特集光学・包装フィルム用易接着プライマー

高い密着性で、液晶画面の信頼性や食の安全性を高めています

薄さ1万分の1ミリの水性ウレタン樹脂が担う役割


DICのフィルム用プライマー「ハイドラン」

テレビ・パソコン・スマートフォンの液晶ディスプレイ(光学分野)、レトルト食品やスナック菓子などの包装容器(食品包装)には、極薄の高機能フィルムが多用されています。これらは1枚のフィルムに見えますが、実は何枚ものフィルムを貼り合わせた多層構造によって必要な機能(光学用は透明性・導電性・反射防止・輝度向上など、食品包装用は耐熱性・酸素バリア性・防湿性など)を発揮しています。
一般にフィルムは接着剤で貼り合わせますが、PETフィルムの表面特性によって密着が難しい場合、「プライマー」という水性ウレタン樹脂の表面改質剤(アンカーコート剤、易接着剤ともいう)を塗工します。薄さ0.1ミクロン(1万分の1ミリ)以下ながら、基材のPETフィルムと上塗り剤(コート層)とを強力に密着させて高機能フィルムの性能をさらに高める重要な役割を担っています。

液晶ディスプレイの輝度向上に貢献するプライマー

信頼性・使いやすさ・環境性で支持を得るDICの「ハイドラン」

高分子化合物のウレタン樹脂は、幅広い基材への高い密着性を発揮し、ニーズに合わせたポリマ(高分子)設計が可能なことから、繊維やフィルム、金属接着といった幅広い分野で利用されています。中でも水性ウレタン樹脂は密着性が高く、架橋剤を使って強度・密着性・耐水性・耐湿熱性などを向上できます。
DICは、この分野で40年以上の歴史を持ち、代表的な製品「ハイドラン」は、基材および上塗り剤との密着性、透明性・耐摩耗性・耐久性、塗工後のフィルムの滑り・巻き取りやすさ、耐ブロッキング※1性などの扱いやすさなどで高い支持を得ています。
また、溶剤を使用しない水性のためVOC(揮発性有機化合物)発生の心配がなく、食品包装における環境負荷の低減、作業者の安全・健康管理面でも好適の素材です。さらにアルミ包装容器の加工では、「ハイドラン」を塗工したPETフィルムにアルミ蒸着※2を施すことで、従来のPETフィルムとアルミ箔を接着剤で貼り合わせる方法に比べて大幅な省エネと軽量化が図れます。

  • ※1 ブロッキングとは、巻き取り段階でフィルム同士が密着し、滑りにくくなったり、剥がれなくなる不具合。
  • ※2 アルミニウムの微細粒子を高真空状態で電子ビームや高周波誘導などで加熱蒸発させてフィルム面に付着させる方法。

PET フィルムのバリューチェー

世界トップクラスのポリマ技術とグローバルネットワークを最大限に活用し、高いブランドイメージと供給実績を確立

DICは、インキ製造で培った顔料と樹脂を分散・配合する技術をもとに、光学・色彩、有機分子設計、高分子設計、分散などの基盤技術と、合成・配合・表面処理などの各種要素技術を駆使した高付加価値製品の開発に結びつけています。その源泉は、グループ全体の技術リソースを融合し、様々に異なる特性・機能を持つ素材を組み合わせるコンパウンディング力にあります。
水性ウレタン樹脂を光学・食品包装向けに優れた易接着プライマーとして製品化できるのも、高機能フィルムやコーテイング剤・接着剤などの周辺部材を自ら開発・製造するノウハウを蓄積しているからです。いわば化学の多様な引き出しをフル活用して、市場ニーズにジャストフィットできるDICならではの強みです。

