特集中空糸膜 脱気・給気モジュール「SEPAREL®

液体中の脱気・給気をコントロールする中空糸膜

液体中の気体が様々なトラブルの要因に

酸素によるサビが配管を劣化
酸素によるサビが配管を劣化

半導体集積回路の形成工程で気泡は大敵
半導体集積回路の形成工程で気泡は大敵

気泡がインキの吐出を阻害
気泡がインキの吐出を阻害

液体に溶けた気体によるトラブルの一例
液体に溶けた気体によるトラブルの一例

生活や産業の至るところで給水用の配管が使われていますが、水に溶けた気体(酸素・窒素・二酸化炭素など)は、様々なトラブルを引き起こします。代表的な例がサビです。酸素が鉄と反応してサビとなり、配管の寿命を縮めます。薬剤を使って酸素除去する方法もありますが、人体に影響を与える物質を含んでいる場合もあり、取扱者にはリスクが伴います。

また、液体中の気体は圧力変動により気泡となって、精密機器に悪影響を及ぼす場合があります。例えば、インクジェットプリンターのインキ中に気泡が発生すると、正確な吐出が阻害され、印刷不良の原因となります。半導体集積回路の形成工程では、フォトレジストや現像液に気泡が発生すると回路パターンが形成できず不良品になってしまいます。

これらの問題による資源やエネルギーの損失、品質不良による廃棄物の発生を低減させるため、効率的で環境負荷の少ない気体除去方法が必要とされています。

気体だけを除去、または供給できる「中空糸膜」で課題を解決

DICの取り組み

3R

品質向上

画期的な分離機能を備えた中空糸膜を約30年前に開発

1980年代後半、DICはポリオレフィン樹脂を素材に独自の中空糸を開発しました。

DIC 独自の中空糸膜は気体だけを分離・除去( 脱気)
DIC独自の中空糸膜は気体だけを分離・除去( 脱気)

1. 浸透性の高い液体にも対応

この中空糸膜は、内側の多孔質膜が支持層となり、その外側表面にスキン層と呼ばれる細孔(ごく小さい穴)のない緻密な膜を有しています。そのため、浸透性の高い液体にも対応しています。

2. 高い気体透過性

中空糸素材のPMP(ポリ-4-メチルペンテン-1)は分子構造上、非常に気体を通しやすい特性を持ちます。さらに、スキン層の厚みは約1μmと非常に薄いことから優れた脱気性能を実現しています。

3. 中空糸の極細化

DICの中空糸膜は最小径タイプで外径180μm 程度となり、脱気膜の中でも最も細い中空糸です。このような細い中空糸を用いることで、省スペースに膨大な膜面積を確保しています。

医療・生活・産業からインフラまで幅広い分野で貢献

DICの中空糸膜は、当初、手術中に血液に酸素を供給するとともに二酸化炭素を除去するための人工肺に採用されました。

その後、DICの中空糸膜は、脱気・給気モジュール“SEPAREL®”として製品化され、脱気用途ではサビ防止を目的に発電所・工場・ビル・マンションなどで用いられる配管の長寿命化に貢献しています。また、インクジェットプリンターでは、インク中の気泡除去により、印刷品質の向上に貢献しています。

一方でSEPAREL® は、液体中に気体を加える「給気」機能にも優れています。例えば半導体用途では、超純水に炭酸ガスを給気することで比抵抗値を制御し、静電気による「ゴミ再付着」防止や基板パターンの「静電気破壊」防止といった用途で使われています。

KEY PERSON of DIC

アプリケーションマテリアルズ製品本部 メンブレン営業部 主任 玉置 謙

お客様にとって『なくては困る』存在に

「SEPAREL®」は軽量・コンパクトで並べれば簡単に増設でき、工場やプラントに設置されている脱気塔に比べて柔軟な設計変更が可能です。また薬剤を用いる脱気方法と比べても、人体・環境への負荷がかかりません。中空糸膜の素材が樹脂であるため、耐熱や耐圧、耐溶剤性などの制約はありますが、その対応力を高めることで用途は無限に広がります。残念ながら、まだ「SEPAREL®」の認知度は高いとは言えず、溶存気体や気泡でお困りのお客様が世界中にいらっしゃると思います。そうしたお客様のために、海外のDICグループ会社と連携し、認知度の向上に努めています。そして、「SEPAREL®」を一度お使いいただけば、間違いなく『なくては困る存在』となることを確信しています。

アプリケーションマテリアルズ製品本部 メンブレン営業部 主任 玉置 謙

成形加工技術本部 成形加工技術5グループ 主任研究員 藤枝 重昭

他では真似のできないスキン層を備えたニ重構造

「SEPAREL®」は、中空糸の生産を中心に、モジュールの開発、製品化、生産まですべてを千葉工場で行っており、DICの総合力の一つだと思っています。使用分野はインク、水処理、医療、半導体分野へと広範囲にわたり、現在も様々な分野から使用に関するお問い合わせがあります。これほど画期的な中空糸を30年も前に確立した先輩や技術力を誇りに感じながら、日々さらなる改良に注力しています。近年、半導体やプリンターの高速・高精度化、脱気レベルの向上に伴う要求品質には厳しいものがあります。しかし脱気・給気に関する要求レベルが高くなるほど「SEPAREL®」の商品価値が高まると実感しています。

成形加工技術本部 成形加工技術5グループ 主任研究員 藤枝 重昭

TOPICS 「スーパーカミオカンデ」の超純水脱気装置として活躍

写真提供 東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設
写真提供 東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設
参考:スーパーカミオカンデ公式ウェブサイト
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/sk/neutrino.html

2002年に小柴昌俊東京大学名誉教授は、超新星爆発から飛来した素粒子ニュートリノを世界で初めて観測した功績によりノーベル物理学賞を受賞しました。その原動力となったのが東京大学宇宙線研究所の観測装置「カミオカンデ」(岐阜県)です。これと同じ原理で、さらに高性能化した「スーパーカミオカンデ」は、5万tの超純水を蓄えたタンクと内部に設置した約1万1,200 本の光電子増倍管(高感度検出器)などで構成されています。

中空糸膜モジュール「SEPAREL®」は、この「スーパーカミオカンデ」の超純水の脱気装置に採用され、最先端の研究に貢献。そして、梶田隆章教授(同研究所長)は、この観測装置によってニュートリノに重さがあることを世界で初めて実証し、その功績により2015年にノーベル物理学賞を受賞しています。

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