フレキソ印刷とは?仕組みやグラビア印刷との違い、メリットを解説
フィルム・軟包装
食品パッケージや飲料容器、段ボールなど、身の回りの包装に使われている印刷方式のひとつが「フレキソ印刷」です。環境への配慮と高い印刷品質の両立を実現できる手法として、欧米ではすでに主流となっており、日本国内でも環境規制対応を背景に採用が広がりつつあります。
この記事では、フレキソ印刷の仕組みや特徴のほか、グラビア印刷との違い、フレキソ印刷が注目されている理由などについて解説します。
フレキソ印刷とはゴム・樹脂製の柔軟な版にインキを付けて基材に転写する印刷方式のこと
フレキソ印刷とは、ゴムや合成樹脂で作られた柔軟な凸版にインキを付着させ、紙・フィルム・段ボールなどの基材に転写する印刷方式です。版の凸部分(画線部)にインキを乗せ、それを基材に押し当てて転写する凸版印刷で、凹部にインキを溜めて転写するグラビア印刷とは、版の構造そのものが根本的に異なります。
版の弾性の高さが最大の特徴で、表面に凹凸のある素材にも対応できます。硬い金属版では追従しにくい段ボールの波状構造や、布・不織布の織り目にも版がなじむため、平滑な基材を前提とするグラビア印刷にはない柔軟性を実現できる点が、フレキソ印刷ならではの強みです。
使用するインキも溶剤型・水性・UV/EBと幅広く選択でき、用途や環境要件に応じた使い分けが可能です。フレキソ印刷は、こうした版とインキの自由度の高さによって、多様な包装分野で採用されています。
フレキソ印刷の仕組み
フレキソ印刷の工程は、大きく3つに分けられます。インキがロールから版へ、版から基材へと段階的に転移していく流れを理解すると、フレキソ印刷ならではの品質管理のポイントも見えてきます。
インキの供給と計量
供給されたインキは、まず金属製のアニロックスロールの表面に付着します。アニロックスロールの表面には、レーザーで彫刻された微細な凹み(セル)が無数に刻まれており、ここにドクターブレードと呼ばれる金属製のヘラをロール表面に押し当てることで、セルの外側にある余分なインキを落とします。
この工程があることで、セルの中だけに均一な量のインキが残り、正確な計量ができるようになるのです。計量の精度が印刷全体の色再現性や濃度の安定性を大きく左右するため、フレキソ印刷における最初の重要な工程と位置づけられています。
版へのインキ転移
計量されたアニロックスロール上のインキは、版胴に取り付けられた樹脂凸版の凸部へ均一に転写されます。常に一定量のインキが版へ供給される仕組みのため、長尺(大量)の印刷であっても、印刷の最初から最後まで濃度ムラのない安定した品質を維持しやすいとされています。
版胴とアニロックスロールが接触しながら回転を続ける構造のため、印刷速度が上がっても供給されるインキ量が一定に保たれやすい点も、この工程の特徴です。
基材への転写
インキが付着した版の凸部は、インプレッションシリンダーとの間に挟まれた紙やフィルムなどの基材に軽く押し当てられ、インキが転写されます。
色の表現は、版の凸部の大きさや形状によって作られるドット(網点)の集合で行われます。インキの塗布量をこの網点の大小で緻密にコントロールすることで、美しいグラデーションや写真の再現が可能になるのです。
こうした網点によるインキ量のコントロールは、フレキソ印刷における意匠性・再現性を左右する重要な要素で、近年のHD(高精細)化技術の進歩によって、より微細な表現が可能になりつつあります。
フレキソ印刷の特徴
フレキソ印刷には、ほかの印刷方式にはない独自の強みが3つあります。それぞれについて解説します。
- 凹凸のある素材にも印刷できる
- 水性化で環境負荷を大幅低減できる
- 多品種・小ロットへの対応力がある
凹凸のある素材にも印刷できる
フレキソ印刷は、柔軟性のある版を使用するため、段ボール・厚紙・布・不織布・フィルムなど、多様な基材に対応できます。グラビア印刷が主に平滑なフィルムや紙への印刷に適しているのに対し、フレキソ印刷は、表面に凹凸のある基材にも版がなじみやすく、薄いフィルムや伸びやすい基材にも対応しやすいことが特長です。グラビア印刷が主に平滑なフィルムや紙向けであるのに対し、フレキソ印刷は対応できる範囲が格段に広いといえるでしょう。