DICはディスプレイ分野・パッケージ分野に関連する技術を豊富に蓄積

多面的な事業展開による情報収集力とグローバルマーケティング


インドの容器包装市場では「DIC Asia Pacific」、「DIC INDIA」と連携・協力して実績を拡大

DICはポリマ事業の他、プリンティングインキ、ファインケミカル、コンパウンド、アプリケーションマテリアルズの4事業をグローバル展開しています。これらは技術面でポリマと関連するだけでなく、用途・地域でも重なる場合が少なくありません。そこでは必然的に共通の顧客やサプライヤーが存在することから、プライマー部門では各国のグループ会社と連携し、いち早く市場や顧客の情報を収集して販売戦略に活用しています。
また、中間素材であるプライマーは、その取り扱い技術や塗工技術によって最終製品の品質まで左右することから、処方や工程管理まで含めたコンサルティング営業が重要です。この点においても、DICは豊富な経験をもとに、フィルムメーカーなどの顧客に直接働きかけ、製品販売とともにきめ細かな工程サポートも展開し、高い信頼を獲得しています。

KEY PERSON of DIC

ポリマ製品本部 ディスパージョン営業グループ マネジャー 池田 健司

DICのDNAを継承して社会変化に対応したビジネス展開を

易接着プライマーの用途は数多くありますが、当社は成長著しい光学と食品包装フィルムに的を絞り、各国・エリアの有力顧客の選定と要求特性に適応した製品と処方を開発し、シェアを伸ばしています。
その過程で実感するのは、技術でも人材においても蓄積したリソースの豊富さ、そして早くから海外展開して築き上げたネットワークの緻密さです。これらを縦横に組み合わせて機能させることで、化学反応のようなダイナミズムが生まれます。それこそが110年の歴史で培った当社のDNAであり、目まぐるしく変遷する社会の動きに的確に対応した製品開発やグローバルビジネスを推進する原動力となっています。

ポリマ製品本部 ディスパージョン営業グループ マネジャー 池田 健司

上海迪愛生貿易有限公司  鐘江 荘

回転の速い液晶市場で開発力と情報力のシナジー・パワーを発揮

液晶パネルに用いられる光学用PETフィルムのプライマーに求められるのは、輝度向上やハードコート性を目的としたUV樹脂加工との優れた密着性です。
DICのプライマーは、多種のUV樹脂との密着性に優れ、処方配合後の可使時間の長さや、プライマー塗布後のフィルムの透明性を阻害しない点等、使い勝手の良さでも好評を博しています。この開発力は、ウレタン原料を作る部門とこれを使った製品部門の両方を備えた技術の厚み、さらに液晶パネルに関わる多彩な中間素材の提供を通じて顧客ニーズを先取りできる情報力との相乗効果だと思います。
モデルチェンジのスピードが速い液晶パネル市場でシェアを伸ばしていくには、DICならではの開発力と情報力をクルマの両輪のように同期させながら加速する必要があると考えています。

  • 可使時間:接着剤に硬化剤、架橋剤、触媒などを混合した後、粘度や状態が使用に耐えられなくなるまでの時間。

上海迪愛生貿易有限公司  鐘江 荘

ポリマ製品本部 ディスパージョン営業グループ 長岡 大輔

食品包装の高性能化とともに、より多くのお客様にDICプライマーの価値を

私はアジアパシフィック、欧米地域の食品包装用プライマーを担当しています。新興国では目に見えて生活水準が向上し、食品包装フィルムへの要求性能も高まり、中身のロングライフ化や調理に対応できる多層フィルムの需要が急拡大しています。こうした中で、技術力のあるトップシェア顧客には、DICのプライマーは高いブランドイメージが確立していますが、ボリュームゾーンであるフィルム加工メーカーには、プライマーの知識や工程サポートが何より重要です。そのため、顧客の課題解決(DICのスペシャル・ソリューション)によるアプローチを念頭に、DIC Asia Pacificを中心とした各国のグループ会社との連携を密にしながら裾野の開拓に力を注いでいます。

