WORK03

液晶ディスプレイ用グリーン顔料。その世界No.1の座を死守せよ。

製品開発のテーマは、省電力と高輝度化。

DICは、有機顔料の世界トップシェアを誇っている。中でも液晶ディスプレイに使われるグリーン顔料は、実に世界シェアの85%を占める。競争の熾烈なグローバル市場で、首位を維持できる理由は何か。そして、その裏にどのような挑戦があるのか。ディスプレイ用の有機顔料を手掛けてきた開発担当K・Oはこう語る。「現在の主力のグリーン顔料、『G58』と『G59』が登場するまでは、銅化合物を用いた『G36』がスタンダードでした。このG36は当時、業界標準の製品でしたが、2つの課題がありました。それが、消費電力と輝度です」。

業界の常識を打ち破った亜鉛の採用。

『輝度』は、ディスプレイの明るさを示す数値。高ければ高いほど画面は明るく、見やすくなる。しかし明るさを上げるということは、消費電力も上がるということ。ノートパソコンやスマートフォンなど、バッテリーで動く製品にとって、消費電力の大きさは使い勝手を大きく左右する。またテレビなどコンセントにつなぐ製品においても、エコロジー的な観点から省電力化のニーズは年々高まっていた。少ない電力で、高い輝度を。DICはそんなテーマのもと研究を重ねていく。そして誕生したのが、グリーン顔料『G58』だ。「最大のブレイクスルーは、亜鉛の採用です。さまざまなカラーフィルタに適した金属をスクリーニングした結果、化学構造の中心となる金属を銅から亜鉛に変えました。当時、亜鉛の採用は業界常識を打ち破るものでした」とK・Oは振り返る。

世界シェアNo.1を、手放しで喜べない理由。

G58は省電力・高輝度に加え、独自の微細化技術により粒子径50nm以下の製造法を確立し、業界トップレベルのコントラストも達成。2007年の上市からわずか4〜5年で、世界トップシェア商品に躍り出る。こうして成功を収めたグリーン顔料だが、それはゴールではなかった。K・Oは苦笑いしながら語る。「ディスプレイ顔料は利益率が高いため、競合他社も必死で企業努力を続けています。さらにテレビやスマートフォンは毎年モデルチェンジがあり、その度に、採用される顔料もコンペで決まる。油断すれば、あっという間にシェアを逆転される可能性が高いんです。だからこそ、他社の追随を許さない圧倒的な技術を追求し続けなくてはなりません」。

人間の目に近い色環境の再現を目指して。

どうすれば、競合他社に勝ち続けられるか。辿り着いた1つの答えが、『色の再現性』だった。「4Kや8Kに代表される次世代高画質ディスプレイ規格の登場により、『従来の色再現よりも広い色域を表現したい』というニーズが出てきたんです」。K・Oたちはその声に応えるべく、さらなる研究を重ねる。そして誕生したのが『G59』という新しいグリーン顔料だ。「先行製品であるG58は亜鉛フタロシアニンに多くの置換基が加わった構造ですが、この置換基を調整することでG59は誕生しました。一番難しかったのは置換基の配合具合と再現性の確立です。シーソーゲームのように置換基配分の絶妙なバランスを見極め、従来表示できなかった色域の色彩を再現できるようになりました」。

次々と現れる壁を、乗り越え続けろ。

こうして生まれたG59だが、上市までにはさらにもう1つ壁があった。いざ量産段階に入ったものの、出来上がった製品を精密な計測機で調べた結果、人間の目では判別できない程の微妙な色差があることがわかったのだ。「品質を安定させるため、製造現場でスタッフと膝を突き合わせて微調整を重ねました」。苦労を重ね、G59は2014年にリリース。G58との両輪で、DICはグリーン顔料の世界シェア85%という圧倒的な数値を叩き出している。だがK・Oはこう言って気を引き締める。「G59はG58に比べ色再現性でアドバンテージがあるものの、輝度の高さでは劣ります。2つの特長を両立させるのは難しく、多くの課題が残されています。それをクリアするべく、引き続き研究を続けていきます」。そう語るK・Oの目は、真っ直ぐ未来を見つめていた。

K・O

2012年入社

精密合成技術5グループ所属

仕事について

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