実際に、表面に凹凸のある段ボールや、伸縮性のある布・不織布への印刷では、フレキソ印刷が選ばれることが多くなっています。
水性化で環境負荷を大幅低減できる
フレキソ印刷では、溶剤インキ・水性インキ・UVインキ(EB含む)の3種類が使用でき、インキ選択の自由度が高いことが特徴です。
中でも水性フレキソインキは固形分が高く、希釈溶剤が水主体のため、VOC(揮発性有機化合物)の排出量を抑えられます。あわせて、水性インキは臭気や引火性のリスクも抑えられるため、作業環境や物流面での安全性向上にもつながります。
多品種小ロットへの対応力がある
フレキソ印刷は、版交換にかかる時間が短く、小ロット対応にも対応しやすいのが特徴です。インキの塗布量が少なくランニングコストを抑えられるため、頻繁な版替えが発生する多品種生産に適しているといえるでしょう。
近年は消費者ニーズの多様化に伴い、季節限定商品や地域限定パッケージなど、小ロットかつ短サイクルでの生産が求められる場面も多く、フレキソ印刷が選ばれる機会も増えています。
フレキソ印刷が使われている包装ジャンル
フレキソ印刷は、主に次のような包装ジャンルで使われています。それぞれの包装ジャンルについて解説します。
食品包装(菓子袋、冷凍食品、詰め替えパウチなど)
食品パッケージは、安全性や環境配慮が厳しく求められる分野です。中でも冷凍食品の袋や日用品の詰め替えパウチといった軟包装フィルムでは、フレキソ印刷を選ぶ機会が増えています。
特に、消費期限の短い商品や日々の消費頻度が高い商品では、コストや生産スピードとのバランスも重視されるため、フレキソ印刷の生産性の高さが評価されやすい分野といえるでしょう。
ラベル・シール
シャンプーや化粧品のボトルに貼られる胴巻きラベルや、商品ロゴのシールなどにもフレキソ印刷が使われています。細かな文字の視認性を高められる点が評価されており、ラベルは商品の第一印象を左右する要素であるため、フレキソ印刷の高精細化が進むことで今後さらに採用が広がる可能性があります。
飲料用紙容器
牛乳パックやジュースなどの液体紙容器も、フレキソ印刷が活躍する分野です。大量の容器を高速かつ安定した色調で刷り上げられる点が強みといえます。
紙容器は流通量が多く、印刷スピードや色調の安定性が生産効率に直結するため、フレキソ印刷の特性が活かされやすい用途のひとつです。
段ボール・紙袋
段ボールや紙袋も、フレキソ印刷が得意とするジャンルのひとつです。クッション性のある柔らかい版が素材にやさしくフィットするため、傷つけることなくクリアに印刷できます。印刷コストや生産性の観点からも親和性が高い分野とされています。
フレキソ印刷とグラビア印刷の違い
日本では長くグラビア印刷が主流でしたが、環境規制対応を背景にフレキソ印刷への転換が加速しています。両者の違いは次のとおりです。
| 項目 | フレキソ印刷 | グラビア印刷 |
|---|---|---|
| 版の種類 | 樹脂凸版 | 銅版(凹版彫刻) |
| 版材コスト | 低め(版寿命短) | 高め(版寿命長) |
| インキ種類 | 水性・溶剤・UV(EB) | 溶剤・水性 |
| Wet塗布量 | 少ない | 多い |
| VOC排出量 | 水性化で極めて少なく、溶剤型でも比較的少ない | 溶剤型は多い |
| 印刷速度 | 〜600m/min(溶剤型) 〜300m/min(水性型) |
〜400m/min(溶剤型) |
| 対応基材 | フィルム・紙・厚紙・段ボール・布など(凹凸や薄い基材にも対応しやすい) | フィルム・紙(平滑素材向き) |
| 印刷品質 | 高精細化に進化 | 階調豊か・ベタ印刷も高品質(国内主流の理由) |
| 環境負荷 | 水性化で大幅低減 | 溶剤インキの排出が課題 |
| 主な用途 | 段ボール・紙包装・紙容器・ラベル・軟包装 | 軟包装・紙包装・紙容器・ラベル |
