GLOBAL 途上国と先進国、何ができるかを考える
創業当初より海外を志向したDICは、他の国内印刷インキメーカーに先駆けてアジアへ進出を果たしました。欧米を中心に全世界に活動拠点を拡大し、
世界有数のファインケミカルメーカーとなりました。
一方、これからも高い成長が見込まれるアジアにおいて主力事業を中心に強化・拡大策を積極的に展開すると
同時に、新興市場である東欧・南米・中東にも活躍のフィールドを広げ、さらなる発展を目指しています。
海外グループ会社数
（連結）
190社
連結売上高
1兆542億円
海外売上比率
約65%
グループ従業員数
22,843人
2022年9月末現在
国内グループ会社数
（連結）
30社
世界63の国と地域に190のグループ会社（国内30社、海外160社）を展開。世界有数のファインケミカルメーカーとして、確固たる地位を築いています。
DICグループでは海外におけるビジネスが近年もさらに伸長しており、2022年度はグループの連結売上高の約65%、営業利益の約48%を海外が占めています。
海外で活躍するDICの仲間も増え続け、2万人を超えるグローバル企業にまで成長しました。
世界で活躍するDICの製品
#印刷インキ
アジア・オセアニアを中心に広がる市場。
さまざまなパッケージを彩る素材を提供。
印刷インキ事業は創業時より続く、DICのコア事業です。世界トップシェアを誇り、常に市場をリードしています。出版用インキからパッケージ用インキ・接着剤まで幅広い製品を取り揃え、グローバルにお客様のニーズに応えています。一人当たりの豊かさが高まれば需要が伸びる特性のある素材で、昨今では、人口が増加する地域を中心に需要が伸びており、食品用パッケージやデジタル印刷など、多くの国と地域でDICの製品が利用されています。
#カラーフィルタ用有機顔料
世界の液晶ディスプレイを席巻する。
グローバルで拡大する市場で大活躍。
印刷インキで培ったベーステクノロジーを高機能顔料に展開・応用し、世界のデファクト・スタンダードになっているのが、液晶・有機ELディスプレイ向けカラーフィルタ用顔料（高機能顔料）。大型の液晶テレビは臨場感のある映像や忠実な色の再現力が求められ、スマートフォンなどの小さな画面には見やすくクリアな表示と、光量が少なくてもクリアに見える輝度の高さが求められます。DICの顔料は、利用される用途のそれぞれの細かいニーズを体現し、多くのディスプレイメーカーのカラーフィルタに採用されています。ディスプレイ市場は、新興国の経済成長による需要の増大とパネルの大型化による顔料使用量の増加で、2025年までは年率3.5％程度成長すると見込んでいます。その中で当社のブルー顔料は、Aシリーズを市場に投入以来、需要が急伸し、採用件数の増加が続いています。
#PPSコンパウンド
ハイブリッド車や電気自動車など、
世界的な成長市場をDICの技術が支える。
PPSコンパウンドは、高い耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などの優れた特性を有する樹脂材料。DICの製品は、金属の代替品として自動車関連材料、電気・電子部品、住設機器などに使われている。近年は特に自動車関連材料のシェアが伸びており、背景にあるのがエコカーと言われるハイブリッド車や電気自動車の普及。エコカーは、金属部品をPPSに置き換えて車体の軽量化と燃費向上を図っているため、ガソリン車に比べてPPSの使用量が2～3倍と言われている。 このような旺盛な需要拡大を背景に、PPSコンパウンドの世界市場はさらに拡大していくと見込まれています。
DICの海外での具体的な業務について
PROFILE
S.K 工業化学科卒
DIC SOUTH ASIA PVT LTD
MY WORK
- インドに新工場を建設し、現地とDICの技術を結びつける。
- DICパフォーマンスマテリアル製品本部では、インダストリアルポリマーを成長領域とし、2019年4月にインドIdeal社（合成樹脂）の買収を完了しました。買収以降、好調な需要を背景にフルキャパシティでの生産を継続しており、早期生産設備の拡充が必要と判断し、新工場建設に向けて土地を購入、2022年4月から新工場建設に着手しました。
私はそこで大きく2つのミッションに臨んでいます。一つ目はインドIdeal社の生産方法の理解と可視化及びDICとのノウハウ共有。（環境・品質・安全のレベル向上、インドIdeal社へThe DIC Wayの活動を理解してもらうこと）
