#デュアラムのお話 DIC岡里帆研究室主任研究員 DIC岡 里帆 × DIC株式会社 パッケージ&グラフィック 高田 長一

世界中のパッケージシステムを変えてしまうかもしれない!?画期的な、ラミネート用接着剤。
それがDICのDUALAM(デュアラム)です。

DIC岡

今日は、私たちの生活に欠かせないパッケージの歴史を変えてしまうかもしれない大型新人について、DICの高田さんとお話します。

高田さん

DIC岡さん、私たちが創り出したDUALAM(デュアラム)のことを、「D」と呼んで愛してくださってありがとうございます。

DIC岡

だって、DUALAMは、世界中に流通しているパッケージの未来を左右しちゃうような、すごい子ですよね!? もう敬愛しかないです! そのしるしとして「D」と呼ばせてください!

高田さん

生みの親の私たちも、うれしいです (笑)。パッケージとは、スナック菓子やレトルト食品、さらには洗剤などが入っている製品のことです。DUALAMは、それらをつくるのに欠かせない接着剤なんです。

DIC岡

そこですよ、高田さん。そうしたパッケージは、あんなに薄いのに、実は、一つの層ではなく複数の層を接着して、できているのですよね。どうしてなのですか?

高田さん

パッケージは、さまざまな機能が求められます。中身の品質を保ち劣化を防ぐために、湿気や光を通さないことや、封入された窒素ガスを漏らさないこと。一方で、衝撃に耐える強さや、外側に製品名などをキレイに印刷して消費者にわかりやすく伝えることも必要です。そうした複数の機能を持たせるためには、異なる特長を持つフィルムをラミネート加工して重ねることで、さまざまな機能を有する容器ができあがるのです。

DIC岡

なるほど、そのために、2層・3層のフィルムを、接着剤で貼り合わせているんですね。

高田さん

そうです。薄いフィルムの全面に、接着剤を塗って貼りあわせていると考えてください。その接着剤は、大きく分けると2種類あります。溶剤を使う「溶剤型接着剤」と、溶剤を使わない「無溶剤型接着剤」です。 もともとは、作りやすくて、キレイに仕上がる「溶剤接型着剤」が主流だったのですが、環境への負荷が高いことが問題視されるようになってきました。一方で「無溶剤型接着剤」は環境にやさしいので、注目されているんです。

「DUALAM」によるラミネート加工

DIC岡

だったら、溶剤型は止めて、ぜんぶ無溶剤型に変えてしまうわけにはいかないのですか?

高田さん

無溶剤型接着剤のほうにも課題があるんです……。DIC岡さん、この表を見てください。一般的にはこのような、長所と弱点があります。

DIC岡

お互いの長所と弱点が、正反対じゃないですか!まさに、あっちを立てれば、こっちが立たず。むずかしいですね……。

高田さん

地域によっても違いがあるんですよ。環境意識の高いヨーロッパでは、無溶剤型接着剤によるパッケージが普及しているのですが、アジアでは、パッケージの見た目の美しさが重視されるので、溶剤型接着剤が中心。なかなか無溶剤型接着剤は広まらないのです。

DIC岡

そんな中、高田さんたちが創り出したのが、「D」ことDUALAMなんですよね。

高田さん

DUALAMは、無溶剤型接着剤です。だから環境に優しい。それでいて従来の無溶剤の弱点を克服して、見た目のキレイさや、連続してたくさんラミネートすることができる接着剤なんです。

デュアラム 製品情報
DIC岡

すごいよ、D!長所はそのままに、弱点を克服するなんて!がんばったんだねえ、D!だから、まだ登場したばかりの新人なのに、大きな注目を集めているわけですね。

高田さん

はい。DUALAMのシステムが普及すれば、ラミネート加工機からのCO2排出量を大幅に減らすことができます。仮に、溶剤接型着剤を使うラミネート加工機が、100台、無溶剤のDUALAMのシステムに入れ変わったとすると、日本のクルマ約11万台の年間CO2排出量と同じぐらいのCO2が減ることになるんです(※)

※従来の溶剤型ラミネート加工機1台のガス熱源からの年間CO2排出量:約200トン × 100台=2万トン。それは、日本の自家用車11万台分の年間 CO2排出量に相当する(環境省 2015 年データより試算) 。

