水資源の管理

主な取り組みの目標と実績

生産拠点の水リスクを評価し、対策を管理

目標の範囲 グローバル
2022年度 目標 水リスク拠点の対策
2024年度までにすべて実施
2022年度までに実施率50%
2022年度 実績 水リスク4拠点を対策
2022年度までの実施率50%
評価 ★★★
2023年度 目標 水リスク拠点の対策
2024年度までにすべて実施
2023年度までに実施率75%
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

方針および体制

基本的な考え方

DICグループは、事業活動に関する水リスクを把握し、水資源を有効活用します。

水資源の節減・管理は世界共通の重要課題です。DICグループは、生産における設備の冷却や製品への使用、そして従業員の飲用として、複数の水源から取水しています。そして、排水する際は、国・地域の規制と同等以上の自主基準を設けて浄化処理し、河川等に排出しています。DICグループでは、グローバルに各生産拠点における水リスクを評価し、対策を実施するとともに水資源の有効活用に取り組んでいます。

2022年度の主な活動と実績

01水リスクの管理

水リスクは渇水、洪水、水質など広範なリスクを含み、また地域により発生するリスクが異なることから、近年WWFが提唱する地域の課題を踏まえた目標設定※1が求められています。
DICグループでは、一般的な水リスクの評価方法アキダクト※2を2018年度より用いて世界中の各事業所の評価を実施してきました。しかし、アキダクトの評価結果は、その事業所が位置する地域の水リスク(外部要因)だけであり、事業所における「操業上の水リスク」(内部要因)が加味されていませんでした。
そこで、DICグループでは、第三者機関の指導のもと、上記2つのリスクをもとにした共通の水リスク評価方法を構築し、日本・中国・アジアパシフィックの各生産拠点をスクリーニング評価しました。具体的には、水リスクの種類を「渇水」、「洪水」、「水質」等の項目に分類しました。そして、それぞれの項目に対して、各拠点の「地域の水リスク」と「操業上の水リスク」のスコアを2軸でマッピングし、右上のゾーンに位置する拠点をリスク拠点として判定しました(下図)。「地域の水リスク」はアキダクトで評価し、「操業上の水リスク」は当社の調査票により評価し、それぞれスコア化した結果、16拠点をリスク拠点として抽出しました。
2021年から2024年まで高リスク16拠点の対策を確認し、その実施率を目標に設定しました。この後、2025年度に水リスク評価の基準を見直し、よりリスクレベルが低い中リスク事業所を抽出します。そして、2030年に向けて中リスク事業所に関しても対策を順次実施する計画です(下図)。
既に高リスク拠点に関しては、2021年度4拠点、2022年度に4拠点、対策を確認しており、順次、対策確認を進めていきます。

  • :WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の目標設定「Setting Site Water Targets Informed By Catchment Context: A Guide For Companies」
  • :世界資源研究所(WRI)が提供する水リスクの評価ツール。世界186ヶ所の水ストレス、干ばつリスク、洪水リスクを地図上で表示している。正式名は「Aqueduct Water Risk Atlas」
「地域の水リスク」「操業上の水リスク」マッピングの例による評価例

「地域の水リスク」「操業上の水リスク」マッピングの例による評価例

水リスクアセスメントのロードマップ(2021~2030年度)
「Aqueduct 」評価例

「Aqueduct 」評価例

02取水量・排水量の管理

DICグループでは2017年度より水資源管理に関するデータ集計項目をGRIスタンダード※3に基づいて変更し、取水源および排水先ごとの水量を把握しています。2022年度は、国内DICグループの取水量27,651千m³(前年度比100%)、排水量26,135千m³(前年度比100%)となり、前年比で同じでした。
2022年度からC&Eを欧米地区として集計に加えたため、海外DICグループの取水量および排水量は、前年比で大幅に増加しました。2022年度の海外グループの取水量は26,957千m³(前年度比312%)、排水量は24,901千m³(前年度比384%)と、大幅に増加しました。それに伴い、DICグローバルで総取水量54,608千m³(前年度比151%)、総排水量51,036千m³(前年度比157%)と大幅に増加しました。今後も地域統括会社は水資源の適正管理に注力していきます。

  • 3:国際NGOのGRI(Global Reporting Initiative)が発行する持続可能性報告のための国際的ガイドライン
2019~2020年度の取水量

03水使用量削減や排水リスク低減への取り組み

DICグループでは、水の用途の多くは設備の冷却であるため、クーリングタワーなどにより水をリサイクルし、水使用量の削減に努めています。
一方、排水リスク低減のため、工場からの排水は法規制以上の浄化に努めるなど環境保護に取り組んでいます。例えば、工場内から排出される生活排水は、油水分離等の1次処理を実施し、工場外に排出しています。製造系排水は、活性汚泥等の2次処理を実施し、常温に冷却してから、油水分離等を行い、排水しています。排水によっては有害物質を除去するため、活性炭処理等の3次処理を実施するケースもあります。
また、DIC総合研究所(千葉県)やSiam Chemical Industry社(タイ)においては、排水においてゼロエミッションを達成し、水資源への負荷低減に努めています。DIC総合研究所では、日量約60m³の事業所用水を地下水で賄いますが、敷地内での完結処理とした完全クローズドシステムを確立しています。
また今後、取水量低減を目的とし、再利用水の水質向上のため、純水化設備の導入計画を進め、水資源の確保に努めていきます。

04CDP水セキュリティ2022

DICグループは、2022年度のCDP※4水セキュリティにおいて「B」評価でした。今後も、水セキュリティ対応を強化し、評価向上を図っていきます。

  • 4: CDP(Carbon Disclosure Project)は、温室効果ガス排出削減や水資源管理、森林保全を 促進している国際NGO

TOPICS

Qingdao DIC Liquid crystal Co., Ltd.(QLC)における廃水臭気除去装置の導入

大気汚染防止や環境負荷低減、そして周辺企業からの苦情リスクを低減するため、2019年10月末にQLC社は約50万元を投資し、廃水処理場に臭気除去装置を導入しました。廃水処理場の接触酸化ピット、沈殿ピット、清水ピットなどを密閉とし、臭気を配管とファンにて収集後、生物処理で臭気を除去し、処理後の気体は既存の煙突にて排出するようにしました。2020年1月に運用を開始した結果、臭気はほとんどなくなり、周辺環境に対して大きな効果が出ました。

密閉化して臭気対策を行った中水ピット

密閉化して臭気対策を行った中水ピット