ラミネート接着剤とは?種類や選び方、環境に対応する方法を解説
フィルム・軟包装
食品・日用品・化粧品のパッケージに使われる軟包装フィルムの多くは、単一のフィルムではなく、複数の素材を貼り合わせた「積層フィルム(ラミネートフィルム)」で成り立っています。その貼り合わせを担う材料が、ラミネート接着剤です。ラミネート接着剤は、パッケージ全体の重量においてフィルムに次ぐウエイトを占め、内容物の保存性やリサイクル適性に直接影響する重要な素材とされています。
この記事では、ラミネート接着剤の種類や用途別の選び方、環境に対応する方法などについて解説します。
ラミネート接着剤とは、性質の異なる複数のフィルムを貼り合わせるための接着剤のこと
ラミネート接着剤とは、プラスチックフィルム・紙・アルミ箔など、性質の異なる複数の素材を貼り合わせて積層構造をつくるための接着剤のことです。
例えば、OPP(延伸ポリプロピレン)は透明性や印刷適性に優れる一方でガスバリア性は高くなく、アルミ箔は高いバリア性を持つ反面それ単体では破れやすいというように、単一素材だけでは実現できない特性が数多く存在します。
バリア性・耐熱性・強度・意匠性といった機能を、複数素材の組み合わせによって実現する代表的な積層方法がラミネート方式で、ラミネート接着剤はその工程に必要な材料です。
包材用ラミネート接着剤の主流は「ウレタン硬化型(2液型)」であり、ポリオール(主剤)とポリイソシアネート(硬化剤)を一定の比率で混合し、化学反応によって硬化させるのが一般的です。塗工後は一定期間かけて反応を進行(エージング)させることで、必要な接着強度や耐久性が発現します。
硬化剤の種類や配合比、塗布量(接着剤層の厚み)を変えることで、用途ごとの要求性能(耐熱性・耐薬品性など)に対応できる点も、ウレタン硬化型が広く採用されている理由の1つです。
積層構成の一例として、PET(ポリエチレンテレフタレート、印刷層)、接着剤、NY(ナイロンフィルム、バリア層)、接着剤、CPP(無延伸ポリプロピレン、シーラント層)といった組み合わせが挙げられます。このように層ごとに役割が異なるからこそ、それらを確実に密着させる接着剤の性能がパッケージ全体の品質を左右するといえるでしょう。
接着剤の選定や塗工量が不適切だと、気泡やしわが入って外観不良となったり、保管中や流通時にラミネート強度が不足したりし、結果的に破袋や内容物の漏れにつながるおそれもあるため、素材の組み合わせやパッケージの内容物、用途などに応じた慎重な選定が求められます。
ラミネート接着剤の溶剤タイプと特徴
ラミネート接着剤は、塗工方式や環境性の違いによって大きく3つのタイプに分けられます。それぞれの特徴を比較しながら見ていきましょう。
| タイプ | 塗工方式 | 主な特徴・適用用途 | 環境性 |
|---|---|---|---|
| 有機溶剤型 | ダイレクトグラビア、フレキソコーター | 現在最も主流。溶剤は酢酸エチルが中心。一般包装からボイル・レトルト用途まで広く対応 | VOCあり |
| 水性型 | リバース/ダイレクトグラビア | 水性エマルジョン。接着物性(耐水性・耐熱性)・廃液処理に留意が必要 | 低VOC |
| 無溶剤型 | ロールコーター | 有効成分100%で溶剤を使用しない。生産スピードが速く、コスト競争力も高い | VOCなし |
有機溶剤型
有機溶剤型は、酢酸エチルなどの有機溶剤で希釈した接着剤をフィルムに塗工し、溶剤を蒸発させながら乾燥させる方式です。溶剤で粘度を調整できるため、比較的高分子量の接着剤であっても薄膜から厚膜まで幅広い塗工量に対応しやすく、レトルト・ボイル食品から一般包装まで幅広い用途に対応できる点が強みです。一方で、乾燥工程で発生する溶剤蒸気を回収・処理する設備が必要になったり、フィルムに残留する溶剤成分を管理する必要があったりする点は、考慮すべきポイントといえます。
水性型
水性型は、水を媒体とする水性エマルジョンを用いる方式です。VOCの排出を抑えられる一方、水は溶剤に比べて蒸発に時間がかかるため乾燥条件の管理が重要になります。また、基材(フィルム)への濡れ性を考慮すると実際にはアルコールなどの溶剤を一部併用するケースが多いため、有機溶剤型と同様に溶剤蒸気の回収・処理設備が必要となります。また耐水性や耐熱性といった接着物性を確保するための配合設計や、塗工後の廃液処理にも配慮が必要です。
