特集1DICグループは、持続可能な社会に向けて
化学の力で課題を解決し、新たな価値を創造しています

研究開発におけるCSR活動について

常務執行役員 技術統括本部 本部長 阿河 哲朗
常務執行役員 技術統括本部 本部長
阿河 哲朗

 DICグループでは、顧客・社会・地球環境の持続可能な発展に貢献する、新たな価値の創造を目指して研究開発活動に取り組んでいます。

技術統括本部では、2010 年度にそれまで事業部ごとに設置されていた技術本部を、共通の要素技術をベースとする組織へと再編し、全社技術リソースの融合と社内協業の推進を図り、高機能複合化製品の開発に効果を挙げています。次世代型製品・技術の開発を担うR&D本部は、新素材・新機能材、表示・エレクトロニクス、新エネルギー関連、ライフサイエンスの各領域への展開に注力しています。また、DICグラフィックスなどの国内グループ会社、海外ではサンケミカルグループの研究所や、中国開発センターとも相互に連携し、グローバルな経営資源を活用して社会の課題解決に全力を傾けています。

社会の課題

独創的な製品開発を通じて社会の課題解決に貢献

輸送・情報・住宅・食品・・暮らしを支える産業分野には解決すべき様々な課題があります。DICグループは独創的な製品開発を通じて、これらの課題解決に貢献するとともに、新たな価値を創造しています。

軽量化による燃費の向上

排出ガスに伴う地球温暖化や化石燃料の枯渇を低減するため、自動車には軽量化による燃費向上が求められていますが、一方で安全性や快適性を高めるための部品は増加しています。そこで大きな役割を担うのが、重い金属部品から軽い樹脂部品(エンジニアリングプラスチックス、略称:エンプラ)への代替化です。

ただ、自動車は砂漠から寒冷地まで過酷な環境で使われるうえ、エンジン周りの部品は燃焼による高熱や絶え間ない振動、ガソリンやオイルなどの薬品にさらされます。そのため、部品には極めて高い耐熱性や耐薬品性が要求されることから樹脂部品の用途は限られていました。この課題を解決する高性能な樹脂製品を開発できれば、自動車部品の樹脂化を促進し、軽量化による燃費向上が期待できます。

DICの取り組み

CO2削減

省エネルギー

高機能なPPS樹脂により金属部品の代替化を拡大

エンプラの中でも「PPS(ポリフェニレサルファイド)樹脂」は、アルミに比べて比重が1/2と軽量なうえ、融点280℃の耐熱性と優れた耐薬品性・難燃性も備えた「スーパーエンプラ」と呼ばれています。DICは業界に先駆けて1976年にPPSコンパウンドを、87年にはその原料であるベースポリマーの生産も開始。現在ではPPSコンパウンドは世界で約27%、一方ポリマーは約18%で世界トップシェアを占めています。

自動車用PPSコンパウンドは部品によって硬さや柔軟さ(耐衝撃性)、精密な寸法安定性など求められる特性が多岐にわたります。DICはこのニーズにポリマー分子設計から配合、コンパウンドまで一貫した技術で応え、エンジン周りをはじめ駆動・ブレーキ・燃料・照明・冷却および統合制御部品など用途を広げ、金属部品の樹脂化による燃費向上に貢献しています。

VOICE

ベース樹脂から成形材料まで一貫供給できる強みを発揮

自動車部品メーカーからの多岐にわたる要求特性に対応するため、PPSコンパウンドも多様な種類を取り揃えています。DICの強みは、ポリマー分子設計から配合、コンパウンドまで一貫して開発・製造でき、こうしたニーズにきめ細かく対応できることです。最近、樹脂では達成できなかった金属の切削加工と同レベルの高い寸法精度とエンジン周りの部品として使用可能な耐冷熱衝撃特性が両立したPPSコンパウンドや、配合材料を短繊維ガラスから長繊維ガラスに代え、耐衝撃性4倍以上、長期耐熱強度1.5倍、曲げ疲労特性1,000倍という新たなPPSコンパウンドを開発しました。これらの新規材料は、樹脂化困難であった金属部品の代替やハイブリッド車や電気自動車など次世代システム部品へ適用され、さらなる燃費向上への貢献が期待できます。

