環境汚染の予防

主な取り組みの目標と実績

VOC大気排出量削減

目標の範囲 日本
2022年度 目標 国内DICグループ:325トン
(直近の平均実績を維持)
(2000年度比70%レベルを維持)
2022年度 実績 国内DICグループ:200トン
評価 ★★★
2023年度 目標 国内DICグループ:280トン(2000年度比50%レベルを維持)
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

方針および体制

基本的な考え方

DICグループは、事業活動に伴う環境負荷を把握し、計画的に削減するとともに環境汚染の予防に努めます。

化学企業は、多種多様な化学物質を大量に取り扱うため、化学物質の排出抑制が求められます。DICグループでは事業活動に伴う環境負荷を把握し、計画的な削減とともに環境汚染の予防に努めています。国内DICグループでは、2005年度から化学物質排出把握管理促進法(化管法)で指定された物質(PRTR制度)、および土壌汚染対策法、PRTR法、オゾン層保護法、フロン排出抑制法、PCB特別措置法などの法規制、さらには一般社団法人日本化学工業協会(日化協※)が自主調査対象として定めた物質を調査対象に、大気・水域・土壌など環境への排出削減を進めています。

  • 日化協:日本有数の業界団体としてICCAに加盟し、世界各国の化学工業団体とともに化学工業の健全な発展に努めている。

2022 年度の主な活動と実績

01化学物質汚染(VOC※4大気排出量)の削減

国内DICグループでは、VOC大気排出量に関して、2000年度を基準年とし2010年度までに30%削減の目標を設定、2007年度に達成済みです。現在は、削減値を2000年度比50%削減に引き上げ、この値を維持することを目標にしています。
2022年度は、VOC排出量が200トン(前年度比84%)と減少しましたが、主な理由は、VOC排出量が多い生産品目が減少したことによるものです。
一方、海外DICグループ(中国、AP)においても、継続的なVOC排出量のモニタリングを実施しています。特に中国のグループ会社では、規制強化の対応に向けた、設備更新や排出管理を実施しています。

調査対象物質 (PRTR※1対象物質※2を含む551 物質(+1 物質群)※3)の大気排出量の推移

調査対象物質(PRTR※1 対象物質※2 を含む551 物質(+1 物質群))の大気排出量の推移
  • PRTR:Pollutant Release and Transfer Registerの略。
  • PRTR 対象物質:化学物質排出把握管理促進法(化管法)で指定された462物質で、PRTR制度とは日本国内の届出制度。
  • 551物質(+1 物質群):DICグループでは、PRTR 第一種指定化学物質462物質+日化協の調査対象物質89物質(第一種指定化学物質以外のもの)+ 1物質群(炭素数が4~8までの鎖状炭化水素類)を調査対象としている。
  • VOC:Volatile Organic Compounds 揮発性有機化合物。

なお、2022年度も調査対象物質は、PRTR第一種指定化学物質(462物質)+日化協調査対象物質89物質(第一種指定化学物質以外のもの89物質)+1物質群(炭素数が4~8までの鎖状炭化水素類)でした。2022年度に1トン以上使用または生産した物質数は、国内DICグループで126物質でした。

2021年度に1トン以上使用または生産した物質数

02大気負荷(SOx、NOx)および排水負荷(COD)の削減

国内DICグループでは、1990年度を基準年として、ボイラー設備においてSOx、NOxの低減に努めてきました。同様に、排水設備において排水負荷の指標となるCOD(化学的酸素要求量)の低減に努めています。具体的な施策としては、バイオマスボイラーの設置や生産工程の改善があげられます。
2022年度において、国内DICグループのSOx排出量は13トンであり、1990年度比10%以下の低レベルを維持しました。また、NOxの排出量は172トンであり、1990年度比で85%でした。
一方、排水負荷に関して、国内DICグループのCODは854トンであり、1990年度比で115%であり、前年より減少したものの高いレベルでした。この理由は、生産数量の増加と品目構成の変化によるものです。引き続き、排水負荷の適切な管理と抑制に取り組みます。
海外DICグループでも、燃料を軽油から天然ガスに転換し、軽油・重油ボイラーからバイオマスボイラーへ切り替えています。COD削減においても、水を再利用して敷地外への排出を抑制するクローズドループ方式、排水処理施設を採用し法規制以上の浄化に努めています。

