両面テープ♯8800CH篇 DIC岡里帆研究室主任研究員 DIC岡 里帆 × DIC株式会社コンポジットマテリアル製品本部工業テープ営業2グループ 主任 竹内里奈 加工技術本部加工技術2グループ 渡辺大亮

“はがれないのに、はがしやすい”両面テープって、それ、矛盾してますよね?しかも“地球にも人にも優しい”って、いったい、どんなテープ?

DIC岡さん

製品の開発で、よく伺うのは、“あちらを立てればこちらが立たず”というお話。“小さく↔高性能に”、“薄く↔強く”なんていう矛盾を乗り越え、あちらもこちらも立てて、初めて新製品が生まれるわけですね。今回は、 “はがれないのに、はがしやすい”というお話。そんな矛盾を乗り越えるなんて、いったい、どんな製品なんでしょう?

竹内さん

DIC岡さん、私たちの両面テープ「#8800CH」のことを「しえち」と呼んで愛してくださっているそうですね。ありがとうございます。

DIC岡さん

「#8800CH」は、DICのみなさんが苦労を重ねて生み出した製品で、今では世界中で活躍していると聞いています。目立たない場所に使われていて、ほとんどの人が知らないのに、影で社会を支えている。そんなかわいい製品、「しえち」と呼ばずにはいられません!

竹内さん

「#8800CH」は、私たちにとっても、大切な愛しい製品なんです。

DIC岡さん

まず伺いたいのは、「しえち」の活躍している場所です。両面テープというと、私たちはまず文具の両面テープを思い浮かべますけど、「しえち」は工業用両面テープ。いったいどこに使われているのですか?

竹内さん

たとえば、みなさんがお持ちのスマートフォン。大きなディスプレイ画面があって、その中にはたくさんの部品があるのに、すごく薄くて、ネジは少ししか見当たらないですよね。それは、両面テープで貼って留めている個所があるからなんです。

写真(両面テープ)
DIC岡さん

「しえち」は、私のスマホの中でも活躍しているんですね!

竹内さん

「#8800CH」は家電やOA機器の中でも活躍していますよ。テレビや洗濯機や、プリンターやコピー機などの中で、両面テープが部品と部品を留めているんです。たとえば40インチの液晶テレビなら、その中には合計で50cm×50cmほどの面積の両面テープが使われています。

写真(両面テープ紹介:家電やOA機器の接着に使う、両面テープ#8800CH。しっかりくっつくのに、はがしやすく解体しやすい。分別しやすい。地球にも人にも優しい製品です。)
DIC岡さん

そんなにたくさんの「しえち」たちが!?

竹内さん

他にも、身近なところでは、クルマの中でダッシュボードに貼り付けて使う芳香剤。意外なところでは、人工衛星の中にも。

DIC岡さん

え!? 「しえち」が宇宙にも!?

竹内さん

人工衛星の中で使われる映像機器に、「#8800CH」が活躍しているんですよ。

DIC岡さん

私より先に宇宙へいっちゃうなんて!でも、家電やOA機器は5年10年と長く使いますよね。しかも振動したり高温になったり。そんなに厳しい条件でも、はがれないのですか。

渡辺さん

「#8800CH」が発売されてから30年。はがれてしまって困るというクレームは聞いたことがないです。

DIC岡さん

すごいぞ「しえち」、がんばってくっついてるんだねえ。

渡辺さん

テープがくっつく力の測り方のひとつ「せん断接着力」では、10cm×10cmの「#8800CH」で、1トン以上の負荷に耐えられます。厳しい耐久テストもクリアしています。

写真(せん断接着力のイラスト)
工業用粘着テープ 製品情報
DIC岡さん

なんて力持ち! そんなに“はがれない“のに、“はがしやすい”ってどういうことですか? というか、そもそもどうして、はがさなければならないんですか?

竹内さん

DIC岡さん、それが「#8800CH」が地球にも人にも優しいという理由なんです。

DIC岡さん

ますますわかりません。教えてくださいー。

竹内さん

始まりは1990年頃。ヨーロッパ各国では環境問題への取り組みが始まっていました。家電やOA機器は、できるだけ解体して部品をリサイクルしよう、そのために、ネジや接着剤をできるだけ使わず、両面テープで組み立てておいて、後で解体しやすくしよう、という取り組みです。

DIC岡さん

なるほど、解体するためには、“はがしやすい”ことが求められますね。

竹内さん

当時の両面テープは、はがしにくくて部品が割れてしまったり、はがしても糊が残ってしまったり、と解体には問題がありました。そこでDICが「#8800CH」を開発したのです。

渡辺さん

「#8800CH」を開発したのは、私たちの先輩たちですが、当時は社内でも開発を疑問視する声があったと聞いています。環境問題への意識がまだ一般的に広がってはいない時代だっただけに、開発したとしても、はたして受け入れられるのか、と。

DIC岡さん

いくら良いものができても、受け入れられなければ、製品として世に出ることができませんよね。

竹内さん

実際、販売開始後はほとんど売上がなく、初めの半年間の売上はたった2万5000円だったそうですよ。

DIC岡さん

デビュー早々、「しえち」の大ピンチ!?