成形加工技術本部 機能性成形材料技術3グループ 内潟 昌則

成形加工技術本部
機能性成形材料技術3グループ
内潟 昌則

新聞発行に伴う資材の低減

新聞発行に伴う資材の低減

日本の大手新聞社は、増加する情報ニーズに応えるため多ページ化を進める一方、資源の節約や輸送・配達の負担軽減のため、新聞用紙を薄くして軽量化を図っています。紙の厚さを表す坪量(つぼりょう)(1㎡当たりのg重量)は、1975年に51.8gだったものが1989年に43gまで薄くなり、紙資源の節約とともに製紙工程や輸送時のエネルギー使用量(=CO2排出量)も削減しています。近年、新聞社はこの取り組みをさらに進めると同時に、新聞用インキの使用量削減にも着手しました。しかし、用紙を薄くしてインキも減らせば紙面品質の低下を招きかねず、「資源節約と紙面品質の両立」という大きな課題が浮上しました。

DICの取り組み

省エネルギー

環境負荷物質 削減

高濃度インキの薄膜印刷で省資源化と紙面品質を両立

インキの使用量削減と紙面品質を両立するには、顔料を多く含む「高濃度インキ」を薄く盛って印刷する手段が有効です。ここで重要なのが、新聞印刷の高速化によるカラー印刷の「紙面品質」と薄膜印刷において問題となりうる、機上安定性の悪化および転移性の低下などの「印刷適性」を考慮することです。この課題に対してDICは、原材料の選定や配合技術など独自のノウハウを駆使して最適の高濃度インキ「PROUD」(エコマーク認定)を開発し、3色(赤・黄・青)平均のインキ削減率23.1%を実現しました。

新聞用インキの浸透イメージ

新聞用インキの浸透イメージ
短時間で大量部数を印刷するため、新聞用インキには早く紙の繊維に入る流動性と速乾性が要求される

新聞用インキの浸透イメージ(図) 出典:朝日新聞印刷ガイドブックPDF

VOICE

資源削減と作業環境の改善、さらに輸送便数も削減

紙が薄いと裏にインキが透ける「裏抜け」や印刷後間もなく畳まれることで反対側にインキが付着する「裏写り」のリスクが高くなるため、薄膜印刷が可能な高濃度インキへの関心が高まりました。また、オフセット印刷は、油(インキ)と水(薬剤を混ぜた湿し水)の反発作用で印刷しますが、高濃度インキなら湿し水の使用量も削減でき、印刷時に飛散するミストの量も減るため作業改善につながります。さらに、新聞社へインキを納入する便数も減少したため、輸送に伴うCO2排出量も削減されました。
当社は新聞用高濃度インキの対応は後発となりましたが、DIC製品は印刷適性で高い評価をいただき、新規の受注も獲得することができました。

DICグラフィックス(株)新聞インキ技術グループ 鈴木 和人

DICグラフィックス(株)
新聞インキ技術グループ
鈴木 和人

参考資料:読売ADリポート 新聞用インキの特性アイコン

携帯電話・テレビ・OA機器の環境性の向上

高度情報社会の中で各種機器は多機能化・高集積化を加速する一方で、省資源・省エネ・高リサイクル性などの環境配慮が求められています。そこでは、新機能を加えながら軽薄短小化したり、性能を高めながら省エネも促進するなど、二律背反の課題をクリアする必要があります。

DICの取り組み

テープやフィルムで携帯電話の進化を促進

携帯電話の進化にDICは重要な役割を果たしています。各部品はネジの代わりに薄型の粘着テープで固定され、本体の薄型化(省資源)に貢献しています。また、クッション性のある発泡基材と特殊粘着剤を組み合わせた「防水粘着テープ」を開発し、世界で初めて携帯電話の防水仕様を実現するのに貢献しました。深さ1mの水中に30分放置されても耐えられる性能が評価され、国内外の携帯電話で採用されています。さらに、落下した場合でも「飛散防止用粘着フィルム」によって画面ガラスの飛び散りを防ぎ、高い安全性を確保しています。

新聞用インキの浸透イメージ

DICの取り組み

省エネルギー

リサイクル

LEDの熱を逃がし、OA機器の解体を容易に

省エネ型液晶テレビの光源(バックライト)であるLEDは、発光時に温度が上昇するため、LED基板を固定しつつ熱を逃がす対策が必要でした。そこで、DICは熱伝導性が高く放熱効果を発揮する「熱伝導性両面粘着テープ」を開発。ビスによる固定方式に比べてLEDの温度上昇を抑えるのに有効として複数の家電メーカーに採用されています。

