー、ディスプレイ、太陽電池、有機TFT(薄膜トランジスタ)など幅広い用途への活用が期待されています。
- 1ナノメートルは10億分の1メートル
KEY PERSON of DIC
DICの材料技術・印刷インク設計力を基盤に壮大な変革の一翼を担います
プリンテッドエレクトロニクス用インクは、原料素材の技術、インクとしての物性を実現する配合技術、量産技術を結集した成果です。ただ、この分野は導電インクだけでなく、絶縁体や半導体など重要なファクターが種々あるので、システム全体に配慮し、素材/インク設計力、印刷機と調和させるノウハウなどの深耕してきた技術を基盤に、次世代技術の構築に貢献していきます。
R&D本部 コア機能開発センター PE開発グループ 主任研究員 佐々木 博友
独創のインク技術とともに幅広い連携で技術革新を加速
プリンテッドエレクトロニクス用インクによる細線化や低温焼成への対応性は、計り知れない可能性を秘めています。モバイル機器の高集積化、ガラスからフィルム基板への転換などを加速させるだけでなく、大面積でも均質な精細配線が可能なため、電子機器の姿を一変させるかもしれません。しかし、フォトリソグラフィの工程が印刷に置き換わるには、印刷機をはじめ様々な技術革新が必要です。そこで、私たちは関連するメーカーとの連携を進めるなど、プリンテッドエレクトロニクス分野の進展・普及に力を注いでいます。
アドバンストポリマ営業本部 高機能化学品開発営業部 担当部長 五十住 宏
2014年度の特集
ハイブリッド型コーティング樹脂「セラネート®」
住宅や建造物を雨・紫外線・大気汚染から守りたい
多分岐ポリスチレン「ハイブランチ®」
食品容器・家電部品・断熱材をもっとエコに
太陽電池
太陽電池モジュールの長寿命化を目指して
リチウムイオン電池
スマート社会に不可欠な高機能バッテリーの進化に貢献
プリンテッドエレクトロニクス
高度情報社会をもっと快適に、環境影響を小さく
TOPICS
新たな発想によるウェブサイトの リニューアルを行い、顧客満足の実現を追求
DICグループの一員として、主として欧州・米州での事業を展開するSun Chemicalグループ(米国)は、このほどウェブサイトのリニューアルを行い、検索性能の向上や、より単純明快になったナビゲーション・システムの提供などを通じて、顧客満足の実現を追求しています
安全・安心な食品用色素のニーズが高まる中で天然系青色素「リナブルー®」の供給力を拡充
世界的な健康・安全志向の高まりから、食品業界では合成色素から天然系色素に切り替える動きが加速しています。数少ない天然系青色素の最大メーカーであるDICグループは、この需要に応えるため米国の生産拠点に新たなプラントを建設して供給力の強化を図ります。