バイオマスインキとは?特徴とメリット、ベジタブルインキとの違いを解説
バイオマス
近年、食品や日用品のパッケージには、環境負荷を抑えた素材への切り替えが強く求められるようになりました。フィルムや紙などの基材だけでなく、パッケージの表面に色や情報を印刷するインキについても、植物・動物由来の有機資源を活用した「バイオマスインキ」への注目が高まっています。
この記事では、バイオマスインキの特徴やカーボンニュートラルの仕組み、導入メリットのほか、混同されやすい「ベジタブルインキ」との違いについて解説します。
バイオマスインキとは有機資源を使用して製造した印刷インキのこと
バイオマスインキとは、動植物由来の再生可能な有機資源(バイオマス)を、インキの固形分原料の10%以上使用して製造した印刷インキのことです。一般社団法人日本有機資源協会(JORA)が認定する「バイオマスマーク」の認定基準として、10%以上含有しなければならないとされています。
バイオマスインキの仕組みとカーボンニュートラルの考え方
植物は成長する過程で、光合成によって大気中のCO2を吸収します。バイオマスインキは植物を原料とするため、燃焼・廃棄時に排出されるCO2は、もともと大気中にあったCO2に由来するとみなせます。つまり、植物原料が成長時に吸収したCO2量と、パッケージ廃棄(焼却)時に発生するCO2量が相殺されるため、大気中のCO2の総量は増えません。
この考え方を「カーボンニュートラル」と呼び、化石資源由来のインキと比較してCO2排出量の純増を抑えられるとされています。石油資源の使用量削減にもつながるため、持続可能な資源循環の観点からも評価されている取り組みです。
カーボンニュートラルについて詳しくは、こちらのページをご覧ください。
カーボンニュートラルとは?意味やパッケージへの取り入れ方を解説
バイオマスインキに使われる主な原料
バイオマスインキの原料には、大豆油・亜麻仁油・ヒマシ油などの植物油のほか、サトウキビやトウモロコシなどを原料とするバイオエタノール由来の樹脂が使われています。
DICでは、こうしたバイオマス原料を配合し、バイオマス認証を取得したインキ製品を幅広く展開しています。
バイオマスインキと、石油系インキ、ベジタブルインキの違い
バイオマスインキとベジタブルインキは、どちらも石油系インキに代わる「環境配慮型インキ」として認知されていますが、その定義や実務上の用途は大きく異なります。
石油系インキは主成分が化石資源(石油)であるため、廃棄・燃焼時に新しいCO2を排出してしまう課題があります。これに対しバイオマスインキとベジタブルインキは、どちらも成分の一部を植物などの再生可能な有機資源に置き換えることで石油消費を抑え、ライフサイクル全体でのCO2排出量を削減できる点が共通のメリットです。
また、バイオマスインキはJORAが認定する「バイオマスマーク」を自社商品のパッケージへ直接印刷できます。消費者に対して、サステナブルな商品であることを一目で伝えられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
それぞれの印刷特性や用途の違いは、以下の表のとおりです。
| 比較項目 | バイオマスインキ | ベジタブルインキ | 石油系インキ |
|---|---|---|---|
| 原料由来 | 動植物由来の有機資源(バイオマス)を固形分の10%以上使用 | 植物油、または植物油由来エステルを一定量以上使用 | 石油由来樹脂・溶剤を主原料とする |
| CO2削減効果 | カーボンニュートラルの考え方に基づきライフサイクル全体で削減に貢献 | 植物油使用により石油消費・VOC削減に寄与 | 化石資源を燃焼するため削減効果なし |
| 認証・マーク | バイオマスマーク(日本有機資源協会)、ISCC PLUS等の国際認証も取得可 | 植物油インキマーク(認証制度ではなく表示制度) | なし |
| 印刷適性 | 現在は従来インキとほぼ同等の色相・印刷適性を実現 | 主に紙用のオフセット印刷に最適化 | 発色・乾燥性・作業性が確立されており、印刷適性は高い |
| 環境対応 | 「バイオマスマーク」の商品パッケージ表示により、環境配慮への取り組みを分かりやすく示せる | 植物油使用として訴求可能 | 環境負荷低減の訴求は困難 |
バイオマスインキを導入する3つのメリット
バイオマスインキを導入すると、「環境」「ESGへの対応」「導入のしやすさ」の面でメリットがあります。それぞれについて解説します。
- メリット1:CO2排出量の抑制とカーボンニュートラルへの貢献
- メリット2:「バイオマスマーク」の表示による環境配慮の見える化
- メリット3:既存設備・工程を変えずに導入できる
メリット1:CO2排出量の抑制とカーボンニュートラルへの貢献
