特 集 土木工事用 FRP 矢板

生活環境を支える下水道工事をより早く安全に

社会の課題 都市トンネルの工期短縮と安全性の向上

下水道は快適な生活環境を支える重要なインフラですが、建物が密集し交通量も多い都市部では、道路を開削してトンネル(下水道管や共同溝)を敷設するのが困難です。そこで近年では、立坑からシールドマシンという掘削機を投入して、地下を掘り進みながらトンネルを形成していく「シールド工法」が急速に普及しています。しかし、立坑を築造するには、①土が崩れたり地下水が滲み出さないよう周囲に矢板(鋼製)を圧入、②周囲の地盤を安定させるためセメントミルクを注入して地盤改良、③シールドマシンを通すために鋼製矢板をバーナーで切断する「鏡切り作業」が欠かせません。こうした工法は手間や時間がかかり鏡切り作業には安全上のリスクも伴います。

土木工事用 FRP 矢板
シールド工法の概念図

シールド工法の概念図

DICの取り組み 新開発の「カーボンFRP矢板」によって地盤改良や鏡切り作業を削減

安全・安心 省エネルギー 3r

DICは高度な樹脂加工技術を駆使したFRP(繊維強化プラスチック)浴槽や人造大理石のキッチンカウンターを住宅設備メーカーに供給しています。また、建設資材でも仮設用FRP矢板など製造実績があります。この知見をもとに、錢高組と共同でシールド工法の施工性を向上させる新たな矢板の開発プロジェクトを発足。そして2012年、DICは強くて軽いカーボン繊維とガラス繊維を積層し、樹脂を含浸・硬化させて、鋼製矢板と同等の強度を持つ「カーボンFRP矢板」の開発に成功しました。

この矢板を立坑に組み入れることで、セメントミルクの注入による地盤改良、人の手で矢板を切断する作業が不要となり、シールドマシンは直接FRP矢板を切り破ってトンネルを掘削できます。これによって作業の安全性が向上するだけでなく、大幅な工期短縮や資材の節減が可能となります。

DICでは、錢高組の現場での実証実験を通じて施工性などを検証した上で、「カーボンFRP矢板」を活用したシールド工法を都市部の下水道工事等に積極的に提案していく計画です。

新開発の「カーボンFRP矢板」カットモデル(長さ6m、厚さ2.3cm)

新開発の「カーボンFRP矢板」カットモデル(長さ6m、厚さ2.3cm)

従来工法とFRP矢板工法

従来工法とFRP矢板工法

VOICE

試行錯誤を重ねて独自の成形法を確立

成形加工技術本部 成形加工技術6グループ 主任研究員 兼本 道成

DICでは浅い地盤工事向けにFRP製「ライト矢板」(厚さ6mm×幅30cm)を製造していましたが、シールド工法の立坑を支える矢板では、要求される、大きさ・形状・強度・剛性のレベルが違います。私たちは実験によるトライ&エラーを重ねて、FRP型の中に布状のカーボン繊維とガラス繊維を45層積み重ね、樹脂を圧入して成形する方法で要求性能を満たす成形品(成形品特許)の開発にたどり着きました。これを鋼製矢板と継手でつなぎ、油圧機で土壌に圧入するわけです。
従来とは全く異なる特性を持った「カーボンFRP矢板」の開発は、設計から原材料調達、樹脂加工・製造までDICの総合的な知見や技術力を発揮した成果だと思います。今後、日本の下水道等の都市トンネル工事だけでなく、アジア新興国市場への普及も期待しています。

成形加工技術本部 成形加工技術6グループ 主任研究員 兼本 道成

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土木工事用 FRP 矢板

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