生産統括本部長メッセージ

DIC Vision 2030を
「モノづくり」から支える
常務執行役員
生産統括本部長
古田 尚義
すべての基本は、安全操業と品質保証
DICグループは世界63の国と地域で幅広く化学製品を製造し、グローバルなネットワークを通じてこれらの製品を皆様に提供しています。その中でも私が担当する生産統括本部はモノづくりを行う、いわばDICグループの根幹を担う部門です。レスポンシブルケア活動を通じた「安全・環境・健康の確保」とコンプライアンス遵守を最優先として安心・安全な生産拠点の運営を支え、地球と社会のサステナビリティ貢献を心がけています。
また生産統括本部では品質管理と品質保証の観点からもモノづくりを支える機能を担っており、顧客や市場からの要請に合致した品質を確保し提供することを使命としています。こうした中で2021年は、泡消火薬剤の型式認証失効、液晶ポリマ(LCP)のUL認証取り消しなど品質に関する重大事案が発生し、これらを公表いたしました。本件に関して皆様に深くお詫び申し上げるとともに、原因究明と再発防止策の実施にとどまらず、さらなる意識の変革と品質の向上などに現在も継続的に取り組んでいることを報告いたします。
DIC Vision 2030 のスタートにあたって
DIC Vision 2030実現の基本は、生産活動に携わるすべての人がその内容と方向性を理解し、一人ひとりが日々コツコツと創意工夫をすることだと思います。そのためには、重要な方針や計画のポイントを分かりやすく具体的に示し、実現することが重要です。例えばDICVision 2030が目指す5つの重点領域から生み出される新たな製品に対して「モノづくり・量産化」をどうやって実行するか、年々高度化する品質要求にいかに応えていくか、また技術伝承やデジタル化対応他を含めた人的資本強化策のあり方など、既に大胆な投資を含め多くの施策に着手しています。一人ひとりが働き甲斐を実感できる職場の構築に向け、「ほうれんそうのおひたし(お=怒らない、ひ=否定しない、た=助ける、し=指示する)」運動や「1on1ミーティング」も展開中です。「チャレンジを応援する生産部門、生産部門で働いて良かった」をDIC Vision 2030の取り組みと併せ、実現してまいります。

鹿島工場を訪問打ち合わせ(2022年)
気候変動対応はまったなし - カーボンネットゼロに向けて
DICグループが2021年に発表した、「2050年カーボンネットゼロ」、そして中間地点としての「2030年度CO₂排出量50%削減」(Scope1, 2, 2013年度対比)について、生産統括はその実行に当たり大きな責任を担っています。これまでも省エネ・環境投資などに注力した生産活動を進め、2013年から2021年までの間に、既に24.4%の排出量(723kt-CO₂→546kt-CO₂)を削減しました。今後、生産量拡大を含めDIC グループの成長を図り、それと同時にCO₂排出量削減を確実に実行していくためには、より野心的な施策を実行していく必要があります。そのためには自前の環境投資だけでなく、例えば日本国内ではグリーン電力をさらに拡大し、グローバルではクリーンエネルギーを積極的に導入します。生産プロセスの見直しなどもCO₂排出量削減の重要な施策です。社内カーボンプライシング制度の展開と合わせて、地域ごとに具体的なアクションプランの策定と実行を進めます。またこれらの実現に向け基盤投資700億円を有効活用してまいります。
スマートな工場への取り組み - 先端技術の実用化
2021年12月にプレスリリースしたとおり、現在株式会社日立製作所との協創で、樹脂製造におけるバッチプロセスを自動化するデジタルツイン技術の実用化に取り組んでいます。これはサイバー空間でAIなどを用いた高精度な反応予測モデルにより運転状況をデジタル化するとともに、Process Informatics※により最適な運転条件を導きだし、それらをフィジカル空間(現場)にフィードバックするものです。これらの結果、製造時間の短縮、品質の安定、オペレーターの作業効率向上、新製品導入時の早期立ち上げなどが可能になり、生産性向上によりCO₂排出量削減にも寄与します。2022年は反応予測モデルに基づく最適運転条件の探索をプロトタイプで検証します。最終的にはプロセス全体を自動化するデジタル技術の実用化を目指します。今後先端技術をさらに積極的に取り入れ、よりスマートな工場構築に取り組んでまいります。
※ Process Informatics:統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により製造条件などを最適化する取り組み