二つ目は新工場建設のプロジェクトメンバーとして法的要求事項、建設に係わる見積もり取得と価格交渉など。また、工場稼働に必要な書類（組織、インフラ、SOPなど）の作成と、安全に生産できる体制づくりをサポートすることです。
南アジア地域、インドでコーティング樹脂のシェア拡大を目指すことはもちろんのこと、今後はさらに西アジア地域への販売網拡大も視野に入れていく。そのための生産拠点を創り上げる仕事です。
LIFE WORK
- 国際的な壁も現地でのコミュニケーションで乗り越える。
- このプロジェクトではエンジ会社や設備の発注等は日系企業を使わず、全てローカル企業と交渉し新工場完成に向けてチャレンジしています。その中で、インドの法律に則り進めていますが、日本の化学工場の各種法律とは異なる壁が存在しています。日々、ローカルスタッフとコミュニケーションをとりながら政府認証機関のコンサルタントと許認可取得に努めています。
インドに駐在して気づいたのですが、インド人はマイペースでコミュニケーションを積極的にとる人が多いです。いつも気軽に声をかけてくれ笑顔で会話ができるインド人の人柄が気に入っています。
インドの気候は熱帯であり一年中暑いですが、スイカやマンゴーなど熱帯地域の果物が豊富で、しかも安く食べられることは魅力の一つです。さらに、お酒好きな私にとってインド産のビールやラム酒、ワインといった美味しいお酒を飲めるのが嬉しい限りです。
2022年4月には新工場の地鎮祭を執り行い、インドの代表的な民族衣装「クルタ」を着用して参列出来たことは良い思い出となりました。
PROFILE
M.E 数理物質科学研究科 化学専攻
新事業統括本部ヘルスケアビジネスユニット
H-1プロジェクト
MY WORK
- 世界中のウェルビーイングを高める化粧品素材を開発する。
- DICは2022年4月より、米国Checkerspot社とスキンケア材料に関する共同開発を開始しました。Checkerspot社は微細藻類の研究を先導するスタートアップで、地球環境に配慮した高機能材料を開発・製造・販売しています。私はこの共同開発の中で、双方が保有する自然由来のスキンケア素材を元に、パーソナルケアブランドに対して化粧品製剤の提供を目指しています。具体的には、化粧品製剤の配合処方の企画、安全性および機能の評価案策定、および化粧品製剤のマーケティングを担当しています。
元来DICが開発する自然由来化粧品素材は、地球環境に配慮するだけでなく、人間の健康に寄与するものとして期待されています。この日本発の素材がCheckerspot社との共同開発を通じてアメリカ市場で認知されれば、日米を越えて、世界中の方々のウェルビーイングを高めることができると考えています。
DIC社員がスタートアップに駐在する事例もこれまでになく、より強固な関係性の形成に繋がっていると実感しています。さらに、該社を介してパーソナルケア分野の優秀なコンサルタントや製造・評価受託機関と一緒に仕事をすることで、他のプロジェクトへの波及効果も生まれています。
LIFE WORK
- 現地の人々と、自然と食を堪能する。
- 赴任当初は、業務上の会話は何とか通じても雑談にはついていけない、ファストフード店で注文とは違う料理が出てきた、など、日常生活を送るのも精一杯でした。
そんな折、駐在先の若手社員とロサンゼルス出張に赴いた際、ドライブや食事で時間を共有して現地に溶け込んだ感覚を得られたことが嬉しかったです。
また、私が住んでいるサンフランシスコベイエリアは年間を通して温暖で過ごしやすく、その気候を活かした美味しいワインが魅力的です。料理も国際色豊かで、アメリカらしい豪快な肉料理だけでなく、色とりどりの野菜を活かした地中海料理、香辛料の効いたベトナム料理など、身体に優しいレストランも多いです。
また、駐在先の社員は休日に登山やキャンプ、スキーを嗜む方ばかりで、自然を愛し人生を楽しむ姿勢は素敵だなと感じています。
PROFILE
R.H 文学部人文学科専攻
Sun Chemical Colors & Effects GmbH
Strategy, Market Intelligence & Digitalization,
Color Materials
MY WORK
- さまざまな立場で買収のシナジー効果を具現化する。