SOx、NOx 排出量の推移

SOx、NOx 排出量の推移

COD 排出量の推移

COD排出量の推移

03ダイオキシン類排出規制の遵守

国内DICグループでは、ダイオキシン類特措法に基づき、特定施設からのダイオキシン類の排出量をモニタリングしています。現在、国内DICグループでは5事業所に特定施設がありますが、各施設とも法令が定める排出基準値を下回っています。

  • ※2022年にDICインテリアが閉鎖し、それまでの6事業所から現在5事業所。
国内DIC グループ焼却施設の排ガス・排水中のダイオキシン類濃度

04PCB機器および廃棄物の処理

PCBを使用した旧型の変圧器、コンデンサー等の機器については、PCB特措法に基づき、適切に回収・保管・管理しています。また、PCBの処理を進めるJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)の事業進展に合わせて使用機器の処理を推進しており、2023年上期において高濃度PCB廃棄物の処理を完了予定です。低濃度PCB廃棄物に関しても適正な管理・処理を進めています。

05アスベスト(石綿)対策

国内DICグループでは、解体工事や機器更新時の石綿によるリスクを事前に把握し、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則および改正大気汚染防止法に基づき、適切な対応を継続しています。

06土壌・地下水汚染調査

国内DICグループでは、土壌汚染対策法を厳守するとともに、必要に応じて土壌・地下水の調査や対策を実施して環境・健康面での事前リスク評価を行っています。2021年に北陸工場の第三用地において、自主的な調査により土壌汚染が発見され、要措置区域に指定されました。現在も法令に基づき浄化対策を継続中です。

サーキュラーエコノミーへの取り組み

近年、使用済みプラスチック製品・容器などの不適切な廃棄が繰り返されていることを要因に、海の環境や生態系が悪影響を受ける「廃棄プラスチック・海洋プラスチック問題」が世界の重要課題になっています。
国内DICグループでは、事業所において廃プラスチックの適切な管理を進めています。具体的には、プラスチックの原材料等が工場敷地外へ漏えいしないように、防止対策を実施しています。また、製造工程で発生する廃プラスチックを積極的に再利用しています。2020年度は、廃プラスチックの約46%を原材料としてマテリアルリサイクルを行い、燃料利用によるエネルギー回収も含めると再利用率は約92%に達しました。
また、サーキュラーエコノミーの取り組みには、一企業では解決できない広範な問題があるため、産業界や官民の連携による取り組みが行われています。DICは、化学業界5団体により設立されたJaIME(Japan Initiative for Marine Environment)、プラスチック製品のサプライチェーン全体に関わる事業者を中心に設立された経産省主導のCLOMA (Japan Clean Ocean Material Alliance)に参画し、また、サンケミカル社では軟包装分野における欧州循環型経済の実現を推進するCEFLEX(Circular Economy for Flexible Packaging)に参画し、最新情報を収集・グループ共有しています。サーキュラーエコノミーに関わる複数の部門でプロジェクトを結成し、プラスチックの回収・代替材料への切り替え・生分解性材料への転換などに取り組んでいます。

TOPICS

DICアストラケミカルズ社がジャカルタ首都特別州から環境保全優良企業として表彰

インドネシアでプラスチック用着色剤やコンパウンドの製造販売を行うDIC アストラケミカルズ社は、長きにわたり一貫してインドネシアおよび周辺地域の環境規制を遵守してきた ことと、汚水処理および汚染大気排出に関する管理システムが評価され、ジャカルタ首都特別州から「DKI-Jakarta - Company Environment Performance Appraisal Program」を受賞しました。
同賞は、州が域内全企業の環境負荷低減における取り組みのパフォーマンスを監査し、環境保全優良企業として認めるもので、1,000社以上の在ジャカルタ製造業から8社が選ばれました。

