BCM・危機管理

事業を取り巻くリスクの低減、発生防止に向けて

主な取り組みの目標と実績

DICグループの事業継続性の確保

2022年度 目標 事業継続計画(BCP)の定期更新、製品本部・事業所連携の強化
2022年度 実績
  • 2021年の、新たな新型感染症用BCP雛形策定に伴い、すべての製品本部の新型感染症用BCPを一新
  • 事業継続計画(BCP)の年次定期更新を実施
  • 本社対策本部、製品本部、工場が連携した本社対策本部演習を「工場での火災」という被害想定にて実施
  • 災害情報共有システム(DIC BCPortal)の発動基準、第一報ルールの見直し、宿直者マニュアル、事業所用訓練環境の整備を行い安定的なシステムの運用を図った
  • 多数の事業所においてもDIC BCPortalを利用した訓練を実施
評価 ★★★
2023年度 目標 事業継続計画(BCP)の定期更新、製品本部・事業所連携の強化
2022年度 目標 グローバル危機管理体制の整備強化
2022年度 実績
  • 海外出張者安全ハンドブック(日本からの出張者向け)の改訂・更新を実施
  • 地政学的リスク発生時の駐在員退避マニュアルの整備を実施
評価
2023年度 目標 グローバル危機管理 体制の整備強化
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [評価マークについて] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

BCM・危機管理の基本的な考え方

DIC グループでは、大規模地震・台風・水害等の自然災害、感染症によるパンデミック、工場における爆発・火災・漏えい等の事故等、事業継続に支障を来たすおそれのある、あらゆるリスクをBCMの想定対象としています。これらが発生する可能性、経営に与える影響度などから総合的に評価し、重要度の高いものからリスク対策に取り組んでいます。
また、本社対策本部・事業対策本部・現地対策本部の3つの対策本部構成による体制の整備や、リスク別の全社マニュアルの設定、主要製品のBCP(事業継続計画)策定など、BCM・危機管理対応策の策定や改善、情報の更新等にも、継続的に取り組んでいます。

BCPの推進体制

DICグループでは、重大災害等発生時の危機管理規則や個別のリスク別対策マニュアルを全社マニュアルとして整備した上で、製品本部ごとにBCPを策定しています。
また、大規模な自然災害に遭遇した場合でもメーカーの供給責任を果たすという観点を重視しながらBCPの策定に取り組んでいます。具体的な取り組みとして、社会的責任、顧客要請の2つの視点から重要性の高い製品を検討し、BCPに反映しています。
さらに、策定されたBCPの運用を想定した製品本部と生産工場によるBCP連携訓練を行い、マニュアルとしての有効性を確認するとともに、課題抽出を通じ、継続的な改善につなげています。

2022年度のBCM活動

2022年度も2021年に続いて新型コロナウイルスの感染拡大への対応が必要となり、状況の変化に応じた、有効な感染防止対策の実施に努めました。事故・災害に適切に対応するためには、BCMを理解し、策定したBCPを適切に運用することが必要です。それには教育・訓練が欠かせないことから、DICではグループ内のBCPの運用に関わる関係者への教育・啓発に注力しています。具体的には、例年、専門家の監修・指導による、経営層を対象とした本社対策本部メンバーへの演習・図上訓練や、製品本部と工場によるBCP連携訓練を実施しています。2022年度の演習では、従来の自然災害対応ではなく、工場敷地内での火災発生ケースを取り上げ、生産現場にも一部影響が出ているという被害想定のもと、本社対策本部・製品本部・工場間でのオンライン会議と災害等情報管理ポータルシステム「DIC BCPortal」の併用による報告や対応協議を行い、行政との連携や近隣対応課題に対応したBCP連携訓練を行いました。
また、前掲の災害等情報管理ポータルシステム「DIC BCPortal」については、2022年度は2021年の導入以来一年が経過する間に把握された様々な運営上の課題に取り組み、本システムの実効性の維持・向上を目指し、より安定した運用の整備を図りました。具体的には、システム発動基準や第一報ルールの見直しを行うとともに、宿直者マニュアルや事業所用の訓練環境の整備を行いました。さらに、その実効性を高めるために、事業所向け説明会を実施し、その理解と活用の促進を図りました。