DIC岡

すごい!Dったら、なんてサステナブルなんでしょう!ところで、そもそも、どうしてDICは、Dを開発することにしたのでしょうか。

高田さん

DICは、それ以前から無溶剤型接着剤を作っていて、私は中国エリアを担当して拡販する仕事をしていました。 当初は、順調に売上を伸ばすことができたのですが、頭打ちになってしまった。その原因を探ってみると、やはり無溶剤型接着剤の弱点である「気泡が残る=見た目が美しくない」「連続してたくさん作れない」という点がネックになっていることがわかりました。“弱点を克服した無溶剤型接着剤を新たに開発すべきだ。そうすればもっと普及できる”という思いが湧いてきたのです。

DIC岡

さきほど、“アジアではパッケージの見た目が重視されるから、無溶剤型接着剤が普及しにくい”というお話がありましたもんね。 でも、弱点の克服なんて、そう簡単にはできないでしょう?

高田さん

ええ。でも、私たちは以前からアイデアを持っていたんです。接着剤は、主剤(くっつけるための成分)と硬化剤(かためるための成分)からできていて、通常はそれらを混ぜてから塗るのですが、主剤と硬化剤を混ぜないでおいて、別々に塗れば、無溶剤型接着剤の弱点を克服できるのではないか、と考えていたんですよ。

DIC岡

主剤と硬化剤は混ぜるものだ、という常識にとらわれず、混ぜないなんて。なんという“離れわざ”! そんなすごいアイデアがあれば、すぐに開発を進められそうですね!

高田さん

DIC岡さん、新製品の開発って、そう簡単には始められないんですよ。大きな投資が必要ですから、まずは会社に認めてもらってGOサインを出してもらわなければならない。 そこで、まずは自主的に研究を始めたんです。研究所の社員に頼んで、空いている時間を使って試作をしてもらったりね。そして、いけるんじゃないか、と手応えをつかんで、経営陣に何度もプレゼンをして、ようやく本格的な研究開発が始めることができたんです。

DIC岡

カッコいいですね。まるでドラマみたいです!

高田さん

そんなにカッコいいものじゃないですけど、あきらめずに粘りましたよ。DICは、本気でやり遂げたいという思いを伝えればチャレンジさせてもらえる会社だと実感しました。 2015年に本格的にプロジェクトをスタートさせてからも、試行錯誤の連続でした。いくら実験室で小さな規模で成功しても、実際に大きな機械で加工すると、いろいろな問題が出てきます。見た目がキレイにならなかったり、ラミネートの強度が出なかったり。配合や塗工量などを細かく変化させながら、チームのみんなとトライ&エラーを重ねた末、ようやく2019 年に、無溶剤型接着剤DUALAMの開発に成功したんです。

DIC岡

Dが生まれるまでには、プロジェクトチームのみなさんの汗と涙のストーリーがあったのですね。そして2020年、Dは、世界へ向けて新製品として発表されました。

高田さん

はい。今は、パッケージのメーカーさんのほうで、DUALAMのシステムを使ったラミネート加工の準備が進められているところです。

DIC岡

Dによる新しいパッケージが、世の中に出てくるのも、そう遠くないわけですね。楽しみです。

高田さん

でも私たちは、まだ今は通過点に過ぎないと考えています。DUALAMは、まずはスナック菓子のパッケージから始まりますが、世の中には、さまざまなパッケージがあり、求められる性能が、それぞれ異なりますので、今後、それらに対応していく必要があります。そして近い将来、世界中で、“パッケージのラミネート加工といえば、DUALAM”っていわれる状態をめざしたいんです。

DIC岡

大型新人のDが、新人王を獲り、さらにはパッケージ業界のMVPとなる日を、私も楽しみに待ちたいと思います。高田さん、今日はありがとうございました。

高田さん

私たちは、これからも常識にとらわれずに、さらに画期的なラミネートの技術も考えていきます。サスティナブルに対応した画期的なパッケージが登場すれば、きっと私たちの暮らしが変わります。DIC岡さん、楽しみにしていてくださいね。

高田さんにとって、新しいものを生みだすための"モットー"とは?

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