無溶剤型
無溶剤型は、有効成分100%の接着剤を塗工する方式です。乾燥工程不要のため、生産スピードに優れ、溶剤の購入コストや乾燥炉の稼働エネルギーがかからないことからコスト競争力も高いとされています。溶剤を使用しないためVOCの排出もありません。
ただし、希釈による粘度調整がないために、比較的低分子量の接着剤設計が必要となり、塗工初期の接着力が発現するまでの時間管理や、塗工精度を保つための設備調整が求められる点は、他の2方式と異なる特徴といえます。
接着剤のグレードによる適した用途の違い
用途によって、適切な接着剤タイプは異なります。求められる性能を満たさない接着剤を選んでしまうと、製袋・充填・後加工時に不具合を生じたり、無事製袋できても、流通時や保存期間中の品質劣化や破袋などの不具合につながったりしかねません。ここでは、包装用途を3つのグレードに分けて、それぞれに求められる機能を解説します。
- ジェネラルグレード:菓子・スナック・乾物用途向け
- ミドルグレード:詰め替え・トイレタリー用途向け
- ハイグレード:ボイル・レトルト用途向け
ジェネラルグレード(菓子・スナック・乾物用途向け)
ジェネラルグレードは、菓子やスナック、乾物などの包装に用いられます。基本的に常温で保管され、内容物成分のパッケージへの移行による負荷が小さい用途です。
そのため、パッケージとして求められる性能は、加工後の外観と内容物を保持するためのラミネート強度と、シール強度が中心となります。内容物からの負荷が少ない分、後述するミドルグレードやハイグレードほどの耐薬品性・耐熱水性までは必要とされないため、過度に高いスペックを求めるよりも、ハンドリング性や加工速度といった生産性やコストバランスの取れた製品選定が現実的でしょう。
ミドルグレード(詰め替え・トイレタリー用途向け)
ミドルグレードは、シャンプーやリンス、液体洗剤、化粧品などの日用品や液状の食品といったパッケージへの移行による負荷が懸念される用途のパッケージに用いられます。
内容物には界面活性剤、香料、油分、アミノ酸、酸、アルコールなどパッケージ基材への負荷が懸念される成分が含まれているため、十分な耐内容物性(耐薬品性)、製袋、及び充填時の耐性、輸送・保管時の耐性が求められます。特に長期間の保管が想定される日用品用途ではより長期間品質が保持されることが求められます。詰め替えパウチでは開封・注ぎ口部分の加工時にフィルムが引き延ばされたり、繰り返し熱と力による負荷がかかったりするため、より慎重な接着剤選定が求められます。使用期間を通じて安定した強度を保てるかどうかが選定のポイントです。
ハイグレード(ボイル、レトルト向け)
ハイグレードは、カレーやパスタソース、スープなどのレトルト食品や、惣菜のボイル殺菌が必要なパッケージに用いられます。
ハイグレードでは、100℃前後の熱水処理(ボイル)や、120〜135℃の加圧加熱処理(レトルト)、内容物の油分や酸・塩分にも耐えられる高い耐久性が求められます。高温・高湿の環境下では接着剤層が水分を吸収して膨潤し、強度が低下しやすくなるため、卓越した耐熱・耐熱水性、優れた耐内容物成分性(耐酸・耐塩・耐油性)、レトルト処理後も強度を維持できるレトルト後強度(エージング耐性)などが選定のポイントになります。
これらの要求性能を満たさない接着剤を選ぶと、加熱殺菌の過程で層間剥離や内容物の漏れが発生するリスクが高まるため、ハイグレード用途では特に慎重な製品選定が求められます。
環境対応型ラミネート接着剤の動向
環境規制の強化とサステナビリティ要件の高まりを受け、ラミネート接着剤においても低VOC化・バイオマス化・無溶剤化の動きが加速しています。下記の動向について見ていきましょう。
- 無溶剤型(ソルベントフリー)の普及
- バイオマス対応品の広がり
- モノマテリアル設計への対応
無溶剤型(ソルベントフリー)の普及
無溶剤型(ソルベントフリー)は、有機溶剤を使用しないため、VOCの排出削減や残留溶剤管理など、工程上の管理項目軽減に大きく貢献するとされています。溶剤を蒸発させる乾燥炉が不要になるため、乾燥に要するエネルギーそのものが発生せず、製造工程における大幅な省エネルギーにつながる点が特徴です。