BCPの形骸化防止と実効性の向上への取り組み

DICグループでは、BCPが形骸化しないように、BCPのひな型のブラッシュアップに取り組んでいます。2022年は2021年に引き続き、事業継続に関する国際規格「ISO22301」に基づく要求事項とのすり合わせを通じ、よりISOの規格に準拠した形式に近づける観点より、ボトルネックへの対応策検討に関するひな型の追加整備を行いました。
一方、各製品本部が定める個別のBCP計画内容が最新の状態であることを確認するため、毎年、役員をはじめとするメンバーによるBCP更新ヒアリングを開催し、BCPの形骸化を防止しています。2022年度のヒアリングにおいては、前掲の災害用BCPひな型改編に伴うボトルネックへの対応策と、新たにひな型を策定した新型感染症対応用BCPについてヒアリングを実施し、更新状況を確認しました。

緊急対応訓練の実施

DICグループでは、毎年、前出の本社対策本部訓練、従業員の安否確認通報訓練、事業所間の緊急無線通報訓練、事業所別の総合防災訓練などを実施し、いつ災害が発生しても被害を最小限にとどめ、速やかな復旧により事業を円滑に継続できる体制の整備と維持に努めています。当社では、前述の通り、DIC BCPortalの事業所用の訓練環境が整ったことに伴い、事業所が実施する防災訓練等での情報共有訓練にも大いに活用されています。

危機管理

海外安全対策の強化

グローバルな事業展開による海外出張機会は、コロナ以前の状況に回復しつつあります。海外では感染症だけでなく、テロ、暴動発生などのリスクも高まっていることから、従来より「海外出張者安全ハンドブック」を配布し、海外出張中の危機管理に対する意識向上に努めています。2022年度は感染症、テロ、デモ・暴動、自動車運転に関する部分を中心に当該ハンドブック内容の改訂を実施し、その活用を開始しました。また、地政学的なリスク発生に備え、駐在員退避マニュアルを整備しました。

大規模災害時における地域対応

日本は世界有数の地震大国であり、地震発生時の防災・減災への取り組みが社会の重要課題となっています。DIC本社ビルが立地する東京都中央区日本橋は、大型の商業施設やオフィスビルが密集するエリアのため、例年はディーアイシービル周辺の空地において、地域ぐるみで防災訓練を実施しています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大状況が著しい状況においては総合防災訓練に代えて、管轄する消防署が提供する災害時対応の知識習得型の啓発教育の実施により、知識や技能の維持に努めています。
最新の免震設計が施されたDIC本社ビルは、東京都中央区の帰宅困難者一時滞在施設に指定されており、大震災が発生した際には、地域と連携した帰宅困難者対応を行うべく、中央区帰宅困難者支援施設運営協議会会員として日頃より活動しています。災害発生時の混乱した中においても、避難情報等について、地域と相互に情報共有を行えるように実施される情報連携訓練にも参加しています。DICでは、今後も地域ぐるみの共助体制の強化に努め、災害に強い街づくりに貢献していきます。

新型感染症への備え

新型感染症対応用のBCPひな型については、未知の新規感染症への対応を可能なものとすることを目的に、2021年に新たなBCPひな型を策定したことに伴い、2022年は、各製品本部に当該ひな型を展開してその作成を推進し、全製品本部において作成が完了しました。また、2022年度の新型コロナウイルスの対応においては社員の感染予防対策として、本来はテレワークの対象ではない派遣社員を含めたテレワークと時差出勤の実施、本人や同居家族に体調不良者が発生した場合の自宅待機の徹底、会議やイベントの自粛等を2021年に引き続き実施しています。

COMMENT

災害・事故発生時指示のスムーズな社内情報共有・連絡体制の構築について

インフォコム株式会社 危機管理事業部 事業継続准主任管理士 早坂 由規起様

弊社は、危機管理対応において多くの企業様が抱える、事故・災害発生時の的確・迅速な被災状況の把握と共有という課題を解決するコミュニケーションツールとして、情報管理ポータルシステム「BCPortal」を企業や自治体に提供しています。DIC様では2020年にご契約後、システムのカスタマイズを経て、2021年より本稼働としてのサービスをご提供しています。
DIC様のシステム導入時には、各地に点在する生産拠点を念頭に、運用ルールも考慮したシステム構築を進められ、ホーム画面の調整や入力項目の順番にも気を配るなど、被災時の利用者目線に立ったカスタマイズは、実用性の高さも確保されています。さらに、BCPortalを取り入れた対策本部訓練では、経営層の皆様が積極的に参加し、本システム活用に取り組まれていたことや、事業所より訓練でのBCPortalの活用要望をいただいたりと、会社全体としての危機管理意識の高さが印象的でした。今後も本システムの活用拡大とともに、DIC様のさらなる危機管理レベルの向上にご期待いただきたいと思います。