- 私は、DICが2021年に買収を完了した旧BASF Colors and Effects（C&E）の事業所にて、マーケットインテリジェンス部門とストラテジー部門に所属し、買収のシナジー効果を早期に具現化するための様々な活動に取り組んでいます。
具体的には、マーケットインテリジェンス部門では、社内外の様々な情報ソースから収集した情報を分析して経営陣や社内ビジネスリーダーに共有・提言し、戦略立案に貢献することを目指します。またストラテジー部門では、戦略立案のサポートとそれを実行・実現するための運用面の枠組みや体制づくりにも携わります。
DICとC＆Eそれぞれが持つ、製品・技術・ノウハウをうまく融合させながら新たな枠組みを作っていくという部分で、ファシリテーターとしての価値を提供できているのではないかと思っています。私は入社後に日本・米国・ベルギー・ドイツの異なる法人の中で組織横断的な業務に取り組む機会に恵まれたため、その経験を活かしてさらなるグローバル一体経営の推進に貢献していきたいと考えています。
LIFE WORK
- 共に仕事をこなした大切な仲間との絆。
- 欧州に赴任して以降、コロナ禍やウクライナ情勢の変動などグローバルの事業環境に影響を及ぼす出来事が多くあり、その都度適切な対応を取る必要に迫られました。営業・マーケティング・製品戦略・サプライチェーン・製造・レギュラトリーなど各部門と連携することにより、事業が円滑に回るよう日々コミュニケーションを意識しています。
私生活については、特にコロナ禍のロックダウン期間中は同僚にも会えず、帰国もなかなかできず大変な時間を過ごしました。一方で、過去に一緒に仕事をした世界中の同僚がさまざまな場面で助けてくれ、心強く感じたことを覚えています。最近は少しずつ対面で会える機会も増えているので、嬉しく思っています。
ベルギーではブリュッセル、ドイツではフランクフルトに住んでいますが、どちらも国際都市で多様性を受け入れる都会的な雰囲気があり、その一方で都心近くに歴史的な街並みがあり、自然も豊かな点が気に入っています。周辺への移動や旅行にも便利です。
PROFILE
Y.M 理学部化学科専攻
Composite Material Products Division
MY WORK
- DICの強みと技術をグローバルで最適化する。
- DICが世界トップシェアを誇るPPSコンパウンド製品の中国エリアにおける技術サービスに従事しています。特に電気自動車用部品への採用に注力しており、例えば、電気自動車の最重要基幹部品である車載用リチウムイオン電池について、部品用材料として最適な材料を新たに開発し、中国の世界トップシェアメーカーを含む複数社の電池部品に採用されました。
DICのPPSは、他社のPPSと比べて、成形加工性に優れている（成形加工時の不良が起きにくい。加工時の挙動が安定している）、絶縁性能のバラつきが小さい、高温と低温の繰り返し温度変化による不具合が起きにくいと顧客より評価されています。
また、安価な中国ローカルメーカーに対して、コスト面で大差がつきにくいように、原材料やサンプルの試作ラインを従来のものに囚われず中国国内で最適化しています。価格面だけでなく状況により都度変化する顧客からの要求特性や、非常に短いサンプル納期にもスピーディーに対応できるようになりました。
これにより、品質の高いDICのPPSコンパウンド製品で中国から世界の電気自動車の発展と普及に貢献しています。
LIFE WORK
- 柔軟性を持った、非常に便利なデジタル大国。
- 中国はデジタル大国であり、ECサイトなどITを活用した便利なサービスがとても魅力的です。
街に出てもほぼ完全なキャッシュレス社会のため、現金を持ち歩く必要がありません。デジタル技術はコロナ禍でも有効活用されました。上海ロックダウンでは2カ月間部屋から出ることが禁止され、食料調達に非常に苦労しました。しかし、近隣住民とSNSを通じて物々交換をしたり、スマートフォンのAPPを利用して団体購入をすることで乗り切ることができました。
もう一つの中国の魅力は、政府から民間企業、個人にいたるまで、まずやってみて問題があれば都度修正していくという柔軟性だと感じています。この柔軟性とスピード感についていくことを常に意識しながら業務に取り組んでいます。その甲斐もあり、赴任後３年目で中国エリアのPPSコンパウンド製品として過去最高益をあげることができ、現地スタッフが喜ぶ姿が見れたことは嬉しかったですね。