竹内さん

幸い、先進的な考えを持つOA機器・家電のメーカーさんたちが、#8800CHを試験して、採用を決めてくださり、売上が伸びたそうです。
それからもう一つ、1998年に日本でも家電リサイクル法が施行されたことが大きかったようです。それ以来、テレビやエアコン、洗濯機、冷蔵庫は、製品開発の時点から解体しやすい製品として設計されるようになったのです。

DIC岡さん

なるほど。さらに最近、サステナブルな製品が求められる世の中になって、その製品が解体しやすいことを表す「易解体」という言葉が注目されている、そして「しえち」は「易解体」に貢献する、というわけですね。それにしても、“はがれないのに、はがしやすい”という矛盾、どうやってクリアしたのですか。

渡辺さん

これも先輩たちに聞いたのですが、“強い粘着力”と“はがしやすさ”を両立することは難しく、開発には3年もかかったそうです。DICがそれを開発できたのは、テープのくっつく部分の樹脂も自分たちで開発していることが大きかったと聞いています。普通、テープメーカーは分業していて、樹脂は別の会社がつくることが多いのですが、DICは自分たちでつくっているので、研究者たちが一緒に試行錯誤をして、難題をクリアすることができたのです。

DIC岡さん

そんな苦労を経て生み出した製品が、今では、世界中でたくさん使われて売れるようになった。そして、家電やOA機器のメーカーさんにも喜ばれている。うれしいですよね。

竹内さん

喜んでいるのは、メーカーさんだけではないんですよ。解体作業を行う業者さんからも「はがしやすいし、糊の跡が残らないので、作業をしやすくなった」と感謝されています。

DIC岡さん

なるほど、“地球にも人にも優しい”という理由がわかりました。

竹内さん

「#8800CH」はすでに30年の歴史を持つ製品。世界中にユーザーを持つグローバルな製品で、取引先もさまざまな業種にわたっていて、生産量も多いロングセラーです。私たちは、「#8800CH」に育ててもらった社員なんです。

DIC岡さん

「しえち」に育ててもらった? どういうことですか!?

渡辺さん

技術職としてテープの部署に配属になった新人の教育は、「#8800CH」を教材にして、どうして“はがれないのに、はがしやすい”という機能ができているかを技術的に考えることから始まるんですよ。

竹内さん

私たち営業の部署でも、新人が配属されてきたら最初に、この製品を教材にしてトレーニングをします。 「なぜ はがしやすいの?」「本当に はがれないの?」と質問されて、どう説明するか。“はがれないのに、はがしやすい”という矛盾した特徴を説明することが、営業の勉強になるんです。

DIC岡さん

「しえち」は、DICの若い社員さんたちの先生でもあるんですね。

竹内さん

今では、「#8800CH」をベースに新しい製品を開発したり、それを販売したりする仕事が、私たちの中心になっています。さらに強度を高めた製品や、さらに薄い製品、機械でも貼りやすい製品など、「#8800CH」から発展した製品が、たくさん登場しているんですよ。

DIC岡さん

ステキ! 「しえち」のファミリーがどんどん増えているんですね。

渡辺さん

見てください、DIC岡さん。私たちは今、こんな製品も開発しているんです。ほら、両面テープをはがさなくても、隙間からこんなふうに抜き取ることができるんです。

ストレッチ両面テープ(ダイタック DSAシリーズ)について詳しくはこちら
https://www.dic-global.com/ja/event/susma/products_daitac_dsa_series.html

DIC岡さん

すごい! マジックみたい! これなら、解体がもっとラクに早くできますね。

渡辺さん

テレビなどの画面が、最近、薄いガラスでできていますよね。それを両面テープで留めている場合も、この新しい両面テープなら、ガラスを割ってしまうことなく、ラクに早く解体できるんです。これも世界の環境問題へのひとつの貢献。これからも、こうした地球や人の役に立つ製品を開発していきたいと考えています。

竹内さん

私は今、主に海外への販売を担当しています。DICの両面テープは、世界各国の、自動車、OA機器、家電、医療機器など幅広い分野で使われているので、世界中の多くの販売パートナーとチームを組んで、力を合わせて製品を届けていきます。でも、“はがれないのに、はがしやすい”が求められる場所は、もっとあちこちにあるはずだと考えているんです。

DIC岡さん

竹内さんや渡辺さんをはじめとするみなさんが、世界中に「しえち」ファミリーを届けていく。そしてそれらが少しずつでも、地球や人を救うことにつながる。ああ、今日も私、化学のチカラに感動してしまいました。これからも、みなさんの活躍、そして「しえち」ファミリーの活躍に期待しています。

渡辺さん

「#8800CH」は、私たち作り手も、使ってくださるユーザー企業のみなさんも、そして最後には解体業者の方々にまで、納得してもらえて喜んでもらえる製品。そんな製品に関わることのできる喜びを、今日、DIC岡さんにお話しできてよかったです。

竹内さん

私は、この製品を届けることで、世界中の多くのユーザーさんや販売パートナーさんと信頼関係で結ばれることに喜びを感じています。これから「#8800CH」をもっとDIC岡さんの身近なところにも届けられるようがんばっていきます。楽しみにしていてくださいね。

「#8800CH」で社会(世の中)をどう良くしていきたいですか。

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