| 使い分けの例 | ・企業のSDGs目標、脱炭素、サプライチェーン全体でのVOC(有機溶剤)削減要件をクリアしなければならない商品 ・季節限定のフレーバー展開、頻繁なデザインリニューアル、地域限定商品など、小回りを利かせたいパッケージ ・フィルム袋だけでなく、表面に凹凸のある段ボール、紙袋、不織布、あるいはエコ素材など、多様な基材を横断してブランドのパッケージを展開したい場合 |
・シズル感のある写真、グラデーション、微細な色の濃淡(階調性)を表現したい高級路線のパッケージや定番食品などデザイン性を重視したい商品 ・10万メートルを超えるような、デザイン変更の予定がなく長期間にわたって大量に生産し続ける大ロット商品のパッケージ |
フレキソ印刷が注目されている理由
フレキソ印刷は近年パッケージ印刷において、注目される機会が増えてきています。ここでは、フレキソ印刷が注目されている理由について解説します。
- 水性インキがもたらす「脱VOC」
- 高精細化によるグラビア印刷からの移行ハードルの低下
水性インキがもたらす「脱VOC」
脱VOCはフレキソ印刷が注目される理由の1つといえます。水性フレキソインキは、VOCをほぼ排出しないため、グリーン調達要件を満たしやすい点が特徴です。
脱VOCに配慮してインキ選定すれば、今後のパッケージ設計における標準的なアプローチになっていくと考えられます。さらに、植物由来のバイオマスインキを組み合わせれば、自社商品のカーボンフットプリントの削減につながり、ESGに関する非財務情報をまとめたサステナビリティレポートにも活用しやすくなるでしょう。
高精細化によるグラビア印刷からの移行ハードルの低下
近年では、高精細化によるグラビア印刷からの移行ハードルも低下してきています。HDフレキソ印刷技術をはじめとするデジタル製版技術の進化により、従来のフレキソ印刷が苦手としていた微細な文字やフルカラーのシズル感が、グラビア印刷に劣らないレベルまで向上しています。
これにより、「ブランドの意匠性(売れるデザイン)」を維持したまま、環境対応へスムーズに移行できる環境が、日本国内でも整いつつあります。デザイン部門と生産部門が早い段階から高精細化を前提とした版設計を検討することで、環境対応とブランドイメージの両立をスムーズに進めやすくなるでしょう。
フレキソインキソリューションのことならDICへご相談ください
フレキソ印刷は、環境規制の強化や高精細化による品質向上を背景に、グラビア印刷からの切り替えを検討される機会が増えています。DICは、水性フレキソインキ・VOC低減インキ・バイオマスインキのラインナップをそろえており、高精細化に対応した高精細フレキソインキも提供しています。用途や基材、求める意匠性に応じて最適なインキを選定できる体制を整えている点が強みです。
グラビア印刷からの切り替えや、環境対応インキへの移行を検討しているご担当者さまは、ぜひDICにご相談ください。インキ・接着剤・コーティング剤の観点から、最適なソリューションをご提案します。
水性フレキソで環境にやさしい包材づくり マリーンフレックスシリーズ
フレキソインキ
よくある質問
フレキソ印刷とは何ですか?
フレキソ印刷とは、ゴムや樹脂で作られた柔軟な凸版にインキを付着させ、紙やフィルム、段ボールなどの基材に転写する印刷方式です。版に弾性があるため凹凸のある素材にも対応でき、水性インキを含む幅広いインキ種類が選べる点が特徴です。
フレキソ印刷とグラビア印刷の違いは何ですか?
フレキソ印刷は樹脂製の凸版、グラビア印刷は銅版の凹版彫刻を使う点が大きな違いです。フレキソ印刷は多様な基材に対応でき水性化でVOC排出量を抑えやすい一方、グラビア印刷は階調豊かな表現に優れ、大ロット生産に向いています。
フレキソ印刷を取り入れるメリットは何ですか?
フレキソ印刷を取り入れると、凹凸のある基材への対応や、水性化によるVOC排出量の低減、多品種小ロット生産への対応力向上といったメリットがあります。近年は高精細化により、印刷品質の面でもグラビア印刷との差が縮まりつつあります。