DICアストラケミカルズ社がジャカルタ首都特別州から環境保全優良企業として表彰

千葉工場が「環境の保全に関する協定」を締結

京葉臨海地域の大規模工場(50社59工場)は、千葉県及び関係6市(千葉市、市原市他)と、3者で「環境の保全に関する協定」を締結し、大気汚染や水質汚濁の防止等のための排出基準などを定めた「細目協定」を締結しています。
中災防は、企業が行う安全衛生活動を支援し、毎年、長年にわたり産業安全や労働衛生の推進向上に尽力し、顕著な功績が認められた個人およびグループなどに緑十字賞を贈り、表彰しています。

写真:千葉県提供

写真:千葉県提供

2015年は細目協定の5年ごとの見直し年であり、3月に新たな「細目協定」の締結式が開催されました。当日は藤野千葉工場長が市原市八幡地区の協定締結企業を代表して、各市・地区企業代表者と共に出席し、森田千葉県知事、佐久間市原市長と細目協定書を手交しました。
今回締結した「細目協定」は、近年における環境問題の動向等を踏まえ、微小粒子状物質(PM2.5)に関する規定を盛り込むなど、全国でも先進的な取組となっており、2015年4月から2020年3月の5年間がその締結期間です。

タンク洗浄工程で有機溶剤の使用をとりやめた小牧工場

小牧工場(愛知県)では、タンク洗浄工程で有機溶剤を使用していました。有機溶剤は、長期間の使用によって将来に健康被害を生ずる可能性が否定できないため、囲い込み装置の設置や労働衛生保護具の着用などの衛生工学的対策を徹底して、ばく露防止措置を講じてきました。

しかし、従業員の健康障害予防および化学物質使用量の低減を図る観点から、2014年度はタンク洗浄工程での有機溶剤使用をとりやめ、水洗浄に切り替えました。DICは、今後もこうした作業環境の見直し・改善を継続的に推進し、従業員の健康障害の予防に努めます。

鹿島工場に超高効率排水処理装置を導入

鹿島工場では、排水処理設備の増強を目的に、同工場内に嫌気性排水処理装置(住友重機械エンバイロメント株式会社製の「バイオインパクト(BIOIMPACT®)」)一基を導入し排水処理能力の向上や省エネルギー化を進めています。
化学系排水の処理については、酸素を必要とする活性汚泥(注1)を用いて、排水中の有機物を炭酸ガスと水に分解する好気性処理法(活性汚泥法)が一般的ですが、このたび導入した排水処理装置「バイオインパクト(BIOIMPACT®)」では、新たに実用化された嫌気性処理法(グラニュール法)が採用されています。嫌気性処理法(グラニュール法)は、グラニュールと呼ばれる嫌気性(酸素を必要としない)の菌を高濃度に充填したタンク内で、排水中の有機物を短時間でメタンガスと二酸化炭素(CO₂)に高速分解する処理方法です。
同装置は発生するメタンガスの工場稼働への再利用も含めて高効率、省スペース、省エネルギーなどを実現する画期的な排水処理設備として注目されています。
これにより鹿島工場では、CO₂の発生を年間720トン削減し、また運転コストについても大幅に低減していく見込みです。

鹿島工場の超高効率嫌気性排水処理装置「バイオインパクト」

鹿島工場の超高効率嫌気性排水処理装置「バイオインパクト」

先進的な取り組みに対してグリーンカンパニー認定(中国)

中国では経済成長と環境保全の両立に向けて、化学物質に関する規制の強化を図っています。こうした中で、中国で事業を展開するDICグループ20法人は、環境マネジメントシステムに基づく改善活動に取り組み、化学物質の排出量、取水・排水量、廃棄物処分量、エネルギー使用量の削減に努め、毎年、データを当局に報告しています。

グリーンカンパニーの認定証看板

グリーンカンパニーの認定証看板

このような透明性の高い取り組みが評価され、有機顔料や印刷インキなどを製造する「南通迪愛生色料有限公司」(江蘇省南通市)は、環境に配慮した事業活動を実践している「グリーンカンパニー」に認定され、化学工場のモデル的存在となっています。