また、OA機器や家電製品で部品を固定する両面テープは、使用時に剥がれず、使用済み製品として回収後に解体する際には容易に剥がせる性能が求められます。そこでDICは、時間が経つほど接着力が高まる一般的な粘着剤の性質を抑えた「強粘着・再剥離型アクリル系粘着剤」を開発。さらに基材である不織布も、剥がす際にちぎれにくい高強度タイプを共同開発して課題を克服しました。こうして製品のリサイクルを容易にした「強粘再剥離型両面粘着テープ」は、発売以来20年以上のロングセラーを続けています。

OA機器 家電製品

製品の解体性を容易にする強粘着・再剥離型の粘着テープ

VOICE

DICの総合力で高付加価値の粘着製品を

DICの総合力で高付加価値の粘着製品を電気・電子機器の環境性能の向上に、工業用粘着テープやフィルムは不可欠な存在です。製品や使われる部位によってニーズは異なり、部品の固定、製品の保護(耐衝撃・耐擦傷・防水)、透明性、放熱性、低VOC(揮発性有機化合物)など求められる特性は様々です。
DICが多様な用途に最適の製品を提供できるのは、ポリマーの設計・合成技術、塗膜の樹脂設計、添加剤の配合技術、さらにはフィルム化・テープ化技術まで一貫して高度なノウハウを有しているからです。近年、タブレット型端末などめざましく進歩するモバイル機器の分野でも、導電性の高いタッチパネル向け透明フィルム、電磁波による誤作動を防ぐシールド機能を備えたテープなど、環境性以外の分野でも貢献しています。

塗工技術本部 塗工技術1グループ 主任研究員 山上 晃

塗工技術本部 塗工技術1グループ
主任研究員
山上 晃

塗工技術本部 塗工技術1グループ 研究主任 高野 博樹

塗工技術本部 塗工技術1グループ
研究主任
高野 博樹

多くの人々が安心で快適に過ごせる空間づくり

高山市国府支所庁舎(DICフネンWOの施工例)

高山市国府支所庁舎(DICフネンWOの施工例)

多くの人々が利用する公共施設、お年寄りや患者さんなども利用する福祉施設や病院には、温もりや安らぎを感じる空間づくりが求められます。しかし、そうした効果が期待できる天然木の建築資材は、建築基準法で定められた防火・耐火性能を満たせなかったり、樹種によっては森林保護の観点から入手が困難であったりします。

一方、目の疾患や遺伝子のタイプによって色の見え方(色覚)が一般と異なる人も多く(日本には500万人以上いるともいわれる)、施設のサインの判別で不便を感じるなど、ユニバーサルデザイン上の課題となっています。

DICの取り組み

省エネルギー

リサイクル

化学の力で天然木の質感を、カラーユニバーサルデザインの力で色覚バリアフリーを

DICグループは樹脂加工技術や印刷技術を応用した化粧板・化粧シート・人造大理石をはじめ多彩な内装用部材を住宅・建築業界に供給しています。中でも、2010年に開発した不燃化粧板「DICフネンWO」は、写真製版した天然木の色柄と凹凸感を樹脂加工に同調させて忠実に再現し、本物と見分けがつかないほどの質感と暖かみを表現します(DIC独自の印刷方法:同調デルナチュレファイン)。木材表現にこだわる高齢者福祉・医療・教育施設などでこの意匠性の評価を受けて、採用されています。

天然木の質感や暖かみを表現するDICフネンWO

天然木の質感や暖かみを表現するDICフネンWO

同調デルナチュレによる独自の意匠表現

同調デルナチュレによる独自の意匠表現

また、DICはカラーユニバーサルデザイン(CUD)の普及に向け、色覚バリアフリーをめざすNPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構(略称:CUDO)」と連携して、公共施設のサイン表示の改善にも取り組んでいます。一般の人々とは見え方が異なる人々にも、駅の時刻表や路線図、施設内の設備などを分かりやすく識別できる表示板を提供するとともに、公共建築に携わる専門家を対象とするセミナーを開催し、CUDの普及にも努めています。

