紙化とは?パッケージのメリットと課題、実現方法を解説
包装設計 資源循環・リサイクル
紙化とは、パッケージや容器に使用されているプラスチックの全部または一部を、紙を主体とする構成へ置き換え、プラスチック使用量の削減を図る取り組みです。近年、プラスチック使用量の削減や資源循環への関心が高まる中、再生可能な資源を原料とする紙を活用したパッケージが注目され、食品・日用品など幅広い分野で採用が広がっています。
この記事では、紙化が注目される背景やメリット、主な事例に加え、紙化を進めるうえでの課題と、その対応方法についてわかりやすく解説します。
紙化とはパッケージの一部または全部を紙に置き換える取り組み
紙化には、パッケージ全体を紙製にする方法だけでなく、プラスチックの一部を紙に置き換えて使用量を減らす方法もあります。用途や求められる機能に応じて、紙にコーティング剤などで必要な機能を付与したり、紙とプラスチックを組み合わせたりするなど、さまざまな設計が採用されています。
パッケージの紙化が注目される背景
パッケージの紙化が注目される背景には、プラスチック使用量削減や資源循環に向けた取り組みの広がり、企業や消費者の環境意識の高まり、紙の機能性を高める技術の進展などがあります。ここでは、それぞれの背景について解説します。
プラスチック使用量削減や資源循環に向けた取り組み
国内外では、プラスチック使用量の削減や資源循環に向けた取り組みが進められています。
日本では、レジ袋有料化やプラスチック資源循環促進法の施行などを通じて、プラスチックの使用量削減やリサイクル、再生可能資源の活用などが進められています。こうした動きを背景に、包装分野でも使用する素材や構成を見直す動きが広がっており、紙化もその選択肢の一つとして検討されています。
また、EUではPPWR(EU包装・包装廃棄物規則)が2025年2月に発効し、2026年8月12日から適用が開始されています。同規則では、包装のリサイクル可能性やプラスチック包装の再生材含有率、包装の最小化、一部の使い捨てプラスチック包装の制限などが定められています。
ただし、PPWRは一律に紙への置き換えを求めるものではありません。紙化に限らず、用途や求められる機能、回収・リサイクルの仕組みなどを踏まえて、包装全体を適切に設計することが重要です。
企業・消費者の環境意識の高まり
企業や消費者の環境意識の高まりも、パッケージの紙化が注目される背景の一つです。
企業では、サステナビリティに関する目標の達成に向けて、パッケージに使用する素材やプラスチック使用量を見直す取り組みが進められています。また、消費者との接点となるパッケージは、企業の環境配慮への取り組みを伝える役割も担っています。
そのため、プラスチック使用量を削減し、紙を主体とした構成へ変更する紙化は、パッケージにおける環境配慮の選択肢の一つとして検討されています。
紙素材・機能付与技術の進展
従来、紙はプラスチックに比べて包装用途で求められる機能に制約があり、用途によっては置き換えが難しい場合がありました。
近年では、製紙技術の進展により、強度や耐水性などを高めた紙素材の開発が進んでいます。さらに、コーティング剤などによって、用途に応じた機能を紙に付与する技術も進展しています。
こうした紙素材そのものの高機能化と、加工・材料技術の進展により、紙を主体としたパッケージを検討できる用途が広がっています。
紙化の事例
紙化の主な事例としては、下記のようなものがあります。
- 菓子・食品の軟包装における紙の使用比率向上
- プラスチックトレーから紙製容器・紙製トレーへの変更
- プラスチック製カップから紙製カップへの変更
- 透明窓を設けた窓貼り紙箱
- 紙製緩衝材への切り替え
なお、本体を紙製とし、内面にポリエチレンを熱ラミネートする容器のように紙とプラスチックを組み合わせながら、互いの弱点を補う設計も増えています。
紙化のメリット
パッケージの紙化には、さまざまな利点があります。ここでは、紙化のメリットについて解説します。
- プラスチック使用量の削減につながる
- 再生可能資源を活用できる
- 環境配慮の取り組みを伝えやすい
- 印刷や質感による意匠表現が可能
プラスチック使用量の削減につながる
パッケージの全部または一部を紙に置き換えることで、包装に使用するプラスチックの量を削減できます。紙化は、プラスチック資源循環促進法が示す「プラスチック以外の素材への代替」にも沿った取り組みのひとつであり、企業が掲げるプラスチック使用量削減目標を達成するための具体的な選択肢として位置づけられます。
紙化には、パッケージ全体を紙に置き換える方法や、複合フィルムの一部を紙に置き換える方法などがあります。内容物の保護に必要な機能や包装形態に応じて、紙への置き換え範囲を調整できる点もメリットです。ただし、紙化による環境負荷やリサイクル適性は、使用する材料、包装構成、製造・輸送工程、使用後の回収・処理方法などによって異なります。そのため、プラスチック使用量の削減だけでなく、包装に必要な機能やライフサイクル全体を踏まえて検討することが重要です。
再生可能資源を活用できる
再生可能資源を活用できるのも、紙化のメリットに挙げられます。
紙の主原料であるパルプは、適切に管理された森林から計画的に伐採・植林を行える、再生産が可能な資源です。石油という有限な資源に依存するプラスチックとは異なり、原料調達の面で再生可能資源を活用できる点は、紙化を検討するメリットのひとつです。