インフォコム株式会社 危機管理事業部 事業継続准主任管理士 早坂 由規起様

真に機能する初動対応・事業継続対応体制の実現に向けて

株式会社レスキューナウ アドバイザー袴田一樹様

DIC様には、大地震を想定した初動対応・BCP訓練を中心に、2019年7月より支援をさせていただいております。DIC様の製品群には、社会に広く流通し無くてはならない存在と言えるものが数多くございます。大地震等の災害が発生した際であっても、DIC様が安定した供給を継続できるよう、災害対応体制をさらに強化していくことが重要だと感じております。
2019年は、四日市工場・堺工場・東京工場にて、製品本部・事業所間BCP連携訓練を実施いたしました。初動対応マニュアルの実効性の精査・改善点の整理を目的に、訓練参加者はリアリティを追求した想定被害を使用し、模擬を進めるとともに、工場と製品本部の情報共有および連携についてルールの確認・課題の抽出を実施しております。
本社対策本部訓練では、南海トラフ地震を想定し、工場と製品本部からの報告の流れを確認、要対応事項への指示等も演習に取り入れました。
これらの取り組みにより、DIC様の初動およびBCPに関連する情報が、より的確かつ速やかに経営陣に共有される体制が構築されます。今後ともDIC様のBCPへのさらなる取り組みにご期待いただきたいと思います。

株式会社レスキューナウ アドバイザー袴田一樹様

現実に役立つ実効性の高い「本物のBCP」を目指して

リーガル・リスクマネジメント研究機構 代表理事 森 健 様

DIC様には、BCPの浸透・ブラッシュアップのお手伝いを中心に、2016年10月よりサポートさせていただいております。DIC様のBCPやリスクマネジメントに関する取り組みの特徴は、他企業の一般的取り組みと異なり、「本質を追究」する点にあると日々感じています。2017年には国内全拠点において「BCP出前講座」を開催し、BCP浸透のために現地現物を見ながらBCPの基本を確認しつつ、各拠点の取り組み状況を拝見し、どのような点に課題があるかを明確にしました。さらに2018年は、拠点(特に工場)と製品本部の合同訓練を企画し、拠点と事業部門の連携体制をさらに強化すべく、BCPの取り組みを続けていく予定です。これらの取り組みは、「BCP(事業継続計画)」を形骸化させずに、実効性の高く、現実に役立つ「本物のBCP」を目指す取り組みとなっています。是非今後もDICのBCP・リスクマネジメントの取り組みにご期待いただきたいと思います。

リーガル・リスクマネジメント研究機構 代表理事 森 健 様

グローバルにサステナブルな海外安全対策を

リロ・パナソニックエクセルインターナショナル株式会社 参与 辻 廣道 様

グローバル化に突き進む企業社会において、リスクマネジメントは世界中のステークホルダーの期待に応える必須要件であります。弊社は、2016年度より海外安全対策、医療対策をご支援しておりますが、DIC様には精力的に「しくみづくり」にご尽力いただき、コーポレートガバナンスや安全配慮義務の要件を見据え、強固であらゆる課題にしっかり対応できる体系の構築にお取り組みいただきました。さらに、2018年度は各種のハンドブックを作成し、4ヶ所の事業場にて約760名のご参加を得て研修会を開催いたしました。
DIC様の活動の特徴は、このように「しくみづくり」にとどまらず、現場で危機管理意識を醸成する点に注力されていることにあり、この「しくみを活かす」活動が、サステナブルな海外安全対策に直結していると考えております。
2019年度は、「しくみの強化」に取り組むとともに、世界各地の現場のニーズに対応した「しくみの実践」を通じて、より一層グローバルな活動をご支援したく存じております。

リロ・パナソニックエクセルインターナショナル株式会社 参与 辻 廣道 様