バイオマスインキを導入すると、CO2排出量の抑制とカーボンニュートラルへの貢献の面でメリットがあります。原料となる植物が吸収したCO2を起点とするカーボンニュートラルの考え方により、化石資源由来インキと比較してCO2排出量の純増を抑えられる点が特徴です。
化石資源由来のインキよりも、原料調達・燃焼廃棄段階でのCO2を削減できるとされており、サプライチェーン排出量のScope3(バリューチェーン全体の間接排出量)削減の取り組みとしても活用されています。
メリット2:「バイオマスマーク」の表示による環境配慮の見える化
バイオマスインキを採用すると、製品への「バイオマスマーク」の表示が可能になり、環境に配慮した製品であることを消費者や取引先に対して、環境配慮への取り組みを客観的に示すことができます。ESG評価機関・大手小売・食品メーカーからの調達要件として、環境対応インキの採用が求められるケースも増えており、「バイオマスマーク」の取得はサプライチェーン上での差別化要因にもなります。
メリット3:既存設備・工程を変えずに導入できる
既存設備・工程を変えずに導入できる点も、バイオマスインキ導入のメリットです。バイオマスインキは従来のインキとほぼ同等の印刷適性を実現しており、現行の印刷設備・工程を変更することなく切り替えられるケースが多くなっています。
かつてのバイオマスインキは発色・印刷適性に課題がありましたが、現在は従来インキとほぼ同等の色相・印刷適性を実現した製品が実用化されており、パッケージデザインを変えずに素材転換を進めやすくなっています。
バイオマスインキの採用を客観的に示す認証制度の活用
バイオマスインキの導入にあたり、環境配慮の取り組みを外部へアピールする際には、その内容を客観的に裏付ける認証制度やデータの活用が欠かせません。
例えば、JORA(一般社団法人日本有機資源協会)が認定する「バイオマスマーク」は、放射性炭素の測定によってバイオマス度の実測値を検証する仕組みを備えた代表的な認証制度の1つです。こうした客観的な裏付けを持つ制度を活用すれば、自社のコンプライアンスを担保し、ステークホルダーへの説明責任を果たしやすくなります。
なお、バイオマスマークに限らず、製品の特性や訴求内容に応じた適切な認証制度や客観的データを選択し、表示内容と実際の環境性能を一致させることが大切です。実態を伴わない環境アピールや根拠のない表現は「グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)」と受け取られ、景品表示法上の「優良誤認」や環境省の「環境表示ガイドライン」に抵触するリスクがあるため、十分な配慮と適切な表示が求められます。
バイオマスインキへの切り替えを検討している担当者は、DICにご相談ください
バイオマスインキは、動植物由来の再生可能な有機資源を、一定割合以上使用して製造した印刷インキです。バイオマスインキを採用するメリットとして、「環境」「ESGへの対応」「導入のしやすさ」の3点が挙げられます。
DICでは、バイオマス認証を取得したインキ製品を展開しており、環境配慮と従来同等の印刷適性を両立した製品を提供しています。また、コーティング剤・接着剤まで含めたトータルソリューションにより、パッケージ全体で一貫した環境対応を実現できます。環境対応をパッケージ全体で進めたいとお考えのご担当者さまは、ぜひDICにご相談ください。
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よくある質問
バイオマスインキとはどのようなインキですか?
バイオマスインキとは、植物や動物など生物由来の有機資源(バイオマス)を、インキの固形分原料の10%以上使用して製造した印刷インキです。原料植物が成長時に吸収したCO2と廃棄時の排出量が相殺されるカーボンニュートラルの考え方に基づき、化石資源由来のインキと比較してCO2排出量の純増を抑えられるとされています。
バイオマスインキとベジタブルインキの違いは何ですか?
バイオマスインキは動植物由来の有機資源を固形分の10%以上使用し、幅広い用途に対応できます。一方、ベジタブルインキは、植物油または植物油由来エステルを一定量以上使用したインキです。バイオマスインキとは認証制度や定義が異なるため、目的に応じて使い分けられています。
バイオマスインキを導入すると何が変わりますか?
バイオマスインキを導入すると、「バイオマスマーク」を商品パッケージへ表示できるようになり、消費者や取引先に対して、環境配慮への取り組みを客観的に示すことができます。バイオマスインキは、従来インキとほぼ同等の印刷適性を持つ製品が実用化されているため、多くの場合、現行の印刷設備や工程を変えずに導入できる点が特徴です。