一方で、塗工直後は溶剤による希釈がない分、初期接着力が発現しにくいという特性があります。塗工後すぐにフィルムを巻き取ると、接着剤が硬化しきる前に応力がかかり、ラミネートのシワや外観不良につながるおそれもあります。そのため、優れた初期凝集力と迅速な硬化性を備えた製品を選ぶことや、巻き取り条件を適切に管理することが重要です。こうした技術的な対応が進んだことで、無溶剤型の適用範囲は一般包装からレトルト用途まで着実に広がりつつあります。
バイオマス対応品の広がり
バイオマス対応品は、化石資源への依存を減らし、CO2排出量の削減につなげるために、植物などの再生可能資源由来の原料を用いた接着剤です。パッケージ全体のバイオマス度を高めるためには、フィルムだけでなく、接着剤についてもバイオマス対応が重要になります。
ただし、単に植物由来原料に置き換えるだけでは不十分です。植物由来原料は品質のばらつきが生じやすい面があり、従来の石油由来品と同等の接着強度や耐熱性などの基本スペックを両立させるための配合設計が不可欠です。
なお、DICでは「ディックドライ®BMシリーズ」として、バイオマス原料を用いたラミネート接着剤を展開しています。溶剤型(LX-500-BM/KW-75、LX-500-BM/KR-90S、LX-500-BM/KO-55)と無溶剤型(2K-SF-220A/HA-233B-BM)をラインナップし、硬化剤の使い分けによってレトルト内外層や詰め替え用途など複数の用途に対応できるほか、一般社団法人日本有機資源協会によるバイオマスマーク認定も取得しています。
モノマテリアル設計への対応
リサイクルを容易にするため、パッケージ全体を単一の樹脂系統(PEやPPなど)に統一する「モノマテリアル」化が世界的に進んでいます。異なる樹脂を積層した従来のパッケージは、リサイクル時に素材ごとの分離が難しく、再生原料の品質低下を招きやすいことが課題とされてきました。
こうした設計に対応する接着剤には、同一のポリオレフィン樹脂同士を強固に密着させる高い親和性と接着力が求められます。従来のPET・NY・ALなど異種素材同士の密着を前提に設計されてきた接着剤とは異なる配合設計が必要になる点も、モノマテリアル対応品の開発における技術的なハードルのひとつです。
さらに、回収後の再生プロセスにおいて樹脂の熱分解を妨げたり、着色や異物の原因になったりしないリサイクル適合性も重要なポイントになります。インキ・接着剤の素材適合性を評価するガイドライン「RecyClass(リサイクラス)」への適合も、製品選定の判断材料として意識されるようになってきています。
ラミネート接着剤の選定はDICにご相談ください
ラミネート接着剤は、パッケージの保存性や強度だけでなく、リサイクル性や環境規制への対応にも深く関わる材料です。用途・規制要件・環境目標に応じた最適な選定が、パッケージ全体の品質と持続可能性を左右します。
DICは有機溶剤型・無溶剤型・バイオマス対応品まで幅広いラミネート接着剤ラインナップを持ち、用途や規制要件、環境目標に応じた製品のご提案が可能です。モノマテリアル設計や欧州「PPWR(欧州包装・包装廃棄物規則)」・「RecyClass」対応を含む易リサイクルパッケージへの切り替えを検討しているご担当者さまは、ぜひDICにご相談ください。
新発想の技術で生産効率向上を実現 DUALAM™
フードロス削減・リサイクル実現への貢献 PASLIM®・PASLIM®NS
よくある質問
ラミネート接着剤とは何ですか?
ラミネート接着剤とは、性質の異なる複数のフィルムや紙、アルミ箔などを貼り合わせて積層構造をつくるための接着剤です。単一素材では実現できないバリア性・耐熱性・強度を、複数素材の組み合わせによって付与するドライラミネート方式で必要な材料となっています。
ラミネート接着剤の主な種類を教えてください。
ラミネート接着剤は、主に有機溶剤型・水性型・無溶剤型の3種類に分けられます。有機溶剤型は現在主流となっている種類で、レトルトなど幅広い用途に対応しており、水性型と無溶剤型はVOC排出を抑えた環境対応型として採用が広がっています。
レトルト対応の接着剤はどれを選べばよいですか?
レトルト・ボイル対応には、100℃前後の熱水処理や120〜135℃の加圧加熱処理に耐える高い耐熱水性・耐内容物性を備えたハイグレード品が適しています。PET/NY/AL/CPPなどの積層構成に対応した製品から選ぶとよいでしょう。