また、紙は古くから古紙回収・再生のルートが確立されている素材でもあり、使用後の回収・リサイクルのしやすさも特徴です。FSC認証など、適切に管理された森林由来の原料であることを示す認証制度を活用することで、持続可能な原料調達への取り組みを伝えやすくなります。
環境配慮の取り組みを伝えやすい
紙のパッケージは、プラスチックのパッケージでは伝わりにくい「素材そのものを変えた」という取り組みを、パッケージを通じて視覚的・触覚的にわかりやすく伝えられるメリットがあります。紙は消費者や取引先が手に取った際に、見た目や手触りから環境配慮の姿勢を直感的に感じ取りやすい素材だからです。
紙化は企業のブランディング施策としてだけでなく、統合報告書やサステナビリティレポートにおけるSDGs・ESG対応の具体的な取り組み事例としても紹介しやすく、社外への情報発信の材料として活用されるケースも増えています。
印刷や質感による意匠表現が可能
紙の素材感を活かしたマットな風合いや、紙の種類・表面加工を組み合わせたデザイン表現が可能なのもメリットです。紙基材の色や手触り、エンボス加工、箔押しなどを活用することで、高級感やナチュラルな印象を演出できます。
企業が持つブランドの世界観やコンセプトに合わせて素材の質感から作り込めることは、パッケージデザインの表現の幅を広げる要素といえます。このような素材の特質も、紙が選ばれる理由のひとつになっています。
紙化を実現するための主な課題と対応方法
紙はプラスチックと性質が異なるため、包装用途によっては耐水性・耐油性・ヒートシール性の確保が課題となります。ここでは、それぞれの課題と対応方法について解説します。
- 耐水性・耐油性をコーティングで補う
- ヒートシール性を機能性コーティング剤で付与する
耐水性・耐油性をコーティングで補う
紙のパッケージは、水分が染み込むと繊維の結合が緩み、強度が低下して破れやすくなる性質があります。また、プラスチックフィルムに比べて酸素や水蒸気を通しやすいため、そのままでは内容物の酸化や湿気による品質劣化を防ぎにくいのも難点です。加えて、揚げ物や惣菜など油分を含む食品を包装する場合には、油が紙に染み込んでシミや強度低下を引き起こす耐油性の課題も生じます。
従来は、紙をラミネート加工することで耐水性・耐油性を補ってきたものの、この方法では紙とフィルムが複合素材となり、分別が難しくなることでリサイクル性が損なわれてしまいます。
そこで、ラミネートフィルムに頼らず、紙の表面に耐水性・耐油性を付与するコーティング剤を均一に塗工する方法が、リサイクル性を維持しながら機能を確保する選択肢といえるでしょう。コーティング剤を均一に塗工することで、紙本来の風合いやリサイクル適性を大きく損なわず、必要な機能を後付けできます。
ヒートシール性を機能性コーティング剤で付与する
紙単体には熱で溶融する樹脂層がないため、ヒーターやシールバーで熱を加えても、袋状に密封するヒートシール加工ができません。そのため、内容物の密封性が求められる包装を紙化する場合は、紙にヒートシール性を付与することが必要になります。
この課題への対応方法の一つとして、紙の内面にヒートシール性を付与する機能性コーティング剤を塗工する方法があります。機能性コーティングは紙本来の質感やリサイクル性を大きく損なうことなく密封加工を実現します。
また、低温でシールできる機能性コーティング剤を使用することで、シール時に内容物へ加わる熱の影響を抑えることができます。そのため、チョコレートなど熱の影響を受けやすい内容物の紙包装を検討する際にも、選択肢の一つとなります。
紙化をご検討中ならDICへご相談ください
パッケージの紙化では、紙への置き換えだけでなく、内容物や用途に応じて必要な機能をどのように補うかが重要です。DICでは、紙包装の機能向上に対応する各種コーティング剤を展開し、材料面から紙化をサポートしています。
例えば、紙用外面コーティング剤「HYDBAR®」や耐水・耐油コーティング剤「HYDRECT®」のほか、紙にヒートシール性を付与する材料などを展開しています。紙の素材感を活かしながら包装に求められる機能を補うことで、用途に応じた紙化の実現を材料面から支援します。
プラスチックから紙への切り替えや、紙包装への機能付与をご検討の際は、ぜひDICにご相談ください。
パッケージの機能性向上 機能性コーティング剤・ヒートシール剤
コーティング剤 | DICグラフィックス株式会社
よくある質問
紙化とは何ですか?
紙化とは、これまでプラスチックが使われてきたパッケージ・容器を、紙またはプラスチックと紙を組み合わせた素材に置き換える取り組みのことです。脱プラスチックや環境配慮を背景に、幅広い業界で採用が進んでいます。
パッケージの紙化の課題は?
紙はプラスチックに比べて耐水性・耐油性が低く、パッケージとしては食品や液体の包装に使いにくいという課題があります。また、熱で溶融する樹脂層がないため、ヒートシール加工が難しい点も課題です。
紙に耐水性・耐油性やヒートシール性を付与するには?
紙に耐水性・耐油性やヒートシール性を付与するには、紙用コーティング剤を塗工する方法があります。これにより、紙本来の風合いを保ちながら耐水性・耐油性やヒートシール性を後から付与できます。