ポリマ製品本部 ディスパージョン営業グループ 長岡 大輔

ポリマ第二技術本部 ポリマ技術2グループ 研究主任 千代延 一彦

オフラインによるフィルム加工業向けの製品開発へ

プライマーの顧客は2種類あって、結晶配向が完了する前のフィルムにプライマーを塗工し、乾燥・延伸・熱処理工程を経てフィルムを完成させる「インライン方式」(フィルム製造メーカー)、もう一つが、既に結晶配向した延伸フィルムにプライマーを塗工する「オフライン方式」(フィルム加工事業者)です。DICのプライマーは前者で高い評価・実績を確立しましたが、裾野を広げるには後者への拡販が不可欠です。技術面でもコスト面でも後工程での塗工の方が難しく、顧客に対するきめ細かな工程サポートが必要です。しかし、この未開拓分野への浸透が次の成長へのカギとなるため、グループをあげて製品開発と実績づくりに傾注しています。

  • 二軸延伸PETフィルムは結晶性高分子で「結晶配向」は結晶軸の揃い方の程度を表す。延伸⇒熱固定によってフィルムの熱、衝撃、薬品などに対する耐久性が向上する。

ポリマ第二技術本部 ポリマ技術2グループ 研究主任 千代延 一彦

TOPICS タイに「ポリマ技術センター」を設置し、「ハイドラン」の地産地消へ


タイのポリマ技術センターが消費地のニーズを的確・迅速に把握し、タイムリーに製品供給

成長地域における開発・製品供給をスピードアップ

「ハイドラン」は、現在、DIC北陸工場で生産していますが、アジアにおける需要の高まりを背景に、地域ニーズに密着した製品開発のスピードアップと生産体制の拡充を目的として、グループ会社サイアムケミカル(以下SCI社)に「ポリマ技術センター」を設置しています。
センターでは、DICの技術陣とSCI 社が連携して2017年度にフィルムプライマー用ハイドランの実機試作を完了。
2018年から顧客評価を受けながら製造ラインの完成度を高め、2019年には本格稼働を開始する計画です。これにより北陸工場との製造2拠点化を確立するとともに営業の現地化も推進し、消費地により近い場所でのタイムリーな製品供給による“地産地消”型のグローバル戦略を加速していく方針です。

KEY PERSON of DIC

サイアムケミカルインダストリー株式会社 社長  望月 壽美子

DICの経営資源の活用によるアジア海外展開の強化

サイアムケミカルは1974年に設立され、数ある在タイ日系企業の中でも長い歴史を有する会社で、主に塗料用、成形加工用、工業用樹脂を生産・販売しています。製造・販売・技術の一体経営を行い、日本品質でお客様に製品を提供できることを強みにこれまで成長してきました。今後さらに持続的成長に向けた事業基盤の整備に向けて、最近ではタイの環境への対応を目的として大規模な太陽光発電設備の運用を開始しました。加えて今後はアジア全体での環境ニーズに対応するため、水性ウレタン樹脂である「ハイドラン」への積極投資を行っていく予定です。これからもDICが持っている経営資源をフル活用することでリージョナルの要望を確実に受け止め、アジアにおける海外展開の基点としてさらなる強化を行っていきます。

サイアムケミカルインダストリー株式会社 社長 望月 壽美子

ポリマ技術センターAP センター長  山本 明史

東南アジア市場ニーズにスピーディーに対応

ポリマ技術センターAPは発展著しい東南アジアで市場ニーズにスピーディーに対応できるよう、タイのサイアムケミカルの中に2015年に設立されました。また2017年にはインドネシアでも同様の機能をスタートさせています。取り扱っている製品はウレタン樹脂だけでなくアクリル樹脂、ポリエステル等様々な樹脂があり、用途も多岐にわたっています。そんな中でよりハイレベルな研究開発・技術サービスができるようそれぞれの分野の専門家だけでなく、分析技術の専門家も駐在しており、ローカル技術員と一緒になって頑張っています。中でもフィルムプライマー用ハイドランはDICが得意とする「印刷」とも深く関係していますので、DICならではのソリューションが提供できるよう取り組んでいます。

ポリマ技術センターAP センター長  山本 明史

サステナビリティ>

HOME > サステナビリティ > 特集 > 光学・包装フィルム用易接着プライマー