VOICE

独自の技術と知見を結集して「カラー&コンフォート」を追求

不燃化粧板「DICフネンWO」は、高齢者が入居する福祉施設はじめ、温もりや安らぎを感じる空間づくりに適した製品です。稀少な高級天然木に比べて手頃なコストで施工でき、森林保全の点でも優れていることから今後の成長が期待できます。また、カラーユニバーサルデザインに向けたサイン表示板は、長年蓄積した色彩学の知見と顔料・塗料・塗装技術のノウハウを融合して初めて実現できたものです。これらの製品は、DICが掲げる「Color & Comfort by Chemistry(化学で彩りと快適を提案する)」を具現化した成果と言えるでしょう。

建築・住設材料営業本部 DIC200推進部 担当部長 林 正樹

建築・住設材料営業本部
DIC200推進部 担当部長
林 正樹

VOICE

高齢者福祉施設向けのオリジナル洗面化粧台を開発

建築・住設分野 のDIC製品は、化粧板・化粧シートのほかポリエステル樹脂製の人造大理石でも豊富な実績があります。従来、これらの製品群は部材として供給していましたが、2011年に保有技術を活かした自社企画の「洗面化粧台」の開発に着手、12年度中に高齢者福祉施設向けに発売する予定です。素材は稀少な森林資源や石材を一切使用せず、天然木や天然石の温もりを再現しています。さらに、車いす対応のバリアフリーデザイン、日本の伝統色を生かしたカラーコーディネートなど、DIC独自の特色を打ち出しています。

建築・住設材料営業本部 DIC200推進部 担当課長 鶴田 順也

建築・住設材料営業本部
DIC200推進部 担当課長
鶴田 順也

Topics

DICカラーデザインの取り組み
中国らしさを起点にしたカラーデザインで商品・ブランド力の向上

成熟する中国市場で成長したい日本企業、林立するグローバルブランドの中で価値を高めたい中国企業…。
DIC はこうしたニーズに、独自の分析・視点で効果的な提案を続けています。

ブランド戦略からトレンド発信まで独自の視点で

中国市場で存在感を高めるには、世界のトレンドと最新の素材・表現技術を踏まえた上で「中国らしさと新しさが両立したカラーデザイン」を消費者にアピールする必要があります。私たちは長年の調査・分析経験に基づく中国のカラートレンドを発信する一方で、ブランド戦略におけるCMF(Color/Material/Finish)の効果的な伝え方を提案しています。カラー戦略の重要性はますます高まり、関わる業種は自動車・家電・化粧品・食品・ファッション関連など急速に広がっています。

2013-2014『 中国カラートレンドブック』

2013-2014『 中国カラートレンドブック』

DIC カラーデザイン(株) コンサルティング事業部 カラーディレクター (『中国カラートレンドブック』編集長) 大前 絵理

DIC カラーデザイン(株)
コンサルティング事業部
カラーディレクター
(『中国カラートレンドブック』編集長)
大前 絵理

Topics

バイオ燃料の実現を目指して
スピルリナ培養技術の展開による、持続可能な資源・エネルギー生産への試み

化石資源の枯渇、地球温暖化、原発リスクの顕在化等により、現在自然エネルギーが注目されています。植物・藻類の光合成は太陽エネルギーの最も身近な利用法で、持続可能な資源・エネルギーの究極の解決策です。その中でも藻類は、光合成効率と、これに関連して育成中の藻類がCO2を吸収する(カーボンオフセット)効率が高いことから、特に注目されています。
 DIC グループは、光合成藻類スピルリナを健康食品や食品用色素リナブルーとして販売し、その屋外大量培養技術に30 年以上の経験を有する唯一の企業でもあります。この技術の活用を目的として、ジェット機燃料や化学品原料を生産する藻類の屋外大量培養に関して筑波大学と、また同時に米国サファイアエナジー社とも共同研究開発を開始しています。
原子力発電や化石資源に依存しない、クリーンで持続可能なエネルギー、資源開発への貢献を目指して、DICグループでは今後も保有するスピルリナ屋外大量培養ノウハウの活用を図り、藻類バイオ燃料の実用化に向けた支援に取り組んでいきます。

バイオ燃料に用いる藻類・ボトリオコッカス

バイオ燃料に用いる藻類・ボトリオコッカス

スピルリナを培養するEarthrise 社・アメリカ

スピルリナを培養するEarthrise 社・アメリカ

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